マイクや真空管など、ステレオ使用時にLRの音響特性を完璧に揃えるマッチドペア。同じ製品でも、製造タイミングや個体差によって、わずかながらに違いが出てしまうので、それを揃えて発売している製品が存在します。DTM機材を取り扱う専門店であるRock oNにおいて、現在販売されているHS-MPモデルもその1つ。スピーカーのマッチドペアは珍しいですが、これは同じシリアル番号かつ厳しい検査基準をクリアしたボリュームパーツを使用したプレミアム版となっています。実は、2019年にヤマハプロオーディオが50周年を迎えたことを記念して、ヤマハ自ら測定および選別した、HS-MPモデルが、それなのです。
今Rock oNの渋谷店、梅田店、eStoreのそれぞれで、数量限定で販売されていると同時に、セール展開も行っているHS-MPシリーズ。マッチドペアという特殊性から、マスタリングでも、ミックスでも、プロユーザーの使用に対応できる貴重な機材ともいえます。そんなHS-MPモデルシリーズは、従来からあったHSシリーズとなにが違うのか、そもそもHSシリーズとはどんなモニタースピーカーなのかも含め、ヤマハのスピーカー歴史も振り返りつつ、紹介してみたいと思います。
YAMAHA HSシリーズのHSはHome Studioの頭文字をとったもの。その名のとおり自宅で使うことを想定して作られたモニタースピーカーのモデルであり、エントリーレベルのユーザーを対象にしたものとして誕生したという背景があります。伝説のモニタースピーカーNS-10Mの見た目を引き継いでいることから、世界的にも人気が高いモデルです。一方ヤマハのモニタースピーカーのラインナップとしては、MSPシリーズも存在しており、ラインナップが少し被るところもあるため、購入する側としてはちょっと迷うこともあると思います。以前書いた「実はこっそり復活していた! YAMAHAのモニタースピーカーMSP3は現行品として健在」という記事では、MSPシリーズを中心にHSシリーズとの違いを紹介していますが、結論としては好みの問題になってくるのも事実です。
ざっと、HSシリーズやMSPシリーズが登場してきた歴史を紹介すると、通称「テンモニ」「テンエム」と呼ばれ、世界中のレコーディングスタジオの標準モニタースピーカーとして広く使われてきたNS-10Mから始まります。NS-10Mは、そこから派生したNS-10M STUDIO、NS-10M PRO、NS-10MC、NS-10MXなども合わせ、現在でも多くのスタジオで目にする、レコーディングスタジオの象徴的なモニタースピーカー。
ただ、NS-10Mシリーズを生産するためのパーツが入手困難になったことから2000年代に入って生産完了し、後継として登場したのがMSPシリーズ。またその後にHSシリーズが誕生しました。MSPシリーズが業務用途を想定したモニターなのに対し、HSシリーズは前述した通りホームスタジオを想定して作られています。そのため、当初からMSPシリーズのほうがHSシリーズより上の位置づけとして存在していました。
ですが、今回HS-MPシリーズがリリースされたことにより、HSシリーズの中でも業務用のラインナップが登場したことになります。MP=マッチドペアは、エンジニアの方などであれば馴染みのある言葉かもしれませんが、簡単に説明すると、完璧なステレオであり、LRの音響特性がバッチリあっている、ペアのことを指します。通常の製品であっても基本的には、ステレオで扱うマイクなどに関しては、すべて内部構造などは同じに作られており、同じ音がするよう製造されています。ですが、それでもいろいろなパーツが集合して作られているため、どこかでほんのわずかな違いが出てしまいます。
そのため、同じシリアル番号、同じロットで製造された、ペアの製品をしっかりと検証や測定上で、発売している製品があり、そこに需要が存在します。スピーカーのマッチドペアというのは珍しいですが、HS-MPシリーズはヤマハが責任を持ってマッチドペアとして発売している製品。なんちゃってマッチドペアも世の中には存在するようですが、ヤマハが検証を行っているのであれば、ここに関しては安心していいと思います。通常ヤマハのスピーカーに限らず、発売されているスピーカーのステレオセットは、1本単位で販売されている単品が2つセットになったパッケージであり、マッチドペアという考え方は稀。そんな中、HS-MPシリーズはスピーカー2台一組を同じシリアル番号かつ厳しい検査基準をクリアしたボリュームパーツを使用した特別ペアパッケージとして発売しているため、業務用としてレコーディング、ミックス、マスタリングを行うプロの現場で使うことができるのです。
このHS-MPシリーズは、現在Rock oNのみで購入することができます。具体的なラインナップはHS5MP、HS7MP、HS8MPのそれぞれ。価格やスペックについて以下の表にまとめてみました。
HS5MP | HS7MP | HS8MP | ||
再生周波数帯 域(-10dB) |
54Hz-30kHz | 43Hz-30kHz | 38Hz-30kHz | |
クロスオーバ ー周波数 |
2kHz | 2kHz | 2kHz | |
最大出力音圧 レベル |
101dB SPL | 102dB SPL | 105dB SPL | |
コンポ ーネン ト |
LF | 5”コーン | 6.5”コーン | 8”コーン |
HF | 1”ドーム | 1”ドーム | 1″ドーム | |
定格最 大出力 |
Total | 70W | 95W | 120W |
LF | 45W(4Ω) | 60W(4Ω) | 75W(4Ω) | |
HF | 25W(8Ω) | 35W(8Ω) | 45W(8Ω) | |
サイズ (WxHxD) |
170x285x222 mm |
210x332x284 mm |
250x390x334 mm |
|
質量 | 5.3kg | 8.2kg | 10.2kg | |
価格(税込) | 49,800円 | 74,800円 | 84,800円 |
さらには、現在セールも行っており、数量限定での販売になっているようなので、ぜひチェックしてみてください。MSPシリーズ、HSシリーズ、HS-MPシリーズのいずれにせよ、自分のDTM環境にマッチする大きさか、好きなデザインか、そして好きな音であるかという点が、スピーカー選びの決め手になってくると思います。
そもそも、HSシリーズはコストパフォーマンスが高く、DTM初心者にもおすすめな定番モデル。HS-MPシリーズが登場してきたことにより、選択肢が増えたわけですが、「ちょうどHSシリーズを買おうと思ってたんだよね!」という方は、少し値段は上がってしまいますが、HS-MPシリーズを検討してみるのもアリだと思いますよ。
【関連情報】
モニタースピーカーのスタンダードYAMAHA HSシリーズのマッチドペア『HS MP』がRock oN限定で発売!!
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ HS5-MP , HS5(通常版黒ペア)
◎Rock oN ⇒ HS7-MP , HS7(通常版黒ペア) , HS7W(通常版白ペア)
◎Rock oN ⇒ HS8-MP , HS8(通常版黒ペア) , HS8W(通常版白ペア)