フランスのプラグインメーカーであり、アナログシンセメーカーでもあり、MIDIキーボードやオーディオインターフェイスメーカーでもあるDTM総合メーカーのArturiaから、また面白いソフトの詰め合わせがリリースされました。今回登場したのは、みんなが憧れるビンテージ・エフェクト19本と最先端のコンセプトで作られたマスタリングエフェクトなどオリジナル3本を組み合わせた計22本のプラグインで構成されるFX Collection 2(オープンプライス、実売税込価格39,600円)。また現在は期間限定の発売キャンペーン価格となっており、29,700円となっています。
その名前からも分かる通り、これは2020年4月にリリースされていたFX Collectionのアップデート版であり、従来バージョンにあった15種類がブラッシュアップしたのに加え、新たに7つが追加されたというもの。もちろん、WindowsおよびMacで利用可能で、VST2/VST3、Audo Unit、AAXのプラグイン環境で利用できるというもの。見た目にもカッコよく再現してあり、その名称、デザインからそれぞれのオリジナルが何であるかも推測できるので、紹介してみましょう。
Arturiaのソフトというと、やはりビンテージシンセを復刻させたものというイメージが強く、たとえばProphet 5を再現したProphet V、Jupiter-8を再現したJup-8 V、Emulator IIを再現したEmulator II V、DX7を再現したDX7 V……などなどさまざまなものがあります。Arturiaが誇るTAE(True Analog Emulation)テクノロジーという技術を用い、アナログ回路をエミュレーションし、ビンテージシンセを再現しているのです。
それぞれ個別でダウンロード購入することができますが、V Collection 8という詰め合わせ品を購入することで、Arturiaのビンテージシンセ一式を割安に購入することができるようになっています。
そのArturiaがビンテージシンセだけでなく、ビンテージエフェクトも再現し、プラグインとして使えるようにしたものが、クリエイターの間で高く評価されていました。もちろん、こうしたビンテージエフェクトを再現したものはArturiaに限らず、WavesやUniversal Audioなどが手掛けていますが、Arturiaのものは見た目にもカッコよく、グッと来るところだし、プリセットもいろいろ用意されているから、難しいことを考えなくても、プリセットを選ぶだけで、ガツンとくる音を簡単に作れてしまうというのも重要なポイントです。
そのFX Collectionが今回、FX Collection 2となったわけですが、今回追加されたのは7種類で、表にまとめると以下の通りです。
プラグイン名 | 元モデル | 特徴 |
Bus FORCE | Arturiaオリジナル | フィルター、EQ、コンプレッサー、サチュレーションの 4つのモジュールで構成されたパワフルなオリジナル・パラレル プロセッサー |
Comp DIODE-609 | NEVE 33609 | 象徴的なNeveをベースとしたステレオ・コンプレッサー&リミッター |
EQ SITRAL-295 | Siemens W295b EQ | 70年代のSiemensコンソールをベースにしたクラシックなステレオ EQ |
Chorus DIMENSION-D | Roland SDD-320 Dimension D | シンプルな4つのモード操作で再現される美しく滑らかなステレオ・コーラス |
Phaser BI-TRON | MU-Tron Bi-Phase / Musitronics | 2つの位相回路と高度なルーティング・オプションを備えた、ブティック・ギター・ペダルの魅力を醸し出すデュアル・フェイザ |
Flanger BL-20 | Bel / BF-20 Stereo Flanger | 1970年代以来、アイコン的な存在になっているイギリスのラック式ステレオ・フランジャーを再現したエフェクト |
Chorus JUN-6 | Roland JUNO-6 Chorus | クラシックなJUNO-6のコーラスをベースにしたステレオ感のある豊かで温かみのあるサウンドを実現 |
ここにある元モデルは、Arturiaが発表しているわけではなく、あくまでも名称と見た目、音から、おそらくそうだろう…と予想したものなので、メーカーなどへは問い合わせないようお願いします。
たとえばComp DIODE-609はNEVE 33609を再現したものと思われますが、ステレオコンプレッサとして30年以上スタジオのスタンダードとして使われてきたものであり、現在もAMS Neve 33609 Stereo Compressorとして販売されています。新品を購入した場合でも50万円以上しますから、これだけで十分すぎるほど元が取れてしまいそうですよね。
またEQ SITRAL-295は1960年代にドイツのSiemens(ジーメンス)が作ったコンソールに搭載されていたEQでW295bというモジュールを再現したもの。David BowieやT-RexのプロデューサーとしておなじみのTony Viscontiが好んで使ったというEQですね。これを2つ組み合わせてステレオで扱えるようにしたのが、このプラグインなのです。
でも、これら7つのプラグインを見て、「あれ?」と思う方もいると思います。そう、これら7つすべてが今回初登場というわけではないんですよね。初代のFX Collectionというだけであり、すでに単体発売されていたものもあります。
とくにRolandのJUNO-6のコーラスを再現するChorus JUN-6などは、昨年末のクリスマスシーズンに無料配布していましたから、その時にGETした、という人も少なくないのではないでしょうか?
