NEUMANNといえば、U87Aiなどの高級マイクをイメージする方がほとんどだと思いますが、そのNEUMANNがモニタースピーカーを出しているというのをご存知でしょうか? NEUMANNのKH 80 DSPはその名前からも想像できる通りDSPを搭載したモニタースピーカーで、LAN端子も持っているという機材。そして部屋の大きさやスピーカーの設置環境またスピーカーからリスナーまでの距離など応じて、最適なサウンドに調整できるようNeumann.ControlというiPadアプリを通じてコントロールできるようになっているのが大きな特徴です。
サイズ的には4インチのウーファーを搭載したモニタースピーカーなので、とってもコンパクトで、狭い作業スペースでも余裕で設置できるのも重要なポイント。とはいえ、ピーク出力で120W+70W(ウーファー+ツィーター)という爆音が出せる余裕も持っているのも安心して使えるところです。実際、どんな音のモニタースピーカーなのか、そしてどのようにして音質調整するのか、など試してみたので、紹介してみましょう。
「サウンドの入口から出口まで」……そんな考え方のもと、NEUMANNではマイクもモニタースピーカーにも取り組んでおり、2~3年ほど前からホームレコーディング、DTMの世界にもターゲットを向けてきています。そうした中、登場したのがDTMで音楽制作をするユーザー向けの小型モニタースピーカー、KH 80 DSPです。
実は2017年にも「あのNEUMANNが打ち出すDSP内蔵、小型モニタースピーカー、KH80DSP誕生」という記事でも紹介したことがあったので、ご存知の方もいらっしゃると思います。製品が発売された2年半前の時点では、このKH 80 DSPは単に音のいいモニタースピーカーに過ぎませんでした。しかし、その後、環境が整い、最先端のモニタースピーカーへと進化しているので、その点について今回はスポットを当てていきます。
まずはKH 80 DSPの概要を簡単に紹介すると、これは233x154x194mmというサイズの小型スピーカーで、5インチのモニターと並べてみると、明らかに一回り小さなサイズであることが分かると思います。
デザイン的に目を引くのは、NEUMANNのロゴが白く光っている点。これだけでもグッと来る人も少なくないと思いますが、もちろんスゴイのはここから。まず4インチ・ウーファーと1インチ・ツィーターを搭載した2Wayパワーアンプ内蔵のモニタースピーカーとなっていますが、そのピーク出力性能は120W+70Wとなっているので、まさに爆音が出せる能力が備わっています。もちろん、通常そんなに大きな音は出さないと思いますが、余裕ある使い方ができるのです。
しかもスピーカーの周波数特性を見ると、何だこれ?と驚くほどのフラットなもの。マーケティング担当者に確認したところ、「いかに原音に忠実に再生できるようにするかを徹底した設計をしています。このf特を見ると、『そんなわけないだろう?』と思われる方も多いようです。が仕上げがフラットになるように作り込んでおり、このグラフも実測値なんです」とのこと。この辺は、非常にこだわりを持った設計となっているようですね。実際に音を聴いてみても、ものすごく解像度が高く、繊細な表現ができている一方で、低域も含めパワフルに出力できるモニタースピーカーであるのを実感できます。
リアを見ると、普通のモニタースピーカーとの決定的な違いが見えてきます。電源は100Vを入れる形で、オーディオはXLRのキャノン端子で、いずれも下から突っ込む形状になっています。しかし、その一方で、LAN端子がここにあるのです。そのこのLAN端子はオーディオ入出力のためのものではなく、内部のDSPをコントロールするためのもの。同じLANのWi-Fiにネットワーク接続されているiPadと通信した上で、KH 80 DSPを設置した部屋、位置にマッチした形で音響特性を調整できるようになっているのです。そう一般的なモニタースピーカーであれば、設置して終わりですが、KH80 DSPの場合、設置した環境の応じて最適化できるわけです。
実際に試してみたので、その手順などを紹介していきましょう。まずは、その前の準備として本体上部にあるスイッチ類の設定を行います。一番右にあるINPUT GAINは通常は0dBに揃えておくのがよさそうです。その隣のOUTPUT LEVELは4段階になっているので、左右同じになるようそろえておきます。そして、ACOUSTICAL CONTROLは中低域の音の出た方を設定するものですが、これはあとでシステム的に調整できるようなので、ここではFREE STANDINGに揃えておきます。
