USB接続も32bit/384kHzの時代へ! SteinbergがUSB Type-C接続オーディオIFのフラグシップ、AXR4Uを発表

1月16日~19日アメリカ・アナハイムで開催されているThe 2020NAMM。このタイミングで各社からさまざまな新製品が発表されていますが、SteinbergからもUSB 3.0(Type-C)接続のフラグシップとなるオーディオインターフェイス、AXR4Uが発表されました。これはSteinbergとヤマハが共同開発した製品で、1Uラックマウント・サイズに最高32bitINTEGER/384kHzでのレコーディング/プレイバック機能を詰め込んだものです。

このボディーのフロントには4基のハイブリッドマイクプリアンプを搭載するとともに、レイテンシーフリーのシステムを構築する28×24マトリックスミキサーを搭載。国内では2月5日の発売が予定でオープン価格となっていますが、税抜き実売価格は24万円程度とのこと。いまベストセラーモデルのUR-Cシリーズとどう違うのかなどを見ていきましょう。

2月5日発売予定の、Steinberg AXR4U

Steinbergの32bitINTEGER/384kHzオーディオインターフェイス、と聞いて、「あれ?前に見たことがあるような……」と思った方は正解。そうAXR4Uは、ちょうど1年前に発売されたAXR4Tの兄弟モデルとなるもので、大きさや見た目のデザイン、そして基本的な仕様もAXR4Tをほぼ踏襲しています。

USB 3.0(USB Type-C)での接続となっている

違いはAXR4TがThunderbolt 2接続であるにに対し、AXR4UはUSB 3.0(Type-C)となっていること。4つのハイブリッドマイクプリアンプを搭載していることやPC側から見て28in/24outである点などすべて同様となっています。ただし、Thunderbolt 2では、カスケード接続できるので、最大3台のARX4Tを連結させて使うことができるのに対し、AXR4Uは基本的には単体での使用となっています。AXR4Tについては以前「Steinbergが32bitINTEGER/384kHzの業界最高クラスのオーディオインターフェイス、AXR4Tをリリース」という記事で紹介しているので、そちらを参考にしてもらうとして、改めてAXR4Uの詳細を見ていきましょう。

AXR4Uのパッケージ。32bitINTEGER/384kHz対応なのが大きな特徴

まずはスペック面からですが、AXR4Uは最大32bitINTER/384kHzであるのが大きなポイントです。まだまだあまり聞きなれない32bitINTEGER=32bit整数、これは音のダイナミクス(音の大きさ)を32bitの整数で表現するというもの。もう少し具体的にいうと

0~4,294,967,295

という範囲で表すことができる、非常に高精度ものです。数字が大きすぎて、なかなかピンとこないかもしれませんが、一般的に高音質といわれる24bitが

0~16,777,215

という範囲であるのに対し、256倍の精度になっているのです。。

もっとも32bitINTEGERという点では、先日リリースされたUR22CやUR44C、UR816CなどのUR-Cシリーズも同様。ただし、サンプリングレートにおいてはUR-Cシリーズが192kHzまでなのに対し、AXR4Uは384kHzとなっており、より高い音域まで正確に録音したり、再生できるようになっています。

AXR4Uの音質を支える重要なパーツであるAKMのADC、AK5397EQ

この高精度を実現するためにAKM(旭化成エレクトロニクス)のAK5397EQという127dB 768kHz/32bit2chのADコンバータチップを搭載するなど、最高性能の部品を使っているのがAXR4Uなのです。

続いてチェックしたいのが、フロントに搭載された4つのハイブリッドマイクプリアンプについて。このハイブリッドというのはアナログとデジタルの両方で構成されているという意味で、Steinbergならではのユニークなもので、ヤマハのオーディオ設計で培われてきたノウハウを元に部品の選定、回路レイアウト、電源やグランドなどの基本設計を行い、測定および検証を繰り返しながら、社内外のエンジニアによる徹底的な評価を経て調整したというものです。

