コロナ禍を乗り切るための超強力マイク&レコーダーが誕生。エンジニアがいなくても絶対失敗しない録音ができるYellowtec iXmマイクレコーダー

ナレーションの収録やアフレコの収録など、普段であれば、レコーディングエンジニアがいるスタジオで行うのが当然の録音作業を、声優やタレント、アナウンサー自身が、自宅で行わなくてはなくてはならない……、このコロナ禍において、そんな状況が、あちこちで発生しています。できるだけキレイに収録するために、とマイクやレコーダー、オーディオインターフェイスなどを揃えるのはいいけれど、収録する本人が機材の扱い方を知らないと、操作方法を教えるのもひと苦労だし、いい音で録音するのは至難の業。

録音したデータを送ってもらうと、音が小さすぎたり、逆に大きすぎて音割れしていたり、ノイズに埋もれていたり……といった状況でまともに使えず。しかたなしにiZotope RX 7などを使って修復しようにも限界がある、というような話をしばしば聞きます。そんな問題を一気に解決してくれる非常に頼もしい機材が発売されました。ドイツのメーカー、Yellowtecが開発したiXmマイクレコーダーというものです。ド素人でもプロ並みの音質でレコーディングを実現できる、まさに魔法の機材ともいうべきもの。実際試してみたので、どんなものなのか紹介してみましょう。

素人でも簡単に、高品位なサウンドで録音ができるYellowtecのiXMマイクレコーダー

細かく説明するよりも、まずは以下のビデオを見れば、どんなものなのか、非常によくわかるので、ぜひご覧になってみてください。

この演技?に笑ってしまいましたが、これ、すごいと思いませんか?このささやくような小さな声と、がなり立てるような大きな声の両方を一気に録っていくのは、素人どころかプロのレコーディングエンジニアでも簡単なことではありません。

しかも録音した結果をProToolsで見ると、小さな声は持ち上げられ、大きな声は抑えられていてキレイに収まっているようで、再生した結果は、音割れすることなく、雰囲気もしっかり出てますよね。

ビデオ内で使っていたのと同じiXm YT5050。マイクヘッドは正面の音を収録する単一指向性のダイナミックマイク

今回、このビデオで使われていたのと同じiXm YT5050という機材を借りることができたので、本当にこんなことができるのか、自分でも試してみました。どんなものなのかな……と思ったら、ちょっと長めのワイヤレスマイクのような形状。

SM58(上)とiXm YT5050(下)。本体内にバッテリーやレコーディング機構がすべて入っている

SM58と並べてみるとその大きさの雰囲気がわかると思います。ビデオを見てもわかる通り、単なるマイクではなく、ここにレコーダー機能が搭載されているので、使い方はいたって簡単。電源を入れて録音ボタンを押せば、もうそれでレコーディングが開始され、録音を終えたら停止ボタンを押せば、もう終了。録音した結果は、ボトム部分に差し込んだSDカードにWAVファイル(設定によってBFW、MP2にすることもできる)で記録されるのです。

ボトム部にSDカードを挿入し、ここにWAVファイルで録音していく

試してみると、あまりにも簡単すぎる操作で録音できてしまって、やや拍子抜けするほど。せっかくなので、SM58での録音とどう違うか、比較してみることにしました。SM58のほうは、オーディオインターフェイスを経由してWAVで録音できるような状態にし、iXm YT5050とSM58をまとめて片手に持って、小さい声、大きい声を出してみたのです。

その結果が以下の2つの波形です。この違い一目瞭然ですよね。

SM58を用いて普通に録音した波形。小さい声は小さすぎ、大きい声は、レベルオーバー。

SM58のほうは、小さい声は本当に小さすぎて、録音レベルとして不適格な状況。また大きい声のほうは完全にレベルオーバーで音が割れてしまっています。

iXmマイクレコーダーを用いて録音した波形。小さい声も大きい声も適度な音量に収められている

それに対し、iXmで録音したほうは、小さい音はうまく持ち上げられて適正音量になっていると同時に、大きい音のほうは抑えられています。それでも小さい音と大きい音の差はしっかりついているので、再生してみても違和感がないのです。

