英audientからプロクオリティーの10in/6outオーディオインターフェイス、iD14 mkIIが誕生。実際どんな機材なのか試してみた

すでにニュース記事などではアナウンスされているので、気になっていた方もいらっしゃると思いますが、先日イギリスのプロオーディオ機器メーカー、audientから手頃な価格のオーディオインターフェイス、iD14 mkII(国内税抜実売価格:35,800円)が発売になりました。名前からも分かる通り、従来からあったiD14をリニューアルした新機材で、デザインや大きさ的にはほぼ同じなのですが、接続がUSB 2.0からUSB 3.0になるとともに、さまざまな機能・性能向上が図られています。

具体的には入出力が従来の10in/4outから10in/6outになるとともに、入出力のダイナミックレンジが向上。また従来はACアダプタが必要だったものがUSB Type-C接続によりUSBバスパワー供給で動作するようになっています。さらにループバック機能も搭載して、内部ミキサーで自由にルーティングできるなど、かなり強力で便利な機材になっているのです。実際、旧機種と比較しながらチェックしてみたので、どんなオーディオインターフェイスなのか紹介してみたいと思います。

audientからiD14の新バージョン、iD14 mkIIが発売された

昨年、「英コンソールメーカー、audientが出した14,000円のオーディオインターフェイスEVO4と上位版のEVO8を試してみた」という記事でaudientのエントリーモデルEVO4およびEVO8について紹介したことがありましたが、今回紹介するiD14 mkIIはaudientの人気製品、iD14の新モデルです。

ロンドンのアビーロードスタジオなどに入るコンソールを作るメーカーのオーディオインターフェイスということから国内外で人気だったiD14。個人的にも興味があったものの、使ったことがなかったので、今回の新製品とセットでお借りして両方を試してみたのです。

iD14 mkII(左)と旧モデルのiD14(右)

2つを並べてみると大きさ・形はほぼ同じ。いずれも頑丈なアルミボディーですが、シルバー色の部分が若干赤身を帯びたというかダークになっています。またaudientのロゴが細ゴシックに変わっていたり、目盛りのデザインが違っていたり、マイクゲインのノブの形状が変わっているほか、レベルインジケーターがカラーLEDから白いLEDになるなど……、よく見てみると各所に違いがあるようです。

ドライバと一緒にインストールされるミキサーコントロールソフト

もちろんオーディオインターフェイスなので、WindowsやmacOSと接続して使うのが基本であり、それぞれ用のドライバおよびミキサーソフトが用意されています。このミキサーソフトを使うことで、iD14 mkIIが本領を発揮するのですが、試してみたところこのソフト自体はiD14もiD14 mkIIも同じものをそのまま使えるようです。

ここで、メーカーの資料を元に新旧機種の比較をした表がこちらです。

iD14 mkII iD14
実売価格(税別) 35800円 35000円
マイク入力 2 2
ライン入力 2 2
ADAT In In
全入力チャンネル数 10 10
ライン出力 4 2
全出力チャンネル数 6 4
MIDI × ×
接続端子 USB Type-C(USB 3.0) USB TypeB(USB 2.0)
最大サンプリングレート 24bit/96kHz 24bit/96kHz
入力ダイナミックレンジ 121dB 116dB
出力ダイナミックレンジ 126dB 117dB
スクロールコントロール
バスパワー電源 △(ファンタム電源を使う場合はACアダプタが必要)
マイクアンプゲイン 58dB (Inc Digital) 66dB (Inc Digital)
FET DI
ヘッドホン出力 2 1
ループバック ×

