すでに8月に製品登場のアナウンスがされていたTR-606クローンのドラムマシン、behringerのRD-6がついに12月24日から発売されることが決まりました。キック、スネア、ハイハット……など8つのドラムサウンドと16ステップのシーケンサ、ディストーションエフェクトを搭載したアナログのドラムマシンで、オープンプライスながら実売価格は20,680円(税込)程度と、非常に手ごろな価格で入手可能な機材です。
TR-606を彷彿させるシルバーのモデルのほか黒、赤、黄、青のほか、スケルトンカラーも5色と計10種類のカラーバリエーションが同時発売となります。そんなにニーズがあるのだろうか?とかなり不思議には思うものの、手軽に楽しめる音モノのガジェットとしても楽しい機材です。発売より一足早く、実物を入手し、DAWと連携させながら使うことができたので、RD-6とはどんな機材なのか紹介してみたいと思います。
つい先日、「1万円台で入手可能なアナログシンセ、TB-303クローンのbehringer TD-3をDAW環境に取りいれる」という記事で、ベースシンセのTD-3について紹介したばかりですが、このRD-6はTD-3の兄弟ともいえるマシン。
そもそもTD-3、RD-6のネタ元であるTB-303とTR-606は、38年前の1982年に兄弟機としてRolandから発売されたもので、DTMステーションにも何度も登場いただいた菊本忠男さんが中心になって開発した機材。そのクローンの登場をRolandや菊本さんたちが快く思っているかどうかはともかくとして、今やプレミアムがついて、超高値で中古機材がやり取りされている中、それぞれ1、2万円で手に入れられるというのは嬉しいところです。
もちろん、TD-3とRD-6を同期させて演奏させることも可能なのですが、とりあえず、RD-6とはどんな音がする機材なのか、ちょっとだけ鳴らしてみたので、以下のビデオをご覧ください。
まあ、ハッキリ言って、チープな音のドラムマシンではありますよね。事実、オリジナルのTR-606が発売された当初は、オモチャのような音の機材として、あまり評価されなかったのも事実。でもサンプリングではなく、アナログで作られたこのキックやスネアを大音量の出るラージスピーカーで鳴らすと、サンプリング音源では不可能な破壊力のあるサウンドが出せることから再評価されるようになっていったのです。
TR-606はTR-808の下位モデルとしてリリースされたものでしたが、behringerはすでにTR-808クローンのRD-8を出しているので、まさにその弟分という扱い。RD-8の半額程度で入手できるというところも嬉しいところです。
先ほどのビデオからも、だいたい雰囲気がつかめたのではないかと思いますが、簡単に紹介すると、16ステップのシーケンサで、リズム演奏ができるようになっており、音色としてはキック、スネア、ロータム、ハイタム、シンバル、クラップ、オープンハイハット、クローズハイハットの8つが備わっています。オリジナルのTR-606をご存知の方なら、「おや?」と思うかもしれませんが、TR-606にはなかったハンドクラップが搭載されているのはTR-808風で面白いところです。
そしてそれぞれの(タム、シンバル/クラップ、ハイハットはセット)音量をノブで調整できるようになっているので、好きなバランスにすることが可能で、音量を強調するためのアクセントも用意されています。
一方、右上にはオリジナルのTR-606にはないディストーションが搭載されており、ドラムサウンドを歪ませることができるのはTD-3とまったく同じ。さらにユニークなのは、リアにBD、SD、LT/HT、CY、CP、OH/CHと6系統のパラ出力が用意されている点。ミックスされた音はモノラルでの出力ですが、このパラアウトを個別にオーディオインターフェイス経由でDAWに取り込むことで、それぞれ別々のエフェクトをかけるなど、自由な音作りができそうです。
ビデオにおいては途中から、ベースフレーズが同期する形で流れていましたが、あれはTD-3とSYNC信号を使って、同期させたもの。ケーブル1本で完全に同期して動かすことができるのは楽しいところです。
TD-3はSYNC INだけを装備していましたが、RD-6のほうはSYNC INもSYNC OUTも装備しているので、ここではRD-6のSYNC OUTをTD-3のSYNC INに接続した形です。またSYNC OUTのほかにTRIGGER OUT LTおよびHTという端子も用意されています。これもSYNC OUTの1つなのですが、それぞれロータム、ハイタムのタイミングに合わせて同期信号を送りだすというものなので、イレギュラーな同期のさせかたも可能になっているのです。
RD-6の同期機能は、こうしたアナログ同期だけではありません。TR-606にはなかったMIDIの同期、USBでの同期も可能になっているのです。リアにはMIDI端子があるので、ここにMIDIクロックを送れば、それで同期させることが可能で、USBを通じてDAWからMIDIクロックを送れば、そちらに同期させることもできます。MIDI、USB、アナログのSYNC INのどれに同期させるかは設定で選ぶことが可能になっています。
USBを使ってDAWと同期させる方法についてはTD-3の場合とまったく同じなので、先日のTD-3の記事を参照してみてください。この方法を使えば、簡単にDAWと同期させることができるので、DAWのソフトウェア音源ではなかなか出せない、アナログサウンドをうまく音楽制作に生かせると楽しいと思います。
もちろん、RD-6のシーケンサとDAWのテンポを同期させるだけでなく、RD-6を単なる音源として利用することも可能です。この場合、MIDIのオートと音源の関係は以下のようになっているので、ピアノロールなどを通じて、完全にDAWからコントロールする形で鳴らすこともできるわけです。
このようにして鳴らしたRD-6の音をDAWのオーディオトラックに取り込めば、DAWとしての作品に完全にまとめあげることができますし、前述のとおり、キック、スネア、タム……と個別トラックに取り込んでエフェクト処理などを施すことで、自分のオリジナルサウンドに仕立てていくことも可能です。
ところで、RD-6のステップシーケンサの使い方は直感的であり、わかりやすくリズムを作っていくことができます。PATTERNのWRITEモードに設定した上で、キックなのか、スネアなのかなどどの音色を打ち込むかを設定します。その上で、STARTボタンを押して再生をしながら、16あるステップの鳴らしたい位置をオンにすれば、それで入力していくことができるのです。
音色を切り替えて順番に音を重ねていけばOK。ただ、シンバルとクラップだけはSELECTスイッチで切り替える仕様なのは、ちょっとTR-808風なところですね。また、リズムだとあまり使わない気はしますが、ランダムなパターンを発生させるRAND機能も搭載されています。
このように、RD-6のシーケンサは、TD-3のものとは違って分かりやすいけれど、やっぱり全部の音色がどのように出ているかを俯瞰的に見て入力したいという人は、PC側で操作することが可能になっています。
behringerサイトからSYNTHTRIBEというソフトをダウンロードして、起動すると、ここで各種設定ができるほか、Sequencerのアイコンをクリックすると、ドラムマシンのマトリックスが表示され、ここでマウスで打ち込むことでエディットすることが可能になっています。
RD-6の中に入っているデータを取り出す際は、Pattern Group、Patternを指定した上で、「Recall」ボタンをクリックすれば画面に表示させることができ、それをエディットした後に、RD-6に戻すには「Store」ボタンを押すという使い方になっています。この辺の考え方もTD-3のシーケンサと基本的に同じですね。
以上、簡単ではありますが、RD-6についてレポートしてみました。ソフトウェア音源で何でもできる時代に、あえてアナログの音源を取り入れてみるという選択肢。ツマミを触り、アナログケーブルを介すことで、新しい音の可能性が出てくるのではないか、と思います。
【関連情報】
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