プロの作曲家が選んだMIDIキーボード、Nektar Panorama Tの実用性

『魔法つかいプリキュア!』や『ああっ女神さまっ』などのTVアニメ楽曲、『SUPER SHIRO』や『クレヨンしんちゃん 外伝』、『ポケットモンスター 』、『となりの関くん』などの劇伴作品の作曲や編曲を手掛ける作曲家の多田彰文さん。ご存知の通り、ネット配信番組であるDTMステーションPlus!を立ち上げ期から一緒に行ってきたり、音楽レーベルであるDTMステーションCreativeを一緒にプロデュースしてきたので、最低でも週に1度はじっくりミーティングなどを行っています。

その多田さんが、先日導入したよと話していたのがNektarPanorama T6という61鍵のMIDIキーボード。Nektar製品は以前、下位機種であるImpact LX+を使ったことはあったのですがPanorama Tは未経験。多田さん曰く、付属ソフトであるNektarineなるものが、プラグインのハブのように使えるユーティリティで非常によくできていて便利なんだとか……。先日、多田さんの所属事務所であるイマジンに伺った際に少し見せてもらったところ、確かに面白そうなキーボードだったので、紹介してみましょう。

新しいMIDIキーボードとしてNektarのPanorama T6を導入したという作曲家の多田彰文さん

ひとことでMIDIキーボードといっても国内外に数多くのメーカーがあり、数多くの製品が出ています。DTMステーションでも「DTM初心者のためのMIDIキーボード選び」という記事で、いろいろな機材を紹介していますが、そんなMIDIキーボードメーカーの一つが、アメリカ・カリフォルニア州にあるNektar Technology(以下Nektar)です。

NektarはさまざまなMIDIキーボードを開発、販売しており、安いものだとSE25という25鍵ミニキーボードで税込み6,000円のものから、最上位機でPanorama P6という7万円程度のモデルまでいろいろなモデルがあります。前出のImpact LX+については、以前「各種DAWに完全対応。コントローラ機能が秀逸のNektar Impact LX+」という記事でも取り上げたことがありました。

MacBook ProにUSB接続したPanorama T6。オーディオインターフェイスは以前から愛用のApollo Twin

そして今回、多田さんが導入したというのは実売価格が46,000円程度のPanorama T6という61鍵のキーボード。「いろいろなキーボードを弾き比べていた中、Panorama T6の鍵盤は作りも非常にしっかりとしていると同時に、軽い鍵盤の良さとピアノのようなリアルタッチのフィーリング感がいいバランスになっていたんです。またベロシティーカーブも細かく設定できるので、いくつかを試してみました。設定によって、全然違うタッチの異なるキーボードを弾いているような感覚になりますが、結局自分ではスタンダードという設定にして使っています。また非常に多機能ですが、USBバスパワーで動作するからACアダプタが不要なのも気に入ったところです」と多田さん。

キーボードの上には9本のフェーダーと9つのボタン

見せてもらうと61鍵のキーボードの上にはフェーダーとLCDディスプレイ、トランスポートボタンやコントロール用のノブ、そしてパッドまで並んでおり、ドラムはこのパッドを使って打ち込んでいました。

トランスポートボタンやノブでほとんどの操作ができてしまう

「このディスプレイとコントローラーのおかげで、Macの画面を見ることなく、ほとんどの操作をPanorama T6だけでできてしまうのも便利ですね。たとえば範囲指定をした上でその間を切り替えし演奏するようにループ設定するなんたこともできるし、各種音色をブラウズして選択するのもこれだけでできるなど、快適ですよ」(多田さん)

ィスプレイには音色や各種パラメータが表示され、PC画面なしにほとんどの操作ができる

ちょっとおや?と思ったのは右のほうにテンキーを載せていて、ここでもトランスポート操作をしていたこと。

「手持ちのBluetoothのテンキーがちょうどピッタリサイズで乗ったので、こうして使っているんですよ。あまり深い意味はないけれど、トランスポートを使うときは、一番近いボタンで操作して使っています。たとえば、アレンジをしているときにチェロなど低域域の楽器を打ち込むときは左にあるMacBook Proを操作します。また中音域であれば、Panorama T6のトランスポートキーを、そしてパッドを使ったりするときは、このテンキーを使っているだけです(笑)」ちなみに、このテンキーはAmazonなどで販売されているSatechi スリム ワイヤレス Bluetooth テンキーというものでした。

