ハイレゾ配信サイトのe-onkyo musicがステム配信を開始。アニソンシンガーYURiKAさんの楽曲をリミックスしてYouTubeへのUPも可能に

11月20日、ハイレゾ配信サイトのe-onkyo musicが、新しいサービスとして、ステムデータの配信をスタートし、その第1弾アーティストとして、アニソンシンガーYURiKA@_YURiKA29)さんのアコースティック・セルフカバーミニアルバム「REUNION」のステムデータがリリースされました。YURiKAさんは、テレビアニメ「リトルウィッチアカデミア」や「はねバド!」「宝石の国」「BEASTARS」などのOP・EDを担当し、Animelo Summer Liveにも出演しているアニソンシンガー。今回のステム配信は全5曲分のステムデータ&PDF譜面の配信となっており、ステムデータはDAWに並べて自分なりにミックスして楽しむだけではなく、その自分のオリジナルミックスを作ってYouTubeにアップしてOKとなっているのが面白いところです。

各楽器ごとに分けられたデータとなっているので、自分で弾いた楽器に差し替えたり、歌ってみたを作ったり、YURiKAさんとハモってみたり、リミックスしてみたり……、自由に使うことができ、それをアップできるといった、これまでにない面白い企画。ステムデータ自体は、通常の楽曲としてリリースされている「REUNION」で使われてる本物のトラックなので、DAWに並べれば音源を再現することもできます。実際にプロが作ったトラックをソロにして聴いてみるだけでも、かなり楽しいし、勉強にもなるはず。そんなステム配信されている「REUNION」の楽しみ方をお伝えするとともに、YURiKAさんとプロデューサーの水野大輔さんにもインタビューしたので紹介してみましょう。

アニソンシンガーYURiKA(@_YURiKA29)さんのアコースティック・セルフカバーミニアルバム「REUNION」のステムデータがリリース


YURiKAさんは、冒頭でもお伝えしたようにアニソンを歌う、2016年デビューのアニソンシンガー。今回のステム配信にもなっている、「REUNION」のオープニングトラックLe zooのオリジナルは、もともとTVアニメ『BEASTARS』EDテーマでもあります。ほかにも「ただいま。~YURiKA Anison COVER~」というカバーアルバムをリリースしていたり、『はねバド!』OPテーマ「ふたりの羽根」は、YouTubeの再生回数約80万回と、今注目のアニソンシンガーです。

さて、そんなYURiKAさんが今回ステム配信する楽曲は、以下の5曲です。

・1『Le zoo <From「REUNION」>』
・2『baby baby flow <From「REUNION」>』
・3『マーブル <From「REUNION」>』
・4『メイキット! <From「REUNION」>』
・5『MIND CONDUCTOR <From「REUNION」>』

これは、もともとアコースティック・セルフカバーミニアルバム「REUNION」に収録されていた楽曲であり、そこで使われていたトラックが、そのままステム配信されています。そのREUNIONの収録曲を紹介する試聴動画がこちらになります。


では、実際にどうやってステムデータを使っていくかLe zooを例に紹介してみたいと思います。すでにDAWをお持ちの方であれば、データ自体は24bit/48kHzのデータとなっているので、DAWに読み込ませれば、すぐ再生して聴くことができます。もし、DAWを持っていない場合は、以前「無料の高機能DAW、Studio One 5 Primeがリリース。誰でも確実に入手するための完全操作ガイド」lという記事で紹介したことのある、Studio One 5 Primeが無料で使えるので、これを使うのがおすすめです。Studio One 5 Primeのインストールの仕方は、そこで紹介しているので、ぜひご覧ください。

ステムデータを購入すると特典としてコード譜がもらえる

Studio One 5 Primeをインストールして立ち上げると、スタートページが立ち上がります。ここの左上にある新規ソングをクリックすると、ソングの設定画面が表示されます。ソングタイトルを分かりやすいものを入力して、サンプルレートを48kHz、解像度を24bit、タイムベースを小節、ソングの長さを5分、テンポを110BPM、拍子を4/4に設定して、オーディオファイルをソングテンポにストレッチとオーバーラップを再生は、チェックを外しておきます。またソングタイトルの下に保存先が表示されているので、ここから好きな保存先を選んでも大丈夫です。準備が整ったらOKをクリックします。
Studio One 5 Primeを立ち上げたら、まず空のソングを作成する

