けもフレの声優ユニット『ちく☆たむ』と営業再開を目指す動物園の応援ソングを勝手に作っちゃった

来週4月1日で満10年を迎えるDTMステーションですが、10年もやっていると、いろいろと面白い案件、不思議な案件も飛び込んできます。そんな案件の一つが、『けものフレンズジェンツーペンギン役の声優、田村響華(@tamura_kyoka)さんからやってきた「危機に瀕している南伊豆にいる300匹のおサルさんたちを救うための『勝手に応援プロジェクト』に協力して!」という話。最初は何のことなのか、サッパリ分からない唐突な話だったのですが、聞いてみると、それは確かに勝手にでも応援しなくちゃ!……という案件だったのです。

具体的には、響華さんが応援ソングを作曲し、フンボルトペンギン役の声優・築田行子(@ckik195)さんと組む『ちく☆たむ』として歌おうと思っているので、それに関して手助けして欲しいというもの。まあ、実際に手助けしたのは作曲家の多田彰文さんだったわけですが、先日その曲が無事お披露目になり、明日3月26日には『ニホンザル300匹を救え!南伊豆 波勝崎(はがちざき)モンキーベイ誕生プロジェクト』なる記者会見まで行われることになったのです。実際、どういうことなのか、その経緯などを紹介してみたいと思います。

波勝崎モンキーベイ勝手に応援プロジェクトに協力!?

まずは、経緯の前に、行子さんがTwitterにUPした、その楽曲「ウキウキウッキッキー」のプロモーションビデオをご覧ください。

でも「なぜ、けものフレンズの声優さんから、そんな話がDTMステーションへ!?」という方も多いと思うので、改めて状況を説明すると、このDTMステーションの立体版(!?)ともいえるネット配信番組「DTMステーションPlus!」を6年前から作曲家の多田彰文さんと展開しています。隔週火曜日の夜に放送している番組なのですが、3年前から響華さんにレギュラーゲストとして参加してもらうようになり、冒頭で小コーナー「田村響華と今日からDTM♪」を担当してもらっているのです。

DTMステーションPlus!番組生放送中に響華さんから今回の件の相談が持ち掛けられた

その番組内で響華さんが作曲し、多田さんが編曲した「きっと」をDTMステーションCreativeというレーベルからアルバム「Let’s do it!」としてリリースしたこともあり、番組を見ていた方であれば、響華さんの作曲センスの良さもご存知だと思います。その響華さんから、今年1月14日、番組の放送中に今回の案件が持ち込まれたのです。ちょっと時系列から簡単に整理してみましょう。

2019年8月、田村響華さん作詞作曲による「きっと」を収録したアルバム「Let’s do it!」をリリース

先ほどのミュージックPVのテロップにも合った通り、1957年に開業した南伊豆にある「波勝崎苑モンキービーチ」が2019年9月30日で閉園になってしまいました。ここは餌付けされた300匹の野生のニホンザルと触れ合える、世界でも稀有な施設として最盛期は年間46万人が訪れていたそうですが、老朽化もあり人が来なくなり、経営難に陥って閉園に追い込まれたそうです。

2019年8月に閉園になってしまった波勝崎苑モンキービーチ

とはいえ、相手はサルたち。閉園になったとはいえ、放置していたら子ザルは飢え死にしてしまうし、近隣の田畑を荒らしたり、民家に侵入したり……という被害が出てしまいます。そうした事態を避けるため、波勝崎苑や南伊豆町から要請を受け、近隣の動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長が引き取って継承していくことになったのだとか。とはいえ、前途多難で困っているというニュースを、ちく☆たむの二人が知り、何とか手助けできないかと勝手に思い立ったというのです。

今年1月、ちく☆たむの二人が南伊豆の現地へ視察へ

1月に二人が閉園中の現地に視察に行った直後に、今回の相談が、響華さんから我々に持ち掛けられたというわけなのです。だったら、その曲を番組内で作っていくというのも手だったのですが、危機に瀕した300匹のサルたちがいるのですから、そんなに悠長に構える余裕もない、というわけで番組とはいったん切り離して、勝手にプロジェクトを進めていこうということになったのです。

