今年1月のNAMM SHOWで大きな話題になったUniversal AudioのDAW、LUNA Recording System(以下LUNA)が本日早朝、ついにリリースされました。Universal Audioが独自開発したまったく新たなDAWで、現時点においてはMac専用のソフトとなっています。利用するにはThunderbolt接続のApolloもしくはArrowが必須となりますが、これらのユーザーであれば誰でも無料でダウンロードして使うことが可能です。
ApolloやArrowは内部にDSPを搭載し、UAD-2の強力なエフェクト群を動かすと同時に大型ミキシングコンソールに匹敵する機能を装備し、Consoleというアプリケーションでコントロールできるようになっていましたが、LUNAはこのUAD-2およびConsoleとシームレスな関係になっており、Apollo/Arrowユーザーにとっては非常に扱いやすいシステムとなっています。実際そのLUNAを少し試してみたので、まずファーストインプレッションとして簡単に紹介するとともに、どのようにしてインストールし、使うのかなどの手順についても紹介してみたいと思います。
本日、Universal Audioからリリースされたのは、LUNAおよびUAD software v9.11.1というバージョン。Universal Audioの登録ユーザーであればログインすることでDownloadページから2つセットでダウンロードできるようになっています。
LUNAだけのダウンロードも可能ではありますが、UAD software v.9.11.1でCatalina 10.15に正式対応したのと同時にLUNAをサポートしているので、必ずこちらもセットでダウンロードした上でLUNAの前にインストールしておきましょう。
LUNAのほうはdmgファイルを起動すれば、インストーラが表示されるので、LUNAアイコンをApplicationsフォルダにドラッグ&ドロップするだけで簡単にインストールできます。
というわけで準備ができたら、さっそくApollo、Arrowの電源を入れるとファームウェアのアップデートの案内が表示されるので、これを実行してください。これによってハードウェア側もLUNA対応になるわけですね。画面の指示にしたがって、オーディオインターフェイスの電源を入れなおせば、準備完了です。
さっそくLUNAを起動すると、最初に「LUNAが新しいヘルパーツールをインストールしようとしています」とメッセージが表示されるので、指示にしたがってインストールしておきましょう。
すると、ユーザーネームとパスワードを促されるので、Universal Audioで登録しているアカウントを入力します。実は、このLUNA、iLokで管理されるようになっているので、iLokのアカウントを求められます。もし持っていない場合はここで作成してください。iLokのドングル自体はもっていなくてもiLok Cloudで利用できるとのことです。今朝、このアクティベートをしようとしたところ、サーバーが混んでいたためか、なかなかうまくいかなかったのですが、少し時間をおいてからMacを再起動したらうまくいきました。
これによってiLokアカウントにLUNAのライセンスが登録されるので、改めてLUNAを起動するとLUNAのCREATE画面が現れます。ここで新規プロジェクトを作成していくわけですが、とくにデモデータなどが用意されているわけではないので空のプロジェクトを作成するか、AAFが読み込めるので既存のDAWなどからAAFを書き出した上でLUNAに読み込ませることが可能です。
ただし、ここで最初に行っておかなくてはならないのがSETTINGSタブにあるI/O MATRIX設定。私の場合、Apollo Twin MK2を接続していたのですが、LUNAを起動したら、すぐにApollo Twinを認識していたし、ここに接続したギターの入力がLUNAのメイン出力のレベルメーターに反映されていたので、すぐに使えると思ったのです。が、録音も再生もうまくいかず、1時間ほど悪戦苦闘。が、なんのことはない、I/O MATRIXの画面を開き、MODEでDefaultボタンを押せば完了でした。
さて、実際にLUNAを使ってみると、Apollo/ArrowユーザーにとってとてもわかりやすいDAWになっています。まさにConsoleと表裏一体となっており、ほかのDAWでApollo/Arrowを使うよりずっとスッキリしているのです。
まずはトラック作成からスタートですが、画面左上のCREAT NEW TRACKSの「+」をクリックするとAUDIOトラック、INSTRUMENTSトラック、そしてBUSトラックが作成できるようになっています。ここでAUDIOを選択するとMAINトラックの上にオーディオトラックが作成されます。このトラックの先頭部分を見るとINとOUTという項目がありますが、INのところをクリックすると、画面左にのポートを使うかの一覧が表示され、選択できるようになっています。これが先ほどのI/O MATRIXで設定したポートです。
ここではギターを録っていこうと思うので、MIC/LINE/HIZ 1を選択した上で、トラックの赤●印のARMボタンをクリックして録音待機状態に入り、ギターの音がそのままモニターできるようになります。メトロノームをオンにした上で、トランポートボタンを使って録音をスタートすると、ギターからの入力をトラックにレコーディングしていくことができます。
ギターがレコーディングされていく
いたってシンプルですね。この際、トラックのすぐ左に表示されているINPUTという縦のストリップがありますが、ここでINSERTSの「+」をクリックすると、UAD-2のプラグイン一覧が表示され、ここからUAD-2プラグインを選択し組み込むことができるのです。
UAD-2プラグインを組み込むことができた
実はこれは、トラックの再生に用いられるプラグインであるため、Consoleとは別。一方で、トラックのARMボタンを押した状態だと、このストリップの上部にあるUnisonおよびRECORD FXにUAD-2のプラグインを組み込むことができます。これらは掛け録りようとなっているわけですが、まさにConsoleと表裏一体の関係になっており、どちらで操作しても、同じ結果が反映されるようになっています。
ではマルチトラックでレコーディングしていった場合、どうやってミックスしていくといいのでしょうか?