でも、これはどうやっているのか?普通に考えるとAGC(自動音量調整)を使ったり、コンプレッサやリミッタをかけているのかな?と思うところですが、これだけの激しい音量差があると、ここまでにうまくは処理することは難しいところ。実はiXm内部にはLEA DSPエンジンなるものが搭載されており、入力レベルをチェックしながら、ヘッドアンプの増幅率をリアルタイムに調整するようになっているのです。しかもバックグラウンドノイズなども自動で検知して抑えてくれるようになっているのです。

上から通常の録音、AGCを使った録音、LEAを使った録音

まさにマイクの中に小さなエンジニアが入り込んで操作している……といった感じなのです。だからユーザーは、録音ボタンと停止ボタンの操作だけで、完璧なレベルでの録音をこなしてくれるのです。

録音した音を再生してチェックするためのボタンが並ぶ。電源操作もこれらを利用する

では、もう少し機能面などを見てみましょう。先ほど見た録音ボタン、停止ボタンのほかに、裏側には4つの再生用ボタンが用意されています。これらを使うことで、録音した音を再生して聴くことが可能で、その音はボトムにあるヘッドホン端子からモニターできるようになっています。あまり使うことはなさそうですが、ヘッドホン端子の隣には外部マイク入力端子も用意されています。

緑が3.5mmのヘッドホン端子、オレンジが外部入力端子

気になるのは、その下にある丸いノブだと思います。が、これは単純に電池の蓋。ここを回して開けることで、単3電池3本を入れることが可能になっており、これだけで8時間の動作が可能。実はiXmレコーダーには、さまざまなラインナップが用意されており、先ほど使ったYT5050の場合、内蔵のリチウムイオン電池も搭載されていて、それによって16時間、さらに単3電池x3で8時間の利用が可能というスタミナ。それに対し、一番安価なYT5080の場合は内蔵リチウムイオン電池がないので、単3電池x3での動作となっています。

クルクル回すと蓋が外れ、3本の単3電池が入れられるようになっている

もう一つ、iXmの大きな特徴はマイクヘッドの交換が可能になっているという点で、そのマイクヘッドに6種類のラインナップが用意されているということ。まず、マイクの種類としてYellowtecのダイナミックマイクカプセルを使ったiXmプロマイクヘッドBayerdaynamicのエレクトレットコンデンサマイクカプセルを使ったiXmプレミアムマイクヘッドの2種類があります。

マイクヘッドは取り外し、交換が可能

ダイナミックマイクのiXmプロマイクヘッドのほうは、高い音圧レベルに対応。エレクトレットマイクと比べると高い周波数での感度は低くなりますが、風によるノイズには強いのが特徴。一方エレクとレットマイクのiXmプレミアムマイクヘッドは小さい音でも録音が可能で、ダイナミックマイクと比較して高い周波数での感度が高く、ハンドヘルドノイズを軽減するショックマウントも備えているという特徴があります。

そのダイナミックマイク、エレクトレットマイクそれぞれに以下の3つの指向性が用意されており、計6種類となるのです。

無指向(オムニ)

静かな環境でのディスカッションや会話の録音に最適。

カーディオイド

フロントからのピックアップのため、背面から入り込むバックグラウンドノイズを遮断します。屋外でのイベントや様々な環境に適応します。

スーパーカーディオイド

カーディオイドよりピックアップ領域が狭いため、より大きなバックグラウンドノイズを遮断します(ただし、背面に少し感度がありますので注意が必要)。スポーツイベント、モータースポーツ、コンサートなど大きなノイズがあるイベント時のインタビューに最適です。

シチュエーションに合わせてマイクヘッドの交換ができる形ですが、普通は1つどれかを選べば十分なのでは…と思うところです。本体のほうは、リチウムイオン電池を内蔵するグレーのiXmと、内蔵しないブルーのiXm Podcasterがあり、マイクヘッドとの組み合わせによって製品が構成される形です。ただしiXm Podcasterはほかのマイクヘッドに交換することはできないので、YT5080における組み合わせのみとなっています。

