DAWと連携が可能な超高機能MTRコンソール、TASCAM Model 12を試してみた

先日、TASCAMからModel 12という製品が発売になりました。見た目はカッコいいミキサーといった感じですが、実はこれ、Bluetooth入力も含めた12chミキサーとしてはもちろん、USB Type-C接続の12in/10outオーディオインターフェイスとして、また12トラックの録音が可能なMTRとして、さらにはMackie Control互換コントローラーとしても使える超高機能機材なのです。

ご存知の方も多いと思いますが、TASCAMはこれまで24chのModel 24、16chのModel 16という上位機種を出していました。面白そうな機材…と思いつつも、自宅に置くにはちょっと大きすぎるかな……なんて感じていましたが、今回12chのModel 12がリリースされ、価格も実売で64,800円(税抜)程度と手ごろになったこともあり、DTMユーザーにとってもかなり気になる存在になってきました。今回、そのModel 12を少し試してみたところ、想像していた以上に高機能で、いろいろと使える機材だったので、紹介してみたいと思います。

TASCAMのModel 12はDTM用途として万能な非常に強力な機材だった

ツマミがいっぱい並んだ機材を目の前にすると、ついワクワクしてしまうのですが、このModel 12もホントにいろいろなことができる楽しい機材です。最初にTASCAMの製品情報として挙げられている主な機能を列挙すると

■ 8XLRマイク入力(+48V対応)/10TRS ライン入力、Bluetooth®5.0入力、3.5mm 4極TRRS入力(スマートホン入力に対応。スマートホン入力はミックスマイナス対応)
■ Bluetooth®5.0入力は、AACおよびSBCコーデック対応
■ Ultra HDDA マイクプリアンプ (CH1~6)
■ 全入力モジュールに1ノブコンプレッサー、3バンドEQ搭載
■ 60mmフェーダーを装備
■ ソロモードはPFL、AFLおよびインプレースソロ(SPI)が可能
■ メインとサブのステレオ出力、AUX1とAUX2のモノセンド
■ 独立ボリュームとソース選択可能なデュアルヘッドホン出力
■ TASCAM FX(エフェクト)搭載
■ SDカードに最大12トラックの録音および10トラックの再生が可能(パンチインアウト対応)
■ トラックバウンスなど、本体でのエディットを容易にするトラックスワップ機能
■ 12入力/10出力のUSBオーディオインターフェース機能(USB-C端子)
■ DAWコントロール(HUI/MCUプロトコル エミュレーション)対応
■ トランスポート、エフェクターON/OFF制御など割り当て可能なデュアルフットスイッチ(TRS端子)機能
■ メトロノーム機能を内蔵、タップテンポに対応したクリック出力
■ MIDI IN/OUT端子装備、USB-MIDIインターフェース機能、 MTC、MIDIクロック出力、SPP対応

などとなっているのですが、この超多機能だということの雰囲気は伝わるでしょうか?

Model 12のトップパネル

DAWと連携させるDTM用のオーディオインターフェイス兼コンソールとして使えるだけでなく、これ単体をスタジオに持ち出してレコーディングするのに用いたり、ライブ会場に持ち出してSDカードに仕込んである楽曲を使ってマニピュレーション機材として使うなど、さまざまな活用が可能な機材になっています。

Model 12のリアパネル

あまりにも機能がいっぱいなので、使った感じをザックリと紹介していくと、まずはミキサーとしてすごく使いやすい機材になっています。リアにコンボジャックが8つ並んでおり、ここに最大8つまでのマイクが接続でき、もちろん+48Vのファンタム電源が供給可能。このうち1~6chがTASCAM自慢のUltra HDDA マイクプリアンプになっています。

各マイクに対して+48Vのファンタム電源の供給が可能

もちろんTRS接続でのライン入力ができるほか、それぞれのINSTボタンを押せばHi-Z対応となり、ギターやベースを直結できるようにもなっています。さらに、3.5mmの4極端子があり、これをスマホと接続することで、スマホからの音をそのまま取り込むことも可能で、それとは別系統でBluetoothでの入力も可能となっているのです。