すると、空のソングページが立ち上がるので、ここにLe zooのステムデータをインポートしていきます。データの入っているフォルダーを開いたら、すべてのファイルを選択して、ソングページにドラック&ドロップします。

ステムデータをドラック&ドロップで読み込む

Le zooのステムデータの内容は以下のようになっており、

Le_zoo_RU_Stem_AGt
Le_zoo_RU_Stem_Click_CB_BPM110
Le_zoo_RU_Stem_Click_HH_BPM110
Le_zoo_RU_Stem_Harmonica
Le_zoo_RU_Stem_Percussion
Le_zoo_RU_Stem_Piano
Le_zoo_RU_Stem_Violin
Le_zoo_RU_Stem_Vo_Dry
Le_zoo_RU_Stem_Vocal
Le_zoo_RU_Stem_Wow

ファイル名の通り、それぞれの楽器が収録されていて、クリックも含めて10パートで構成されています。ボーカルパートだけは、リバーブの掛かっていないドライのデータとリバーブありのウエットのデータとなっています。まずは、クリックとドライのボーカルデータをミュートにして、楽曲を再生してみてください。

まずは、ドライのボーカルデータとクリックをミュートして、原曲を聴いてみる

またそれぞれのパートをソロにしてみたり、ミュートしてみたりすると、普段聴く音楽とは全然違って面白いと思います。そして、楽器ごとにパートが分かれているので、ボリューム調整したり、EQやコンプなどを使って、ミックスしてみたりすること可能です。

ボリュームやパン、エフェクトをインサートして自分なりのミックスも作れる

さらに、YURiKAさんボーカルをミュートして、自分でこのオケに対して歌を入れたり、シンセを足したり、リミックスを作ったり……、いろいろなことができます。たとえば、自分で歌ってみたを作る場合には、上メニューのトラックから、トラックを追加を選びます。トラックを追加設定で、名前を決め、タイプをオーディオに設定、フォーマットをモノ、入力をマイクが繋がっているオーディオインターフェイスのチャンネルに合わせ、OKを押します。

ボーカルを録音するためのトラックを作成する

これで、ボーカルを録るトラックを作成できたので、トラックの録音待機ボタンを押してから、録音をスタートさせます。同じ要領で、弾いてみたを作ることもできますし、YURiKAさんボーカルをミュートしなければ、コラボも可能ですね。

歌ってみたを作ってもいいし、弾いてみたを作ってもいいし、アレンジは自由

こうして自分でアレンジしたものやミックスしたもの、歌ったものをYouTubeなどのJASRACと包括契約している媒体であれば、アップしていいのが今回の企画の面白いところ。通常、配信されている楽曲は原盤権の問題で、音源を直接使うことはできないのですが、REUNIONのステム配信については、そこをクリアしているので、大丈夫なのです。また、ほかの人の作品を聴いたりするのも、すごく楽しそうですよね。なお、ステム配信はe-onkyo music上で行われており、1楽曲分のステムデータをそれぞれ1アルバムとして配信しています。ストア上では合計5アルバムが公開される形となっており、それぞれ3,300円(税込)で購入できます。また各曲、特典として譜面PDF付属しているとのことです。

 

--ステム配信って、とってもユニークな企画ですが、この話はいつごろ持ちあがったのですか?
YURiKA:e-onkyo musicさんからお話をいただいたのが、たしか2か月ほど前だったと思います。最初は、「こういう見せ方もあると思うのだけど、どうかな?」という話から始まり、私自身、とても面白そうだと感じたので、ぜひ、ということになりました。もともと「REUNION」の表題でもある「Le zoo」のレコーディングの様子をすべてYouTubeで生配信をしていたのです。だからこそ、多くの方に楽しんでいただけるならOK、という気持ちが強かったのです。このレコーディング生配信は、スタジオに入って、マイク選びから、声出し、テイク選びまで、3時間弱の内容を1から全部配信しました。このご時世、お家で楽しむ方も多いと思うので、私に何かできることがあれば……と思って行ったのです。