型番 内容 実売価格
YT5010 iXm  + プレミアム ヘッド ・オムニ(無指向性) 150,000円
YT5020 iXm  + プレミアム ヘッド ・カーディオイド 150,000円
YT5030 iXm  + プレミアム ヘッド  ・スーパーカーディオイド 150,000円
YT5040 iXm  + プロ ヘッド ・オムニ(無指向性) 123,000円
YT5050 iXm  + プロ ヘッド ・ カーディオイド 123,000円
YT5060 iXm + プロ ヘッド ・ スーパーカーディオイド 123,000円
YT5080 iXm Podcaster + プロ ヘッド ・ カーディオイドのみ 89,000円

屋外での収録が多いのであれば、ダイナミックマイクヘッドを、屋内だけであればエレクトレットマイクヘッドがお勧めではありますが、結構いいお値段でもあるので、普通の収録でられば一番安い、YT5080でも十分なのでは……とも思うところ。

iXMマイクレーダーのシリーズの中で一番安価なiXM YT5080。電源は単3電池のみだが、8時間の利用が可能

つまり、内蔵バッテリーなしで、ダイナミックマイクのカーディオイドに限定されますが、本体の基本性能はまったく変わりはありません。

オプションとして販売されているウィンドスクリーンをかぶせたところ

またオプションとして、ポーチ、ウィンドスクリーン、マイククランプなどが用意されているので、外に持ち歩くならポーチとウィンドスクリーンも入手しておくとよさそうではあります。

オプションとして販売されている専用ポーチ

ところで、ボトムにはヘッドホン端子、外部入力端子と並んでminiUSB端子がありました。内蔵バッテリーがある本体の場合は、このminiUSB端子から充電を行うのですが、ここをWindowsやMacと接続することで、iXmの内部設定を調整することが可能になっています。この調整においては、前述の通り、ファイルフォーマットをWAVかBFW、MP2かの選択ができるほか、サンプリングレートとして48kHz、44.1kHz、32kHzを選ぶことも可能です(分解能は16bit固定です)。

USBでPCと接続することで内部設定などを変更することが可能

そのほかにも内蔵バッテリーと単3電池のどちらを優先させるかの設定、記録されるファイル名を変更したり、ステレオファイルでの書き出しを可能にする……などができるようになっています。

必要に応じてより高度な設定も可能となっている

以上、独YellowtecのiXmマイクレコーダーについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?声優やタレント、ナレーター、アナウンサーに、これを持ってもらうことで、手間いらずで確実な収録が可能になると思います。一方で、フリーで声優などの仕事をしている人にとって、いまは本来の実力だけでなく、録音技術も求められる時代。せっかくいい声、いい演技ができたとしても、録音が下手だと仕事を外されてしまう可能性が高いですし、上手に収録できる人であれば、重宝されてより多くの仕事が入ってくる可能性も高そうです。安い機材ではないですが、仕事のための投資と考えれば悪くない選択だと思います。

LEA DSPエンジン搭載のUSBオーディオインターフェイス、PUC2 Mic LEA

なお、Yellowtecでは、iXmマイクレーだーと同じ音量制御技術、LEA DSPエンジンを利用したマイクプリアンプ内蔵のUSBオーディオインターフェイス、PUC2 Mic LEAという製品も出ています。これについてはまた機会があればじっくり紹介してみたいと思います。

※2020.07.29追記
2020.07.28に放送した「DTMステーションPlus!」から、第156回「待望のメジャーアップデート!Studio One 5」のプレトーク部分です。「コロナ禍を乗り切るための超強力マイク&レコーダーが誕生。エンジニアがいなくても絶対失敗しない録音ができるYellowtec iXmマイクレコーダー」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
Yellowtec iXmマイクレコーダー製品情報
Yellowtec PUC2 USB オーディオインターフェース製品情報
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◎Rock oN ⇒ YT5040 YT5050 YT5060 YT5080

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