SENNHEISERのクジラマイクMD 421-IIが、創業75周年記念で10月限定29,000円! IK AmpliTubeと録り比べてみた

ドイツの音響機器メーカーSENNHEISER(ゼンハイザー)が、今年で創業75周年となり、これを記念して10月1日~10月30日の期間限定で、クジラの愛称で知られるダイナミックマイク、SENNHEISER MD 421-IIを約29,000円という特別価格で販売しています。通常55,000円(標準参考価格67,000円+税)程度のものが約半額になっているという、いいタイミングなのでMD 421-IIを使ってちょっとした実験を試みてみましました。それは本物のギターアンプを鳴らした音をMD 421-IIで録音した音と、ギターアンプシミュレーター(IK MultimediaのAmpliTube 4)で同じモデルを再現するのとで、どのくらい音が違うのかというもの。

MD 421-IIは、ギターのレコーディングやドラムのレコーディングなど、多くの作品で使われているので、誰もが自然とその音を聴いているはず。その実物を使って従来通りの録音をするのと、最新のギターアンプシミュレーターの音にどのくらいの違いがあるのか、私もすごく興味があったので、試してみたのです。改めてMD 421-IIとはどんなマイクなのか、歴史的背景も振り返りつつ、MD 421-IIの実力を検証してみたので、紹介してみましょう。

SENNHEISER MD 421-IIとアンプシミュレーターのAmpliTubeで音の録り比べ検証をしてみた


SENNHEISERは、1945年に前身のLabor Wを設立して以来、今年2020年で創業75周年を迎えました。設立以降、今回紹介する「クジラ」という愛称で長年レコーディング業界で使用されているダイナミックマイク「MD 421」や放送業界で使用されている定番のガンマイク「MKH 416」など、業界で使用され続けている名機たちを世に送り出しています。さらに、1968年には世界初の開放型ヘッドホンHD 414を開発し、累計1000万個以上売り上げているので、SENNHEISERのヘッドホンといえば開放型ヘッドホンというイメージが強いと思います。またHD 600やHD 25などの世界的ロングセラーモデルを輩出していたりと、プロ・アマ問わず音楽に関わっているのであれば、1度はSENNHEISERの製品を手に取ったことがあるのではないでしょうか?

長年愛され続けているSENNHEISERのマイクロフォン

SENNHEISER最初のマイクは、DM1という創業の翌年1946年に製造をスタートしたものであり、MD 421が誕生するのは1960年になってからのこと。当初のMD 421は白い見た目をしており、国内では通称「白クジラ」と呼ばれ、今でも人気の高いヴィンテージマイクの1つとなっています。白の時代でも10パターンぐらいのモデルが存在し、最初期のSENNHEISERの刻印が筆記体のものは、世界中のエンジニア界隈で特に人気の高いマイクとのことです。

60年前の発売当初MD 421は、白色をしていたので、「白クジラ」などと呼ばれている

そんなMD 421に改良を加え、現行機種として販売されているのが、MD 421-II。レコーディングスタジオに行けば、必ず置いてあるマイクの1つであり、タム類を中心にドラム用に使われたり、ギターアンプ、ベースアンプに立てられたりしています。歌やアコギに使うケースもあり、特にアタックのピークに対しての耐性や低音のスピード感が優秀。幅広い場面で使うことができ、このマイクでしか再現できない音もあるため、こだわりを持って愛用しているユーザーも多いようです。

MD 421-IIはドラムやギター/ベースアンプを中心に、どんなソースにでも使える幅広いマイク

とはいえ、ダイナミックマイクで通常、約55,000円なので、業務用のプロ仕様マイクとはいえ、なかなか手を出しにくかったという人も少なくないはず。それが10月1日~10月30日まで限定で約29,000円となっているのですから、購入しようとしていた人にとっては、またとないチャンス。もっとも、製品自体は通常販売されているものとまったく変わらないもので、色が違うとか、75周年ロゴが付いているということもなく、いたって普通な黒クジラ。もちろんマイクとしての特性もまったく変わりません。

5段階のハイパスフィルター切り替えスイッチが搭載されている
そのMD 421-II、ほかのダイナミックマイクと比較してユニークな点が1つあります。それは、コネクタのすぐそばの位置に5段階で切り替えるハイパスフィルターのスイッチがあり、その設定によって音質が変化するということ。そのスイッチ、[S | | | M]という5段階になっていおり、「SpeechのS」と「MusicのM」を意味しているとのこと。つまりSに回していくほどローがカットされていく特性になっています。音楽のレコーディング用途であれば、目いっぱいMに回しておくのが基本と言われています。

さて、今回、実際にMD 421-IIをギターアンプに立てて、アンプシュミレーターと比べてみたので、そちらを紹介していきましょう。今回の実験には、DTMステーションPlus!の番組にもよく出演していただいているギタリストの福地智也さんに協力をいただき、リハーサルスタジオで試してみました。

今回の録り比べに協力いただいたギタリストの福地智也さん
録音環境は、MacBook ProにIK MultimediaのオーディオインターフェースAXE I/Oを繋げ、Studio One 5で録音。アンプシュミレーターは、IK Multimedia AmpliTube 4を使い、アンプのセッティング、マイクのセッティングを同じにして録音しました。