水野:このYouTubeの様子は今でも公開しているので、よかったらぜひご覧いただきたいのですが、レコーディングの世界を知らないYURiKAのファンも多く見ていただいたため、その反応が面白かったですよ。リテイクをする際、「また歌わせるのか!」、「そんな一部だけを歌うの?」なんて。そんな様子を見てレコーディングに興味を持っていただいた方もいたのではないかと思っています。

https://youtu.be/TmORm8jSYYE

--確かに面白い企画ですが、買ったユーザーはいろいろな使い方できるわけで、たとえばボーカルをソロにしたりできますが、抵抗はなかったのでしょうか?
YURiKA:マイナスに捉えることはなかったです。「REUNION」自体が、自粛期間中に歌を直接届けることができない、ミュージシャンの方とも会えない、ライブができないけど、再会できることを願って作ったアルバムだったので、偶然にもその意味とステム配信が合ってるなと感じたからです。趣味で楽器を演奏される方とか、音楽が好きな方と、すぐには会えないけど、同じものをそれぞれの楽しみ方で楽しむということに意味を感じています。

ーー今回の各トラックはどのようにレコーディングされていたのですか?
水野:YURiKAのボーカルは、生配信もした通り、スタジオでレコーディングしていますが、ギター、ピアノ、バイオリン、パーカッション、ベース、コーラス……といったパートは普段ライブでバックバンドをしているミュージシャンのみなさんにお願いし、それぞれの家でレコーディングしてもらって送ってもらい、私の手元でミックスしていました。まあ、コロナの前からWAVファイルでのやりとりで制作するケースは多かったのですが、コロナ禍においてはそうした手法が大きく役立ちましたね。

ーー今回のステム配信、プロデューサー側からの狙いなどはあるのでしょうか?
水野:いま、イベントやライブを行いにくく、音楽に触れてもらうこと自体が難しい時代で、新譜を出しても広く周知することができません。そうした中、既存のファンのみなさんに「YURiKAってこんなこともするんだ!」と楽しんでもらう一方、YURiKAを知らないDTMユーザーの方などにステムデータという観点から作品に触れていただくと同時に、YURiKAについて知っていただけると嬉しいですね。

ーーステム書き出しにおいて、特別な加工などはしているのでしょうか?またDAWは何を使って作業されていたのですか?
水野:YURiKAの録りは、エンジニアにお願いしており、Pro Toolsでレコーディングしていますが、私はCubaseで取り込んでトラックダウンしています。またほとんどのミュージシャンがCubaseを使っていましたね。基本的にアコースティック楽器が中心となっているため、エフェクトはほとんど使っておらず、録りのときにEQ、コンプを使っているくらい。そのため、最終段のマスターリミッターだけは外して書き出した形ですね。ボーカルに関してはセンドでリバーブを使っているので、ドライだけのトラックとウェットのトラックを2つ用意していました。

--実際、今回のステム配信をどう楽しんでほしいですか?
YURiKA:私自身はDAWに詳しいわけではないのですが、楽しみに思っているのは、演奏できる方や歌える方が、私と一緒に演奏したり、歌ったり、ハモったりしてくれることです。それをYouTubeにアップロード可能になっているので、そんな作品がいろいろ登場してくれると嬉しいですね。多くの人にとっても、いろいろなバージョンが聴けるのは、すごく面白いと思います。この人の演奏いいなとか、この人の歌いいなとか、そこでさらに好きなものを見つける機会になれば、嬉しいです。

ーーありがとうございました。

※2020.12.03追記
2020.11.24に放送した「DTMステーションPlus!」から、第164回「UVIの新製品がDTMに無限の可能性を!」のプレトーク部分です。「ハイレゾ配信サイトのe-onkyo musicがステム配信を開始。アニソンシンガーYURiKAさんの楽曲をリミックスしてYouTubeへのUPも可能に」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
YURiKAオフィシャルウェブサイト
YURiKAアコースティックセルフカバーミニアルバム『REUNION』ステムデータ配信開始!(e-onkyo musicニュース)

【ダウンロード購入】
◎e-onkyo music ⇒ 1『Le zoo <From「REUNION」>』
◎e-onkyo music ⇒ 2『baby baby flow <From「REUNION」>』
◎e-onkyo music ⇒ 3『マーブル <From「REUNION」>』
◎e-onkyo music ⇒ 4『メイキット! <From「REUNION」>』
◎e-onkyo music ⇒ 5『MIND CONDUCTOR <From「REUNION」>』

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