革新的コントロールサーフェイスを低価格で展開する香港・中国メーカー、iCONが進める世界戦略

香港/中国のDTM/レコーディング機材メーカー、iCON Pro Audio(以下iCON)をご存知ですか?国内ではフックアップがiCONのフィジカルコントローラーを扱っていますが、同社はフィジカルコントローラーのほかにもMIDIキーボード、オーディオインターフェイス、マイク、ヘッドホン……など数多くの機材を企画・開発・生産する大手メーカーであり、現在昨年ベースで2600万ドル(約29億円)を売り上げる大きな企業です。

国内外で中国の楽器・機材メーカーの存在力がどんどん高まってきていますが、iCONはどのように技術力、開発力を身に着けてきたのでしょうか?そして、今後日本市場に対してはどのように展開していこうとしているのか。10月に中国上海で行われた楽器の展示会、Music ChinaでiCONのCEO、Chris Wongさんにインタビューすることができたので、いろいろと伺ってみました。

iCON Pro AudioのCEO、Chris Wongさん

--いまやiCON、とても大きな会社になっていますが、まずは会社の沿線など、これまでの歴史を簡単に教えていただけますか?
Wong:iCON創業前は香港においてハーマン製品やヤマハ製品、マランツ製品などを取り扱う代理店として展開をしていました。その後、中国・香港にOEMパートナーを探しているアメリカーのベンチャー企業と知り合い、意気投合し、一緒にやっていこう、となったのがiCONの創業であり、それが1997年のことでした。当初はアメリカで生産を行っていたものの、コストが高かったため、その後、生産を中国・広州に移していったのです。完全に中国生産に切り替わったのが約10年前のことです。

10月に上海で行われた楽器の展示会、Music China

--純粋に中国の企業というわけではなく、アメリカ・香港の合弁でスタートしていたわけですね。開発はアメリカで行っていたのですか?
Wong:創業当初、R&Dはアメリカで行っていました。しかし、よりプロオーディオの世界で競争力のある製品を作っていくためには、開発もより身近なところで行うほうがいいと、中国にR&Dセンターを作り、そこで品質管理もしっかりできるように切り替えていったのです。

大盛況となっていたMusic ChinaのiCONブース

--iCONの従業員数はどのくらいになっているのですか?
Wong:アメリカ、香港、中国といろいろな拠点にメンバーがいますが、現在トータルで250人ほどになります。やはり生産に多くの人員を要することもあるし、中国でのR&Dも行うようになったため、中国での人数の比率が一番大きいですね。

アメリカ・ナシュビルにいるマーケティング部長のReavis Mitchellさん(左)とWongさん(右)

--中国のメーカーというと、OEMで製品提供する、表に社名が出ない会社が多い印象を持ちますが、iCONはしっかりブランド展開していますよね?
Wong:はい、アメリカ側と一緒に事業をスタートさせたということがありますが、最初からブランドを付けて展開し、基本的にOEMはしていません。もちろん、そのほうが利益率もよくなるし、自分たちのブランドで展開すれば責任もより大きくなり、社内での緊張感も高まり、結果としてよりよい製品を作ることができると考えています。

幕張メッセの4倍の規模となるコンベンションセンター全体でMusic Chinaは開催されていた

ーー日本国内でiCONはプロ仕様のコントローラーを手ごろな価格で出すメーカーとして認知されていますが、Music Chinaでの展示内容を見ると、かなり幅広く製品展開をされていますね?
Wong:もともとMIやレコーディング分野にフォーカスを絞って展開してきました。そのためコントローラーを中心にキーボードやオーディオインターフェイス、マイク、ヘッドホンなど幅広く製品を開発・生産してきました。今後はさらにコントローラーに力を注ぐとともにハイエンドなオーディオインターフェイスも手掛けていきたいと考えています。そのコントローラーは日本、アメリカ、ヨーロッパともに売れ行きは非常に好調で、Qcon Proシリーズというタッチセンシティブモーターフェーダーを搭載した機材は、高い評価をいただいています。一方、Platformシリーズというもう少しコンパクトなコントローラーは価格が手ごろなこともあり、DTMユーザーを含めた幅広い方に使っていただいています。いずれも拡張性が非常に高く、まずは1台からスタートし、物足りなくなったら複数台接続して拡張していくことができるのも大きな特徴となっています。

プロ用機材としても評価の高いコントローラー、Qcon Proシリーズ

ーー確かに日本のDTMユーザーから見ても、Platform M+などは魅力的に見える製品です。
Wong:Platform M+はデスクトップにも邪魔にならずに置くことができるコントローラーで、コンパクトながらも9本のタッチセンス付きモーターフェーダー、ジョグホイール、そして多くのノブやスイッチを備えたUSB接続のコントロールサーフェイスです。これだけの機能、性能を備え、日本国内価格を36,000円と抑えているため、多くの方に使っていただいているようです。Mackie Control UniversalおよびMackie HUIプロトコルで動かすことができるから、Cubase、Studio One、Sampletude、Logic Pro、Ableton ive、Reason、……と多くのDAWですぐに活用することが可能です。またUSB接続ですが内部的にはMIDIでコントロールしているので、DAWの制御だけでなく、照明システムのコントロールなどでも利用することが可能です。

非常にコストパフォーマンスの高いタッチセンスモーターフェーダー搭載のPlatform M+(手前右側)

ーーそのコントロールサーフェイスに限らず、iCONの競合となるメーカーはどこだと考えていますか?
Wong:さまざまなジャンルの製品を扱っているので、直接競合するメーカーはないと考えていますが、1製品ずつを見ていくとももちろん競合となるものはいろいろ出てきます。販売店などからよく言われるのは、PresonusやFocusrite製品とぶつかると指摘されますね。

国内ではリリースされていなが数多くのMIDIキーボードも手掛けている

ーー日本国内では、まだiCONブランド、そこまで広く浸透していないようにも思いますが、世界的に見てiCON製品はどの地域で、一番売れているのでしょうか?
Wong:現在は、ヨーロッパが一番大きいですね。当社製品の出荷比率でいうと50%近くがヨーロッパに出て行っています。またスタートがアメリカであったことからアメリカも大きく25%程度がアメリカで、残り25%がその他地域となっています。日本もその他地域の一つという位置づけで、今後日本のマーケットにはもっと進出していきたいと思っています。なおこれらの国々とは別に中国国内のオーディオインターフェイスのシェアも増えています。

ーー具体的に、どのように日本への展開を進める考えですか?
Wong:やはり日本にはヤマハやローランドなど世界的な大手メーカーがいるし、日本のユーザーの目は厳しいので、どのように展開していくかは真剣に検討しているところです。もちろん、いま代理店としているフックアップとはより連携を強めていきたいと思っています。一方で、詳細についてはまだオープンにできませんが、AbilityやSinger Song Writerを開発しているインターネットと協業する新製品なども企画しているところです。

ネット配信用のオーディオインターフェイスは中国国内では非常に人気が高い

ーーとなると、2020年は日本においてもiCONはより活発になっていきそうですね。ちなみに地元中国においては、どんな製品が売れているのでしょうか?
Wong:ここ数年、中国ではネット配信のマーケットが急拡大していることもあり、それに関連する機材が爆発的に売れています。DTM/DAW用のオーディオインターフェイスとは別に、配信用のオーディオインターフェイスを比較的低価格で出しており、これの出荷が追い付かないほどの状況になっています。このブームは中国国内だけでなく、最近は東南アジアへも広がっており、今後そちらのマーケットも大きくなっていくと期待しているところです。

ーーこれからのiCONの新製品開発、そして日本での製品展開にも期待しています。本日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。

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