少し上のオーディオインターフェイスとしてUniversal AudioのApollo Twinあたりが気になっている……そんな声をよく聞きます。下位モデルであるApoll Twin MkII DUOでも実売88,000円(税別)という価格なので、なかなか手を出しにくいのは確かですが、音が断然いいのとともに、UAD-2というほかのオーディオインターフェイスにはないエフェクト機能が利用でき、音作りの幅が大きく広がるのが大きな魅力です。
そうした中、Universal Audioから「デスクトップ・プラチナボーカル・プロモーション」なるキャンペーンが発表されました。これは2020年4月1日~6月30日までの期間、デスクトップタイプのApolloシリーズを購入するとボーカル系のUADー2プラグインが無料でもらえるというもので、買おうか迷っている人の背中を押してしまうというキャンペーンのようです。そんなキャンペーン情報を事前に入手したので、実際そのボーカル系エフェクトでどんな効果が得られるのか、声優の田村響華(@tamura_kyoka)さんにも協力してもらい、試してみたので、紹介してみましょう。
Universal Audioに関していうと、今年1月のNAMM Showで発表された、LUNAというDAWがApolloやArrowユーザーに無料配布されるという情報が大きな話題になりました。これはMacのみが対象となっているようで、私もぜひ試してみたいと待っているところです。この春登場といういうことで、本日時点ではリリースされていませんが、情報が入り次第また記事で紹介したいと思っています。そのLUNA登場の前に今回の「デスクトップ・プラチナボーカル・プロモーション」が発表されたのです。
対象となるオーディオインターフェイスは、
Apollo Twin X DUO
Apollo Twin USB
Apollo Twin X QUAD
Apollo x4
のそれぞれで、いずれもデスクトップ型(ラック型のapollo Xなどは対象外)にボーカル用のUAD-2プラグインがついてくるというものです。ただし、これらの機種を買えば、どれもみんな同じものが付いてくるわけではなく、無料ゲットできるのは以下のものとなっています。
Apollo Twin MkII DUO |
Apollo Twin X DUO |
Apollo Twin USB |
Apollo Twin X QUAD |
Apollo X4 |
|
Antares Auto-Tune Realtime Advanced | 〇 | ||||
Antares Auto-Tune Realtime Access | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
Manley VOXBOX Channel Strip | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
Galaxy Tape Echo | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
Oxide Tape Recorder | 〇 | 〇 | |||
Pure Plate Reverb | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
※日本円は1ドル=108円で計算し 1,000円未満は四捨五入 |
$447相当 48,000円分 |
$746相当 81,000円分 |
$746相当 81,000円分 |
$895相当 97,000円分 |
$1,095相当 118,000円分 |
ご存知の通り、これら製品には予めRealtime Analog Classics BundleまたはRealtime Analog Classics Plus Bundleというプラグイン集が付属してくるのですが、それらに加えてボーカル用のプラグインが付いてくるので、まさに今がチャンスというわけなのです。
でも「UAD-2プラグインって何?」と思う方もいると思います。ここでそれを解説すると長くなってしまうので5年前の記事ではありますが「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」や「超強力エフェクト満載のUAD-2を使ってみた」といった記事を参照してみてください。簡単にいうとApolloに内蔵されているDSPを使って動作するエフェクトであり、まさにプロがスタジオで使っているビンテージのエフェクトなどを、ホンモノさながらに再現してくれるのが特徴。またDSP処理しているのでPCに負荷はかからないし、基本的にゼロレイテンシーで動作してくれるのも大きなポイントです。
ちなみに先ほどの表の中でひとつだけ色が異なるManley VOXBOX Channel Stripは、UAD-2プラグインの中でもちょっと位置づけが違うものです。そう、これは入力段に使うことができるUnisonテクノロジーにも対応したプラグインとなっているのです。Unisonテクノロジーについては以前「アナログ特性自体を制御するapolloのUNISONテクノロジー」という記事でも紹介しているので、そちらを参考にしてみてください。
さて、これらのボーカルエフェクトを使うとどんなサウンドになるのか、今回は「けものフレンズ」のジェンツーペンギン役としても知られる田村響華さんに協力をいただき、実験してみました。
使った機材は今回のキャンペーン対象製品の中では最上位機種になるApollo x4。これにsE Electronicsのコンデンサマイク、sE2200を接続し、響華さんのボーカルをレコーディングするというシンプルな構成。ここではWindowsマシンを使い、Cubase Pro 10.5でレコーディングしていますが、基本的にはWindowsでもMacでもどのDAWを使っても一緒ですね。
