日本時間7月8日午前0時、米PreSonusがStudio Oneのメジャーバージョンアップを発表し、同時にStudio One 5の販売が開始されました。Studio One 4から、約2年ぶりのメジャーバージョンアップで、現代の音楽にマッチした強力な新機能が追加されるとともに、数々の機能がアップデートされました。製品ラインナップは従来と同様、上位版のStudio One 5 Professionalと、エントリー版のStudio One 5 Artistの2種類。無料版のStudio One 5 Primeやデモ版は、8月ごろの公開予定となっています。
リリース後、さっそくStudio One 5 Professionalを入手し、試してみたので、ファーストインプレッションということで各機能を紹介していきます。Studio One 4.xとの最大の違いは、ソングページ、プロジェクトページに加え、ショーページなるものが追加されたこと。これはライブなどに使えるマニピュレーションのための機能で、Digital Performerなどにも対抗すると思われるもの。また、サンプル精度のゲイン・エンベロープが追加されたり、ポリプレッシャーとMPE対応したほか、標準搭載のエフェクトのデザインが一新されたほか、拡張ミキサー・シーン、リッスン・バス、64-bit/384 kHzレコーディング/マスタリング……とより強力なDAWへと進化しています。また嬉しいポイントとしてはStudio One 5 ArtistがVST/AU/ReWire標準サポートするとともに、iPadなどのタブレットからコントロールできるStudio One Remoteにも対応したことも見逃せません。そのStudio One 5の進化ポイントを中心に紹介してみましょう。
音楽制作する人にとっても、エンジニアにとっても、嬉しいDAWにバージョンアップした今回のStudio One 5。DTMステーションのアンケート調査などからもわかる通り、国内でも飛躍的にユーザー数が増えているStudio Oneは、日本のユーザーからのリクエストも数多くを反映しているとのことです。
2019年12月のDTMステーションのアンケート調査でもStudio Oneのシェアが20%で2位に
その結果、日本のDTMユーザーにとっても非常に使いやすいDAWに進化しているようなのです。そんなStudio One 5の新機能の中でも特にピックアップしたいのが、既存のソングやプロジェクトに加えて追加されたショー・ページ。
すでにStudio Oneを使っている方はご存知の通り、ソング・ページでは作曲やミックスを行うことができ、プロジェクト・ページではマスタリングができます。そして今回追加されたショー・ページでは、マニュピレーションやライブパフォーマンスに特化したデータを作成することが可能になりました。
ショーページは、ライブで使うことを想定して作られているので、基本的音源を2mixで扱います。もともと2mixの音源を読み込むことも可能ですが、特筆すべきなのはソングで作った楽曲をショーページにそのまま読み込めるということ。なので、細かいボリュームの調整やプラグインの設定をソングで行い、出来上がった音源をそのままショーページで扱うことが可能です。ソングデータを読み込む際は2mixになり、ショーページでは曲順を簡単に変更できたり、全体のボリュームバランスを調整できたり、とマニュピレーション時に楽曲の管理が楽になります。
ここからは具体的な使い方を紹介します。ショー・ページは、Studio One 5を立ち上げたら最初に表示されるメインメニューから、選択することができます。「新規ソング」「新規プロジェクト」に並んで「新規ショー」が追加されているので、これをクリックします。
すると、新規ショーウィンドウが表示され、ここからテンプレートを選んだり、ショータイトルを決めたり、サンプリングレート、保存先の設定を行えます。試しにここでは「空のショー」を選択して、新規ショーを作成します。
これで、新規ショーが作成できたので、ここにライブで使う音源を読み込んでいきます。
前述したようにソングデータを読み込むことが可能なので、ライブで使いたい音源を作ったソングを開き、「ソング」メニューから「ショーに追加」にカーソルを合わせ、先ほど作ったショーをクリックします。
すると画面が切り替わり、ソングで作った音源の2mixが読み込まれます。ソングで設定したテンポもしっかり反映されていることが確認できますね。
同じ手順で、ライブで使う楽曲を読み込んだら、ミキサー画面で音量を整えたり、プラグインを追加したりして、ライブで使うデータを作成していきます。アーティスト名や会場名、タイトルを入力も可能です。