左から行子さん、白輪園長、響華さん、iZooのスタッフのみなさん

もちろん、単に急いで作るならプロである多田さんが作詞作曲を手掛けるというのが簡単ですが、二人の思いを形にして届けるなら響華さんが作曲、行子さんが作詞と自分達で作り、その過程を多田さんが手助けるのがいいだろう、ということに。とはいえ、しっかりした作品にまとめ上げるため、編曲は多田さんが行うようにしようと、その日の打ち合わせで決定。ちなみに私はその過程を追いながら、このようなレポートに仕上げる広報担当ですね(笑)。

DTMステーションCreativeとして勝手に協力することに…左から藤本、響華さん、多田さん

さっそく翌日からプロジェクトがスタート。まずは響華さんから、こんなような曲にしたい、という参考曲がいくつkピックアップされ、その楽曲のYouTubeのURLが送られてきました。

響華さんのイメージを元に曲作りがスタート

「こんな曲にできたらいいなとピックアップしたのですが、それと同時に、ちく☆たむで歌うことを考えると、サビでジャンプしたい、海でフェスしているような感じでサビ部分ではお客さんに猿ポーズとかをしてもらえたらいいな、と思ったんです。また、波勝崎モンキーベイは海辺にあるところだから、海をイメージした爽やかな音にしたい、曲としては疾走感ある感じにしたいなと思いから、ギターが入ったバンドサウンドに仕上げられたら…というイメージも多田さんに伝えました」と響華さん

そのタイミングで響華さんからアイディアとしてあがってきたのが、サビ前からサビにかけてのこんなメロディーでした。

https://www.dtmstation.com/wp-content/uploads/2020/03/Tamura_Idea01.m4a?_=1

これを聴いた多田さん、「メロディーは本人が一人で十分作っていけると確信しました。このメロをもとに、参考資料から伝わるゴリっと感をエッセンスに、さっくりとした編曲音源を作成してみたのです」と、速攻で作ったのがこちら。

https://www.dtmstation.com/wp-content/uploads/2020/03/B-Sabi_Rough162bpm.mp3?_=2

もうこの時点で、十分原型が出来上がってきてますよね。響華さんもこのアレンジを聴いて「いいですね!すごく爽やかな感じ!」と納得の模様。この状態ではコード確認のピアノでのバッキングになっていますが、これをギターサウンドにすると多田さん。またこのときはテンポ160でしたが、夏の感じ出すのにはもっと速くても良いかもと、一度170まで上げてみたところ、「おー!速い!あんまり速すぎてメロとか渋滞してる感じに聴こえないようにしていただければ、疾走感素敵です」と響華さん。結局テンポ166で行こうと決まったのでした。

響華さんもStudio One 4 Professionalを使いながら曲作り

ただ、その後、響華さん側の作曲の続きの作業がやや苦戦。そこで多田さんが助け舟を出しました。そう、いつもDTMステーションPlus!の放送で曲のアイディア出しをするときと同様に、前後のコード進行を作り、メロディーを考えやすいように土台とワンコーラス分を作って渡したのです。構成としては
という流れ。

この中の赤いところが、多田さんが提案したところですね。これによって、響華さんのイメージも膨らみ完成に近づいていきます。もちろん、こうした作業は基本オンライン上でのやりとりが中心で、どんどんと進んでいきます。そして2月4日、この先の作業工程についても兼ねて事務所で打ち合わせを……ということだったので、様子見に行ったときの映像がこちら。

そう、苦戦していたAメロ部分はメロディではなく、言葉のようにしたいとのアイディアの元り、実際歌いながらデモをレコーディングしていたんですよね。見ての通り、この時点では歌詞は一切なしで、あくまでも曲先行でこれを元に行子さん側にリレーしていくという流れなんですね。

