M-Audioの激安オーディオインターフェイス、5,000円のM-Track Solo、6,000円のM-Track Duoは使えるのか、試してみた!

M-Audio(エムオーディオ)からエントリー向けのオーディオインターフェイス、M-Track SoloおよびM-Track Duoが2月から発売されます。実売価格はM-Track Soloが5,000円前後(税抜)、M-Track Duoが6,000円前後(税抜)とちょっと驚くほどの激安設定。見た目上、ごく普通のUSB接続のオーディオインターフェイスのようですし、ファンタム電源にも対応しているようです。

発売に先駆けて、この2製品をお借りして試すことができました。それぞれどんなオーディオインターフェイスなのか、実際にDTMに使える機材なのか、こんなに安くて何か落とし穴はないのか……などなど、気になる点をチェックしてみたので、紹介していきましょう。

M-AudioのM-Track Duo(左)とM-Track Solo(右)

米M-AudioはDTMの世界においては老舗のメーカー。その昔は独立系のメーカーでしたが、Avid Technology傘下を経由して、現在はinMusicの中のブランドとして存在しています。そのM-Audioが以前からオーディオインターフェイスの名称として使ってきたのがM-Trackであり、これまでもいろいろな製品が発売されてきましたが、2021年2月に新たに発売されるのが、

M-Track Solo
M-Track Duo

という2製品です。

コンパクトで軽量なM-Track Solo

前述の通り、Soloが5,000円で、Duoが6,000円という、数あるオーディオインターフェイスの中でも破格値といえる価格設定になっています。

M-Track Duoのトップパネルには4つのノブがある

写真を見ても分かる通り、Soloのほうが少し小さく、Duoのほうがちょっと大きめ。トップパネルのノブの数を見てもSoloが3つで、Duoが4つなので、横幅がDuoのほうがちょっと長い形です。

メーカーページではM-Track Duoの重量は0.4kgとなっていたが測ってみると369.2gだった

正確なサイズでいうとSoloが164×114×55mmで308g(実測値です)、Duoが191×111×55mmで369g。樹脂製のボディーなのですごく軽いですね。

接続は付属する普通のUSB 2.0のケーブルを利用する

PCとの接続は付属のUSBケーブルを使いますが、M-Audioの上位機種であるAIR 192シリーズがUSB Type-Cケーブルを使っているのに対し、こちらはより一般的なUSB Type BーUSB Type Aのケーブルとなっており、USBバスパワーで動作する形。つまりACアダプタなどは不要なので、軽いし、どこへでも手軽に持ち運べるアイテムです。

M-Track Soloのフロントパネル。左側にライン/マイク切り替えのコンボジャック、その隣にライン/ギター切り替えのTSジャックがある

M-Track SoloとDuoの最大に違いは入力部です。Soloのほうはライン/マイク端子が1つとライン/ギター端子が1つという構成であるのに対し、Duoのほうはライン/マイク/ギターのそれぞれを接続できるオールマイティーなコンボジャック端子が2つとなっているのです。

M-Track Duoのフロントパネル。INPUT①、②ともにライン/マイク/ギターの切り替えとなっている

ただ、よくチェックしてみるとほかにもいくつかの違いがあります。まずはヘッドホン端子の違い。フロントパネルを見比べてみるとわかる通り、Soloのほうは3.5mmのステレオミニジャックなのに対し、Duoは6.3mmのステレオ標準ジャックとなっています。どちらがいいかは好みの問題だとは思いますが、オーディオインターフェイスのヘッドホン端子といえば6.3mmが一般的ではあります。

M-Track Soloのリアパネル。出力がRCAとなっている

一方、リアを見てみるとSoloのほうはRCAピンジャックを金メッキした端子であるのに対し、Duoのほうは6.3mmの標準ジャックとなっています。スペックを見てみると、このDuoの標準ジャックは3端子のTRSフォンとなっているので、プロ仕様のモニタースピーカーにも接続可能な仕様になっています。

M-Track Duoのリアパネル。出力はバランス型のTRSフォン

もう一つの違いは、先ほども見た通り、トップパネルのノブの数。INPUT①、INPUT②は共通なのに対し、出力がSoloの場合、OUTPUTの1つ、DUOはヘッドホンとMONITORの2つに分かれています。これはどういうことなのか?試してみたらすぐに違いがわかりました。