Bluetooth 5.0での接続もサポート

ちなみにこのBluetooth接続はBluetooth 5.0対応のもので、AACおよびSBCの両コーデックに対応しているのですが、とっても融通が利く設計になっています。ASSIGNスイッチで9/10にするとBluetoothからの音はミキサーの9chと10chに立ち上がり、MAINにするとModel 12のミキサー全体でミックスした結果に乗せることが可能。シチュエーションに応じて使い分けができるわけです。もちろん、ASSIGNスイッチをOFFにすれば、Bluetooth信号を受け取っても音が出ない形になるわけです。

各チャンネルに3バンドのEQとコンプも搭載

さてこのミキサーに立ち上がってくる各チャンネルに対し3バンドのEQがあり、このうちMIDは周波数調整可能なパラメトリックEQ。それとは別に100Hz以下をカットするローカットボタンも用意されています。さらに1ノブで使えるコンプもチャンネルごとに用意されているのはとっても便利です。

またAUX1、AUX2にセンドできるAUXバスが2つ用意されていて、その片方は内蔵のデジタルエフェクトに送れるようになっています。そのエフェクト、具体的には以下の16種類

1.HALL 1   2.HALL 2  3.SMALL ROOM   4.LARGE ROOM   5.PLATE
6.STUDIO  7.LIVE  8.SHORT DELAY  9.DELAY  10.PINGPONG  11.CHORUS
12.FLANGER  13.DELAY+S.HALL  14.DELAY+L.HALL  15.CHORUS+S.HALL
16.CHORUS+L.HAL

単にプリセットを選ぶだけでなく、パラメータも調整できてエフェクトのライブラリに登録が可能なっている、まさに使えるエフェクト群です。

AUX 2に割り当てられた16種類のデジタルエフェクトが内蔵されている

Model 12はこのようなミキサーがベースとなる機材ですが、PCと接続することによって、さらに大きな威力を発揮するシステムになる仕掛けになっています。USB Type-Cの端子を搭載しているので、これをWindowsやMacと接続すると、PC側からは12in/10outのオーディオインターフェイスとして見えるのです。

PC側からは12in/10outのオーディオインターフェイスとして見える(画面はCubase)

試してみたところ入力の1~10chはModel 12の端子に接続されている入力がPC側に入り、11ch/12chはModel 12でミックスしたMAIN出力が送られるようになっています。

各チャンネルに用意されたMODEスイッチでマイク/ライン/インストゥルメント、PC、MTRの選択が可能

一方、出力の10chはModel 12の各チャンネルに立ち上がってくるのですが、それがマイク入力なのかコンピュータ側からなのかはコンプノブの上にあるMODE切替スイッチで選択するようになっています。これをPCにすることで、DAWから再生した音をModel 12のミキサー上でミックスすることが可能になるわけです。この場合ももちろんコンプ、EQも効くし、AUX1、AUX2へセンドすることも可能です。

TASCAMサイトからダウンロードするドライバ。最小バッファサイズを4Sampleまで縮められる

これらの機能を使うためには、基本的にTASCAMサイトからWindows用Mac用のドライバをダウンロード、インストールする必要はあるのですが、Model 12自体はUSBクラスコンプライアントなデバイスであるため、USB Type-Cで接続するだけでとりあえず使うことは可能です。

USBクラスコンプライアントなので、iPhoneやiPadでも12in/10outのオーディオインターフェイスとして接続可能

さらに、USBクラスコンプライアントなので、Lightning-USBアダプタを利用することで、iPhoneやiPad用のオーディオインターフェイスとしても使うことが可能で、iOSにおいても12in/10outで利用可能になっています。もちろんその場合はCubasisやMultitrack DAW、AuriaなどiOS用のDAWを使う必要があるのですが、かなり便利に使うことができますよ。