また新しく追加されたAUXを使って音源と一緒にギターを弾いたり、インストゥルメントを立ち上げて同時に演奏していくこともできます。インストゥルメントを曲ごとに自動で切り替わるようにしたり、AUXトラックをエフェクトごとにいくつか立ち上げて、曲ごとにミュートをしたりと、演奏に集中できる工夫も組み込まれています。
セットリストの順番も簡単に入れ替えが可能ですし、1曲目が終わったら次の曲をそのまま再生するのか、それとも1度停止させるのか、ループさせるかも選択できます。またコントロール機能も充実しており、最大24個のパラメータをアサインして、即アクセスできる状態をつくれます。
ここではソングからの2mixを読み込んで使ってみましたが、たとえばパートごとのステムデータを読み込めば、アウトを複数設定することもできますね。またこれまでは、メイン機とサブ機2台のPCを同時に回して、お互いを同期させることは不可能でしたが、外部MTC/MMC同期に対応したので、これからはStudio One 5がもっと多くのマニュピレーターに使われていくのではないかと思っています。
ほかにも、付属のプラグインのUIが進化するとともに、それぞれ機能が向上しました。たとえばProEQはProEQ2になり、12dB/24dBモードのフェーズリニア低域EQ(20Hz/50Hz/80Hz固定)や入力メーター表示、1/12オクターブ分析モードとキーボード・オーバーレイなどが追加されました。付属のプラグインが、おまけレベルではなく、即戦力になりえるのがStudio OneのNative Effectなので、これからDTMを始めようと思っている人でも高品質でハイクオリティなプラグインを最初から使うことができます。
また楽譜作成ソフトの代表の1つでもあるNotionをベースとする新機能のスコアビューでは、基本的な機能はもちろんのこと、多少複雑な入力も可能です。これまでStudio Oneを使っていた人にとっては、同じ操作感のまま楽譜も制作できるので、新しいソフトに移って、1から使い方を学ばなくてもしっかりしたスコアを作成することができますね。
実際に使うには、普段作曲などを行うソングページを開いて、エディター画面を開きます。ここの左上にピアノビューとドラムビューに加えて、スコアビューが追加されました。上部には、音符が並んでおり、全音符、2分音符、4分音符……などから選ぶことができます。左側に配置されている演奏記号では、再生時に反映される強弱記号やトリル、トレモロ、アルペジオ、グリッサンド、アクセント、スタッカート……などを追加することができます。
エディター画面での操作は、ピアノビュー、ドラムビュー、スコアビューのすべてがリンクしているので、ピアノビューで打ち込みしたデータは、スコアビューで反映されます。逆にスコアビューで入力した音符も、ピアノビューのピアノロールに反映されます。なので、ピアノロールで打ち込んだ曲を譜面にするのが容易なわけです。なお下の画面のようにスコアをダークモードで表示できるようになっているのも大きなポイントです。
新機能については、エディションごとに利用できるものが変わってくるので、以下にまとめてみました。
Studio One 5 Professional | Studio One 5 Artist | Studio One 5 Prime | |
スコア・エディター | 〇 | ||
ショー・ページ | 〇 | ||
64-bit浮動小数点WAV録音とエクスポート | 〇 | ||
クリップ・ゲイン・エンベロープ | 〇 | 〇 | 〇 |
隣り合わせのエディター | 〇 | 〇 | 〇 |
アーティキュレーションとキー・スイッチ編集 | 〇 | 〇 | 〇 |
Auxチャンネル | 〇 | 〇 | |
リッスン・バス | 〇 | ||
ミキサー・シーン | 〇 | ||
MTC/MMC同期 | 〇 | 〇 | 〇 |
AU、VST2、VST3プラグインおよびReWireのサポート | 〇 | 〇 |
表には記載していませんが全エディションで、MPE(MIDI Polyphonic Expression)対応になったのも、今回のバージョンアップの重要なポイントです。MPEとはピッチベンド、モジュレーションといったサウンドの変化をノート単位で自在に操れるようにするためのMIDI 1.0での拡張規格(MIDI 2.0への繋ぎの規格ともいえます)。Studio One 5がMPE対応したことで、MPE対応デバイスであるArtiphon Instrument 1やROLI Seaboardといった、MIDI機器の入力情報を記録することが可能で、多次元的な同時コントロールによる、直感的でアコースティックな表現を再現できます。
