毎年恒例のバージョンアップの季節が来ました。本日、11月11日、まさに11の日にCubaseの新バージョン、Cubase 11が発表されると同時にその発売が開始され、Cubase Pro 11、Cubase Artist 11、Cubase Elements 11がスタインバーグオンラインショップでダウンロード購入が可能となりました。ちなみに下位バージョンであるCubase AI、Cubase LEについては、後日リリースするとのこと。価格は、オープンプライスですが、基本的に従来と同様なので、Cubase Pro 11が税込63,000円前後、Cubase Artist 11が36,000円前後となっています。
今回のバージョンアップでは、サンプラートラックの機能向上やグローバルトラックの追加、スケールアシスタント、ピッチベンド/MIDI CCエディット機能の向上、オーディオミックスダウン機能の向上など、便利な機能が追加されています。さらに、EQのFrequencyにダイナミックEQ機能が追加されFrequency2になったり、ステレオの広がりをマルチバンドで調節できるImager、マルチバンドコンプ/サチュレーター/ゲートのSquasher、メーターのSupervisionが新プラグインとして登場しています。また6種類のサンプルセットが追加され、Cubase Artist 11がARA2に対応しVariAudio3が搭載されたり、音のスペクトラルデータを表示しPhotoshopのような感じでレタッチできるSpectraLayersの機能制限版が搭載されていたりなど、注目すべきポイントがいくつもあるので、ピックアップしつつ簡単にまとめてみました。
まずCubase11になってかなり強化されたのが、サンプラートラック機能です。もともとのサンプラートラックにスライス機能が追加されたことにより、表現の幅が広がりました。これまでも、オーディオワープ機能を使ってポリフォニックの演奏はできましたが、スライス機能が搭載されたことによりヒットポイントを配置して、ボーカルサンプルの所々の音を使ってメロディーを作るボーカルチョップという手法などが簡単に行えます。スライスされたサンプルは、自動的に鍵盤に割り振られるので、接続しているMIDIキーボードを弾けば、すぐに演奏することが可能です。
またスライス機能が搭載されたことにより、ドラムループ素材も扱いやすくなりました。ヒットポイントを配置して、「Drag MIDI Phrase to Project」からMIDIトラックにドラック&ドロップすれば、MIDIイベント上でドラムループを編集することができます。BPMにあった形で再生してくれて、MIDIイベントを編集すれば、簡単にドラムフレーズを組み替えることが可能。
これまでのサンプラートラックは、ワンショットやメロディー用途で使うことが多かったですが、今回からループサンプルが使いやすくなったのは嬉しいところですね。またLFOが2基搭載されたので、パンを自動的に振り分けたり、フィルターやピッチに掛けたりすることもできます。これまでも、エフェクターをインサートすれば実現できたところではありますが、サンプラートラック上だけで完結できるようになったのは、便利な点だと思います。また、グライドについても機能向上があり、より柔軟性のある設定が可能になっています。
次にグローバルトラックについてです。これまでキーエディター上に表示されなかった、ルーラーやテンポ、アレンジャートラック、拍子、コードトラックなどが、表示されるようになりました。グローバルトラックから表示/非表示を切り替えられるようになっています。
またスケールアシスタントが追加されており、スケールノートガイドをオンにすると、スケール上にあるグリッドが明るく表示され、スケールにないものが暗く表示されるので、打ち込んだ内容が音を外していないか、すぐに分かるようになりました。さらにピッチ編集のスナップをオンにすると、矢印キーで音を変更したときに、スケール外のところに行かないようになっています。ほかにも、リアルタイムで弾いた内容がスケールアウトしないようにするライブ入力をスナップ、スケールアウトしている音をスケール内に自動で調節してくれるピッチクオンタイズ、スケール上の音のみを表示するピッチ表示をオン/オフが搭載されました。
MIDIエディット系の機能強化としては、ピッチベンドやMIDI CCなどをカーブ使って入力することが可能になりました。さらにセミトーングリッドを表示という項目が追加されており、グリットごとに半音づつ表示すると同時に、ピッチベンドイベントをスナップを有効にすると、正確なピッチベンドを書くことが可能となりました。