右上のスペースがテンキー置き場としてピッタリとフィット

Studio One、Cubase、FL Studio、Ability Pro、ProTools……などさまざまなDAWを使い分けている多田さん、最近はStudio Oneを使っているケースが多いようですが、この点について「Nektarのサイトに行くと、インテグレーションファイルというものが配布されていて、それを読み込ませれば、一発でStudio Oneに対応してくれて快適です」とのこと。ちなみに、このインテグレーションファイルはStudio One用のほかにCubase/NUENDO用、Logic Pro用、GarageBand用、Bitwig Studio用、Reaper用、Reason用などが用意されています。またMCU=MACKIE Control Universalにも対応しているので、ほとんどどのDAWでもすぐに使うことが可能になっています。

Studio OneのインストゥルメントとしてNektarineを起動。その中で複数のソフト音源を立ち上げることができる

さて、今回、多田さんから話を聞いて私が一番興味を持ったのが、Nektarineというシステムソフトウェア。これは各種DAWと各種ソフトウェア音源とを以下の図のように橋渡しするソフトウェアで、Panorama Tから快適に制御できるようにするもの。

Nektarineは複数のソフトウェア音源とDAWをつなぐHUBとして機能すると同時にPanorama Tと連携する

つまりNektarineはVSTインストゥルメントとして機能する一方で、音源としての機能は持たず、Nektarineに複数のVSTインストゥルメントを組み込んでレイヤーしたり、切り替えたりしながら使えるというもの。Macで使う場合はAudio Unitsとしても動作します。以前、紹介したAKAI/M-AudioのVIPにも近いものとなっており、Nektarineを介すことで、音源の選択やプリセットの選択などがPanorama Tでできるようになっているのです。

Nektarineを介すことで、Massive Xの主要パラメータがPanorama Tのノブに自動で割り振られる

「Nektarineは、視認性がいいので、かなり便利です。複数のシンセを立ち上げて、レイヤーしながらの音作りも可能ですし、Panorama T6のノブにデフォルトでパラメーターがアサインされるので楽ですね。またノブにアサインしたいパラメーターがあったら、即座にドラッグ&ドロップでアサインできるのも嬉しいところ。ソフトウェア音源の使い勝手が格段によくなりますよ」と多田さん。

ディスプレイ上でソフト音源のパラメータなどを確認できる

アナログシンセ系の音源なら、フィルターやレゾナンスが、オルガン系の音源ならドローバーが…というように、一番使いそうなパラメータが自動的にアサインされるので、音作りに詳しくない人でも、Panorama Tのノブを動かすだけで結構音の変化を楽しめるとうのも重要なポイントかもしれません。

Panorama T6を使うことで、作曲作業を効率よくできると話す多田さん

ただし、ここで組み込めるのはあくまでもインストゥルメントであって、エフェクトを組み合わせることはできないようです。せっかくならエフェクトもセットで使えるようにしてくれると、より積極的な音作りができるようになるので、ぜひ今後のバージョンアップに期待したいところです。

多田さんは今後ライブなどでの活用も考えているという

「まだ使い始めて間もないので、すべての機能を使いこなせているわけではありません。でも、作曲・編曲用に使うキーボードとして非常に重宝しているし、作業効率も大きく上がったように感じています。これまでライブに持ち込む…といった使い方はしていませんが、USBケーブル1本で動いてくれるので、機動力高く使うことができそうです」と多田さんは語ってくれました。

ベロシティーの効きもいいパッドを使ってドラムを打ち込む

これだけの機能を持ちつつも実売価格が税込み46,000円程度と手ごろなキーボード、Panorama T6。49鍵のPanorama T4ならば38,000円程度とさらに低価格なので、MIDIキーボードの選択肢として考えてもよさそうです。

なお、3月6日からPanorama T4およびT6のクロスグレードキャンペーンが数量限定で行われています。これはPanorama TのDAWインテグレーションに対応した以下のDAWを持っている人(有償版に限る)が対象となります。

・Steinberg社 Nuendo、Cubaseファミリー
・Apple/Emagic社 Logicファミリー
・PreSonus社 Studio Oneファミリー
・Bitwig社 Bitwig Studioファミリー
・Propellahead社 Reasonファミリー
*Windows版/Mac版、バージョン、グレードは問いません。 *有償版のみが対象となるので、デモ版、体験版、OEM版、バンドル版を除きます。 *Panorama T4/T6のDAWインテグレーションは、Nuendo 5、Cubase 5、Logic Pro9、Studio One 4、Bitwig 2、Reason 6以降に対応します。

このクロスグレード版、価格は通常より2割程度安くなるので、ぜひチェックしてみてください。

【関連情報】
Nektar Panorama T4/T6製品情報

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