というプロ用のイヤモニがリリースされているのはご存知ですか?長年レコーディング業界で愛用されているダイナミックマイクのMD 421や定番のガンマイクのMKH 416、先日創業75周年を記念してアニバーサリーモデルが発売されたHD 25……など、プロの音楽制作現場で使用され続けている名機たちを世に送り出しているSENNHEISER(ゼンハイザー)が、本気を出して開発したのが、この2つのイヤモニ。
実はこれまでSENNHEISERは、コンシューマー向けのインイヤーは開発してきたものの、プロユーザー向けに開発されたイヤモニはなかったんです。そんな中開発されたIE 400 PROとIE 500 PROは、イヤモニで定番のドライバのバランスド・アーマチュア・ドライバではなく、シングル・ダイナミック・ドライバを採用。この新開発したドライバは、高解像度であると同時に超低歪み率、幅広い再生帯域範囲を実現しており、ステージの上でも歪みが少ない分、大音量でなくてもモニタリングが容易。そのため耳への負担が従来のイヤモニに比べて、かなり軽減されるとのことなんです。サウンドも高い完成度を誇っているこのIE 400 PROとIE 500 PROを実際に試してみたので、どんな製品なのか紹介してみましょう。
ライブやリハーサルなど大音量環境で、正確に楽器やボーカルをモニタリングするために使用されるインイヤー・モニター、通称イヤモニ。ミュージシャンやマニュピレーター、PAエンジニア……など、ライブシーンに携わる人がメインで使うものではあるものの、外出先での楽曲制作といった場面でも、軽くて持ち運びしやすく、遮音性が高いので、便利に使うことができます。
そんなイヤモニの心臓部であるドライバ、つまり音を出すスピーカー部分にはバランスド・アーマチュア型とダイナミック型の大きく2種類が存在しています。多くのプロユーザー向けのイヤモニは、補聴器用ドライバの発展形であるバランスド・アーマチュア型を採用しています。このバランスド・アーマチュア型のドライバは高域の繊細な音作りが可能で、入力に対して高感度なドライバユニットである一方、低域の再現性が不得意とされています。
それに対し、IE 400 PRO、IE 500 PROが採用したのはダイナミック型。このダイナミック型は、再生帯域の広さや中低域の再生能力、音の元気さなどを自然に得ることができるとされています。ただ、複数の帯域に分けてドライバユニットを配置するバランスド・アーマチュア型と比べて、1つのドライバユニットで全帯域をチューニングするので、技術力が試される機構でもあるのです。
そもそも、SENNHEISERがダイナミック型を採用した理由として、次のようなことを挙げています。
そうして誕生した、IE 400 PROとIE 500 PRO。この両機器には、専用のケースが付属しており、イヤーチップは耳の形に変形するフォームタイプとシリコンタイプが、それぞれS・M・Lと計6つのタイプから、選択できるようになっています。またカラーバリエーションは、CLEARとSMOKY BLACKの2色展開。
実際にそれぞれ音を聴いてみると、IE 400 PROはSENNHEISERのヘッドホンHD 25に近いキャラクターを持っており、パワフルな出音で中低域に特徴があり、ドラマーやベーシストに向いているサウンドをしています。低域がしっかり出ているのに、高域もきらびやかなので、全体的にはバランスがいいなと感じました。グルーブをしっかりモニタリングできるので、リズム感を重視する方にぴったりだと思います。
一方IE 500 PROは、もっとフラットなサウンドなので、ボーカリストやギタリスト、音楽制作をするのであれば、こちらかなと思います。低域から高域まで、ハイクオリティな出音で、SENNHEISER特有の「音楽を楽しみながら聴く」ということもできるし、モニタリングもしっかりできるサウンドが特徴です。そして、なにより驚いたのは音場の広さ。両機器とも広々とした音場で、解像度が高く、新しい世代のイヤモニに相応しいクオリティだと思いました。また写真を見てもわかる通り、ケーブルもIE 400 PROとは異なるもので、ノイズ低減のためにスパイラル状に設計されています。これによりイヤモニ使用時に服で擦れても歪みがより小さくなるとのこと。。PVCケーブルの導体には銅とアラミド繊維を採用し、丈夫さと柔軟性に優れています。
