RolandがNeova MIDI Controller(ネオバ・MIDIコントローラー、以下Neova)というユニークな機器の販売を開始しました。これはフランスのEnhancia社が開発した指輪型のワイヤレス機材で、これを指にはめてジェスチャーすることで、ピッチを動かしたりMIDI CC(MIDIコントロールチェンジ)を使ってシンセのフィルターを動かしたり、音量を調整したり……といったことが行える画期的デバイスです。
ライブパフォーマンスにおいて活用することもできるし、DAWでのMIDIトラックを制御するのにNeovaを使うことで、マウス入力ではできないユニークなフレーズ作成を行うこともできそうです。そのNeovaを実際に試してみたので、どんなことができるデバイスなのか紹介してみたいと思います。
実は、国内発売の直前、DTMステーションPlus!の番組で、Neovaを特集しており、この中で初めてNeovaを試しているので、まずは、そこでのワンシーンをご覧ください。
いかがですか?その時点では、私もよくわからずに適当に動かしてみただけですが、Neovaがどんな機材であるのか、なんとなく雰囲気はお分かりいただけるのではないでしょうか?
では、もう少し詳細に見ていきましょう。まずNeovaは本体の指輪型デバイスであるNeova RingとベースステーションともいえるNeova Hubから構成され、このNeova Ringを指にはめてジェスチャーすることで、MIDI信号を発生させていく機材となっています。
ちなみに、人によって指の太さはいろいろだし、どの指にはめるかによっても違ってくるので、リングの太さは重要なポイントなのですが、8つのバリエーションが用意されており、好きな大きさを選ぶことができるようになっているのです。
そう、Neovaのパッケージ内には太さの異なる樹脂製のリングが8つあり、これに宝石ならぬセンサー&送受信機である中枢部を取り付けることで、好みの太さのコントローラーとして使うことができるわけですね。
一方、Neova Hubのリアの中央にはUSB Type-Cの端子があり、これをWindowsやMacと接続することでPC側からはUSB-MIDIデバイスとして見えるようになっています。
また、このUSB Type-Cの端子の左右には3.5mmのジャックがありますが、ここにはNeova付属のMIDI変換アダプタを取り付けるようになっており、これをシンセなどと接続することでMIDIの入出力が可能になっているのです。つまり、PCとMIDIのやりとりをするのであれば、USBを使って行い、シンセなどの楽器とMIDIのやり取りをする場合は、USB Type-CにACアダプタを接続して電源供給だけ行い、MIDIケーブルで接続する形となっているのです。
なお、RolandのJupiter-X/XmやFANTOMシリーズの場合、USBで直接接続できるようになっており、電源もJupiterやFANTOM側から直接供給して動かすことができるので、使いやすくなっています。
では、肝心の指輪型デバイス、Neova Ringはどのように繋がっているのでしょうか?それはNeova Hubとの間で独自プロトコルの通信を行っており、BluetoothやWi-Fiなどを使っているわけではないようです。そのため、レイテンシーなどもなく、スムーズなコントロールができているんですね。また、Neova RingをNeova Hubに乗せることで充電することができ、フル充電で8時間の連続使用が可能になっています。
先ほどのビデオでも、いろいろなジェスチャーを行い、それに伴って音が変化していたわけですが、これについては番組内でRolandのマーケティング担当者である高橋功さんが解説してくれているので、こちらのビデオをご覧ください。
改めて紹介すると、ここには4つのジェスチャーがあります。まずはビブラートで、鍵盤を押しながら、指を左右に素早く揺らすことで、ビブラート効果を得られるというものです。鍵盤のアフタータッチ機能を使うような感覚ではありますが、手の動かし方によって効果の速度と強さを調整できるようになっています。
2つ目はピッチベンドです。手を左右に横に傾けることでピッチを変化させていくことができます。左側に傾けるとピッチが下がっていき、右側に傾けるとピッチが上がっていきます。これもキーボードのピッチベンド機能でも同様なことができるけれど、やはりそれとはだいぶ違った感覚で面白いプレイができるんですよね。
