まったくギターが弾けなくても、いかにもというギターフレーズを簡単に作れるVirtural Guitaristやまったくベースが弾けなくてもベースフレーズが作れるVirtual Bassist、そしてカッコいいドラムフレーズが作れるVirtual Drummerなど、まさに画期的と言える音源を次々と開発するドイツ・ブレーメンにあるプラグインメーカー、UJAM(ユージャム)。そのUJAMが今度は初となる弦楽合奏の音源、Symphonic Elements STRIIIINGS(シンフォニック・エレメンツ ストリングス)を発表しました。発売は12月7日とまだ半月ほど先ですが、本日よりプレオーダーがスタートし、12月6日までに買うと通常価格17,538円($169)より大幅に安い10,274円($99)で入手できるキャンペーンも実施中です。
このSTRIIIINGS、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの4種類の弦楽器を用いた格調高いサウンド、フレーズを作り出す音源である一方、そこにフィルターや激しいエフェクトをかけて奇怪なエレクトリックサウンドにも変化させることができる、ほかにはない不思議なジャンルの音源でもあります。このSTRIIIINGSの開発にはUJAM創設者の一人である映画音楽界の巨匠、ハンス・ジマー(Hans Zimmer)氏が関わっているのだとか……。また、UJAMによるとPreSonusのStudio Oneとより深いところで結びついており、使いやすくなっているとのこと。そのSymphonic Elements STRIIIINGSのβ版を入手して試してみたので、実際どんな音源なのか紹介してみましょう。
※2020.11.20修正
記事タイトルで弦楽四重奏としましたが、STRIIIINGSは四重奏に限らず、大人数での弦楽合奏(ストリング・アンサンブル)を含む演奏をレコーディングした音をベースに構成されています。タイトルはそのままに記事を一部修正しました。
Symphonic Elements STRIIIINGSはWindowsおよびMacのVST、AU、AAXで動かすことができるプラグインの音源です。
ユーザーインターフェイス的にはこれまでのUJAM製品、Virtual GuitaristやVirtual Bassistなどと同様ですが、さすが弦楽四重奏だけあって、厳かなサウンドで、UJAMもずいぶん違ったジャンルを攻めてきたな…と思ったのですが、パラメーターにはさまざまなフィルターやえげつない(!?)エフェクトがいろいろ仕込まれていて、まったく違う方面のサウンドに仕立てられてしまうのが面白いところです。ちなみにSTRIIIINGSとIが4つあるのは弦楽器が4種類からなんだとか…。
冒頭にも触れた通り、このSTRIIIINGSは、ハンス・ジマー氏が世界最高峰のスタジオ、機材、奏者を使って録音した秘蔵のストリングアンサンブル音源を使っているとのこと。そして実際の開発には著名作曲家のボリス・サルコウ(Boris Salchow)氏がプロデュースする形で携わっているそうです。個人的には、ハンス・ジマー氏の音源を使っているということ以前に、彼がUJAMの創設者であったことにビックリしましたが、やっぱりドイツってそういう国だから、Steinberg、Native Instruments、Ableton、ADAM、RME、MAGIX……と数多くのDTMメーカーがあるんでしょうね。
さて、そのSTRIIIINGSの使い方は、Virtual GuitaristやVirtual Bassistなど従来のUJAM製品と同じなので、いたって簡単。ソフトを起動し、プリセットを選んで、鍵盤を1つだけ押すと、いかにも、というストリング・アンサンブルのフレーズが鳴ってくれるのです。
こうしたフレーズをもし1音1音打ち込んでいくと、非常に大変というか、バイオリンやチェロについての知識がかなりないと不可能といってもいいと思います。でも、STRIIIINGSなら、鍵盤1つ押すだけですから、知識不要で即実践です。
各プリセットには音色の雰囲気を決めるパラメータ情報とともに、さまざまなフレーズが組み合わせてあるので、適当に選べばいいのですが、音色はいいけれど、フレーズは別なものにしたい、という場合は画面左下のStyleというところをクリックすることで、数多くのフレーズの中から好きなものを選択することが可能になります。
キーについてはC3~C5の範囲の鍵盤を押せば、それに相当するコードで弾くことができ、C2~B2においてはベースコードを指定する形になります。たとえばC3とE2を押せばC Major / Eというコード展開になるわけです。
