音を写真のようにレタッチ処理できるSpectraLayersがSteinberg製品に移管。しかもSound ForgeやMelodyneとセットでソースネクストが12,800円の特売中!?

これまでもDTMステーションで何度か取り上げてきたことがある、音を写真のようにレタッチ処理できる不思議なサウンド編集ソフト、SpectraLayer Pro。一般的な波形編集ソフトと異なり、スペクトルで音を分析して、表示することで、普通では分からない音の特性が視覚的に捉えられるようになります。それをPhotoshopのようなユーザーインターフェイスでレタッチすることが可能となっているため、普通のエディタでは不可能な音の処理を可能にしてくれます。

そのSpectraLayers、これまでMAGIXのソフトでしたが、今年Steinbergに買収されSteinbergブランドのソフトに切り替わるとともに大きくバージョンアップし、SpectraLayers Pro 6へと進化しています。Steinbergによる国内価格は33,000円+税のダウンロード販売となっていますが、それをなぜかソースネクストも販売しており、10月31日までの限定で12,800円。しかも、ここにSound Forge Pro 13Melodyne 4 EssentialiZotope RX 7 ElementsiZotope Ozone 8 ElementsもセットとなったSound Forge Pro 13 Suiteという製品名で12,800円というメチャメチャな価格で発売されています。改めてこの新SpectraLayers Pro 6を試してみたところ、従来より機能も強化されるだけでなく、断然使いやすいソフトになっていたので、紹介してみましょう。

より機能強化されたSpectraLayers Pro 6

以前にも紹介した古いバージョンのビデオではありますが、SpectraLayersの面白さを端的に表しているのでご覧になってみてください。

ここにもあるように、サイレンのような異音を浮かび上げることができ、選択して消去することもできます。しゃべり声とその他のノイズを分離し、人の声だけを抜き出すといったことも可能にしてくれるのが、SpectraLayersなのです。

もちろん、ピアノの音、ギターの音など、倍音成分をたっぷり持つ楽器の音も、倍音成分もセットで選択することで任意の音をキレイに取り除いたり、それだけを抜き出すことができるほか、コンサートホールでの録音から、咳払いの音を取り除く……なんてことも得意としたソフトなのです。

SpectraLayers Pro 6のタイトルにSteinbergのロゴが…

音をスペクトル表示して編集するという点ではiZotopeのRX、SteinbergのWaveLabが少し近いソフトだと思いますが、SpectraLayersという通り、一つ一つ選択したものをレイヤーとして扱っていくことが可能なフォトレタッチソフト的な考え方は独特だと思います。

このSpectraLayers、初期バージョンを開発したのはフランス・パリにあるDIVIDE FRAMEという会社。これを2012年に米Sony Creative Softwareがスポンサーとなる形でリリースしています。その後、2016年にACIDやSound ForgeなどとともにドイツのMAGIXに買収され、MAGIX製品となっていましたが、SpectraLayersだけが切り離される形で2019年にSteinbergへと売り渡されていたのです。

Steinbergサイトからも購入できるが、ちょっと見つけづらい形になっている

国内でも今年7月からSteinbergサイトで新バージョンであるSpectraLayers Pro 6がダウンロード購入できるようになっていますが、ソフト自体が日本語化されていないこともあって、あまり積極的に展開はされていないようですね。

ソースネクストサイトからSound Forge Pro 13 Suiteに収録される形で販売中。現在80%オフの12,800円

Steinberg製品となったSpectraLayersではありますが、MAGIX側に確認したところ、現時点ではMAGIXとしても販売できる契約になっているのだとか。正確にはMAGIXとしてSpectraLayers Pro 6以降のソフトを単体販売はできないけれど、MAGIX製品にバンドルする形であればOKとなっているそうです。その流れで、現在Sound Forge Pro 13 Suiteという製品に含まれる形でMAGIXから発売されており、日本国内ではソースネクストが扱っているわけですね(※ソースネクストサイトにおいて前バージョンであるSpectraLayers Pro 5単体での販売は行われていますが、ここで紹介するSpectraLayers Pro 6ではありません)。

改めて、このSound Forge Pro 13 Suiteの中身を紹介すると

Sound Forge Pro 13
SpectraLayers Pro 6
Melodyne 4 Essential
iZotope RX7 Elements
iZotope Ozone 8 Elements
VariVerb II(リバーブ)
Vintage Effects Suite(VSTプラグイン集)
Vandal(ギターアンプシミュレータ)

という内容。ソースネクストはWindows用ソフトとして販売を行っていますが、このうちSpectraLayers Pro 6、Melodyne 4 Essential、iZotopeの2本のソフトはいずれもMacでも使うことが可能となっています。

では、SpectraLayers Pro 6となって何が変わったのか? まず1つ目として挙げられるのはARA 2に対応したということ。ARA 2については以前「ARA 2対応で何が変わるのか?Melodyneの開発者にインタビューしてみた」という記事でも紹介したことがありましたが、これによってSpectraLayersを単体ソフトとしてだけでなく、DAWの一機能として使うことができるようになっているのです。