響華さん(左)が作った曲を元に行子さん(右)が歌詞を作っていく

みんなで作業を進めつつ、アレンジのほうもフル尺が完成。そして2月17日には、その歌詞も完成し、タイトル『ウキウキウッキッキー』もこのタイミングで確定しました。これと並行して、ちく☆たむの二人は振り付けも含め練習を進めていたようですが、2020年2月22日に新宿Key Studioで行われたライブ『ちく☆たむランド Vol.2 ~ Somebody to Love』において、この曲が初お披露目となりました。

『ウキウキウッキッキー』は2月22日のライブで初お披露目に

さらに冒頭のTwitterにUPしたPV用のレコーディングなども行われていったわけです。もっとも、この勝手に応援ソング『ウキウキウッキッキー』をCDリリースできるのかなどについては、まだ未確定。公開している音源も現状ではTwitterのみなので、フル楽曲聴きたいという方は、ちく☆たむの二人のTwitterなどをチェックしながら、ライブなどを見に行ってくださいね。以下は3月20日に行われたちく☆たむのライブの様子です。

ところで、この勝手に応援していた活動は、3月26日に「波勝崎モンキーベイ」の開業を目指している白輪園長にも報告をしていたのですが、その功績(!?)が認められ、明日、南伊豆町で行われる予定の『ニホンザル300匹を救え!南伊豆 波勝崎モンキーベイ誕生プロジェクト』の記者会見に、ちく☆たむの二人もゲストに呼ばれることになりました。その内容については、また情報が入り次第、追記していこうと思っています。

ついに明日、南伊豆での記者会見に!

一方でDTMステーションPlus!の番組をご覧の方であれば、ご存知の通り、番組内では、さらに勝手にこの『ウキウキウッキッキー』のバラードバージョンなども制作中。今後もまだまだ発展していく(!?)と思うので、ぜひ番組のほうもご覧いただけると嬉しいところです。

※2020.03.27追記
昨日、無事、ちく☆たむも参加する形で、『ニホンザル300匹を救え!南伊豆 波勝崎モンキーベイ誕生プロジェクト』の記者会見が南伊豆町で行われました。記者会見内容の詳細はプレスリリースをご覧いただきたいのですが、波勝崎モンキーベイを支援するためのクラウドファンディングが4月7日~6月5日の期間で目標金額は1,000万円として行われることが発表されました。

3月26日に行われた記者会見の様子

この記者会見の中で、「ウキウキウッキッキー」の音源も公開され、ちく☆たむの二人も壇上に登場。波勝崎モンキーベイへの思いを語るのかと思ったら、二人でショートコントを2本披露する…という予想外の展開になっていましたが、記者のみなさんにはちゃんとウケていたようです。

記者会見後の記念撮影

さて、この記者会見の中でのもう一つ、サプライズの発表もありました。それはモンキーベイ誕生プロジェクトに、けものフレンズプロジェクトとしても協力し、ニホンザルのフレンズが新たに誕生することになったということ。吉崎観音先生が描き下ろした波勝崎モンキーベイのメインビジュアルも披露されました。

新たに誕生したニホンザルのフレンズ

なお、4月7日からのクラウドファンディングはBOOSTERで行われ、集まった資金は波勝崎モンキーベイの改修工事などの一部に使用されるとのこと。一方で、投資した人へのリターン(返礼品)などに関する詳細はまだ発表されていませんが、この記者会見の中で、けものフレンズやちく☆たむの関連グッズなどを検討していることが言及されていました。この点は、また詳細情報が入ったら紹介する予定です。

【関連情報】
ちく☆たむオフィシャルサイト
ちく☆たむチャンネル(ニコニコチャンネル)
田村響華さんTwitter @tamura_kyoka
築田行子さんTwitter @ckik195
DTMステーションPlus!チャンネル(YouTubeチャンネル)
『Let’s do it!』(DTMステーションCreativeオンラインショップ)

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