そして一番左のSETTINGSがネットワーク接続しての自動調整を行うためのスイッチです。これを上から3番目に設定。これは長時間音を鳴らさないと電源が切れるオートパワーオフの設定で、ネットワークコントロールをオンにしたモードです。この設定ができたら左右それぞれのスピーカーの電源を入れます。
そしてiPadにNeumann.Controlという無料のアプリをインストールし、これを起動します。この際、iPadのWi-FiとKH 80 DSPにつないだケーブルが同じLANネットワーク上にあることは確認しておきます。
ちなみにKH 80 DSPは2chに限らず、2.1chや4ch、5.1ch、7.1ch……と自由な組み合わせが可能であり、それに合わせてNeumann.Controlで調整できるようになっているのですが、ここではサブウーファーなしの2chとして設定します。
その後、英語でいろいろと説明が表示されるので、どんどん飛ばしていくと、ネットワーク接続の画面が現れ、しばらくすると、この2つのスピーカーが認識されます。ここで「IDENTIFY」というボタンをタップすると、白く光っていたNEUMANNのロゴが薄い赤色に変わって点灯するので、確実に接続されていることが確認できます。
これで準備は完了。あとは、実際の部屋の状況を入力していくのです。まずは部屋の大きさ。奥行、幅、天井までの高さをメートルで入力します。
さらに、それがどんな部屋なのかを選択します。ごく一般的な部屋なのか、事務所的な部屋なのか、吸音パネルのようなものをつけて調整した部屋なのか……といった選択を行うのです。
その後に行うのは左側、右側それぞれのスピーカーの設置状況についてです。それが壁のすぐそばにあるのか、壁からどのくらいの距離にあるのか、デスクトップ上にディスプレイを置いているのか、2台のディスプレイの間に設置しているのか、さらには、実際に音を聴く人はスピーカーから何cmの距離にいるのか……といった情報を細かく入力していくのです。
以上で、設定は完了。これを適用させると……、バシッと音が変わります。メチャメチャいい音の響きになって驚きますね。音響特性の調整というと、専用のマイクを用意して、スウィープ信号を鳴らして……というのを想像しますが、iPad上で数値を入力するだけで、できてしまうんですね。試しにまったく違う値を入力してみると、音像がボケてしまいKH80 DSPの性能が生かせていないことを実感します。それだけ、このNeumann.Controlが大きな威力を発揮しているということであり、DSPを搭載しているモニタースピーカーからこそ実現できることのようです。
先ほどのマーケティング担当者に確認したところ、「将来的にマイクを使って自動測定・調整を行うツールを出すことも検討しています。ただ、測定用のマイクなどが別売りになる予定なので、現状の方法であれば、追加負担は不要ですし、この数値設定で、かなり音響特性を追い込んで調整できるのでかなり満足のいく調整ができると思います」とのこと。
確かに、ここまでできれば十分過ぎるようにも感じました。とはいえ、ここからは少し好みの問題として、「でもちょっとだけ低域をブーストしたい」とか、「高域を微妙に抑えてい」といったケースもあると思います。それに対応できるマニュアル調整機能も用意されているので、必要に応じてEQ調整などを行うこともできるのも嬉しいところです。
こうした設定は、それぞれ名前を付けて保存しておくことができるので、KH 80 DSPを持ち運んで別の場所でセッティングする場合などにも、すぐに調整したり、元に戻すことが可能です。
まあ、多くの場合は、一度、スピーカーを設置したら、そのままだと思いますが、その場合は、iPadアプリを頻繁に使う必要はありません。一度、セットしたら、あとはその状態をKH 80 DSP本体が覚えておいてくれるので、大丈夫。初回だけアプリで調整というのが一般的かもしれません。
このNEUMANNが実現するモニタースピーカー環境、都内であればRock oN Company、宮地楽器、イケベ楽器などで展示されており、試聴もできるので、機会があれば、そのサウンドをチェックしてみてはいかがでしょうか?
【製品情報】
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