NOVATIONから、スタンドアローンのグルーブボックス、Circuit Tracksが発売されました(税別実売価格:40,000円)。同社が発売している、LaunchpadはPCと繋いで使うMIDIコントローラーですが、Circuit Tracksはアナログモデリングシンセを2基、4つのサンプリングドラム音源を搭載し、単体でシーケンスを鳴らして演奏できる機材です。また上部に装備されている8つのノブを使ってリアルタイムにサウンドメイクしていくことが可能。
もちろんWindowsやMacとUSBで接続して、細かなエディットをしていくこともできるし、DAWと連携して利用することで、より高度な使い方も可能です。またKORGのvolcaシリーズやBehringer製品をはじめとする各種リズムマシンなどと同期させることもできるし、MIDIの入出力を持っているので、さまざまなMIDI機器と連携して、パフォーマンスを行うこともできます。128シンセプリセット、64ドラムサンプル内蔵しており、今後はアーティストプリセットの無料配布を予定しているとのこと。実際に、このCircuit Tracksを試してみたので、どんなことができる機材なのか紹介していきましょう。
さて、さっそくですが公式からのビデオがあるので、まずはこちらをご覧ください。
いかがでしょうか?このCircuit Tracks単体で、シンセやドラムのシーケンスを鳴らしたり、そのシーケンスの上で演奏したり、上部にある8つのノブを使って、フィルターやモジュレーションを掛けたりしています。また、パターンを切り替えることによって、曲の雰囲気をガラッと変えて、変化を付けたりと、楽曲制作でもパフォーマンスでも使える機材だということが分かると思います。ドラムマシンとシンセが合体した機材が、このCircuit Tracksであり、まさにグルーブボックスとなっているのです。
このCircuit Tracksの開発元はNOVATION。NOVATIONといえば、Launchpadを思い浮かべる方も多いと思います。Ableton Liveとの連携にとどまらず、Logic Proにも対応したことから、先日も「Logic ProのLive Loopsの実力を120%引き出すアイテム、Novation Launchpadの威力」という記事でも、取り上げましたが、やはりユーザビリティという点で見て、NOVATION製品は秀逸です。
もちろん、Circuit Tracksも同様に扱いやすく、メニューを潜っていかなくても、すべての機能が使えるのが大きな特徴。そのため、はじめて使うユーザーでも、マニュアル不要で、即、楽しむことができるのは嬉しいところです。もちろん、パッと見ではわからないいろいろな機能も備わっているので、PCと連携させることなどで、より突っ込んだ機能まで使い倒していくことが可能になります。
そんなCircuit Tracksは、以前発売されていたCIRCUITの後継機にあたる機材であり、あらゆる部分でアップデートが施されています。まず分かりやすいところでいうと、外見。全体的に今のLaunchpadと似たデザインとなり、スタイリッシュな見た目に進化しています。また軽量になっていたり、電池駆動だったのが、バッテリー駆動に仕様変更されているのもポイントです。
端子を見てみると、MIDI IN/OUTがMIDI DIN端子になっていたり、MIDI Sync端子が搭載されたり、Inputが装備されるなど、ほかの機器との連携が強化されています。またmicroSDカードを挿せるようになっており、これを使ってサウンドパックやサンプルの読み込みが可能となっています。またUSB端子もUSB Type-Cになっていますね。
さて、冒頭でも書いたようにCircuit Tracksにはアナログモデリングシンセが2基、4つのサンプリングドラム音源が搭載されています。正確には、トラックという呼び方をしているので、2つのシンセトラックと4つのドラムトラックが同時に使えるわけですが、これはSynth1、Synth2、Drum1、Drum2、Drum3、Drum4というボタンを押すことで、切り替えることができます。たとえばSynth1を押すと、パッドとノブがSynth1に対応するようになります。そしてパッドを叩くと、これで演奏が可能になります。
上部にあるMaster VolumeとMaster Filter以外のノブは、選んだトラックの音作りに使うことができます。
