今年、Native InstrumentsのKOMPLETEがバージョンアップを果たし、KOMPLETE 13が誕生しました。そのタイミングで、同日新バージョンが発表されたGuitar Rig 6 Pro。16年もの歴史がある老舗のアンプシュミレーターGuitar Rigは、Guitar Rig 6 Proになり、ユーザーインターフェイスが刷新されたり、最新の機械学習モデリング技術を追加搭載したり、新たに14のエフェクトを追加したりと、大型アップデートを行い、大きく強化されたことは、先日「Native Instrumentsから待望の新バージョンKOMPLETE 13が誕生!同日発表されたGUITAR RIG 6 PROも加わり、より強力に」の記事でお紹介しました。
そのGuitar Rig 6 Proが6.1にアップデートするとともに、Kerry(Deafheaven)、Dana Ruh、DannyBoyStyles、Tim Lefebvre、Brent Paschke(N.E.R.D/Jerry Stringer)といったアーティストのプリセットが追加されました。が、その中に一人日本人アーティストとして、BABYMETALへの楽曲提供などでも知られる、ゆよゆっぺ(@yupeyupe)さんも参加し、ご自身が作成したプリセットも追加されています。DTMユーザーにとってはボカロPとしても知名度のあるゆよゆっぺさんは、BABYMETALのほか、ももいろクローバーZ、藍井エイル……ほか、数多くのアーティストの作曲や編曲、作詞を担当する日本を代表するミュージシャンの一人。先日オンラインミーティングの形で、ゆよゆっぺさんとお話し、どんな狙いでGuitar Rigのプリセットを作ったのか、活用術などを伺ったので、Guitar Rig 6.1 Proの概要とともに紹介してみましょう。
Guitar Rigは、ギターアンプをソフトウェア的にシミュレーションするソフトで、IK MultimediaのAmpliTubeなどと並ぶ、老舗ソフト。初代Guitar Rigは2004年にリリースされているので、16年もの実績のあるソフトです。オーディオインターフェイスの入力にギターを接続して、Guitar Rigを通すことで、リアルタイムにホンモノのギターアンプを通した音に変化させることができると同時に、数々のエフェクトも使うことが可能です。
snap1 たくさんのギターアンプモデリングから、好きなサウンドを鳴らすことができる
そのGuitar Rigが、KOMPLETE 13がリリースされたタイミングで、Guitar Rig 6へとバージョンアップしているので、まずは以下の動画で、Guitar Rig 6 Proがどんなサウンドなのか、確認してみると概要はつかめると思います。
クリーンなサウンド、空間系のサウンド、歪み系、ユニークなサウンド……など、幅広いサウンドで演奏されているのが、確認できると思います。改めてGuitar Rig 6 Proでの進化点について、簡単に見ていきましょう。
これまでバージョンでGuitar Rigを使っていた方なら、画面を見れば分かる通り、今回のバージョンでユーザーインターフェイスが刷新されています。画面表示の大きさを調整できるようになり、見やすく操作しやすいインターフェースになっています。
また、内部的に大きな進化としては、Guitar Rig 6 Proに搭載された新しいモデリング回路「INTELLIGENT CIRCUIT MODELING」が開発されたことでしょうか。これにより、最先端の機械学習技術が行えるようになり、ハードウェアを徹底的に再現することが可能になったので、これまでよりもリアルなサウンドになっています。この技術は新シリーズの象徴的なブティックアンプとビンテージアンプの製作にも利用されており、どのエミュレーションも個性的なキャラクターとトーンを兼ね備えています。
その新しいモデリング技術を用いて制作されたのが、CHICAGO、BASS INVADER、FIRE BREATHERの3種。CHICAGOは、ゲインとトーンコントロールのみ搭載の50年代中期のコンボアンプ。個性的なサウンドで、トーンコントロールが1つではありますが、しっかりと音作りを行うことができます。また、ツマミを回しきると真空管のナチュラルなサチュレーション感を得ることが可能。BASS INVADERは、ロック系のベースアンプで、4バンドのEQ、ボイシングフィルター、ディストーションを搭載しています。現代のロックサウンドにもハマるベースアンプです。FIRE BREATHERは、もともとイギリス製のクラシックアンプを改造した、アメリカ製ハンドワイヤードアンプをモデリングしている、ハイゲインアンプ。クリーンサウンドから、メタルサウンドまでカバーしている、汎用性の高いアンプです。
また、Native Instrumentsの多彩なエコシステムから新たに14のエフェクトが追加されました。具体的には、REVERB CLASSICS、VINTAGE COMPRESSORS、CRUSH PACK、MOD PACK、SOLID MIX SERIES、TRANSIENT MASTER、RAUM、RAMMFIRE、TRAKTOR’S 12。RAUMなんかは、使いやすいリバーブで、自然でクオリティの高い残響音から、アグレッシブなリバーブまで演出できる、万能なリバーブ。これまでは、Guitar Rigの後に、RAUMなどのエフェクトをインサートする必要がありましたが、Guitar Rigの中に内包されるようになりました。基本的には、移植という形なので、品質の高いNative Instrumentsのエフェクトを使って、ギターの音色作りが可能となっています。
さて、そのGuitar Rig 6 Proが、今回Guitar Rig 6.1 Proにバージョンアップしたことで、まずはエフェクトが新たに追加されています。具体的には
汎用ディレイのREPLIKA GR
歪系エフェクトDRIVER
のそれぞれ。
さらに、アーティストのプリセットが追加されたのが最大の目玉ともいえます。もともとGuitar Rig 6 Proがリリースされた段階で、Yvette Young、Tim Lefebvre、Pete Thorn、Zola Jesus、Butch Vigなどのギタリスト、ベーシスト、プロデューサー、ソングライターによるプリセット集が搭載されたわけですが、今回Guitar Rig 6.1 Proになって以下のアーティストのプリセットが追加されているのです。
Dana Ruh
DannyBoyStyles
Tim Lefebvre
Brent Paschke (N.E.R.D/Jerry Stringer)
Yuyoyuppe
そう、数多くの外国人の著名アーティストの名前が並ぶ中に、日本のアーティストが名前を連ねている、しかも知っている人がいるって、ちょっと感激じゃないですか?