こう見るといろいろと違うわけですが、この表を参考にしながら、チェックしていきましょう。まず重要なポイントはPCとの接続インターフェイスが従来のUSB 2.0でUSB TypeBという端子からUSB 3.0のUSB Type-Cに変わったということです。

iD14 mkII(上)とiD14(下)のリアパネル

これは形状が変わったということだけでなく、電力供給が大きくなり、バスパワーだけですべて動かせるようになったのが大きなポイントです。旧機種もバスパワーで動作可能ではあったのですが、+48Vのファンタム電源をオンにするには付属のACアダプタを接続する必要がありました。が、mkIIはバスパワーでファンタム電源供給も可能になっています。
このACアダプタ端子が不要になったこともあって、mkIIのリアにはライン出力が4つに増えているのも重要な進化ポイントの一つとなっています。

iD14 mkII(上)とiD14(下)のフロントパネル

ここでフロントを見てみると左側にギター入力の端子がある一方、右側にはヘッドホン出力端子があるのですが、旧機種では標準ジャックのヘッドホン出力が1つだったの対し、mkIIには標準ジャックと3.5mmミニジャックの2つが装備されています。試してみたところ、2つとも同じ信号が出ているのですが、必要の応じて片方だけ刺しても、両方に刺してもOKとなっているようです。またマニュアルを見ると、600Ωのハイインピーダンス・ヘッドフォンを駆動することができるとのこと。実際に接続して音量を上げていくと、かなり爆音でヘッドホンを鳴らすことができますね。もちろん、単に大きい音が鳴らせるだけでなく、非常に解像度高くモニターできるのも重要なポイントです。

ヘッドホン端子が3.5mmと6.3mmの2つ用意されている

そして、このヘッドホン端子はリアの4つのライン出力とは別系統としても使えるようになっているのも面白いところ。実はこれについてはドライバとともにインストールされるミキサーのSYSTEM PANELのROUTINGで設定できるようになっています。使い方によっては、すべて同じ信号を出すこともできるし、別々に出すことも可能で、結果として6系統の出力が可能になっているわけなのです。

どの出力にどの信号を送るかROUTINGで設定可能

続いて入力のほうも見ていきましょう。入力数としては新旧機種ともに10inとなっているわけですが「なんでこんな小さいボディーなのに10inもあるの?」と不思議に感じる人もいると思います。この点について簡単に解説してみましょう。

まずアナログ入力はリアにあるコンボジャック(マイクとラインが兼用)が2つある形で、一般的な使用においては2inと考えてもいいかもしれません。前述の通りフロントにギター入力があるわけですが、このギター入力とコンボジャック1は排他関係になっているので、いずれにせよアナログ入力は2chのみです。

S/PDIFもしくはadatの信号を送るオプティカルケーブル

では残りの8chは?というと、これが左側にあるOPTICAL INというものになっているのです。これは光ケーブルを使って入力するもので、S/PDIFという一般的な規格の信号を使うと2ch、adatという規格を使うと8chまで同時に入力できるので、トータル10chというスペックになっているのです。

このS/PDIFとadatの切り替えも前述のROUTINGの画面の左上で行うようになっており、どちらを選ぶかによって、ミキサー画面のチャンネル数が大きく変わるようになっています。

オプティカル入力をS/PDIFに設定している場合(上)とadatに設定している場合(下)

このように10in/6outのオーディオインターフェイスとなっているaudientのiD14 mkIIですが、たとえばCubaseから見てみると、実は12in/6outになっているのも面白いところです。これを見てみるとわかる通り、入力には物理的に用意されているもののほかにループバックチャンネルが用意されているのです。このループバックがあるのも旧機種にはなかった新しい点です。

iD14 mkIIをCubaseから見ると12in/6outとなっている

先ほどのミキサー画面で、どのポートからどの信号を出すのか自由に調整することができ、メイン出力用のMAIN MIXのほかに、CUE A、CUE Bという別のミックスを作った上で、前述のROUTINGで3/4chに出力したり、ヘッドホン用に出力することが可能になっているのです。

旧モデルのiD14の場合は10in/4outとして見える

もちろん、こうした音量調整はミキサー画面だけでなく本体でもある程度操作可能です。大きいボリュームノブの下に3つのボタンがありますが左側のスピーカーボタンを押してからノブを回すと、メインボリュームが、右側のヘッドホンボタンを押してノブを回せば、ヘッドホンボリュームが調整できます。