また冒頭でも触れたとおり、Studio One 5 ArtistでAU、VST2、VST3プラグインが使えるようになりました。従来もオプションのアドオンソフトをインストールすることで使えはしたのですが、今回Studio One 5 Artistが標準で対応したことで、フリーウェアのプラグインなども使えることで、より安価にDTMを楽しめるようになったのです。またプラグインだけでなくReWireに対応したり、さらにはiPad、Androidタブレット、Windowsダブレットで使えるStudio One RemoteアプリもStudio One 5 Artistで利用可能になっています。
どう違うかについては上記の表でしっかり確認いただきたいのですが、Studio One 5の目玉機能であるショー・ページやスコア・エディターといった新機能はStudio One 5 Professionalのみとなっています。
またミキサーやMIDI周りなどもいろいろ強化されたわけですが、このStudio One 5について、7月28日に放送するDTMステーションPlus!の番組で特集し、さらに新機能について深掘りしていこうと思っています。ゲストには「Studio Oneをもっとよく知ろうの会」の創設者であり、Studio Oneのヘビーユーザーとしても知られる、日本レコード大賞金賞受賞経験者の作編曲家・田辺恵二(@KG_Tanabe)さんをお招きして、さらに実践的な活用法を紹介していく予定です。その田辺さんが、いち早くStudio One 5の新機能を紹介したビデオをUPしていたので、そちらも合わせてご覧ください。
ちなみに最近Studio Oneを初めて登録したり、アクティベーションしたという人であれば、無償バージョンアップ対象になっているかもしれないです。具体的には日本時間2020年4月8日14時00分00秒~7月7日までに購入または製品登録した人が対象。同じエディションのStudio One 5へ無償でバージョンアップすることができるので、確認してみてください。一方、このStudio One 5登場のタイミングでメンバーシップサービスのPreSonus Sphereというものもスタートしたようです。こちらについては、また改めて紹介しようと思いますが、1か月ごとのラインセンス契約(税別1,391円)と年間契約(15,273円)の2種類があります。これらはStudio One 5 Professionalのライセンスのほか、Notionライセンス、30GBクラウド・ストレージなどいろいろなものがセットになっているので、使い方によってはこちらの選択肢もよさそうです。
なお冒頭でもお伝えしましたが、無料版のStudio One 5 Primeやデモ版は、8月ごろのリリースとなっているので、いち早くStudio One 5を使ってみたいユーザーは現在はStudio One 5 ProfessionalかStudio One 5 Artistを購入するか、無償バージョンアップ対象でゲットするかだけです。8月にStudio One 5 Primeがリリースされたら、紹介する予定なのでお楽しみに。
※2020.07.15追記
2020.07.14に放送した「DTMステーションPlus!」から、第155回「Synthesizer Vで歌声合成の新時代を先取りしよう!」のプレトーク部分です。「Studio One 5にメジャーバージョンアップ。ライブに活用できるマニピュレーション機能を新たに搭載」から再生されます。ぜひご覧ください!
※2020.07.29追記
2020.07.28に放送した「DTMステーションPlus!」から、第156回「待望のメジャーアップデート!Studio One 5」の特集部分です。ぜひご覧ください!
【関連情報】
Studio One 5製品情報
【価格チェック&購入】
(パッケージ版)
Studio One 5 Professional | Studio One 5 Artist | ||||
Rock oN | 通常版 | クロスグレード版 | アカデミック版 | 通常版 | アカデミック版 |
宮地楽器 | 通常版 | クロスグレード版 | アカデミック版 | 通常版 | アカデミック版 |
OTAIRECORD | 通常版 | クロスグレード版 | アカデミック版 | 通常版 | アカデミック版 |
Amazon | 通常版 | クロスグレード版 | アカデミック版 | 通常版 | アカデミック版 |
サウンドハウス | 通常版 | クロスグレード版 | アカデミック版 | 通常版 | アカデミック版 |
(ダウロード版)
Studio One 5 Professional | ||||
Music Eco System Music Eco System | 通常版 | バージョンアップ版 | クロスグレード版 | アカデミック版 |
Studio One 5 Aritist | ||||
通常版 | バージョンアップ版 | アカデミック版 |
(サブスクリプション)
◎Music Eco System ⇒ PreSonus Sphere(1か月) , PreSonus Sphere(1年間)