唯一無二の国産DAWメーカーであるインターネット社が開発するDAWの最高峰であるABILITY 3.0 Pro。ここには自社製、サードパーティー製含め、さまざまなプラグインエフェクト、プラグインインストゥルメントが入っており、ドラム音源だけでもLinplugのRMVそしてFXpansionのBFD Ecoの2つが収録されていました。このうちBFD Ecoが3月31日をもって終了することになり、4月1日からは新たにIK MultimediaのMODO DRUM SEというソフトがバンドルされる形になりました。
名前からも想像できる通り、MODO DRUM SEはMODO DRUMの一部制限版。とはいえ、ドラムキット数が絞られているだけで、フル機能が使えるもの。ご存知の方も多いと思いますが、物理モデリングとサンプリングを組み合わせた超高性能でリアルなドラム音です。このMODO DRUM SEがバンドルされた背景なども含め、最新のABILITY Pro 3.0について見ていきましょう。
諸々の事情は後で紹介するとして、まずは、ABILITY 3.0 Pro上で、IK MultimediaのMODO DRUM SEを鳴らした簡単なデモがあるので、このサウンドを聴いてみてください。
いかがですか?ものすごくリアルなドラムだと思いませんか?聴いてみても分かるとおり、StudioキットというものとJazzyというキットの2種類を使うことができるようになっており、Studioキットのほうは、万能に使えるものであるのに対し、Jazzyのほうは、まさにジャズ用に最適なドラムであり、Studioキットと比較すると、少し柔らかなサウンドとなっていますが、もちろんジャズ以外にもさまざまなシーンで利用できる音源です。
この2つのキットしか使えないものの、それ以外は通常版のMODO DRUMとすべて一緒。たとえば、CUSTOMIZEボタンを押すと、キック、ハイハット、スネア、ハイタム、ミッドタム……とあるピースをそれぞれ自分の好きなものに差し替えることができるようになっているのです。
またPLAY STYLEをクリックすると、ドラムのプレイヤーの叩き方を設定することができます。たとえばスネアを叩く際、左手はどの辺のエリアを叩き、右手はどの辺のエリアにするのか。その叩く際の強さは左右それぞれどのくらいか…といった調整を行えます。
そしてROOMではそのドラムキットがどんな部屋に置かれているのかの変更が可能です。たとえばBOOTHを選ぶと、スタジオのブース内で叩いたようなデッドな空間での音になるし、GARAGEやCATHEDRALを選ばばガレージで叩いたり、教会で叩いた音のようになり、反響音も大きくなっていきます。
また、MIXERでは、各パーツの音量設定やPANの設定、またエフェクトの設定なども自在に行えるようになっています。さらにGROOVESではMIDIフレーズに関するライブラリ管理を行い、MAPPINGでは、MIDIのどのキーにどの音を割り当てるかなどの設定ができるようになっています。
そんなMODO DRUMですが、なぜ、これまで搭載していて人気もあったFXpansionのBFD Ecoをやめて、IK MultimediaのMODO DRUM SEに乗り換えたのか。これについては、2020年4月にFXpantionのBFD事業を、inMusicが買収したこととも関係がありそうです。そこで、株式会社インターネットの村上昇社長に電話でいくつかの質問を投げる形でインタビューしてみたので、紹介します。
--今回、FXpansionのBFD Ecoのバンドルをやめて、IK MultimediaのMODO DRUM SEに切り替えるとのことですが、こうなったことに対する経緯をお話いただけますか?
村上:昨年春、FXpansion社のドラム音源、BFDが、inMusicにより買収されました。そのため、FXpansionとinMusicとは、ぎりぎりまで交渉を続けていましたが、残念ながら2021年3/31をもって当社へのBFD Ecoの販売が終了ということになり、インストーラやアップデータの再ダウンロード、アクティベーションなども2021年3月31日までということになってしまいました。
--BFD Ecoの再ダウンロードもできないし、アクティベーションもできないということは、もし手元にインストーラがあっても、この先、インストールして使うことはできないという意味ですね。
村上:その通りです。すでにインストールしていて、起動できる状態にアクティベーションしている方であれば問題なく使い続けることが可能ですが、新規にということはできないようです。この点も、何とかならないか……と交渉をしてきたのですが、対応してもらうことができませんでした。もともとABILITY 3.0 Proには、RMV というサンプラーベースのDRUM音源が付属しておりますが、それに加えBFD Ecoを付属させていたので、ユーザーメリットを考えると同等のドラム音源を差し替えたいと考えたのです。BFD Eco相当もしくはそれ以上のドラム音源を新規に自社で開発することを検討し、準備を進めていました。しかし、結構大きな規模の開発であることもあり、この4月には間に合わせることができませんでした。音源部、エフェクトなどのエンジン部は完成しているのですが、UI、サンプルデータの録音がこれからで、急いでも6月あたりまではかかってしまう状態でした。そこで同時にソフトシンセメーカーともやり取りをしつつ、機能、性能、価格を検討していった結果、IK Multimedia 社のMODO DRUM SEのバンドルがバンドルできることになったのです。
--今回、2021年4月1日からは、MODO DRUM SEがバンドルされるようになる、とのことですが、すでに購入している人、ABILITY 3.0 Proを存分に使っているユーザーはどうなるのでしょうか?
村上:基本的に対象になるのは新規に購入した方ではあります。ただし、店頭在庫や、すでに購入済みだが、ABILITY 3.0 Pro のアクティベーションをまだ済ませていない方であれば、MODO DRUM SEを入手可能としています。この場合、オンラインサポートセンターより、MODO DRUM SEのシリアルが無償で発行できます。また、2020年12月1日以降にABILITY 3.0 Pro のアクティベーションを行ったユーザーも、MODO DRUM SEのシリアルが無償で発行できます。
--BFD Ecoが消えてしまうのは、残念ではありますが、買収したinMusicが撤退するのだとしたら、どうにも仕方ないですね。一方で、インターネット社で開発中の新ドラム音源が気になります。これはどのようにリリースするのですか?
村上:これは、もうしばらくして、発表できる段階になってからアナウンスさせていただきます。ただ近い将来、非常に有用な音源を発表できると思うので、ぜひ期待していてください。
--ありがとうございました。
短めのインタビューではありましたが、だいたいの状況が、お分かりいただけたのではないでしょうか?また、新音源などの情報がハッキリしてきたら、ぜひまたレポートしてみたいと思っております。なお、インターネット社のオンラインshop(https://www3.ssw.co.jp/)で、4月15日よりMODO DRUM 、MODO BASS、T-Racks などのIK Multimedia社製品のダウンロード販売も開始されるとのことです。
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