自分の声を入力すると、リアルタイムにまったく別のキャラクタの声に変化させることができるアプリケーションとして話題になっているVoidol(ボイドル)。男性の声でしゃべると女性の声に変換したり、その逆も可能で、これまでCV小岩井ことりさんの声乃ツバサ、CV佐藤聡美さんの東北ずん子、また鷹の爪団の吉田くん、などさまざまなキャラクタがラインナップに並んでいましたが、9月29日、あの結月ゆかりもラインナップ入りしました。
これにより、誰でもマイクに向かってしゃべれば結月ゆかり(CV石黒千尋さん)の声になれるとともに、歌えば結月ゆかりの歌声にすることも可能になったのです。また同じタイミングで、Voidolのプラグイン(VSTおよびAU対応)版も登場し、DAWとの連携性もさらに大きく強化されたのです。さらにボイスモデルもどんどん拡充しており、完全セルフプロデュースユニットとして知られるsimpαtix -シンパティクシュ-の二人、寺嶋由芙さんと髙井つき奈さんのボイスモデルもそれぞれリリースされています。実際、どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。
Voidolについてはこれまでも「VTuberに超強力兵器が誕生!リアルタイムに自分の声をキャラクタボイスに変換できるソフト、Voidolが発売開始!」、「VTuberのための悪魔のアイテム、VoidolがついにWindowsに対応。標準搭載のイケメンボイスの新キャラクタも追加に」といった記事で取り上げてきましたが、現在もどんどん進化するとともに、新たなるキャラクタも追加されてきています。
そうした中、今回センセーショナルな誕生となったのが、VOCALOIDやVOICEROIDで知られるキャラクタ、結月ゆかりのVoidolへの対応です。まずは、実際どんな声になるのか、試してみたので、以下のビデオをご覧ください。
いかがですか?結構スマートなボイス変換ができていると思いませんか?いわゆる声にエフェクトを掛けて変換するボイスチェンジャーとは異なり、声そのものを別の声、つまり結月ゆかりの声に置き換えられるというのが、Voidolの特長。ただし、それなりの演技力は必要となるので、女性っぽくしゃべらないと違和感があるのは事実ではあるのですが、改めてすごい技術だと思います。
このデモはしゃべりをリアルタイムに変換したものでしたが、歌声も変換できるのもVoidolの大きな特徴。これまでも歌声の変換ができたのですが、今回の結月ゆかりの場合、トーク用と歌声用が選択できるようになっており、歌声用を利用することで、よりスマートな歌声が出せるようになったのも大きなポイントです。
ご存知の方も多いと思いますが、上記ビデオで、出演してくれていたBumpyうるし(@bumpyurushi)さん、そしてちょむP(@chom)さんは、結月ゆかりの生みの親であるVOCALOMAKETS(ボカロマケッツ)のメンバー。お二人には、どうしてVoidolを出すことになったのか、実際できあがった結月ゆかりのボイスモデルをどう捉えているのかなど、Voidol開発元のクリムゾンテクノロジーの担当者、田中俊輔さんも交えてインタビューも行ってみました。
Voidol版結月ゆかりリリース・インタビュー
--結月ゆかりがVoidolに対応したのには正直驚きました。どんな経緯で今回のリリースとなったのでしょうか?
田中:今年2月、私のほうから、VOCALOMAKETSさんに打診させていただきました。結月ゆかりをVoidolにしたら絶対人気が出ると思ったので。
Bumpyうるし:おじさんが、ゆかりになれるっていうのは面白い。田中さんから話を聴いて、これ、ぜひ、やりたいと思ったんですよ。
ちょむP:ゆかりコミュニティーって、技術系の人が多いんです。そうした人なら、Voidolのようなシステムはみんな簡単に使えると思いました。これまで、ゲーム実況やVTuberなどをする方で、VOICEROIDを使ってリアルタイムにしゃべらせる人も結構いたので、ボイスチェンジャー的なソフトでゆかりになれるのなら、需要は確実にあるだろうと思っていました。
ーー先日、結月ゆかりがCeVIO AIに対応するというニュースも上がっていて、今回のVoidol対応。込み入った話を伺うようで恐縮ですが、これまでVOCALOID、VOICEROIDを出してきたAHSとの関係は大丈夫なのでしょうか?
Bumpyうるし:もちろん大丈夫ですよ(笑)。結月ゆかりの活躍の幅を広げたいという考え方は最初からあり、VOCALOID、VOICEROID、exVOICEなど展開してきました。ただ歌うだけ、しゃべるだけじゃなく、つながりを持たせてひろげていきたい。そこにCeVIO AIが登場し、Voidolがあったので、対応させいきたいと考えたのです。もちろん、いち早くAHSさんにも相談し、快くOKをいただいていますし、これからもVOCALOID、VOICEROID、exVOICEを伸ばしていきたいと思っています。
ーー以前、VOCALOIDやVOICEROIDのライブラリ制作に関してお話を伺ったことがありましたが、収録にも編集にもかなり時間がかかった…ということをおっしゃっていました。このVoidolに関してはどうだったんですか?