さらにC1~B1ではフレーズを指定していきます。先ほどのStyleで基本的なフレーズを選ぶのですが、その展開を、このフレーズ指定で行う形です。これらの指定を行って出てくるサウンドは、まさに格調高き弦楽四重奏のサウンド。ハンス・ジマー氏が関わって作ったサウンドというだけあって、音の質の高さは抜群ですね。ただし、インストーラーのサイズで4GB超あるので、それなりの容量を喰うわけではあるのですが……。
数多くのフレーズも用意されている
他社のストリングス音源でも、このようなアーティキュレーションを含めたフレーズが利用できるものはあるのですが、UJAMならではなのは、さまざまなパラメーターが用意されているという点です。
画面右側がHigh Stringsとなっているので基本的にビオラとバイオリン、左側はLow Stringsとなっているのでチェロとコントラバスのパートとなっており、それぞれのスイッチをON/OFFすることで、ミュートしたり、画面中央のCrossfadeを使ってバランスを調整することが可能です。
高音パート、低音パートをON/OFFしたり、バランスを調整したりできる
また中央のFinisherというノブは、UJAMのエフェクトプラグイン、Finisherシリーズから来ているものだと思いますが、これを使うことで、格調高いストリングス・アンサンブルのサウンドが大胆に破壊されていくのです。
大胆にサウンドを変化させるFinisherパラメーターと2つのエフェクト
ノブはエフェクトのかかり具合によって0~100%の範囲で調整できるのですが、どんなエフェクトを掛けるのかは、ノブの下にある文字部分をクリックするとプルダウンメニューが出てくるので、ここから選ぶ形になります。Finisher VOODOOから来たと思われるエフェクト、Finisher NEOから来たと思われるエフェクトなどが、いろいろ入っていますが、まあずいぶん違ったサウンドに変化してしまいますね。
一方、Finisherの左にはHighhighterというフィルターが、右にはAmbienceという書かれたリバーブ系のエフェクトが用意されており、これらのパラメーターによってもサウンドは大きく変わっていきます。Ambienceにおいては、Wide Hall、Narrow Room、Small Churchなど、さまざまな空間から選択できるようになっています。
さまざまな空間を再現するリバーブがある
通常は、この中央の3つのパラメーターを動かすだけで十分な音作りができますが、必要に応じて、High Strings、Low Stringsそれぞれにおいての音を調整することも可能になっておいます。
それぞれChracter FXというキャラクターを作るエフェクトと、トレモロやディレイ、フランジャーといった主に空間系エフェクトを選ぶMotion FXというエフェクトがあるので、これらを使った、より積極的な音作りもできるようになっています。
ところで、このSTRIIIINGSに限らず、Virtual GuitaristやVirtual BassistのVer 2.1以降においては、Studio Oneとより密接な関係性を持つようになっており、単なるプラグインに留まらない位置づけになっていたんですね。具体的には、ピアノロールのエディタ画面において、フレーズ選択用のキーと、コード指定用のキーがそれぞれ赤、青で表示されるようんあっており、扱いやすくなっています。
さらにStudio Oneのコードトラックを表示させ、ここにコードを指定するとともに、「追従」をONにしてくと、ここで指定したコードによって、STRIIIINGSが演奏するようになっています。これならば、コードさえ指定しておけば、全体を通じて1音だけ鳴らし続けるだけで、かなりの演奏ができてしまいそうです。
普通に弦楽四重奏を鳴らして劇伴用などに活用するのもいいし、Finisherなどを使って、絶対ほかの人が使用しない今日なトラックを作ってみるのもよさそうです。かなり幅広い利用法が考えられそうです。
なお、冒頭でもお伝えした通り、発売は12月7日ですが、以下の期間で、セール販売されます。
119 €/$(12,349円) — リリース記念特価(12月7日〜12月16日)
169 €/$(17,538円) — MSRP (12月17日〜)
この機会に入手しておいて損のない音源だと思いますよ!
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Symphonic Elements STRIIIINGS製品情報
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