2,Oscillator Mod
3,Amp Envelope
4,Filter Envelope
5,Filter Frequency
6,Resonance
7,Modulation
8,FX
上記に挙げた8つのノブを使って、瞬時に音を変えることが可能であり、冒頭の動画でも、ここを操作しているのは確認できます。効きがよく、ノブの動きもスムーズで、かなり扱いやすい印象です。
また、Presetを押すと、選んでいるトラックのプリセットを選べるようになり、ここから気に入った音色を探すことも可能です。シンセの場合は128個、ドラムの場合は64ドラムサンプルを読み込ませておくことができます。
さらにシーケンス機能が搭載しています。プレイボタンを押せば、シーケンスが動きだし、ステップ入力したり、Recボタンを押すことで、リアルタイムに録音していくことも可能です。
ステップは、16ステップまたは32ステップを作成できます。またマイクロタイミングで1ステップを分割することによって、跳ねたグルーブ感を出したり、連打フレーズを作成することも可能。作ったシーケンスは、パターンとして一時保存することによって、セクションごとにパターンを呼び出して、パフォーマンスを行うことができます。
ほかにも、ベロシティーやスケールの設定、プロジェクトを保存したり、これ1台でかなりのクオリティの音楽を作ることが可能なのですが、DTMステーションとしては、ここからが本題。
LaunchpadやSL MkIII、BASS STATION IIなど各種NOVATION機材はNovation ComponentsというGoogle Chrome上で使えるアプリを利用することで、PCから各種機材をコントロールしたりエディットできるようになり、本体だけではできないさまざまな機能を使えるようになっているのが大きな特徴です。どの機材に接続するかによって、当然表示される画面や内容も変わってくるわけで、Circuit Tracksに接続すれば、当然Circuit Tracks専用の画面が現れます。このNovation Componentsは、ウェブアプリケーションなのでインストールの必要はなく、ここで各種設定を行ったり、ドラムサンプルの入れ替えを行ったり、シンセのカスタムを行ったりすることができるので、とっても手軽で便利。
一方Chromeを使ってない方や、ネット非接続環境で使いたい方にはスタンドアロンで動作するWindows/Macのソフトウェア、Components Standaloneというものもあるので、必要ある方は、ここ(https://novationmusic.com/ja/node/127)からダウンロードしてみてください。
さてNovation ComponentsでPacksを選ぶと、PROJECT、SAMPLES、PATCHESというタブが表示されます。PROJECTでは、自分で作ったプロジェクトを管理することができます。Circuit Tracks本体には、64個のプロジェクトを保存することができますが、それ以上を管理する場合は、ここを使います。プロジェクト名を付けたり、パッドの色を変えたりすることができます。
また、SAMPLESではサンプルの管理が可能です。たとえば、手持ちのドラムサンプルをフォルダからドラック&ドロップすれば簡単に読み込むことができます。その後、Send to Circuit Tracksをクリックすれば、Circuit Tracks本体に自分のサンプルが読み込まれて使用可能になります。
さらにPATCHESでは、シンセのプリセットを管理することができます。一方、シンセをより細かにカスタマイズするのであれば、ページのSynthをクリックします。すると、シンセのカスタマイズ画面が表示され、ここでオシレーター、フィルター、エンベロープ、LFOをカスタマイズすることができます。上部にあるMACROSは、Circuit Tracksの8つのノブに連動しており、ここでマクロを組むことによって、Circuit Tracksでリアルタイムに音色を作っていくことが可能になるわけです。作った音色は、サンプルと同様に簡単にCircuit Tracks本体に送ることができ、前述のように128個まで本体にストックすることが可能です。
また、エフェクトやモジュレーションもここでカスタマイズすることが可能です。
さらにこのエフェクトやモジュレーションをMACROSに組み込むことができます。Circuit Tracksの見た目からは想像しにくいですが、本格的なシンセサウンドを鳴らせるのもポイントです。
