8月28日にKORGから新世代のvolca sampleが発売されました。旧volca sampleは、発売当初、volcaシリーズ初のデジタル製品でもあったため大きな話題になりましたが、小型サンプラーとして便利で、価格も手ごろであったため、その後もベストセラー製品として多くのユーザーに親しまれてきました。そのサンプルシーケンサ、volca sampleが、今回6年の時を経て大きくリニューアルしました。一見、カラーバリエーションの登場のようにも見えるのですが、実は中身が大きく進化しており、これまでのvolca sampleユーザーにとっても十分追加導入する価値のある製品に仕上がっています。
この新世代のvolca sampleにはUSB端子が搭載され、ここを通じてWindowsやMacとサンプルデータのやり取りを行ったり、MIDI IN/OUTとして使うことで、DAWとの連携も可能になりました。またサンプルスロットが旧世代から倍に増えたり、シーケンサもさらに使いやすくなるなど、便利な機能が数多く追加されています。さらにデフォルトで入っているサンプルライブラリがすべて一新されているのも大きなポイント。先日KORG本社に伺い、新世代のvolca sampleについて、企画・開発担当の山田嘉人さん、サウンド担当の岡本達也さんにお話しを伺ってみました。
--今回、新世代のvolca sampleをリリースされましたが、改めてvolca sampleとは何なのか教えてください。
山田:volca sampleは発売して以降、世界中で愛用され続けているシンプルながらもビートメイクに必要な機能がすべて搭載されているサンプルシーケンサです。旧volca sampleは、volcaシリーズの中では4番目の製品にあたり、volcaシリーズ初のデジタル製品でした。volcaシリーズはアナログ・シンセサイザーのvolca beats/bass/keysから始まり、これまでに10機種をリリースしています。今回の新世代volca sampleはシリーズ11番目の機種となり、USB端子の搭載、ファクトリー・サンプルの一新、サンプル容量の増設などを実現するとともに、さまざまな音楽的な機能を新たに搭載しています。これまでvolca sampleを使っていた方も、そうでない方も、より強化された新世代volca sampleを触ってもらいたいですね。
--ところで、なぜvolca sampleの新世代を出すことになったのですか?
山田:volca sampleは、発売から6年近く経ち、volcaシリーズの中でもかなりのヒット商品です。サンプラとして十分な機能を持ち、ハードウェアの中では、市場最安で1番サイズが小さいところが、ユーザーに受け入れられているところだと思います。ヒット製品なので、当然、そのまま続けたいところだったのですが、内部の電子部品が生産終了となってしまい入手できなくなったため、継続生産が難しくなってしまったのです。少し裏話になってしまいますが、電子部品の供給が止まることは頻繁にあり、20年近く生産を続けられているmicroKORGなどは、奇跡的ともいえるものなんですよ。残念ながら大手半導体メーカーの合併などが重なり、volca sampleが作れなくなってしまったので、これをチャンスと捉え、新世代のvolca sampleにリニューアルすることにしたのです。単にパーツの交換ではなく、6年前にはできなかったことを数多く実現させて、今回このような形でリリースしました。
--なるほど、そのような経緯だったんですね……。当時できなくて今回実現したこととは何なのでしょうか?
山田:大きいところは、サンプルデータのPCからの流し込みです。サンプルの管理などをPCから行えるようにするということが、1番実現したいところでした。今回、volcaシリーズとして初めてUSB端子を搭載したことにより、WindowsやMacで立ち上げたvolca sample専用ライブラリアンソフトを使って、サンプルの管理ができます。このソフトにWAVファイルを読み込ませることで、volca sampleへ転送することができるし、逆にvolca sampleからサンプルを引き上げることも可能です。
ーーサンプリングレートやビット解像度など、ファイルフォーマット的にはどうなっているんですか?
山田:volca sampleの内部的には31.25kHzのサンプリングレートで、16bitという、ちょと変わったフォーマットです。ただ、WindowsやMacのライブラリアンソフトでは、そうしたことを気にしなくてもいいよう、31.25kHz/16bitにコンバートした上で転送するようになっています。31.25kHzという、あえて高音域が落ちるフォーマットにしたことで、ちょっと時代を感じる音になっているのも一つの音作りのポイントです。
--ちなみにこれまでのvolca sampleでは、サンプルの送受信はどのように行っていたのでしょうか?
