アメリカのベンチャー、Artiphon(アーティフォン)から、手のひらサイズの新感覚の電子楽器、ORBA(オルバ)が発売されました。これは、ドラム、ベース、コード、リードの4パートを演奏することができ、内蔵ルーパーを利用することで、作曲も可能でありながら、11,000円(税別)という手ごろな価格のデバイス。演奏方法が非常にユニークで、タップしたり、押したり、スライドしたり、スピンさせたり、振ったり……することで、直観的に演奏することができ、内蔵シンセサイザーと内蔵スピーカーを搭載しているので、これまでになかった、まったく新しい電子楽器となっています。
またUSB端子を搭載するとともにBluetooth MIDI機能を備えているので、PCやスマホと接続すれば、手持ちのソフトシンセサイザーを演奏したり、DAWのコントローラーとしてフィルターなどを操作することもできるのも、ORBAの重要な特徴です。Windows、Mac、Andloid(9月*日現在ベータ版)、iOSそれぞれに専用のアプリも用意されているので、これを使ってオーディオやMIDIを書き出したりすることが可能。実際このORBAとは、どんなデバイスなのか、試すことができたので紹介してみましょう。
開発元のArtiphonは、以前INSTRUMENT 1というMIDIギター風の面白い電子楽器をリリースしており、国内外問わず話題になりました。DTMステーションでもINSTRUMENT 1については、「ギター、バイオリン、ピアノやドラムも演奏できる万能なMIDIギター!?Artiphon INSTRUMENT 1が面白い」という記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。
さっそくですが、ORBAについて公式から動画が上がっているので、これを見てみてください。どんなことができるのか、どんなものなのかが分かると思います。
いかがでしょうか?動画には、ORBAの開発者で、CEOでもあるマイク・ブテラさんも登場していましたね。では、もう少し具体的に見ていきましょう。ORBAは、手のひらサイズの楽器。デザインは、お椀やティーカップなどの日用品、果物を半分に切った形、スマートフォンやゲームコントローラーからインスパイアされ作られています。手に持ったり、机の上に置いたりして演奏し、ジェスチャーと呼ばれるさまざまな演奏方法を用いて、直観的に操作できます。
ジェスチャーには、タップやプレス、スピン、シェイク……などが存在し、ジェスチャーごとに同じ音色でも違う表現を付けることができます。ここには、内蔵されているタッチセンシティブパッドや加速度計、ジャイロスコープ…といった、多くのセンサーが効いており、なかなかいい操作感です。画面の無いORBAでも、LEDやバイブレーション機能が考えられて設計されているので、簡単な使い方であれば、すぐにマスターできます。
ジェスチャーについて、もう少し詳しく見ていきましょう。タップは、1番オーソドックスな演奏で、パッドをタップすると発音し、ORBAはベロシティセンシティブなので、強くタップすれば大きな音が出て、弱くタップすると小さな音がでます。
また、タップしてパッドの上で指を左右に動かすとビブラートを効かせることができます。さらにパッド上で指をタップしたままホールドし、圧力を加えると、プレスというジェスチャーになり、ORBAシンセのモジュレーションを調整することができます。パッド内を指で押して、ORBAの中心から端まで内外に動かすと、エフェクトの明るさを操作するといったこともできます。
傾けると、普通のキーボードに装備されているモジュレーションホイールと同様の音色変化があったり、回転させたり、手に持って動かしたり、振ったりすることで、いろいろなサウンドエフェクト効果を得ることができますよ。
ORBAの側面には、ステレオミニジャック、USB Type-C、電源ボタン、音量ボタンが搭載してあります。ステレオミニジャックにケーブルを接続して、スピーカーやイヤホンから音を出すことも可能ですが、内蔵のスピーカーが搭載されているので、電源を入れてすぐに演奏することができます。後述しますが、USB Type-Cや搭載されているBluetooth MIDIを使って、PCやスマホと接続しORBAの設定を行ったり、MIDIコントローラーとして機能させることも可能です。
ORBA内蔵音源は、ドラム、ベース、コード、リードの4パート。音色の切り替えは、中央にあるAボタンを1回タップして次のパートに切り替えるか、Aボタンを長押しした後に目的のパートをタップすることで選択したモードになります。
ドラムの音色は、以下の画像のようにサウンドが割り振られており、側面を叩くジェスチャーを入れれば、9つのドラムサウンドを演奏できます。またパッド8を押したままORBAを振ると、本物のシェイカーのように演奏することも可能です。
ベース、コード、リードに関しては、設定したキーの音階が自動で割り振られるので、どこを押しても音を外すことはなく、初心者の方でも気軽に演奏することができます。音楽の知識がなくても、コード演奏ができたり、リードはペンタトニックスケールにチューニングされているので、なんとなくORBAを演奏するだけでも、カッコよく弾けますよ。またルーパー機能も搭載してあるため、ドラム、ベース、コード、リードの4パートを重ねて作曲したり、パフォーマンスすることも可能。
再生/停止ボタンやBPMボタンがあるので、ORBA単体だけでも十分楽しむことができますが、専用のアプリを使うことで、音色プリセットを変更したり、オーディオやMIDIの書き出しをすることが可能なので、そちらも見ていきましょう。
