DTMをはじめる上で必要になる機材がモニターヘッドホンです。モニターヘッドホンは、普通のヘッドホンと違い、音楽制作向けに作られているため、低音域から高音域までバランスよく、色付けが少ないフラットな出音をしています。また解像度が高く、原音に忠実で、音の立ち上がりやリリースをモニタリングでき、ミックスやマスタリング作業では特に必須な機材です。スピーカーから音を出せない環境の方にとっては、ヘッドホンが最終的な音の出口となるため、こだわりたいところ。
とはいえ、いろいろな製品があるので、どういった観点からなにを選べばいいかというのは、初心者にとって難しいと思います。そこで、ここでは世界中の音楽制作現場で長年定番となっているAKGプロフェッショナル・モニターヘッドホン の全ラインナップを3回に分けて紹介していきます。第1回目の今回は初心者にピッタリなエントリーモデル3機種をピックアップして、何が違うのか、どう選ぶべきなのかなど、それぞれの製品を見ていきながら紹介してみたいと思います。
ミュージシャンや作曲家など、プロの人たちが愛用するAKG(ドイツ語読み:アーカーゲー、英語読み:エーケージー)プロフェッショナル・ヘッドホンは、音楽制作において必要な要素をすべて搭載しています。低音域から高音域までのバランスのよさ、色付けの少ない音色など、リスニングヘッドホンのように気持ちよく音を聴くためのチューニングではなく、音源をそのまま再現することを重視。そのため、高音質で高解像度な音源を確認することができ、突き詰めた音作りを可能にします。
また音楽制作は、長時間の作業になることが多いので、装着感がいいのもポイント。モデルごとにイヤーパッドの素材や硬さ、側頭部への圧やヘッドバンドの調整具合……など、着け心地に違いがあるので、快適に作業するためにもチェックしましょう。
モニターヘッドホンは使い続けていると、ケーブルが断線したり、イヤーパッドがへたったりしてしまうので、交換できるかどうかなど、メンテナンス面も重要です。価格の高いモデルは、ヘッドホンケーブルが複数付属していることが多いので問題になりにくいですが、ヘッドホンごとにそれぞれケーブル端子の規格があるので、交換の際はこういったところもチェックしておきます。
現在ヒビノ株式会社取り扱いのAKGプロフェッショナル・ヘッドホンは、既存モデルにヒビノ独自の1年保証を加えた3年保証モデルとして販売されており、サポートも万全。サポートがしっかりしていると、購入したモニターヘッドホンを長く愛用することができるので、こういった面も確認しておきたいですね。
さて、今回ピックアップするモデルは以下のそれぞれ。
K240 MKⅡ-Y3 12,000円前後(税抜)
K612 PRO-Y3 16,000円前後(税抜)
今回ピックアップしたモデルは、AKGの伝統的な円形のハウジングを持つ、開放型(オープンエアー/セミオープンエアー型)モニターヘッドホン。ヘッドホンを装着したときにちょうど耳に着ける部分をハウジングと呼び、このハウジング部分が密閉されていないヘッドホンを開放型と分類します。このタイプは、ドライバーが密閉されていないため、空気が自由に出入りできるので、高音域がクリアという特徴があります。また音場が広く、圧迫感が少ないため、長時間の使用でも疲れにくいとされています。ただ、ハウジング部分が密閉されていないので、構造上遮音性が低く音漏れしやすいです。レコーディング時や自宅以外での使用は難しいですが、ミックス用途としては最適です。
K240 STUDIO-Y3
K240 STUDIO-Y3は、コストパフォーマンスに優れたAKGヘッドホンの入門モデル。今回紹介する中で、もっとも価格が安いため、AKGサウンドを手軽に体験してみたい方におすすめです。K240 STUDIO-Y3のハウジングの機構は、セミオープンエアー型に分類され、密閉型と開放型のいいとこどりをした構造となっています。
サウンドは、パワフル感があり、それでいて自然な広がりと奥行きを持っています。レンジは少し狭めな印象はありますが、全体的にバランスのいい作りとなっています。再生周波数帯域は15Hz~25kHz。ケーブルを除いた重量は230g。K240 STUDIO-Y3については、以前「『けいおん!』で話題になったK701が復活!? AKGらしさを前面に出した開放型モニターヘッドホン、AKG K701-Y3とK240 STUDIO-Y3が発売」という記事でも、紹介しているのでぜひそちらもご覧ください。
K240 MKⅡ-Y3