フロントには4つのハイブリッドマイクプリアンプを搭載

しかし、単に正確でいい音というだけでなく、音楽的で空気感豊かなサウンドを実現するために、デジタル部が用意されているのです。こちらはRupert Neve Designs社のトランスフォーマーとSILKプロセッシングを再現するというもの。すでに発売されているUR-RTシリーズは、実際に大きなアナログ部品であるトランスフォーマー(トランス)が搭載されているのに対し、これはヤマハ独自のモデリング技術であるVCMテクノロジーによって正確にモデル化したというもの。

VCMテクノロジーの詳細については、以前「60年代、70年代のRupert Neve氏開発の製品をリアルに再現させるヤマハ の研究機関、K’s Labの技術力」といった記事で紹介しているので、そちらを参照いただきたいのですが、Rupert Neve Designs社とタッグを組んでいることもあり、誰もが納得する音楽的な深みと質感を付加したサウンドが作り上げられるようになっているのです。このSILKはBLUEとREDという2種類のモードがあり、BLUEモードは中低域、REDモードは中高域の倍音成分を強調する違ったサウンドにできるのも面白いところです。

ヤマハ独自開発の高性能なDSPチップ、YAMAHA DSPX

そしてもう一つのAXR4Uの大きな特徴となるのは、これが非常に自由度の高いミキシングコンソールのような機能を持っているということ。前述の通り、MacやWindowsとUSB Type-Cケーブルで接続すると、コンピュータ側からは28in/24outのデバイスとして見えます。ただ実際に28個の入力端子と24個の出力端子があるのではなく、AXR4U内部にある28×24マトリックスミキサーが見えているのです。

AXR4Uの内部ミキサー

これはヤマハのカスタムメイドのDSPXチップを使ったシステムとなっており、入力信号やDAW の出力をミックスバスにルーティングするなど、レイテンシーフリーのシステムが構築可能で、こことのやりとりができるのです。dspMixFx AXRアプリケーションを使うことにより、ミキサー、マトリックスミキサー、メーターなどのウィンドウですべての設定をコントロールし、レベルやルーティング状況を常に把握することができるとともに、これらの設定をシーンとして保存し、後で自由に呼び出すことが可能となっています。

28×24の構成を自由にルーティング可能

さらに、このDSPXチップを使った4種類のプレミアムDSPエフェクトを内蔵しているのもAXR4Uの重要なポイント。UR-Cシリーズでも利用可能なリバーブのREV-X、チャンネルストリップのSweet Spot Morphing Channel Stripに加え、EQUALIZER601およびCOMPRESSOR276というエフェクトも搭載しています。これらはRIVAGE PMシリーズなどのYAMAHAのコンソールで定評のあるEqualizer601やComp276を移植したもの。


EQUALIZER601

EQUALIZER601は70年代から人気のあるイコライザーを再現し、その独特の歪み特性を備えた特徴的なEQ。COMPRESSOR276はレコーディングスタジオなどでよく使用されているアナログスタイルのコンプレッサを再現したものとなっています。いずれも前述のVCMテクノロジーを用いたビンテージ機材を再現するエフェクト。これら4つのエフェクトはAXR4U内部搭載のDSPで動作するほか、それぞれのVSTプラグインバージョンもバンドルされており、PC内で同様の音作りをすることも可能になっています。

COMPRESSOR276

以上、速報という形で、AXR4Uについてまとめてみました。まさにSteinbergのフラグシップのオーディオインターフェイスとなるもので、価格的にみてもUR-Cシリーズのかなり上にある業務用のオーディオインターフェイスといえそうです。32bitINTEGERに対応したDAWであるCubase AIも付属しているので、これを使うこともできますが、もちろんどのDAWでも利用可能。Thunderbolt 2接続のAXR4Tを選ぶか、USB 3.0接続のAXR4Uを選ぶかは、PC側の選定にもよると思いますが、ハイエンドのオーディオインターフェイスとして、広く使われていくと

思われる機材です。

【関連情報】
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