これはトランスポートボタンがある左側のVIEWを利用してミキサー画面を表示することができます。ここでトラック間のレベル調整などを行うことはもちろん、UAD-2プラグインを組み込んだり、MAINトラックがマスタートラックとなっているので、ここに最終調整を行っていくこともできます。この上部がConsoleと表裏一体のものですね。
LUNAのミキサー画面。画面上部はConsoleと表裏一体な関係になっている
つまり、LUNAのミキサー画面はConsoleと一般的なDAWでいうミキサー画面を合体させた感じのもの。そのためLUNAを使う場合は基本的にConsoleは起動しなくてもほとんどの操作ができるようになっています。
なお、画面右側に出力チャンネルが表示されていてレベルメーターで出力状況を確認することができますが、この下の方にあるCUE OUTPUTSを使ってCUEの調整をしたり、CONTROL ROOMを使ってトークバックの設定などもできますが、これらもすべてConsoleと連動しています。
CUEやCONTROL ROOMの設定も可能
ところで、UAD-2のエフェクト以外は使うことができるのか?実はプラグイン一覧の下のほうを見ると、Audio Unitsのプラグインが表示されており、これらを設定することもできました。当然Audio Unitsの場合はMacのCPUを使うNative動作となりますが、普通のDAWと同様の扱いも可能というわけです。
では続いてINSTRUMETトラックを作成してみましょう。デフォルトではShapeと音源が選択される形になっており、これはLUNAに標準の音源になっています。外部にMIDIキーボードなどを接続していれば、すぐに鳴らすことができ、録音ボタンをクリックすれば、すぐにリアルタイムレコーディングが可能。
MIDIはトランク内のインラインエディタでエディットすることができる
もちろんリアルタイムレコーディングした結果をクォンタイズするといったことも可能ですが、今のところインラインエディタのみのようで、専用のMIDI画面などはないようです。そのためある程度のエディットは可能ですが本格的な打ち込みは他のソフトにまかせ、MIDIデータをインポートするといった使い方がいいのかもしれません。
LUNA発表後の紹介ビデオなどでは、このINSTRUMENTとしてMinimoogなどが使えるとありましたが、これらはオプション扱いになっており、299ドルで入手可能。15日間は試すことも可能になっていますが、この場合もiLokでアクティベートする必要があるほか、LUNAのMANAGE画面においてダウンロードする必要もあります。
気になるのは、これらINSTRUMENTもUAD-2であるのかという点。つまりApolloやArrowのDSPで動作させることができるのかですが、これはあくまでもNative動作のアプリケーションであってCPUを使うようですね。このInstrumentsも先ほどのエフェクトと同様にAudio Unitsに対応しているため、手持ちのソフトウェア音源をそのまま利用することが可能です。そもそもINSTRUMENTがUAD-2でないのであれば、あえてLUNAのオプション音源を買うまでもないような気もしますが……。逆に、LUNAのインストゥルメントであるShapeやMinimoog、またLUNA ExtensionはLUNAだけで動作するもので、ほかのDAWでは動かないので、その点はご注意ください。
以上、LUNAについて速報レポートとして紹介してみました。まだごく一部の機能しかチェックできていないので、もっとすごい機能、便利な機能もいろいろありそうではありますが、とにかくApolloやArrowユーザーにとって使い勝手のいいDAWであることは間違いなさそうです。
まったく新たに登場したDAWだけに、すごく軽いとうだけでなく、DAWで多くの処理能力をとられるエフェクト機能とミキシング機能がUAD-2によるDSPパワーで処理できるので、軽快な動作となっているようです。
これから自分でもいろいろと試してみようと思うので、また改めて詳細記事などを書いていければと思っております。
※2020.4.9追記
SNSなどでいくつか質問などあったのでお答します。
Q.レイテンシーはどうなっていますか?
A.レコーディング時のモニターはエフェクトをかけても基本的にUAD-2プラグインを使うDSP処理であるためゼロレイテンシーです。ただし、INSTRUMENTにおいてはShapeやMinimooogも含めCPUによるNative処理であるためバッファサイズによってレイテンシーが発生します。
Q。Windows版の予定はありますか?
A.現時点においてUniversal Audioからのアナウンスはありません。リリース直後にUniversal AudioがFacebook Liveで配信した番組において「Windowsについてユーザーから求められいるのは分かっている」という言及のみありましたが、ぜひ今後に期待したいところです。
Q.Audio Unitsにおいてサイドチェインには対応していますか?
A.現時点では対応していません。ただ、これについても今後検討する旨の発言がUniversal Audioの開発担当から出ていたので、いずれ対応するものと思われます。
【関連情報】
LUNA RECORDING SYSTEM情報
Universal Audio製品情報(フックアップ)
【ダウンロード】
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