※注 IE 40 PROと、IE 400 PRO/IE 500 PRO は、ケーブル互換性がありません
さらに両機器共通でいえるのは、新しい広帯域ダイナミック・ドライバを採用しているので、再生帯域が広いということ。しっかりした低音がありながら、高域のヌケもよく、中域が出てくるイヤモニはめずらしいです。また単純に音がいいので、ステージのみならず、音楽制作・リファレンス……、などの用途でも使えそうです。ちなみにIE 400 PROとIE 500 PROは、上位・下位という関係性ではなく、あくまでサウンドキャラクターで分けられているとのことです。
また歪み率が低いのも大きな特徴で、これによりライブなどうるさい場所でも、音像がしっかりしているので、イヤモニの音量を上げすぎることがなくなります。一般的なイヤモニの場合、大音量で再生すると歪みが増えるので、ミュージシャンやボーカリストは自分の音を確認するために、さらに大きな音量をPAエンジニアにお願いすると思います。その結果、難聴になるケースも多いことも事実。だからこそ、IE 400 PROやIE 500 PROは使うユーザーのことを考えて開発され、超低歪み率を実現することにより、使う人の耳の負担を減らして、難聴を防ぐとのこと。また周りのノイズに関わらず、しっかりした音を聴けるので、たとえばリファレンス用途で、電車の中で使う際も、しっかりした音像で音楽を聴けると思います。
また、使われているドライバが1つということもあり、18gと軽量なのもポイント。装着は耳掛け方式で、外れにくく長時間装着可能。実際付けてみても安定感があり、ライブシーンにしっかり耐えられる作りをしていると感じました。さらにSENNHEISERが、このイヤモニを開発するにあたり、「オーディオコネクターの信頼性と堅牢性の向上」を重視したとのこと。たしかに多少派手に使っても大丈夫そうだな、という印象でした。
ケーブルは、両機器とも着脱式ケーブルが採用されており、IE 500 PROはシルバー色のツイストペアケーブルが使われています。ただし、ケーブル端子は独自規格となっているので、サードパーティー製のケーブルの種類は少なく、自分好みにカスタムしたい人には不向き。もし、断線時には交換用のケーブルが販売されているので、それを使う形になります。
以上、IE 400 PROとIE 500 PROについて紹介しましたが、ラインナップとしてはエントリーモデルのIE 40 PROも存在するので、初めてイヤモニを試すなら、ここから始めてみるのもよさそうです。位置づけとしてはエントリーモデルではあるものの、音がこもってしまうこともなく、解像度も高く、定位感や音場も優れています。ちなみにイヤーチップはシリコンタイプがS・M・Lの3つ付属しており、フォームタイプがMサイズのみ付いています。また専用の小型キャリングポーチも付属しているので、これに入れて持ち運ぶことが可能というものです。
そのIE 40 PROと比較すると、さすが上位モデルだけあってIE 400 PRO、IE 500 PROとも、より解像度も高く、クオリティーも上であるのはよくわかります。が、その価格差を考えると、IE 40 PROのコストパフォーマンスの高さは抜群だと思えるところ。どれを選ぶべきかは、人によって、目的によって変わってくると思いますが、個人的には、このIE 40 PROでも十分満足いくイヤモニであるという印象ですし、これなら衝動買いしても誰もが納得いくものだろうと思います。いずれもライブ用として、音楽制作用として、そしてもちろん普段の持ち歩き用としても活用できる、SENNHEISERのイヤモニ、機会があったら。ぜひ一度試聴して、他社製品とともに聴き比べてみると面白いと思います。
【関連情報】
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【価格チェック&購入】
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