ORBAアプリケーションは、Windows、Mac、Andloid、iOSのそれぞれに対応しており、付属のUSB Type-CケーブルかBluetooth MIDIを使って接続します。アプリをインストールして立ち上げると、まずORBAの使い方動画が表示されます。そして「THANKS,GOT IT!」を押すと、メイン画面に切り替わり、ここから各音源の音色を変更したり、さまざまな設定を行うことができます。ただ、Android用アプリは現時点では開発中で、ベータ版のみの提供。ベータ版はフォーラムからメールアドレスを登録することで入手で
まずは、ORBAとORBAアプリを接続します。右上のORBAアイコンを押すと、BLUETOOTH MIDI DEVICESが画面が表示されるので、ここからArtiphon Orbaを選択します。ケーブルを用いて繋ぐ場合は、接続すると自動で認識するので、これでOKです。
試しにベースの音色を変更してみましょう。画面のBASSを選択し、左側にあるBROWSEを選択します。タブからPRESETSを選択すると、ここに9種類のサウンドプリセットが用意されています。好きなプリセットを選んで、ロードするとベースの音色が変更されます。ドラム、ベース、コード、リードそれぞれで、自由にプリセットを選択することができます。現在は9種類の音色となっていますが、今後ここのプリセットは追加されていく予定のようです。
またORBAアプリでは、SONGの管理や設定ができます。上部にある鉛筆マークを押すと、ここから現在のSONGのテンポやキーの設定、ソング名などの情報を入力することができます。テンポやキーを変更すると、ORBAに反映され、その設定での演奏が可能になります。
SONGの管理は、BROWSEを押すとこれまで作成したSONGが表示されるので、ここから操作可能です。SONGごとに録音したデータや音色が管理されており、NEW Songを選択すると新しくSONGを作成することができます。カバーアイコンやタイトルを自由に設定できるので、分かりやすく管理することができます。
そして、作成したSONGのオーディオやMIDIデータの書き出し、ビデオとして書き出しができます。Shareを押すと、「CREATE VIDEO」「EXPORT AUDIO」「EXPORT MIDI」が表示され、MP4ファイル、WAVファイル、MIDIシーケンスとしてエクスポート可能。ビデオは、そのままSNSにアップロードしてもいいし、オーディオやMIDIはDAWに持っていて編集したり、音を足したりすることができます。ただ、ここの書き出し機能は、まだうまくいったりいかなかったりする状態。アップデートで改善されるはずなので、今後に期待ですね。
ここまでは、ORBAアプリケーションと接続した使い方を紹介しましたが、ORBAはDAWやスマホアプリのソフトシンセを演奏することもできるので、これについても紹介していきましょう。試しに手元にあるiPadで、bismarkさん開発の多機能シンセアプリであるbs-16iを起動し、Bluetooth MIDIで接続してみました。
接続してパッドを演奏すると、ドラムモードではドラムが鳴り、ベースモードではベースが鳴り、コードモードではコードが鳴り、リードモードではリードが鳴ってくれました。ORBA単体で演奏したときと、同じ操作でフィルターやモジュレーションが掛かり、ドラムモードでパッド8を押しながら振れば、シェイカーも鳴らすことができます。iPad側で鍵盤を弾いて、ORBAでモジュレーションなどサウンドに変化をつけることも可能です。
ほかのサードパーティー製のアプリでもORBAは使用することは可能で、たとえばFL Studio MobileやGarageBandといった、スマホのDAWでも、MIDI対応のソフトウェアであれば動作します。
またDAWとの接続は、DAWを立ち上げてMIDIデバイスの設定から、ORBAを選択すればOK。Macの場合はBluetooth MIDIに対応していますが、Windowsは公式には対応していないので、付属のケーブルを使って接続します。
実際繋いでパッドを演奏してみると、ちゃんと使うことができました。この場合ジェスチャーは、特定のMIDIアサインに関連付けられているので、必要であれば設定してください。
また各パッドはモードによって以下のようなMIDIメッセージを送信するようデフォルトで設定されています。以下はドラムのみですが、ほかのモードについてもマニュアルに記載してあります。
たとえば、コントロールチェンジを利用して、DAWの好きなパラメータをORBAで操作すれば、これまでになかった表現ができそうですよね。ノート入力をORBAでしないで、鍵盤で演奏し、ORBAをコントローラーとして使ったり、いろいろなことができそうです。
価格も11,000円と手ごろな、この新しいMIDIデバイスORBA。MIDIキーボードや、従来のMIDIコントローラーとは異なる第3のMIDI入力デバイスとして使ってみてはいかがでしょうか?
※2020.10.05追記
2020.09.29に放送した「DTMステーションPlus!」から、第160回「KOMPLETE 13 & MASCHINE+」のプレトーク部分です。「手のひらサイズの新感覚な楽器ORBAが発売開始!USB&Bluetooth MIDIの活用で、これまでにない表現力を実現」から再生されます。ぜひご覧ください!
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