例年より1か月遅れ、10月23日、iPhone 12が発売されました。今回iPhone 12 mini、iPhone 12、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Maxと4種類が発表されたので、どれにしようか……と考えたのですが、個人的には、これまでiPhone 11 Proを使ってきたので、それに近い、iPhone 12 Proを選択し、発売日より1日遅れた本日24日に入手し、さっそく、いろいろと試してみました。
各社からの報道などを見る限り、iPhone 11とiPhone 12で、抜本的に大きな変更はなさそうだし、一番気になっていた端子も従来通りのLightningなので、とくに問題はないはず。9月にリリース済のiOS 14は、すでにiPhone 11 Proでインストールしており、これといったトラブルも起きていなかったので、とくに混乱などはないと思いますが、念のため各種ハードウェアと接続したり、DAWやシンセ、エフェクトなどのアプリも起動しながら、問題がないかチェックしてみました。
今年も近所のauショップでiPhone 12 Proの256GBを予約したのですが、23日になっても連絡がなく、電話で確認したところ、割り当てがなかったとのこと。どこかに在庫がないものか、行けそうな範囲を片っ端から電話して聞いてみたものの、すべて予約でいっぱい。ダメ元で、もともと予約していたところに、再度確認したところ、別店舗に色違いの128GBならあるとのこと。そちらに変更をお願いし、1日遅れの24日午前中になんとかGETしたのでした。
諸々の事情から、従来のiPhone 11 Proの電話回線を残しながら、別の電話番号でiPhone 12 Proを契約したたため、手元にはiPhone 11 Pro、iPhone 12 Proの2台があるので、この2つで比較していきます。
まず画面サイズがiPhone 11 Proの5.8インチから6.1インチへと拡大したため、見た目にも少し大きくなっています。Appleの発表によれば、重さは188gから187gになったとのことでしたが、手元で測定したところ、どちらもほぼ同じ187gとなっていました。
実際持ってみて明らかに違うのが側面の形状。ここ最近のiPhoneは丸みがかったエッジだったのがiPhone 4/4S時代のようなフラットなものになっているんですね。久しぶりにiPhone 4Sの電源を入れて並べてみましたが、確かに側面はよく似た感じです。とはいえ、大きさといい、画面デザインといい、ずいぶん時代が変わったものだと感じます。
と、そんな話はいろいろなメディアでいっぱい紹介されているのでいいとして、ここからはDTM視点で見ていきましょう。まあ、比較するというよりも、従来の周辺機器がしっかり動くのかを検証していくとともに、アプリ側の動作にも問題ないかある程度チェックするという形です。
まず周辺機器のチェックに入る前に確認しておきたかったのが、本体内蔵のマイク部分です。iPhone 11 Proの前のiPhone Xのときから3つのマイクが内蔵されており、横で構えてビデオを録画するとステレオで録音できるようになっていたのですが、それはあくまでもApple純正のビデオでの撮影に限られ、DTM系のアプリではモノラルでしか扱えませんでした。それが、今回ステレオになっているのでは……という淡い期待を元に、MultiTrackDAWというDAWアプリを起動してチェック。結論からいうと従来通りであり、3つのマイクのうちのいずれか1つを選択することはできるものの、ステレオペアで選ぶということはできませんでした。
では、外部のオーディオインターフェイスとの接続は従来通りできるのでしょうか?いろいろ試していきましょう。まずはLightningケーブルで接続できるMade for iPhone/iPad(MFi)認証の取れたオーディオインターフェイスから。ここでは、IK MultimediaのiRig PRO DUO I/Oを接続。
これは電源に単3電池2本を必要とするため、これを充填した上で接続。するとあっさりと認識し、問題なく再生、録音とも使うことができました。
同様にRolandのMFi機材であるGO:MIXERを接続。こちらはバッテリー不要でiPhoneからのバスパワーだけで動作するはずですが……、これもまったく問題なく録音、再生ともに可能です。まあ、MFi認証が取れている機材ですから動作するのは当然といえば当然です。
