プロの映像監督に聞くVEGAS Pro 17を使ったミュージックPV制作術

DAW風で音楽のプロモーションビデオ制作用にはピッタリということで、これまで何度か紹介してきたビデオ編集ソフトのVEGAS Pro。先日VEGAS Pro 17にバージョンアップし、さらに機能強化されるとともに、今のCPUに最適化されてより軽く使えるようになっています。現在、ビデオ編集ソフト本体であるVEGAS Pro 17 Editがまさに83%オフの6,980円+767point還元と大安売りで、各種周辺ソフトもセットにしたVEGAS Pro 17 Suiteは84%オフの13,800円+1,518pointと12月31日までセールを展開中。このタイミングでVEGAS Pro 17をプロの映像監督が使って音楽PV制作をするとどんなものができるのか?実験的に試してもらいました。

作ったのは、DTMステーションのリミックスコンテストなどでもお馴染みのアイドルグループ、d-girlsのPV。その制作をお願いしたのは、自ら作詞・作曲・編曲も手掛ける音楽家である一方、数々の映像作品も手掛けるマルチクリエイターである透ch@tohruch0403)さんです。普段はAdobe PremierやAviUtlなどを使っているという透chさんから見て、VEGASの使い勝手はどうなのか、PV制作用として本当に使えるものなのか、また、実際にどんな機能を使ったのかなど、制作現場に同行しつつ、お話を伺ってっました。

VEGAS Pro 17を使ってd-girlsのミュージックPVを制作してみた

まずは、そのVEGAS Pro 17を使って完成したd-girlsのプロモーションビデオをご覧ください。

いかがですか?これを見てお気づきになった方もいらっしゃると思いますが、この楽曲「CHANGE THE WORLD」は、2年前のDTMステーションとd-girlsの共同で開催したリミックスコンテストで扱った曲の英語バージョン。いろいろなシーンが登場してすごくカッコよくまとまってますよね。

都内のライブハウスにおいて、約2時間で撮影

このビデオ、VEGASを使っての編集作業は実質1日で行ったとのことですが、これだけのクオリティーの制作ができるわけですね。VEGASについては以前から知っていたけど、実際使ったのは今回が初めてという透chさんは
「Adobe Premierなどとは、かなり使い勝手や考え方に違いがあるので、最初戸惑いがあったのは事実です。でも、すごくシンプルで直感的に使え、しかも処理が軽いので、サクサク作っていくことができました。私も普段SONARで音楽制作をしていますが、DAWを使っている人にとってはすごく分かりやすいUIだと思います。また初めてビデオ制作をする人であれば、シンプルな分、膨大な機能の画面に圧倒されず、使いやすいと思いますよ」と話します。

今回d-girlsのPV制作に協力してもらった透ch。ビデオ制作だけでなくからミュージシャンとしても活動している

今回、このPVの撮影現場には私も見学に行きました。ライブハウスのステージでd-girlsメンバーがダンスをしたり、ほとんど静止した状態で歌を歌うシーンを4~5回撮影していたのですが、この時点では仮ミックス状態の楽曲をステージ上で再生するとともに、それに合わせて踊ったり、歌っていたのです。PVなので編集段階で最終ミックスに差し替えるわけですが、撮影の時点ではタイミングさえ合っていればOKで、見栄え上マイクを設置はしているけれど、口パクでもいいわけですよね。

LUMIX DMC-GX7MK2を用いて動画撮影を行った

このとき、透chさんが持参していたのは、最近中古で入手したというパナソニックのカメラ、LUMIX DMC-GX7MK2。これは連続2時間半くらいのビデオ撮影ができるので、外での撮影用には最適なんだとか……。一方、別にもカメラマンを用意し、そちらも一眼レフで別アングルから撮影していました。

現場ではプロカメラマンの田渕悟さんにも入ってもらいデジタル一眼レフで2ポイントから撮影

また、当日の撮影で面白かったのは、音楽をBGM的に流すだけでなく、それに合わせてグラフィックがステージバックに表示されていた、という点。「このバックで流したのは、AviUTLで素材を並べて、軽くエフェクトを掛けただけのものです。それをラフミックスの曲と合わせてMP4データにして、ライブハウス側に渡しました」と透chさん。これがあるのとないのとでは、だいぶ印象の異なる作品になりそうですね。

ステージのバックには、透chさんがあらかじめ用意していたグラフィック動画を表示

一方、私は同行しなかったのですが、このライブハウスでの撮影後、夜に秋葉原でライブがあったのですが、それまでの合間を縫って、屋外でも撮影を行っています。ここではBGMなどはなしに単に、人物撮影や風景撮影を行っているのですが、PV制作時の素材に使うということで、良さそうな場所を見つけては、サクっと撮影していたようです。

さて、その後のVEGASを使っての編集の作業、どのような手順で行ったのでしょうか?まず、透chさんの制作マシン環境を伺ったところ、

Windows 10 Home
Core i7-9700
32GBメモリ
GeForce GTX1650

というスペックのマシンにVEGAS Pro 17をインストールし、ディスプレイは3台。真ん中に1920×1080のFullHDで編集操作するディスプレイを設置し、左右に1024×768のディスプレイを2つ。左側でプレビュー画面を表示させ、右側には素材を選択できるようなっています。