山田:自分のサンプルを入れるには、専用iOSアプリAudioPocketを使う必要がありました。そこでは、QAMというデジタル変調を使ってデータ伝送を行っており、当時は面白がられたりしていましたね。社内では“ピーガ-”なんて呼んでいますが、大昔のモデムなどと同じ方式です。ただ、ピーガーでは転送に時間が掛かりますし、当時のiPhoneやandroidでは検証しているのですが、iPhoneなどからヘッドホン端子がなくなった現在、最新のハードウェアでの互換性を100%追いかけられているわけではないのが実情です。もちろん新世代のvolca sampleでも対応させてはいますが、サンプルデータのやり取りは、volca sample専用ライブラリアンソフトを使っていただくことを推奨しております。
岡本:ちなみに旧volca sampleは、ソフトウェア開発キットSDKを公開していまして、フォーマットをオープンにして転送用ソフトを自由に開発できるようにしていました。その結果、WindowsやMac上でも、サンプル転送ソフトや凝った編集のできるソフトが誕生しました。サードパーティー製のソフトについては、旧volca sample公式ページにまとめているので、ぜひご覧になってみてください。
--ユーザーが作ったソフトが充実しているのはいいですよね。volca sampleのエミュレータがあったりするのも楽しいところです。新世代のvolca sampleでは、volca sample専用ライブラリアンソフトを使ってサンプル転送をするとのことですが、そのために用意されたUSB端子ではMIDIのやり取りも可能なのでしょうか?
山田:volcaシリーズにはもともとMIDI INのMIDI端子は搭載されていましたが、USB端子を搭載したことにより、はじめてMIDI IN/OUTどちらも扱えるようになりました。volca sampleを外部シーケンサとして使える!」なんて声もありましたが、そうしたことも可能にはなっています。もっともハードウェアのシンセの接続には、変換機材などが必要になりますが、PCと接続が可能になったので、DAWなどで活用していただけます。たとえば、volca sampleをシーケンサとして使って、DAW上のソフト音源を鳴らしたり、反対にDAW側からvolca sampleを鳴らすこともできますし、MIDI Clockを使って同期させることも可能です。これにより、新世代のvolca sampleを使える幅が広がったと思います。
--MIDI IN/OUTが扱えるようになったのはポイントですね。ほかにも新世代のvolca sampleで新しく搭載された機能について教えてください。
山田:まず旧volca sampleのときよりもメモリの容量が倍に増え、サンプルのスロット数も倍の200個まで保存可能になっています。またデフォルトで入っているサンプルプリセットを一新しました。
岡本:サンプルプリセットを上書きする形であれば、200個丸ごと自分のサンプルだけにすることも可能です。元のサンプルプリセットは、ライブラリアンソフトからいつでも戻すことができますし、旧volca sampleのファクトリーサンプルプリセットも流し込めます。新しいサンプルプリセットに関しては、サンプルを加工して遊んでいただきたいという意図がありまして、あえて音楽的でない効果音も収録しています。ワンショットを並べてドラムを鳴らすだけでも楽しいのですが、サンプルの1部分だけを切り抜いて使ったり、ピッチを変えてみたり……、いろいろ試してほしいです。もちろん即戦力で使えるドラムサンプルも備えておりまして、今回はローファイで味のあるヒップホップ寄りの音色を強化しています。旧volca sampleはエレクトロやハウス寄りのサンプルが多いので、使い分けることも面白いと思います。また今回の発売と同時に、アーティストコラボのサンプルパックも用意しているので、こちらもチェックしてみてください。
--ほかにも改良された機能はありますか?
岡本:パターンチェインというパターンを繋いで再生する機能が実装されています。旧volca sampleのソング機能をよりシンプルに変更しました。後発のvolcaシリーズにも搭載されている機能でして、本来16ステップでループするシーケンスを繋ぐことで、32ステップ、48ステップ……としてループさせることができます。またステップジャンプの機能を改良しました。これは、再生中にステップに触れると再生位置を自由に飛ばすことができる機能なのですが、旧volca sampleでは飛んだら飛びっぱなしだったものを、今回は指を離したら本来走っていた位置に戻る挙動も選べるようになりました。小節がずれず、DJエフェクト的なプレイがやりやすくなっています。スタートディレイというパラメータも新たに追加されました。パートごとに発音のタイミングを遅らせる機能でして、これでもたったノリを表現することが可能です。モーション・シーケンス機能と合わせて使えば、特定のステップのみ遅らせたりもできるので、かなり複雑なグルーヴや連符表現などもできますよ。
--かなり進化していますね!
岡本:そして新世代のvolca sampleにはDTM用音源を中心とした音楽ソフトウェアが付属します。KORG Collection – M1 Le、UVI Digital Synsations、AAS Ultra Analog Session、AAS Strum Session、AAS Lounge Lizard Session、Propellerhead Reason Lite、Skoove プレミアムプラン 3ヶ月トライアル、KORG Gadget 2 Le for Mac、Ozone Elementsが全部手に入るてんこ盛りな内容となっています。また、SEQUENZ volca rackという専用ラックスタンドが別売されています。volcaシリーズ4台をぴったり設置できるので、シリーズを何台か持っている方におすすめです。
--ところでUSB端子が搭載されましたが、ここから電源をとることも可能なのでしょうか?