一方、これら7つのうち異色の存在であるのがBus FORCE。どう見ても、ビンテージエフェクトじゃないぞ…と思って見てみたら、やはりArturiaが今回目玉として打ち出したオリジナルのマスタリングエフェクトなんですね。
左からEQ、フィルター、コンプ、サチュレーションと並んでいて、それぞれの状況が左上のディスプレイに表示されるようになっています。また単に直列に並んでいるわけではなく、パラレルにルーティングできるようになっているのも面白いところ。かなり複雑な音作りができるようになっています。
もちろん、ここにも数多くのプリセットが用意されているので、適当に選んだ聴きながら、よさそうなものが見つかったら、そこからチューニングしていくという使い方が分かりやすそうです。
今回7つのプラグインが追加されたわけですが、もちろん、従来からある15種類のエフェクトも含まれており、それらを表にしてみると以下のとおりです。
プラグイン名 | 元モデル | 特徴 |
Comp VCA-65 | dbx 165A | 究極のリズムセクション・コンプレッサーであるComp VCA-65は、完璧に再現されたVCAコンプレッサーに現代的なアレンジを加えたもの |
Comp TUBE-STA | Gates STA-Level | 1950年代からベースやボーカルの秘密兵器として愛されてきた真空管式のGates STA-Levelを再構築 |
Comp FET-76 | UREI 1176 | 史上最も象徴的なスタジオ・コンプレッサーをソフトウェア・プラグインとして再現しました。いつでも完璧なボーカルと楽器を |
Delay TAPE-201 | Roland Space Echo RE-201 | 宇宙からやってきたものが、あなたのDAWで使えるようになりました。オーガニックでテープサチュレーションのディレイとリバーブの最高傑作 |
Delay MEMORY-BRIGADE | Electro-Harmonix / Delux Memory Man | 偉大なギタリストやプロデューサーが独自のトーンを実現するのに役立った、象徴的なローファイ・ディレイが、あなたのレコーディング・セットアップに登場 |
Delay ETERNITY | Arturiaオリジナル | エフェクトが統合された、刺激的で多彩なサウンドを持つオリジナル・ディレイ・エフェクトです。Arturia Delay Eternityは、現代のプロデューサーのための革新的なツール |
Rev PLATE-140 | EMT 140 | エフェクトのコレクションは、贅沢で豊かで滑らかなプレートがなければ完成しません。Rev PLATE-140は、すべてのプレートリバーブの母体 |
Rev INTENSITY | Arturiaオリジナル | まったく新しいタイプのリバーブに身を任せてみませんか。Rev INTENSITYは、21世紀のArturiaのオリジナル・エフェクト |
Rev SPRING-636 | Grampian Reverberation Unit Type 636 | 自分で蹴っているかのようなリアルなサウンドのスプリングリバーブで、あらゆるサウンドを強調することができる |
Pre 1973 | Neve 1073 | 世界最高のスタジオの象徴的なビンテージサウンドを、現代のプロデューサーのために完璧に再現 |
Pre TridA | Trident Studio A Rangeコンソール | これまでに製造されたチャンネルストリップの中でも最も貴重でレアなチャンネルストリップがDAWで生まれ変わった |
Pre V76 | Telefunken Tab V76 | 60年代のポップミュージックを代表するサウンドが、バーチャルスタジオのプラグインとして再発見 |
Filter MINI | Moog MiniMoog | Moog博士の有名なオクターブあたり24dBのローパス・ラダー・フィルターを再現したプラグインで、現代の音楽制作者のためにエキサイティングな新機能を追加 |
Filter M12 | Oberheim Matrix-12 | 伝説的なアナログ・ポリシンセのフィルターが、DAW用の非常にパワフルでモダンなプラグインとして生まれ変わった |
Filter SEM | Oberheim SEM | 史上初の内蔵型アナログ・シンセサイザーの一つであるTom Oberheimの先駆的なデザインには、最も愛されているフィルターの一つが搭載されていました。このフィルターを、あなたのDAWで利用できるようプラグイン化 |
これについても元モデルについては、おそらくそうだろうと思うものを私がピックアップしただけで、メーカー側は明言していないのでご注意ください(いくつかはメーカーもちゃんと言ってますね)。特徴についてはArturiaサイトにある説明を参考に記載しています。ちなみに旧バージョンであるFX Collectionを持っている人はFX Collection 2へ有償でのアップグレードが可能となっていますが、国内でアップグレード版は販売されていないため、Arturiaサイトで$69でアップグレードする形になります。この$69もイントロプライスとなっているので、もしアップグレードを検討しているのであれば、早めにしたほうがよさそうですね。
なお、Trident Studio A Rangeコンソールと思われるPre TridAはコンソールというわけではなく、このコンソールに入っているプリアンプを取り出したものです。
同様にMiniMoogのとしているFilter MINIはMiniMoogの中のフィルタを取り出したものだし、M12やSEMに関しても同様です。これらのシンセはもともとV Collectionの中にも全体が入っているので、そこからフィルターだけを抜き出したものなので、Arturiaとしても既存の資産の再利用といったところなのでしょう。とはいえ、このフィルターだけを取り出してオーディオトラックやインストゥルメントにエフェクトとして掛けることができるのですから、音作りの幅がグンと広がって面白いですよ。
以上、Arturiaの新製品、FX Collection 2についてざっと紹介してみました。これだけのビンテージエフェクトが一気に使えるのですから、持っておいて損はないと思います。
【関連情報】
FX Collection 2製品情報
【価格チェック&購入】
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◎サウンドハウス ⇒ FX Collection 2 , V Colleciton 8