確かにソフトシンセの音色プリセットとして、氏家克典さんや生方ノリタカさんの名前を見かけることはありますが、それらとはちょっと違うな、と。世界で人気のあるBABYMETALのサウンドを作り出すアーティストとして、ゆよっぺさんが抜擢されたというのは、快挙というか、大きな出来事といっていいのではないでしょうか?
そのゆよゆっぺさんに、先日Zoomを使ってインタビューをしてみたので、紹介してみましょう。
ゆよゆっぺさんインタビュー(@yupeyupe)
ーー今回、Guitar Rig 6.1 Proのプリセットにゆよゆっぺさんのプリセットが入ったという話を聞いて、ちょっと感激しました。改めて、ゆよゆっぺさんのこれまでの経緯なども含めてお伺いできればと思うのですが、もともとDAWを使うようになったのはいつごろからだったのですか?
ゆよゆっぺ:ご無沙汰しています。最初に使ったのはもう11、12年前だと思います。当時、ニコニコを通じてボカロ文化が広まり始めた時期だったんですが、バンドの楽曲を作りたくて、ZOOMのハードウェアのMTRを買ったんです。そうしたら、これにCubase LEが付属していて、よく分からないながらもこれを使ってみたのが最初です。父のお下がりのパソコンにインストールしたので、まともに使えず、MTRで録ったWAVをCubase上に並べる…といったことしかできませんでしたが、そこがスタートです。その後、SONARとかAbleton LiveとかReaperとか、いろいろ試してみたけど、結局最初に使ったCubaseしか馴染むことができず、それ以来ずっとCubaseを使ってます。もっとも自分のライブのマニピュレーション用にAbleton Liveを使ったりはするけど、制作用としてはCubaseなんです。
ーー一方で、Native Instrument製品は結構長く使っているのですか?
ゆよゆっぺ:確か、KOPMETE 7のときからだったと思います。僕の母の「買うときは、いいモノを買え。一番いいモノを買って、長く使え」という教えにしたがって、一番高いUltimateを買ったんですよ。何が入っているのか、どんなものなのかも全然分からずに…(苦笑)。実際、いっぱいありすぎて、最初はよく分かりませんでしたね(笑)。購入したのはキッカケはMASSIVEを使ってみたいということでしたが、それ以来、KOMPLETEは必須のツールとなっています。
ーーKOMPLETEのアイテムの一つであるGuitar Rigについては、どうですか?
ゆよゆっぺ:僕の場合、ギターサウンド自体はハードウェアを使うケースが多く、Guitar Rigですべてのサウンドを作るというわけではないのですが、エフェクトとしていろいろな場面で使っています。そうした中、今回Native Instrumentsさんからお声がけいただいたのは、嬉しい限りです。僕なりのGuiter Rigの使い方ということでプリセットに取り組んでみました。
ーーこのプリセットで、BABYMETALのあの曲のサウンドができちゃう、というわけではないということですね。
ゆよゆっぺ:そうですね(笑)。今回、5音色のプリセットを作ってみましたが、ちょっと飛び道具的に使えるユニークな音色が中心です。僕のGuitar Rigの印象としてはクランチやクリーンといった細かいニュアンスを出すのが得意なソフトという感じなので、すごく伸びやかなクリーンサウンドなどを作っています。またGuitar Rig 6 ProになってNative Instrumentsのエフェクトをインサートできるようになったので、そこを上手く駆使して、とんでもないファズトーンも作ってみました。「こんなサウンドがあったらいいな」を形にしてみました。でも、この音色を発展させる形で、ぜひ、みんなでいじって改良してもらえると嬉しいですね。
ーーお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。
Guitar Rig 6 Proは、デモ版も存在しますし、エントリーバージョンとしてGUITAR RIG 6 PLAYERという無料版もあるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?またGUITAR RIG 6 PLAYERは、無料でゲットできるKOMPLETE STARTに含まれているので、Native Instrumentsのシンセなども含め入手することが可能ですよ。またGuitar Rig 6 Proは、将来的なアップデートで、どんなハードウェアをモデリングしてほしいか、ユーザーからのアンケートにより、決定していくそうなので、楽しみですね。
※2021.01.28追記
2021.01.12に放送した「DTMステーションPlus!」から、第166回「ZOOM V3でDTMに新次元のVocalを!」のプレトーク部分です。「最強のアーティストプリセットが多数追加されたGuitar Rig 6.1 Proがリリース。BABYMETALへ楽曲提供する、ゆよゆっぺさんも参加!」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
Guitar Rig 6.1 Pro製品情報
KOMPLETE 13製品情報
ゆよゆっぺオフィシャルサイト