M-Track SoloのOUTPUTはヘッドホン、メイン出力兼用

Soloのほうはヘッドホン出力とリアからのメイン出力のボリューム調整がOUTPUTノブ1つで兼用になっているのに対し、Duoのほうは別々に調整できるようになっているのです。もっともSoloもDuoも2in/2outのオーディオインターフェイスなので、ヘッドホンから出る音も、メイン出力からの音も同じものではあります。

M-Track Duoはヘッドホン用とメイン出力用で調整ノブが分かれている

このノブのチェックのために、初めてスピーカー、ヘッドホンから音を出して確認してみたのですが、5,000円とか6,000円という値段からは信じられない高音質なサウンドが出てきてちょっと驚きました。まったく品質的には問題ないというか、これだけの音質が出せればエントリー機種としては十分過ぎるのではないでしょうか?

ただし上位機種であるAIR 192シリーズや他社の1~2万円程度のエントリー機種と比較して、スペック面で見劣りする面があるのも事実です。そう、いま各社のエントリー機も含め、主流はサンプリングレート192kHzにまで対応しており、44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれのモードが使えます。それに対し、このM-Audio SoloおよびDuoの場合は44.1kHzと48kHzの2つであり、96kHzや192kHzのいわゆるハイレゾには非対応なのです。

とはいえ、プロのレコーディング現場でも、現状48kHzで行っているところが多いことを考えたとき、本当に96kHzや192kHzが必要あるのか、それにどこまでの意味を見出すのかはユーザーの考え方次第。個人的には48KHzでまったく問題ないと思います。

M-Track Soloでもステレオライン入力に対応している

続いて入力のほうをチェックしてみましょう。前述の通り、SoloとDuoでは入力の仕様が少し異なるわけですが、一つ大きく違うのはマイク入力が1つなのか、2つなのかという点です。このマイク端子、PHANTOM POWERというスイッチをオンにすることで、+48Vのファンタム電源を供給可能となっており、これによってコンデンサマイクを利用することが可能になっています。コンデンサマイクがどんなものなのかはここでは省きますが、非常に精細な音を録音可能となり、ボーカルやアコースティック楽器などを高品位にレコーディングできるようになります。

M-Track Duoはまさにオールマイティーな入力となっている

実際に試してみたところ、普通にレコーディングに使う上でまったく問題なく利用することができました。もちろん、マイク入力のゲインを持ち上げるためのマイクプリアンプも内蔵されており、しっかり録ることができます。マイクを同時に2つ使うならDuoが必須ですが、1つでいいならSoloで十分かもしれませんね。

ファンタム電源を送ることができるのでコンデンサマイクの使用も可能

ではライン入力については、どうか?Duoの場合はINPUT①もINPUT②も同じ仕様なので、①にLチャンネルを②にRチャンネルを接続すればステレオで録音することも可能となっています。

一方、Soloのほうは①と②では仕様が異なるのですが、②はLINEモードにし、①は標準ジャックで突っ込むことで、ステレオでのライン入力が可能となっています。他社製品でもSoloに相当するマイクプリアンプ1つの製品は多くありますが、ステレオのライン入力が可能なものはあまりないので、すごく柔軟性のある製品だと感じました。

もう一つギター入力も見てみましょう。Soloの場合はINPUT②のみがギター入力に対応しており、スイッチをギターのアイコンのほうに切り替えればOKです。それに対しDuoのほうは①も②もギター入力にすることが可能なので、ツインギターや、ベースとギターを接続するといった使い方もできるわけです。この柔軟性もなかなかなものだと思います。

M-Track SoloはOUTPUTをDIRECTにすることでダイレクトモニタリングができるがモノラルとなる

もう一つ触れておきたいのがモニタリングについてです。Soloのフロントの一番右側にOUTPUTというスイッチがあり左がDIRECT、右がUSBとなっています。これはダイレクトモニタリングを行うかどうかのスイッチとなっており、右のUSBにしておくとDAWを介したモニタリングが行え、左のDIRECTにするとDAWを介さず入力された音がそのままレイテンシーなしにモニターできるというものです。このDIRECTモニタリングした場合はINPUT①に入った音もINPUT②に入った音もモノラルでのモニタリングになります。

M-Track Duoのダイレクトモニタリングはステレオモードとモノラルモードがある

一方、DuoのほうはDIRECT MONOとDIRECT STEREO、USBの3段階の切り替えになっています。つまりDIRECT STEREOであればINPUT①の音が左に、INPUT②の音が右に出せるモードも備えているというわけで、この辺もしっかり設計されているな、という印象です。