続いてMFi認証の取れていない機材とも接続してみましょう。Lightning-USBカメラアダプタを利用すれば、USBクラスコンプライアントなデバイスであれば基本的には使えるはず。最初に試してみたのはSteinbergのUR22C。これはiPhoneとUSB Type-Cを通じて接続するのですが、iPhoneからの電源供給だけでは足りないので、microUSBを使ってUR22Cに電源供給することで動作させることができるというもの。
さっそく試してみると、まったく問題なく認識、動作し、Cubasis 3を起動してみると、こちらも問題なく録音、再生ともにできます。
ここでUR22Cの上にiPhone 12 Proを置いてみて、おや?と思ったことが……。iPhone 12 Proは磁石が入っているので、UR22Cとピッタリとくっつくのです。調べてみると、MagSafeなる新機能で、ワイヤレス充電器とフィットさせたり、各種アクセサリとフィットさせるためのものなのだとか……。とはいえ、iPhoneそのものを支えるほどの強力磁石ではないので、オーディオインターフェイスをひっくり返せば、落っこちますね。
同じくRolandのオーディオインターフェイス、Rubix 24を接続してみました。これもUR22Cと同様で、補助電源をmicroUSBで供給する形。Rubix 24の場合はUSB TypeBの形状となっていますが、Lightning-USBカメラアダプタ経由で、問題なく使うことができます。
また、Rubix 24の入力をHi-Zにした上でギターに接続。iPhone側でIK MultimediaのAmpliTueを起動させると、思い切り歪んだパワフルなギターアンプサウンドが聴こえてきます。バッチリですね。
もう一つ、高級オーディオインターフェイスも試してみましょう。RMEのFireface UCXです。こちらは、そもそもACアダプタで動作させるオーディオインターフェイスなので、電源の心配はいりません。iPhoneと接続するためにクラスコンプライアントモードに切り替えた上で、Lightning-USBカメラアダプタを経由してiPhone 12 Proに接続すると、しっかり認識し、DAWやソフトシンセなどはもちろん、iOS標準のプレイヤーソフトのミュージック、さらにはハイレゾサウンド再生用の各アプリもしっかり利用できました。
一方、キーボードのほうはどうでしょうか?まずは最近お気に入りのIK MultimediaのiRig Keys 2を接続。先日書いた「とっても小さなMiniも誕生。モニター出力機能も備えた多機能キーボード、iRig Keys 2シリーズが超便利」という記事でも紹介した通り、iRig Keys 2はMIDIキーボードでありながら、オーディオモニター出力機能も備えたもの。しかも外部電源供給不要でiPhoneからの電力供給だけで動作するというのだから優秀です。
オーディオ出力機能を装備するiRig Keys 2とも問題なく接続できた
これがiPhone 12 Proでも問題なく使うことができるのか……。接続してみると、すぐにiRig Key 2のボタンが1つ赤く点灯し、動作を知らせてくれます。ここでSampleTankを起動してみたところ、問題なく動き、キーボード操作ができるとともに、音はiRig Keys 2のモニター端子から出力されます。
これをiOSのMIDIデバイスチェックで非常に役立つART TeknikaのMidi Tool Boxでチェックしてみたところ、しっかりiRig Keys 2の表示が入出力ともありますね。問題なく使えているようです。
ところで、このiRig Keys 2は先ほどのiRig Pro DUO I/Oほか、従来のIK製品で使っていたLighiting-DINのケーブルではなく、Lightning-microUSBというケーブルで接続します。ここでふと思ったのは先ほどのRolandのGO:MIXERで使ったのもLightning-microUSBケーブルだったので、もしかして互換性がないだろうか……ということ。まあ、iPhone 12 Proの話とは直接関係ないものの、RolandのケーブルとIK Multimediaのケーブルを互いに交換して試してみたところ、バッチリ。これで使えちゃうんですね。個人的には重要な発見でした。
ではUSBクラスコンプライアントのキーボードはどうでしょうか?軽くて便利なおことから愛用しているKORGのnanoKEY2をLightning-USBカメラアダプタ経由でiPhone 12 Proに接続してみました。すると、これも外部電源不要でしっかり動いてくれました。優秀ですね。