曲は、昨年夏にリリースしたミニアルバム「Let’s do it !」の中のメイン楽曲「きっと」。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ネット配信番組であるDTMステーションPlus!の冒頭の小コーナー「田村響華と今日からDTM♪」の番組内で、自ら作曲し、その後作詞した上で、作曲家の多田彰文さんがアレンジを行った楽曲です。このアルバム制作時に作ったマスタリング前の24bit/48kHzのミックスをオケにして、響華さんに歌ってもらったのです。
このまま特に何もせずにボーカルを録っていってもよかったのですが、せっかくボーカル用のプラグインがいろいろあるので、まずはUnisonテクノロジーに対応したManleyのVOXBOX Channnel Stripを入力段に挿してみました。この際、DAWに挿すのではなく、Apollo x4をミキシングコンソールとして見立てるコントローラソフトであるConsoleの入力段に挿しているのです。
ちなみにUAD-2はプラグインのエフェクトではありますが、各メーカーお墨付きのエフェクトとなっており、これもManley自身が、開発に協力し、アナログハードウェアであるVOXBOXと同じサウンド、同じ挙動をするエフェクトであると認めたもの。ちなみに、ハードウェアのVOXBOXは実売価格50万円以上のものですから、これだけでもすごい価値であることが分かると思います。
とはいえ、パラメータもいっぱいあるので、これをどう使えばいいのかはちょっと戸惑うところ。でもハードウェアと違って、お勧めのパラメータ設定をしたプリセットがいろいろ用意されているので、まずはこれを使うのが便利。ここでは「BASIC FEMALE VOCAL」という女性ボーカル用のプリセットを使ってみました。
Unisonテクノロジーで利用する場合は、まさに実機を使って録音するのと同様、掛け録りになります。実際モニターしながら確認したところ、非常にいい感じで録れていたので、レベルを調整の上、そのまま録っていきました。
なお、このままの状態だと響華さんにはVOXBOXは経由しているけれど、そのままの音がモニターされているだけなので、リバーブを返してあげたほうが気持ちよく歌えるはず。そこで、これも今回のキャンペーンにあるPure Plate Reverbを使ってみました。ただしリバーブはあとで細かく調整したいので、ここではザックリと設定しただけのものです。
モニターには返すけれどCubaseにはレコーディングされないようにするにはConsoleの右側にあるINSERT EFFECTSを「UAD MON」に設定します。この場合、Unisonテクノロジーのところに挿したVOXBOXは掛け録りになるけれど、通常のINSERTSに挿したPure Plate Reverbはモニターのみに返す形になります。
このようにして録ったのがこちら。
録音したトラックはリバーブなしではありますが、録音後に改めてCubase上でVSTプラグインとしてPure Plate Reverbを立ち上げて、ややリバーブ深めで調整してみました。
さて、今回のレコーディング、ほとんどリハもなしで、短時間でレコーディングしたわけですが、改めて聴いてみると、多少ピッチが甘いところがあるな…と感じます。Melodyneなどを使って細かく調整するのも手ですが、ここではAuto-Tune Realtimeがあるので、これをちょっと使ってきました。
グレードによってAdvancedがAccessが付いてくるわけですが、ここでは多くの機材についてくる簡易版であるAuto-Tune Realtime Accessを設定。KEYをFにし、SCALEをMAJORにして使ってみたのがこちら。
すごく自然な感じでピッチがキレイに調整されていますよね。ではここでさらにリバーブを別のものに変えてみましょう。今回のキャンペーン対象の機材すべてに付いてくるのがGalaxy Tape Echo。見ての通り、Rolandのビンテージ機材であるテープエコーのSpace Echoですよね。以前、以前のバージョンではRoland Space Echoとなっていましたが、大人の事情があるんでしょうね。いつのまにかUAD-2の協力各社の中からRolandが外れており、それに伴いGalaxy Tape Echoという名前にはなっていますが、音自体は以前と変わっていないようです。
RolandのSpaceEchoを再現するGalaxy Tape Echo
これを先ほどのPure Plate Reverbの代わりに差し替えてみたサウンドがこちらです。ちょっと独特な感じのリバーブというかエコーになったのが感じられると思います。
さらに、遊びとして、Oxide Tape Recorderも使ってみました。こちらはテープレコーダーに録音したようなちょっと温かみがあってサチュレーション感のあるサウンドに仕立ててくれるもの。
これをAuto-Tuneの後段に入れ、先ほどのGalaxy Tape Echoも使った形にしたのがこちら。
声の雰囲気が少し変わって、さらに気持ちのいい歌声になったと思いますが、いかがでしょうか?
こんな感じでボーカルをいろいろと調整できるツールがいっぱい付属してくるのが今回の「デスクトップ・プラチナボーカル・プロモーション」のキャンペーンなのです。Apollo TwinやUAD-2が気になっていた…という方はこの機会に検討してみてはいがでしょうか?
【関連情報】
デスクトップ・プラチナボーカル・プロモーション関連情報
Apollo Twin MkII DUO製品情報
Apollo Twin X製品情報
Apollo Twin USB製品情報
Apollo x4製品情報
田村響華プロフィール(MILLENNIUM PRO)
【価格チェック&購入】
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