透chさんの仕事場。手前にキーボード、奥に3つのディスプレイが配置され3画面で作業している

「まずはライブハウスで撮影した歌唱シーンのみをまとめて、マルチカメラモードで選択できるようにしました。またこのマルチカメラモードとして並べる際、ツールメニューから『オーディオを整列イベントに同期する』という機能を活用しました。これは各ビデオに入っている音をVEGASが解析し、各トラックのタイミングを合わせてくれるという機能。素材が細々と分かれていると、混乱しがちですが、この機能があれば曲の途中からでもピッタリ合わせてくれるので、ものすごく重宝しました」と透chさん。

まずは音入りで撮影した素材をそろえマルチカメラの同期機能を使ってタイミングを自動で揃える

マルチカメラモードでは、同期された各ビデオのどれを使うのか、マウスで選べば、それに切り替わるという機能で、簡単ながら非常に効率よく使うことが可能です。「チョイスはポンポンと操作していくだけでとっても簡単。最後に歌唱シーンを微調整したら大枠ができちゃいました。あとは外で撮影したイメージシーンの中から良さそうなものを取り出して、入れていくという作業くらいですね」(透chさん)

同期させた8つのビデオ素材をマルチカメラ画面で選んでいくだけで切替ができる

確かに、先ほどの完成したビデオを見ると、そのイメージシーンが、とてもカッコよく見えたのですが、そのコツというのはどこにあるのでしょうか?

「イメージシーンはそのまま入れるのではなく、スローにすると、カッコよくなるんですよ。そうすることで、映像に奥行が出てきます。そしてVEGASが非常に優秀だったのは、このスローにした画像を非常にキレイな映像にする機能を持っていること。普通、スローにすると、どうしても動きがカクカクとしてしまうのですが、ビデオFXのスローモーションというエフェクトを使うことで、モーション解析した上で、抜けたフレームの補完をしてくれます。これはとても便利です」(透chさん)

スローモーションのシーンをVEGASではキレイに補完していく機能も搭載している

ちなみに、ビデオを伸長してスローモーションにしたり、短縮して早送り映像にするのは、単純にクリップの端をCTRLキーを押した状態でドラッグするだけ。

「この短縮伸長もすごくいいと思いました。他のビデオ編集ソフトだと通常は何%の長さにするかを数字で入力し、ダメなら数値を変更して……という作業になるのですが、タイムライン上を自由に調整できるので、断然使いやすいですね」と透chさんは語ります。

オープニングの文字表示にはビデオFXとして用意されている光線機能を使用して演出

「そのほかオープニングのところでのタイトルのエフェクトにビデオFXに用意されている光線を使いました。これがなかなかいい味を出してくれました。また複数のトラックを重ね合わせる上で自由度高く使えるコンポジットモードも使いやすかったですね」と透chさん。

複数のビデオトラックを重ね合わせるコンポジットモードも活用

一方で、VEGASはタイムラインを小節・拍にして管理することができますが、その点、透chさんはどうとらえたのでしょうか?「BPMを入れて小節管理して制作しましたが、音楽制作している人にとっては、これは非常に使いやすく便利ですね。実はAviUTLでも小節・拍での管理は可能ですが、VEGASは非常に多くの機能を持ちながらもDAW風に使えるというのはいいですね」(透chさん)。

タイムラインのルーラーは小節・拍の表示にし、制作している

「ちなみに、そのAviUTLは、GPUの恩恵が受けられないし、メモリ制限もあるので、よく落ちるのが辛いところです。それに対し、VEGASはGPUがあると、確実に負荷が減って軽く使えるし、非常に多機能で快適に使うことができました。その意味でBPMマグネットを使って操作するビデオ編集ソフトという意味で、VEGASはすごくいいですね」と解説してくれました。

さまざまなアングルから複数回にわたって撮影

以上、透chさんに、今回のd-girlsのミュージックPV制作の裏舞台的は話を伺ってみました。音楽制作とビデオ制作は本来まったく別の作業であるし、作る人も別というのが従来の常識だとは思いますが、透chさんのように音楽制作もするし、ビデオ制作もする人は、プロもアマチュアも増えてきているようです。

バックのグラフィック表示が大きなインパクトにもなっている

とくに最近はYouTubeなどで音楽をプロモーションするケースが増えてきているので、否が応でも音楽制作者にとってビデオ制作は無視できない工程になってきています。プラットフォームがWindows限定にはなってしまいますが、この値段でこれだけの性能のビデオ編集ソフトが入手でき、しかもDAWユーザーにとって、非常に使いやすい設計になっているのですから、VEGASを動かすために、1つWindows PCを導入してみるというのもありではないでしょうか?

【関連情報】
VEGAS Pro 17 Edit製品情報
VEGAS Pro 17 Suite製品情報
d-girls official site
YouTube d-girls officialチャンネル
オトトエイ(透chサイト)
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