もう一つ、昨年のiPhone 11 Pro登場のときに問題となったKORGのmicroKEY AirとBluetooth MIDI経由で接続してみましょう。以前の問題はすでにファームウェアアップデートの形で解決しており、手元のiPhone 11 Proで使うことが可能になっていたわけですが、これをiPhone 12 Proに接続しなおしても、当然問題なく動作してくれました。
同じくBluetooth MIDIを使うデバイスであり、先日「MIDIケーブルをワイヤレス化するmi.1 Cableが先行発売を開始。Bluetooth MIDIの元祖、日本のベンチャー、QUICCO SOUNDが開発」で紹介した、mi.1 Cableおよびmi.1 IIについても試してみました。
結論から言えば、これも問題ありません。mi.1 IIはそのまま接続でき、mi.1 Cableのほうは、マスターの白と、クライアントの黒の2種類がペアとなっていますが、黒のほうと接続することができました。iOS側はマスターとなるため、クライアントである黒とのみ接続できる形ですね。
続いてちょっとイレギュラーな機材ともいえるmidiglueとの接続も試してみました。これは以前「手持ちのMIDI、CV/GATE機器を自由自在に組み合わせ、パッチャー、シーケンサさらにはシンセとしても使える!?midiglueが進化しながら一般販売スタート」という記事で紹介した非常にユニークなMIDIデバイス。
midiglueもUSBクラスコンプライアントなデバイスなので、Lightning-USBカメラアダプタ経由であれば接続できるはず。ところが……iPhone 12 Pro上には「Cannot USE Accessory」という表示が出てしまって使うことができません。まあ、これはiPhone 12 Proだから、というわけではなくiPhone 11 Proでも同様だったのですが、メッセージを見ると「midiglue: This accessory requires too much power.」とあります。つまり電力が足りない、と。
そこで登場させたのが、外部から電源供給可能なLightning-USB3カメラアダプタです。これに変更して接続してみたところ、今度はバッチリ。やはりモノによってはLightning-USB3カメラアダプタが必要ということですね。
最後にもう一つ試してみたのがDTM関連とはちょっと異なりますが、「誰でも気軽にスマホ・タブレットで高音質・高画質なライブ配信を。RolandのGO:LIVECASTが画期的!」という記事で今年の初めに紹介したRolandのネット配信用オーディオインターフェイスの、GO:LIVECAST。iPhoneから直接YouTube LiveやFacebook Live、ツイキャス、Twitch、ニコニコ生放送などができるというデバイス。
これも前述のGO:MIXERと同様、付属Lightning-microUSBのケーブルを使って接続するMFiデバイスであり、同じWi-Fi内にある別のiPhoneをサブカメラとして利用できるというユニークな機材。これについてもiPhone 12 Proで試してみたところ、やはり問題なく使うことができ、iPhone 11 Proをサブカメラとして利用することもできました。どれを使っても、まったく問題ないようですね。
以上、本当に大急ぎでのテストであり、細かなところまでチェックできてはいませんが、今回はすべて問題なく使うことができました。一方で、CPUパワーが向上したということはあるにせよ、DTM観点においてはそれ以外で、際立ったメリットはなさそうです。その意味では、無理にiPhone 11から乗り換える必要はなさそうではありますが、古い機種からそろそろ最新機種へというのであれば、問題ない選択だと思います。
一方で、iPhone 12の発売に伴いiPhone 11が値下げになっているので、あえてこのタイミングに型落ちのiPhone 11を安く買うというのも悪くはなさそうです。
これからしばらく使いつつ、もし問題点、変更点などが確認できたら、記事に追記していきたいと思います。私だけのチェックだと見つからない点もありそうなので、もしiPhone 12を使ってみて何か気づくことがあれば、ぜひ、この記事のコメント欄に情報を書き込んでいただければ、私もチェックするようにいたします(※書き込んでいただいた内容は私がOKボタンを押すまで、外部には公開されない仕組みになっています)。情報をお待ちしております。
※2020.11.04追記
2020.10.27に放送した「DTMステーションPlus!」から、第162回「世界初公開!Rob Papen新製品発表会」のプレトーク部分です。「さっそくiPhone 12 Proを買ってきたので、DTMで問題なく使えるのかチェックしてみた」から再生されます。ぜひご覧ください!