Macの場合、ドライバ不要ですぐに使える。もちろんM1 Macでも問題なく使えた

さて、そんなハードウェアのM-Track SoloとM-Track Duoですが、これらはともにUSBクラスコンプライアントという仕様になっているので、Macであれば、M1 Macを含め、すべてドライバ不要で使うことが可能です。Windowsにおいても、ドライバなしでとりあえず使うことは可能ではあるのですが、DTMで利用する場合はASIOドライバが必要となります。そのためにM-Track Solo/Duo用のドライバがしっかり用意されており、M-Audioサイトでユーザー登録すれば、ダウンロードすることが可能です。

Windowsの場合、DTMで使用するにはASIOを使うためにドライバインストールが必須

試してみたところ、最小で16Sampleまで縮めることができ、レイテンシーも非常に小さくできることが確認できました。その16Sampleの設定でDAWを動かしてみましたが、手元の8Gen Core i7のマシンで使ったところ、音が途切れることもなく、まったく問題なく使うことができました。

バッファサイズを16Samplesまで詰めることができる

なお、オーディオインターフェイスを選ぶ場合、付属ソフトに何がついてくるかも一つのチェックポイントです。M-Track SoloおよびDuoの場合、以下のソフトがバンドルされています。

MPC Beats
Pro Tools |First M-Audio Edition
Eleven Lite
Avid Effect Plugins
Xpand!2

これについては、先日「15,000円で買えるコンパクトなモニタスピーカー、M-AudioのBX3、BX4が高音質・高性能!」という記事で紹介したBX3、BX4に付属するものとも同様ですね。MPC Beatsに関しては「AKAIの無料DAW、MPC beatsで誰でもビートメイキング。多機能ミニ鍵盤MPK mini MK3との連携で威力は最大化する」という記事でも紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。

AKAIのDAW、MPC BeatsおよびPro Tools | Firest M-Audio Editionが付属する

このMPC BeatsやPro Tools |First M-Audio Editionも、十分な機能を持っているので、これらを使うのもいいのですが、「より多くの人が使っているDAWを試してみたい」というのであれば、誰でも無料で入手できるStudio One 5 Primeを入手するというのも手です。入手方法については「無料の高機能DAW、Studio One 5 Primeがリリース。誰でも確実に入手するための完全操作ガイド」で細かく手順を紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。

Studio One 5 Primeなら誰でも無料で入手できるので、これを使うのもあり。もちろんM-Trackとの相性もバッチリ

もちろん、CubaseやFL Studio、Ability、Digital Performer、Ableton Live……といったDAWで使うことができますから、自由に選んでいただいてOKです。

ちなみにM-Audioの製品情報においてはWindowsおよびMacでの動作しか言及されていませんでしたが、USBクラスコンプライアントなので、iPhoneやiPadでも動くのでは…と試してみました。結論から言ってしまうと、ちゃんと動きますね!ただし、接続するためには外部からの電源供給を可能にするLightning-USB3カメラアダプタが必要となります。これさえあれば、M-Track SoloおよびDuoのフル機能を発揮できるというのも素晴らしい点だと感じました。

Lightning-USB3カメラアダプタを使うことで、iPhoneでも利用することができた

以上、M-Audioのエントリー機種であるM-Track Solo、M-Track Duoについて紹介してみました。5,000円、6,000円という値段でここまでのことができるのは正直いって驚きです。44.1kHz/48kHzでは困るという人は、AIR 192シリーズなど他の製品を探す必要がありますが、とりあえずこのサンプリングレートでOKという人なら、買って損のない機材だと思います。

個人的には差額が1,000円ならより柔軟性の高いDuoをお勧めしますが、その辺は個人の判断ですね。今回は、あえて初心者向けに書きましたが、バリバリにDAWで音楽制作をしている人であってもサブ機として、持ち歩き用機材として持っておいても悪くない選択だと思いました。

※2021.01.28追記
2021.01.12に放送した「DTMステーションPlus!」から、第166回「ZOOM V3でDTMに新次元のVocalを!」のプレトーク部分です。「M-Audioの激安オーディオインターフェイス、5,000円のM-Track Solo、6,000円のM-Track Duoは使えるのか、試してみた!」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
M-Track Solo製品情報
M-Track Duo製品情報

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