DAWコントローラーモード

そして、ここでもう一つDTMユーザーにとって重要な機能がDAWコントロール機能というものです。これはその名の通り各種DAWのコントローラーとしてModel 12を利用できるようにするというもので、再生・録音・ストップなどのトランスポートボタン操作や、ロケートコントロール、マーカーのセット、そして各チャンネルフェーダーやPAN操作、MUTE、SOLOなどのDAW操作をModel 12から行えるというものなのです。

実際にサポートされて、Model 12のメニューから選択可能なDAWとしては

Ableton Live(Mackie)
Pro Tools(HUI)
Cubase(Mackie)
Cakewalk(Mackie)
Logic(Mackie)
Digital Performer(Mackie)

のそれぞれ。つまりHUI/MCUプロトコルのエミュレーションとして使えるので、ほとんどのDAWでも利用するこができるはずです。細かい使い方についてもTASCAMサイトで配布しているModel 12 DAWコントロールモードマニュアルにあるので、参考にしてみるといいですよ。

各種DAW用のモードが用意されている

試しに、ここに上がっていないStudio Oneでも使えるか試してみました。Model 12上では、MCUプロトコルになるよう、Cubaseを選択した上で、Studio One側ではMackie Controlを選んだところ、まったく問題なく使うことができました。

Studio Oneでもコントローラーとして問題なく使うことができた

同様にFL StudioにおいてもMIDIの設定でMackie Control Universalを選んだら、それだけですぐに使うことができたので、大丈夫なようですね。

FL Studioでも簡単に動作させることができた

さらにModel 12のもう一つの重要な機能がMTR機能です。Model 12のSDカードスロットに入れたSDカードに12トラックサウンドをレコーディングしていくことが可能で、フットスイッチを利用したパンチイン・パンチアウトなどにも対応した、かなり本気のMTRとなっています。

レコーディングしたいチャンネルのRECボタンを点灯させる

使い方はいたって簡単。テンポや拍子を設定した上で、レコーディングしたチャンネルのRECボタンを押して赤く光らせた上で、レコーディングスタートすればいいだけ。これで各チャンネルの音をそのまま記録していくことができるのです。しかも、ただ録音・再生するというだけではなく、MTRメーカーとして50年近い歴史を持つだけあって、欲しい機能も片っ端から用意されています。

あとは録音スタートするだけで簡単にマルチトラックでのレコーディングができる

重要なのはクリック。12トラックとはまったく別にクリックがあり、必要に応じて音の種類も変えられるようになっています。そのクリックをメインに出すか、サブに出すかAUXに出すかなどの設定も可能になっています。

クリックに関してもさまざまな設定ができるようになっている

また、Model 12のリアを見るとMIDIの入出力がありますが、このMIDI端子を使って、MTCやMIDI CLOCK、ソングポジションポインタを送信可能になっているのです。つまり外部のDAWなどと同期してこのMTR機能を使うことができるわけなのです。この辺の機能の充実具合はさすがTASCAMという感じです。

MTCやMIDI Clock、SPPの設定などが可能

もちろんMTR機能によって録音されたデータはSDカード内にWAVファイルとして保存されるので、それをそのまま取り出してDAWに読み込ませるのもOKですが、MTCなどで同期させて使うのもありというわけです。

SDカードにライブの楽曲を仕込んでいくことでマニピュレーションに活用できる

この辺の機能を利用することで、前述の通りModel 12をマニピュレーション用の機材として使うのもよさそうです。予めライブで使う楽曲のオケをすべてSDカードに仕込んでおいた上で、メイン出力はPAに送る一方、SUB出力があるのでこれをステージ上のプレイヤーに送ってモニターするといった使い方です。必要に応じて2つあるAUXにも別の信号を送ることも可能なのメイン2ch、サブ2ch、AUX 1chx2で、最大6chまでパラ出力が可能になります。またSUBやAUXにクリックも乗せて送ることもできるから、ドラマーにはクリック入りを、ほかのプレイヤーにはクリックなしをメイン出力とは別ミックスで送る……といったこともできるのです。

TASCAM Model 12のブロックダイアグラム

なお、Model 12のブロックダイアグラムも公開されているので、細かな信号の流れも分かると思うので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

【関連情報】
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【価格チェック&購入】
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