Cubase Pro 10の一機能としてSpectraLayers Pro 6が利用できる

たとえばCubase Pro 10のオーディオトラックを、SpectraLayers Pro 6機能で編集するといったことが可能になり、画面を見ても分かる通り、別ソフトとしてではなく、Cubaseの機能として拡張された形になるわけです。

ちなみにARAに対応しているのは、SpectraLayers Pro 6以外にも、本家ともいえるMelodyne 4 Essentialもであり、これもSound Forge Pro 13 Suiteにバンドルされているから、手持ちのDAWがかなり大きく強化されることになりますね。

Melodyne 4 Essentialも付属している

またフォトレタッチソフトのように編集する上で重要な範囲選択機能がさらに進化しています。Transient Selection toolという主にクリックや特定の子音、ノートアタック、ドラムサウンドなどを選択するツールが新たに追加されたほか、音程の変化をそのまま追うことができるFrequency Selection toolなど、9つの選択ツールを装備しているので、目的の音を簡単に確実な形で選んで消したり、切り抜くことが可能になります。

そのほかにも、さまざまな機能があるので、以下のビデオをご覧いただくとわかりやすいと思います。

でも、個人的にSteinberg製品になったことでの最大の進化点は、コピープロテクションシステムが変わったことだろうと思っています。というのも、これまでのSpectraLayers Pro 5までは、一度PCにインストールするとそこで固定されてしまい、PCがクラッシュすると、使えなくなってしまうし、PCの引っ越しすらできない状況でした。

しかしSteinberg製品になったタイミングで、CubaseやWaveLabなどと同様、eLicenserを使ったコピープロテクションになったのです。eLicenserについてご存知ない方に簡単に説明しておくと、eLicenserには、Steinberg KeyというUSBドングルと、Soft eLicenserというシステムの2種類があり、ここにコードが入っていることでソフトウェアが起動する仕組みです。

USB eLiccenserであるSteinberg Key

USBのSteinberg Keyを持ってない場合、Soft eLicenserにコードが入る形でアクティベートされ、そのインストールしたPCでしか使えないのですが、Steinberg Keyを入手すれば、ここにコードを移動することが可能で、このUSBドングルを抜き出しすることで、ほかのPCでも利用できるし、WindowsとMacを併用することも可能になるわけです。過去にCubaseなどを購入した方であれば手元にあると思うのでこれを活用すればいいですし、無ければとりあえずSoft eLicenserで使用しつつ、どこかのタイミングで購入するといいと思います。4,000円強で売ってますから!

なお、このSound Forge Pro 13 Suiteの凄いのは、SpectraLayers Pro 6はオマケ(?)であり、本体ソフトはSound Forge Pro 13であること。これはSteinbergのWaveLabの最大の競合ともいえる波形編集ソフトなわけですから、セットで販売しているというのは激しいねじれ現象ですよね。

メインソフトであるSound Forge Pro 13

Sound Forge Pro 13については以前記事で紹介したことがあるので、そちらを参照していただきたいのですが、個人的にも今一番使っているソフトの一つであり、軽くて使いやすいですよ。

さらに、SpectraLayersと、かなり近いソフトであるiZotope RX7 Elementsまでバンドルされているので、まあ、ちょっとメチャクチャな組み合わせ……ですよね。似たソフトがセットとなっているからこそ、それぞれの強み、弱みが見えるともいえるのですが……。

Sound Forge Pro 13 Suiteのインストーラ
組み合わせが、少し妙ではあるけれど、これだけいろいろなツールが揃って、12,800円という価格ですから、MAGIXの契約が残っているうちに入手しておくのが正解ではないでしょうか?

 

Mac版の入手法

Sound Forge Pro 13 Suiteの中に入っているSpectraLayers Pro 6、Melodyne 4 Essential、iZotope RX7 Elements、iZotope Ozone 8 ElementsはMacにも対応しています。ただし、これらはソースネクストからインストーラは提供されておらず、シリアルコードのみの発行となるため、別途ダウンロードが必要となります。

SpectraLayers Pro 6はSteibergサイトにおいてSteinberg Download Assistantをダウンロードし、これをインストールすることで入手可能です。

またMelodyne 4 Essentialは、まずcelemonyサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「ライセンスを追加」のところで、シリアルを入力することで、ユーザー登録が行え、ダウンロード可能になります。

そしてiZotope RX7 ElementsおよびOzone 8 Elementsは、iZotopeサイトにアクセスの上、ユーザーアカウントを作成し、ログインします。その後「Products Downloads」からダウンロードすることができます。

 

【関連情報】
Sound Forge Pro 13 Suite製品情報
SpectraLayers Pro 6製品情報(Steinberg)
【価格チェック&購入】
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