一方、新しいプラグインも追加されているので、そちらも見ていきましょう。まずは、ステレオの広がりをマルチバンドで調節できるImagerというプラグイン。最大4バンド扱うことができ、バンドごとにステレオの広がりやパン、音量を調整可能。ローミッドを左、ハイミッドを右にしたりして、1つの楽器でも2つの楽器が鳴っているかのような効果を出すこともできます。
マルチバンドコンプ/サチュレーター/ゲートのSquasherですが、これは昨今のEDMなどで使われる、強いコンプが特徴のプラグインです。スピード感のあるコンプを掛けたり、存在感を出したり、音圧を上げたり、モダンなサウンドデザインをしたり……、マルチバンドのコンプとゲート、歪みが一緒になっているので、自由度高く面白い使い方ができますよ。プリセットも豊富に用意されているので、まずはプリセットから試してみるといいと思います。
そして、これまでも搭載されていたEQプラグインFrequencyが、Frequency2になり、ダイナミックEQ機能が追加されました。Frequency2を立ち上げて、各バンドの右上にあるDYNボタンを押すと、ダイナミックEQモードに切り替わり、最大8バンド分ダイナミックEQを扱うことができます。ダイナミックEQを使おうと思ったら、基本はサードパーティー製のプラグインを入手するしかこれまで手段がなかったのですが、デフォルトで搭載されたのはすごく嬉しいですよね。
またメータープラグインのSupervisionも新しく追加されており、レベル、ラウドネス、スペクトラムカーブ、位相スコープなど計18つのモジュールを最大9つまで表示することが可能です。必要な分を自分でカスタマイズして表示できるので、ミキシング時やマスタリング時に便利に使うことができます。1つメーターを表示させる用のモニターを用意して、そこに常時起動しとくというのもいいですよね。
これは、新しく開発されたプラグインではないですが、今回からオーディオをスペクトル分解した上で、グラフィカルに表示し、それをPhotoshopのような感じでレタッチ可能なソフトSpectraLayersの機能制限版SpectraLayers Oneがバンドルされました。簡単なエディットのほかにも、2mixからボーカルだけを抜き出す機能を持ったソフトウェアです。
あとは、便利な機能向上としては、オーディオミックスダウン機能があり、複数のファイルフォーマットを1度に書き出せる機能が搭載されました。たとえば、マスター用にWavデータを書き出して、試聴用にMP3、さらにはステムデータを一緒に書き出すことが可能です。またCubase上で曲を並べてマスタリングしている場合など、サイクルマーカーごとにも設定でき、1度のクリックで順番に書き出し処理をしてくれます。よくある設定をプリセット保存、呼び出しも可能。
ほかにもマーカートラックのタイミングが下までバーで表示されるようになったり、ヴォーカル系、シネマ系、リズム系など6種類の新しいサンプルセットが追加されたり、Cubase ArtistにVariAudio3を搭載し、さらにはARA2に対応したりと、いろいろなところでバージョンアップしています。またSteinberg製品をダウンロードする際に使うSteinberg Download Assistantの仕様が変更され、購入した製品だけが表示されるようになったりと、より利便性が増しました。
以上、Cubase 11についてその概要を紹介してみました。新バージョンは本日11月11日からSteinberg Online Shopにて、購入可能になっております。なお、最近Cubase 10.5を買ったという人であれば、グレースピリオドと呼ばれる救済法により、無償でCubase 11へバージョンアップできる仕組みも用意されています。具体的には10月14日以降に購入または製品登録した人が対象です。プラグインも新しく追加され、便利な機能を搭載した最新バージョンCubase 11を試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Cubase 11製品情報
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【価格チェック】
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