ミキサー画面と連動する形で、本体のノブやボタンで操作ができる

またこのノブはプッシュ式になっており、これを押すことで、メイン出力やヘッドホンをミュートすることも可能です。

また、ちょっとユニークなのがiDボタン。これを押した場合、この大きいノブはスクロールノブとなり、マウスホイールと同じ動きをします。したがってDAWのトランスポートなどに割り当てておくことでリモート操作が可能になるわけです。一方、設定でiDボタンの役割をトークバックやDIMなどに割り当てることも可能になっているので、要望に応じて違った使い方もできるようになっています。

iDボタンを各種機能に変更可能

さて、ここで実際にモニタースピーカーを使って音を出して比較してみると、旧機種のiD14で十分過ぎる高音質であり、4万円弱でこれだけの音が出るのなら人気があるわけだ……と納得するサウンド。ここで新機種であるiD14 mkIIに切り替えてみると、なるほど、さらに解像度が上がった感じで高音質になっていることが感じられます。スペック上、ダイナミックレンジが117dBから126dBと9dBほど上がっていますが、ここが大きく効いてきているものと思われます。同じ音量で比較すれば、より細かな音まで違いを表現できるため解像度がグンと上がるからです。それに合わせてディスクリート回路のほうも改善させていることが音に影響を与えているということのようです。

でも、ちょっと引っかかるのは、最大サンプリングレートが96kHzであるということ。最近の安いオーディオインターフェイスでも192kHzに対応しているのに、どうしてiD14も新機種のiD14 mkIIも96kHzなんだろう……、と。この点について、国内代理店を通じて、イギリス本社にあるaudientに問い合わせてみたところ、以下のような返事がありました。

iD14mkIIに採用されているADAコンバーターは、384kHzのサンプリングまで対応していますので、192kHzに対応させることは可能です。しかし、我々が可聴範囲のオーディオ用にデザインすると、実際に最適なサンプリングレートは60kHz辺りになり、もう少し広い周波数帯域に対応するためには、88.2/96kHzが最も最適なサンプリング周波数になります。

とのこと。こうした回答とともに、192kHzなどサンプリングレートを高くすることに功罪に関して、2012年に書かれたという英語の長い論文も送られてきており、実際にUSBオーディオインターフェイスとして設計する上では、96kHzが最適であり、192kHzにこだわる必要はないということのようでした。

これをどう捉えるかはユーザー次第ですし、スペック的な数字を重視するユーザーには敬遠される面はあるかもしれません。ただ、音を聴く限り10万円のオーディオインターフェイスだ、と言われても納得するレベルのサウンドなので、試してみる価値は十分にあると思います。

walodorfのPPGwave 2.2など数多くのソフトが付属している

またiD14 mkIIにはCubase LEをはじめ、Waldorfのソフトウェア音源であるPPG 2.2v、Atack、エフェクトとしてD-Poleが用意されているほか、Two notesのスピーカーキャビネットシミュレーターのWall of Sound、GForce Softwareのメロトロン再現音源のM-Tron Pro LE、ピアノサウンド変換ソフトのSubito Piano……などさまざまなソフトがバンドルされるのは、EVO4やEVO8と同様です。

iD14 mkIIの弟モデルであるiD4 mkII

なお、先日、iD4 mkIIというものも発売されています。私も実物を触っていないので、分からない点もありますが、こちらはiD14 mkIIの基本性能はそのままに入出力をアナログ2in/2outに絞って実売価格が24,500円を実現した低価格版ということのようです。ADATは不要、出力もアナログ2chだけでOKというのであれば、選択肢として見てもよさそうですね。また機会があれば、紹介してみたいと思ってます。

※2021.2.3追記
「iD14 mkIIはM1 Macで使えるのか?」という質問をSNSを通じて受けていたので、試してみました。結論から言うと、まったく問題なく使うことができました。また試した後に、AudientのサイトでもBig Sur and M1 Compatibilityというページでサポートしている旨が記載されているのに気づきました。
M1 MacでもiD14 mkIIを問題なく使うことができた

【関連情報】
iD14 mkII製品情報
iD4 mkII製品情報

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