山田:USBバスパワーでの駆動には対応していません。USB駆動については社内的にも検討したのですが、接続先によってUSB 1.1、USB 2.0、USB 3.x…など、さまざまな規格が混在しているのが現状です。すべてのケースで安全に使うのは難しいため、今回は見送りました。単三電池での動作は従来のvolca同様可能です。
--この新世代のvolca sample、さまざまな使い方ができそうですが、あえて何かお勧めの使い方があれば教えてください。
岡本:たとえば旧volca sample発売時には「ピアノのサンプルひとつからドラムキットを一揃い作る」動画が公開されていました。ピッチダウンして低音を作ったり、ごく短いループでグラニュラーのようなハットを作ったり。新世代のvolca sampleでは自前のサンプルも扱いやすくなったことですし、知っている音の知らない側面を探し出すようにどんどん加工していくのは楽しくてお勧めです。DAWほど極端な加工はできませんが、サンプルを自分の手で捏ね回すには丁度よいパラメータを揃えています。
--最後にDTMステーション読者に向けて一言お願いします。
山田:ポイントはシンプルな機材というところにあると思います。今いろいろな特徴のある機材が出ていますが、一度基本に立ち返って、ベーシックなサンプラでどこまで遊び倒せるかチャレンジすると、新しい発見があると思います。たとえば、DAWだと何かと作りこみすぎてしまうところを、リアルタイムで使っていくサンプラーで直観的にプレイしていくと、これまでになかったアプローチを思い付くかもしれませんね。
岡本:電池駆動で手元に置いておけるものなので、気軽に触ってほしいですね。なにも考えずにパラメータをいじってみるだけで、思いがけない発見があるかもしれません。気張らずにWAVサンプルと遊ぶ・音に触る感覚を味わっていただければ!
アーティスト・コラボレーション
インタビューにもあった通り、新世代のvolca sampleを記念して、最新の音楽シーンで話題のアーティスト2人とコラボレートしています。以下の2人のサンプルパックを無料ダウンロードできるので、ぜひvolca sampleに入れてみてはいかがでしょうか?
Moe Shop ■ Moe Shopサンプル・パックのダウンロードはこちら ■ Moe Shopのvolca sampleデモ曲はこちら |
フレンチエレクトロと日本のポップミュージックから影響を受けた、唯一無二のサウンドがネット世代を中心に絶大な支持を受け、年間のYouTube再生数は1000万views、Spotifyでも1300万playsを超える。 2018年に日本からラッパー、シンガーをフィーチャリングとして迎えた「Moe Moe」EPを発売し、東京でのリリースパーティーも即ソールドアウト。AnimeExpo (US), Dokomi (GER)などの世界のフェスティバルにも出演、熱狂的に迎えられる。2019年には、人気VtuberのKMNZのプロデュース、chelmicoのリミックス、TEMPURA KIDZの曲をリリースするなど、精力的に活動している。 ジャパンカルチャーに影響を受けた新しいジェネレーションのクリエイターとして、世界のクラブシーンやゲーム業界から注目されるトラックメイカー/プロデューサー。
デモ曲・サンプルパックについて |
TORIENA ■ TORIENAサンプルパックのダウンロードはこちら ■ TORIENAのvolca sampleデモ曲はこちら |
2012年京都にて活動を開始、2013年に日本初のチップチューンレーベル「MADMILKEY RECORDS」を立ち上げ。作詞・作曲・編曲、アートワーク、ボーカルを全てセルフプロデュースで手掛けている。GAMEBOY実機とDTMを使った、チップチューンを中心としたキャッチーかつハードコアなサウンドを得意とし、縦横無尽にステージを暴れまわるスタイルが特徴。2018年10月にMADMILKEY RECORDSより、初の全国流通となるフルアルバム「SIXTHSENSE RIOT」をリリース。 「HYPER JAPAN 2017(イギリス)」「MAGFest 2018(アメリカ)」へ出演するなど、海外からの人気も高い。SEGA「Team Sonic Racing」、TVアニメ「邪神ちゃんドロップキック」挿入歌、ソフトバンク「MONEY RUN」BGM・SE、CM「ゲオマート 買取キャンペーン篇」などに楽曲提供。デモ曲・サンプルパックについて 「フレーズを2種類、ブレイク1種類打ち込んでメインでなっているシンセ(TS_07)をPITCH/SPEED&EG INTで変えた差分を別MEMORYに保存しMUTEとSOLO、保存したフレーズを即興でリズムに合わせて操作して曲を作ってみました。 もともとプリセットで入っている音源が優秀なのでそちらも使用し、追加で欲しい音をDAWで用意と書き出しをしてサンプルとして使ってます。 今回DEMO曲で使用しなかった音も入っているので是非使ってみてください。」 |
※2020.10.20追記
2020.10.13に放送した「DTMステーションPlus!」から、第161回「Roland Cloudで手に入れよう!ZenbeatsとZENOLOGY Pro」のプレトーク部分です。「新世代のvolca sampleが登場。USB端子の搭載、新機能の追加、サンプルライブラリの一新……、強化ポイントを開発者に聞いてみた」から再生されます。ぜひご覧ください!
【関連情報】
volca sample製品情報
volca rack製品情報
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