Bumpyうるし:7月末に石黒千尋さんにスタジオに来てもらって、1日で録音しました。ただ聴いていて大変そうだなと思いましたね。しゃべりのほうは、まあスムーズだったのですが、歌声のためのメロバージョンが、独特な音程で、予測不能な音程というか…(笑)。あれをスマートに歌い切った石黒さんは、さすがプロだと感じましたよ。
田中:いや…すみません。ただ、あのメロディー、しゃべり言葉を音階にしたような感じでして、なんとか日本語の範囲で、日本語としてのイントネーションが崩れないようなメロディーにしたつもりなんですが…(笑)。
ーーこれまでのVoidol、変換先のキャラクタを選ぶ一方で、変換元の声を男性1、男性2、女性1、女性2といったものから、自分に合うものを選んで使う形でしたが、なかなかうまくいかない…という人もいたように思います。
ちょむP:私もうるしさんも、実際に試してみたところ、どうもしっくりした声にならなかったんです。うるしさんが、
田中:はい、自分の声に似たパターンを選ぶことで、よりスマートに変換ができるようになるので、パターンを増やすことで、より自分の声に近い人を設定できるようになるので、VOCALOMAKETSのみなさんにも、収録をお願いしたのです。
Bumpyうるし:私、ちょむさんのほか、かごめPさん、いぶし銀次さんの4人の声も入れたので、元の男性1、男性2に加えて男性4~男性6までを追加できました。ただ、この4人の声はスタジオではなく、各自の家やかごめさんの自宅スタジオで録音を行いました。やはり、その予測不能なメロディーの歌に苦労して、素人の私の場合は、4日くらいかかりましたよ(笑)。
ーーでも7月末に収録して、もう発売できてしまうんですね。そこからのボイスモデルづくりは、比較的スムーズなんですね。
田中:そうですね、収録さえできてしまえば、それほど複雑な作業ではないので、予定していたスケジュールで発売することができました。今回はじめて歌用のモデルが登場した格好ですが、必ずしもしゃべりはトーク用、歌はSINGER Verを使うのではなく、逆にしてみるとよりうまくいく……なんていうケースもあるので、ぜひ、いろいろと試してみてください。
ちょむP:変換元の設定を変えると、やはり声は変わるし、うまくいくもの、いかないものがあるので、ぜひいろいろと試してみてください。ただ普通にしゃべると、なかなかゆかりっぽく聴こえないので、演技の練習は必要そうですね。
Bumpyうるし:うまく使えば、「これは100%ゆかりだ!」という人も出てくるかもしれません。ぜひそういうのにも期待したいですね。
では、その歌声の変換、どんな感じなのか、田中さんに歌ってもらいながら、Voidolに標準搭載されているボイスモデル、音宮いろは、そして結月ゆかりを切り替えてみたのが、こちらです(撮影時、結月ゆかりのボイスモデルは開発中のプロトタイプだったため、画面の選択肢が製品版とは少し異なっています)。
聴きなれたVOCALOIDの歌声とはちょっと違うものの、結月ゆかりっぽさがそれなりに出ているように思いました。またこのビデオを見てお気づきだったと思いますが、この変換、Cubase上で起動させたVSTプラグイン版のVoidolを使っています。今年1月に「バ美肉ツールのVoidolがVSTプラグイン化を実現。DTM制作でのボーカルに新旋風が巻き起こるか!?」という記事でプラグイン版がリリースされることを紹介していましたが、ようやく製品がリリースされたわけなのです。
結月ゆかりの変換元は男性1~6、女性1~2があり、それぞれにSinger Verも用意されている
ちなみにWindowsにおいては64bitのVST3版、macOSにおいては64bitのVST3版およびAU版があり、多くのDAWで利用可能になっています。これらは従来のスタンドアロン版のVoidolとは別製品という扱いで、Voidol Plugin Packageとして8,000円で発売されました。このパッケージ内には、Window版、macOS版のプラグインに加え、スタンドアロン版も収録されています。
ボイスモデルを追加するにはスタンドアロン版が必要。操作的にはボイスモデルのファイルをドラッグ&ドロップするだけ
DAWで使う場合は、プラグイン版だけのインストールでいいのですが、ボイスモデルの追加はプラグイン版ではできないため、スタンドアロン版を介して作業する必要があります。
simpαtixの寺嶋由芙さんの声に変身することが可能に…
なお、前述のとおり、今回のボイスモデルとしては結月ゆかり(4,500円)のほかに、simpαtixの高井つき奈(3,800円)、寺嶋由芙(3,800円)のそれぞれが新たに発売になります。またsimpαtixのキャラクタが2つ追加されたのを記念して、以下のようなオーディションも開催されるので、ぜひ、参加してみてはいかがでしょか?
【simpαtix楽曲オーディション開催のお知らせ】
プラグインと寺嶋由芙・髙井つき奈のボイスモデル発売に合わせてsimpαtixの楽曲を一般に募集するコンペを開催します。
Voidol Pluginを使ったボーカルデータ入りの楽曲をご応募ください。
楽曲はプロ、アマ問わずご応募いただけます。
採用となった楽曲は、simpαtixの次作以降のシングル、アルバムに収録されます。応募先などの詳細はsimpαtixのWebページ等をご覧ください。
なお、今回の新製品リリースに合わせ、iOS版のVoidolであるVoidol:mobileも20%オフのキャンペーンを実施しているとのこと。対象となるのはアプリ内購入で追加するボイスモデル。iOS版はもともと本体アプリが無料ですので、まずはこれを入手した上で、試してみてはいかがですか?
※2020.10.20追記
2020.10.13に放送した「DTMステーションPlus!」から、第161回「Roland Cloudで手に入れよう!ZenbeatsとZENOLOGY Pro」のプレトーク部分です。「結月ゆかりも新キャラとして登場! 自分の声をリアルタイムに別キャラに変えられるVoidolのプラグイン版が誕生」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
Voidol製品情報
【価格チェック&購入】 ※9月30日AM10:00現在、Amazonは発売準備中の状況です
◎Amazon ⇒ Voidol Plugin Package
◎楽天ブックス ⇒ Voidol Plugin Package
◎Amazon ⇒ 結月ゆかり , 高井つき奈 , 寺嶋由芙
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◎App Store ⇒ iOS版 Voidol