レコーディングにはIK Multimediaのオーディオインターフェイス、AXE I/Oを利用

アンプのツマミは基本的にはすべて12時(真上)の方向にセッティング、マイクはスピーカの中心に立てました。検証に使用したギターアンプは、ライブハウスやリハーサルスタジオによく置かれているRoland JC-120とMarshall JCM900。福地さんのギターから、トレブルブースターを挟み、アンプシュミレーター録音時は直接AXE I/Oへ。MD 421-IIでの録音時もトレブルブースターを繋ぎ、ギターアンプを鳴らして、MD 421-IIをマイクケーブルを用いてAXE I/Oに繋いでいます。前述の5段階のハイパスフィルターはMに設定しています。

リハーサルスタジオに機材を持ち込んで検証を行った

ちなみにAmpliTubeも、明確に各メーカーの固有名詞を出してシミュレーションしているわけではないのですが、見ればだいたいわかるようになっています。具体的にいうと、JC-120は「Jazz Amp-120」をMarshall JCM900は「Classic British Collectionにある「Brit 9000」を選んでいます。またマイクに関しては「Dynamic 421」を選んでいます。

アンプシミュレーターのAmpliTubeをStudio One 5上で起動させて利用

では、実際に音を聴いていきましょう。まずはRoland JC-120からです。

それぞれ、結構よく似た感じのサウンドになっていると思いますが、いかがでしょうか?「音の方向性はどちらも同じところを向いていますね。AmpliTubeは少しライン臭さが抜けていなく、音が薄い印象でした。一方実際のギターアンプは、アンプから出た音が空気の中を通って、MD 421-IIで音を拾っているので、空気感だったりが音にあり、扱いやすい印象ですね。今の人たちは、アンプシュミレーターの音に慣れているので、AmpliTubeの音の方がよく感じてしまうこともあるとは思いますが、アンプ本来の音はMD 421-IIで拾った音です。マイクのよさは、マイクの配置によって大きく音を変えることができることにあります。なので、1本のマイクでも、いろいろな音のバリエーションを出せるので、ぜひそこを楽しんでほしいですね」と福地さん。

続いてMarshall JCM900でのレコーディングを実践

AmpliTubeを使う際は、直接AXE I/Oにギターケーブルを繋いだ

次にMarshall JCM900です。

ホンモノもAmpiTubeサウンドも、先ほどのJC-120のものとはだいぶ違うパワフルなサウンドです。

AmpliTubeに用意されているマイクシミュレーター、Dynamic 421を使用
「AmpliTubeのMarshall JCM900の音はよくできていますね。これでも十分いいなと思いました。僕自身、10年くらい前の初代AmpliTubeを使ったことはありますが、そこから比べるとすごい進化ですね。一方アンプについては、普段聴き慣れている音なので、安心感があります。やっぱり、音の厚みはマイク録音の方が優れていますね。2つを聴き比べると、MD 421-IIの方が、低音域が少し足りないように感じますが、ここはマイキングでカバーできる範囲です。MD 421-IIに搭載されているハイパスフィルターみたいなパラメータは、ほかのマイクにはないので、面白い使い方ができると思いますよ。あとは、ピッキングのニュアンスなどの繊細な表現は、Roland JC-120やMarshall JCM900に限らずアンプのほうが、よく録れますね。アナログ的で複雑な情報は、まだアンプシュミレーターでは難しいかなと思いました。ちなみに個人用にMD 421-IIはまだ持っていなかったので、この機会に購入しようと思っています」(福地さん)

マイクはAmpliTubeと同じ場所にセッティング

実際にギターアンプに立てたMD 421-IIの音は、中低域の奥行き感があり、立体感な音である印象でした。ここで、ホンモノとAmpliTubeのどちらがいいかとい結論を出すつもりはなく、どちらも曲やシチュエーションに応じて使い分けるのがいいのでは……と思うのですが、やはり応用範囲の広いマイクは持っていて損はないアイテムだと思います。前述のとおり、SENNHEISER創業75周年のMD 421-II記念価格で、約29,000円となっているので、、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

※2020.10.20追記
2020.10.13に放送した「DTMステーションPlus!」から、第161回「Roland Cloudで手に入れよう!ZenbeatsとZENOLOGY Pro」のプレトーク部分です。「SENNHEISERのクジラマイクMD 421-IIが、創業75周年記念で10月限定29,000円! IK AmpliTubeと録り比べてみた」から再生されます。ぜひご覧ください!

【製品情報】
SENNHEISER MD 421-II製品情報

【価格チェック&購入】
※10月6日現在、各店ともに想定以上の売れ行きで品切れ・取り寄せ状態になっているようです。ゼンハイザージャパンに確認したところ、世界的に品不足になっており、生産~納品にはしばらく時間がかかるとのこと。ただし、この10月のキャンペーン期間中に下記の販売店で購入すれば(在庫がなくても購入できるショップに限る)、キャンペーン価格は適用されるとのことでした。
◎Rock oN ⇒ MD 421-II
◎サウンドハウス ⇒ MD 421-II
◎イケベ楽器 ⇒ MD 421-II
◎島村楽器 名古屋パルコ店 ⇒ MD 421-II
◎システムファイブ ⇒ MD 421-II
◎ビデオ近畿  ⇒ MD 421-II
※代理店によってキャンペーン実施有無が異なります、詳しくは【プロオーディオ製品 正規代理店一覧】の掲載代理店へお問い合わせください
ゼンハイザージャパンのプロオーディオ正規代理店はこちらからご覧いただけます
https://ja-jp.sennheiser.com/japan-dealers

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