Circuit Tracksでは、64個のプロジェクト、128個のシンセプリセット、64個のサンプルをまとめて、Packと呼んでいるわけですが、Circuit Tracks本体には1つのPacksしか読み込んでおくことができません。Novation Componentsを使って、Packを切り替えることは可能なのですが、この場合だとPCと接続する必要があります。そんなときに使うのが、microSDカードであり、ここに32個のPacksを保存しておいて、PCと繋がなくても瞬時にPackを呼び出すことが可能です。
そしてDTMユーザーにとって重要なのがDAWとの連携です。Circuit TracksとWindowsやMacとUSBで接続した際、Circuit Tracks自体がUSBクラスコンプライアントなデバイスとなっているので、基本的にはドライバ不要ですが、Novationのドライバをインストールすることで、より確実に使えるようになっているようですこの際、扱えるのはMIDIのノート信号の入出力とコントロールチェンジ情報。ノート信号であれば、演奏のためのシーケンス情報がやり取りできるわけですが、コントロールチェンジ情報も使えば、フィルターやエンベロープ情報のやり取りが可能になるだけでなく、各ツマミやボタンの動きをPC側に送れるため、フィジカルコントローラとしても使うことができるようになっています。
ただし、USBを通じてやりとりできるのは、あくまでもMIDIであってオーディオ信号のやりとりはできません。そのため、もしCircuit Trackの出力音をDAWに取り込みたいのであれば、アナログ出力したものをオーディオインターフェイスを経由してレコーディングしていく必要があります。
また、USBを通じてのMIDIのほか、DIN端子のMIDI IN、OUT、THRUの3つがあるので、INを使うと、外部からの信号でCircuit Tracksの音源を鳴らすことができます。まさに、Circuit TracksをMIDI音源モジュールとして使うことができるわけです。
反対に、Circuit Tracksから外部MIDI音源を鳴らせるというのが、一部のユーザーから絶賛されているポイントでもあります。そう、Circuit Tracksは前述のSynth 1ー2、Drum 1-4の6トラックとは別にMIDI 1とMIDI 2という2つのMIDIトラックがあり、これで外部MIDI機器をコントロールできるのです。この際、単にノートを鳴らすだけでなく、8つのノブでMIDI CCを制御していくこともできるので、かなり強力なMIDIシーケンサとして使えるのです。この際、各ノブのMIDI CCのナンバーを自由に設定できるほか、Volca FMやMinilogue XDほか各種シンセのプリセットも用意されてるのもうれしいところです。
MIDIトラックとして使う際、各ノブにMIDI CCを自由に割り当て可能
それに加え、MIDIクロックを使って、DAWや外部のシーケンサ、リズムマシンとの同期が可能になっているほか、3.5mmのSYNC IN/OUT端子も装備しているので、ビンテージ機材を含めてシーケンサやリズムマシンとの同期も可能。もちろん、KORGのvolcaシリーズなどを接続することもでき、簡単に同期させるため、いろいろ接続することでかなり面白いシステムを組むことが可能なのです。
以上、NovationのCircuit Tracksについて、ざっと見てきましたが、いかがだったでしょうか?価格は44,000円(税込)という価格で、これだけ多くの機能を持っているので、いろいろな使い方ができそうです。Circuit Tracks単体でも強力な機材ですが、PCと接続してNovation Componentsを使うことでカスタマイズを行えますし、DAWや外部機器と連携も可能なので、ライブ用途、制作用途含め、さまざまな活用ができそうです。
【関連情報】
Circuit Tracks製品情報
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ Circuit Tracks
◎宮地楽器 ⇒ Circuit Tracks
◎OTAIRECORD ⇒ Circuit Tracks
◎Amazon ⇒ Circuit Tracks
◎サウンドハウス ⇒ Circuit Tracks