3つ目は手を上下に傾けるティルトです。最初のビデオでは、このティルトのジェスチャーでフィルターの開け閉めをしていましたが、このようなシンセの音色コントロールに便利に使えそうです。
そして4つ目がロールです。これは腕を軸として手を回転させるというジェスチャーであり、先ほどのピッチベンドとも近いジェスチャーですが、こちらはMIDI CCでコントロールしていくことを想定したジェスチャーとなっています。
Neova Ringに搭載されている加速度センサーなどによって、ジェスチャーを検出してMIDIに変換しているわけですが、これら4つを同時にコントロールすることもできるし、ピッチベンドだけをコントロールするとか、ティルトだけをコントロールする……といった設定も自由自在。これについては、Neova Hubにある4つのボタンをオン/オフすることで、必要なものだけを動かすことが可能なのです。
ここで気になるのは、これをどうやって自分の環境に合わせるのか、という点でしょう。ジェスチャーの方法が分かっても、自分のシンセにマッチできなければうまく使うことができませんから……。そこはWindowsおよびMac用としてダウンロード可能になっているNeova DASHBOARDというソフトを使ってカスタマイズしていく形で実現可能です。
ビブラートとピッチベンドはMIDIのPitchを動かすわけですが、ティルトとロールに関してはPitchもしくはCCを選択可能になっています。デフォルトではティルトがMIDI CC 104、ロールがMIDI CC 105に設定されていますが、CCの番号は任意で設定できるようになっているので、どのパラメーターをコントロールするかに応じてMIDI CCのナンバーを設定すればいいわけです。
さらに、ジェスチャーによって変化する値の範囲を設定できるほか、ティルトの傾きの範囲、ロールの回し方の範囲を指定することなども可能になっているので、使いながら自分の操作がしやすいように調整できるのも面白いところです。
ここまで見てきた通り、このNeovaを使うことで、シンセサイザなどのプレイをより、機動的に行うことが可能となり、ライブパフォーマンスの幅を大きく広げることができる一方、前述の通りDAWとの組み合わせで、音楽制作の幅を広げることも可能です。
実際、DAWから見るとNeovaというMIDIデバイスが見え、そこからMIDIのピッチチェンジの情報やCCの情報が入ってくるシンプルな構造なので、使い方はいたって簡単。ベタ打ちのMIDIデータだとどうしても味気ない……といったときに、このNeovaを使うことで表現力も大きくひろがってきそうです。
ところでジェスチャーによる演奏の変化ということであれば、Rolnadは以前からD-Beamを持ているではないか……と指摘される方も少なくないと思います。実際これを使って音量を変化させたり、フィルターを変化させることが可能なわけですが、この点について、番組に出演してくれた高橋さんは
「そこが、まさにRolandがNeovaを扱うようになった理由でもあります。D-Beamは1つのパラメータしか扱えないため、もっと表現に幅を持たせたいという方に、Neovaを使っていただきたいのです。こちらは4つのパラメータがあり、かつそれぞれを自由にカスタマイズ可能なので、より機動性の高い演奏や音楽制作が可能になるのです」と説明してくれました。
実は、これを開発したフランスのEnhanciaは、障害を持つ子供たちが空中で手を動かすだけで、ドラム演奏を楽しめる新しいモーションセンシング技術を開発したところからスタートしており、その技術を発展させて、すべてのミュージシャンのために開発したのが、このNeovaだったのだとか……。
市場想定価格が54,000円(税別)と、安い機材ではありませんが、まさに唯一無二のユニークなMIDIコントローラー。ライブパフォーマンスでの演奏の幅を広げたい人、より自由度の高いMIDI入力を実現したい人にとって、新しい選択肢が登場した、といえるのではないでしょうか?
【関連情報】
Neova製品情報
【DTMステーションPlus!】
第167回 「NEOVAでシンセサイザーをカッコよくコントロール♪」
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