K240 MKⅡ-Y3は、K240 STUDIOのドライバーの振動板やハウジング素材を見直し、後継モデルとして発売された、定番のモニターヘッドホン。再生周波数帯域は15Hz~25kHz、重量はケーブルを除いて240g。ハウジングの機構は、K240 STUDIO-Y3と同じく、セミオープンエアー型を採用しています。密閉型特有の音の迫力や低音域の再現性と開放型特有の音場の広さや高音域の再現性といった、それぞれのよさを融合したサウンドが特徴です。音質は、K240 STUDIO-Y3よりもレンジが広く聴こえ、解像度も高いので、楽器の細かいニュアンスをモニタリング可能。モニターヘッドホンは、高音域が強い傾向がありますが、K240 MKⅡ-Y3はそれよりかもう少し暖かい音をしています。そのため、長時間聴いていても疲れにくく、リスニング用としても使用できそうです。
ヘッドバンドにはK240 STUDIO-Y3と同じく、セルフアジャスト機構を採用しているので、細かい調節をしなくても、ユーザーの頭にフィットします。ハウジングの位置を耳に合わせやすく、快適にヘッドホンの取り外しが可能。また耐久性に優れた合皮素材のイヤーパッドと触り心地のいいベロア製のイヤーパッドが付属しているので、好みによって使い分けることができます。装着時の圧迫感は少なく、快適に作業ができそうです。
ヘッドホンケーブルは、3mストレートと5mカールコードが付属。着脱式なので、簡単にリケーブルすることができて、断線時に交換したり、好きなケーブルに変えることができます。ヘッドホン側の端子は、Mini-XLR端子を採用。プレイヤー側の端子は3.5mmステレオミニジャックとなっており、付属の6.3mm標準プラグへの変換を使って、オーディオインターフェイスなどと接続できます。
K612 PRO-Y3
K612 PRO-Y3は上位機種K702-Y3の性能を受け継いだ、開放型モニターヘッドホンのエントリーモデル。先の2機種と違ってセミオープンエアー型ではなく、こちらはオープンエアー型。再生周波数帯域は12Hz~39.5kHz、重量はケーブルを除いて256g。インピーダンスが、ほかのモデルと比べると高く120Ωあるので、ある程度のヘッドホンアンプのパワーが必要になります。インピーダンスが高いヘッドホンは、抵抗が大きく流れる電流が減り、再生音量が小さくなるため、PCやスマホのヘッドホンアウトに直接接続して使う場合は、十分な音量を稼げません。ですが、オーディオインターフェイスなどを使って、しっかり再生してあげれば、高いポテンシャルを発揮します。そのサウンドは、AKGの開放型ヘッドホンならではのキャラクターで、高音域がきれいに鳴り、それでいて低音域がしっかり出ているので、バランスのよさを感じます。定位感もよく、音をしっかり聴き分けることが可能。また音場が広く、解像度も高いので、音楽制作時のモニターとして最適です。
装着時に自動でヘッドバンドの長さを調節してくれる、セルフアジャスト機能を採用。耳全体を覆う大型のイヤーパッドは、ベロア素材でできていて、長時間装着していても快適に作業することが可能です。イヤーパッドが大きく、耳に当たることがないため、耳が痛くなる心配はないと思います。
ケーブルは着脱式ではなく、プレイヤー側が3.5mmステレオミニプラグの3mケーブル。付属品としては、6.3mm標準プラグが付いています。
実はAKGは、開放型モニターヘッドホンの中でもオープンエアー型で高く評価されており、次回紹介する開放型ハイエンドモデルは、すべてオープンエアー型です。K612 PRO-Y3はAKGならではのオープンエアー型モデルを試してみたいという方に最適なモデルです。
次回は開放型ハイエンドモデル4機種をピックアップして紹介していきます。
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AKGプロフェッショナル・ヘッドホン全ラインナップ紹介記事
第1回 開放型エントリーモデル (K240 STUDIO-Y3 , K240 MKⅡ-Y3 , K612 PRO-Y3) … 今回の記事
第2回 開放型ハイエンドモデル (K701-Y3 , K702-Y3 , K712 PRO-Y3 , K812-Y3) … 6月下旬公開予定
第3回 密閉型全モデル (K271 MKⅡ-Y3 , K361-BT-Y3 , K371-BT-Y3 , K553 MKII-Y3 , K872-Y3) … 7月上旬公開予定
【関連情報】
K240 STUDIO-Y3製品情報
K240 MKⅡ-Y3製品情報
K612 PRO-Y3製品情報
【関連動画】
AKGプロフェッショナル・ヘッドホン3年保証(-Y3)モデルの聴き比べ
~オープンエアー型編~
https://youtu.be/hvt0BMMOQyU
【取扱店】
K240 STUDIO-Y3店頭展示
K240 MKⅡ-Y3店頭展示
K612 PRO-Y3店頭展示
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ K240 STUDIO-Y3 , K240 MKII-Y3 , K612 PRO-Y3
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