「重低音が鳴り響くサウンドを作りたいけど、EQをいじってもコンプを使っても、思ったようにうまくいかない……」、そんな悩みを抱えている人は多いと思います。やはり本気の重低音を実現するには理論と感性の両軸が必要となり、そう簡単ではありません。ところが、強烈な重低音をいとも簡単に実現できるプラグイン、その名もDeeSubBassなるものが新たに誕生しました。
開発したのは、あの音圧を爆上げマキシマイザーDeeMaxや、レバーを持ち上げるだけで音を太くできるDeeFatなど、ユニークな発想と圧倒的なクオリティのプラグインを次々と開発している日本のベンチャーメーカー、Dotec-Audio。DeeSubBassを使えば、クラブミュージックの世界でも圧倒的な存在感を実現できるサウンドが作れるのは間違いなし。もちろん、単に重低音が出せるだけでなく、音楽的にも正しいパワフルな音を轟かせることができるのです。どう使えばいいのか、なぜそんなことができるのなど、まさに革命的なプラグイン、DeeSubBassについて紹介していきましょう。
重低音を出したい、というとき、みなさんはどうしますか? キックの音圧を上げたり、ベースの音色を選んだ上でEQでブーストさせたり……と低音を強くする方法はいろいろありますが、なかなか思う通りにはうまくいかないものです。結構出たかも…と思っても、ほかの曲と鳴らし比べると、完全にパワー不足を感じるケースも多いと思います。
クラブミュージックやEDM系で低音を響かせる手法としてサブベースを発生させるサブベースジェネレーターを利用するというものがあります。サブベースとはベース音より1オクターブまたは2オクターブ下の音程でサイン波や矩形波のこと。これを加えることで、低域に厚みを出すのですが、効果的なサブベースを作るのは結構難しいものです。そうした中、Dotec-Audioが出したDeeSubBassは、簡単な操作で音程的・周波数的にも正しい60Hz以下の重低音を鳴り響かせることができるのです。まずは、以下のビデオをご覧ください。プラグインの性質上、スマホのスピーカーでは分かりにくいので、ヘッドホンや大きなスピーカーでの再生がおすすめです。
いかがですか? かなりいい感じに音が太くなっており、DeeSubBassの威力の一端が分かると思います。このビデオにもある通り、ベース音に効くのはもちろんですが、キックにも使えるし、2ミックスした後のサウンドに対して掛けても有効というのが面白いところです。
通常サブベースジェネレーターは周波数を指定することが多く、ちゃんと使おうとするのであれば、音楽的にもエンジニアリング的にも豊富な知識と経験が必要になってきます。しかしDeeSubBassは曲のキーを下の鍵盤で選択すれば、エンジニア的な知識が無くても簡単に使えるのが大きな特徴です。
「たとえばシンセでサブベースの音色を作って、それを足している人がいたりするのですが、それだと元の音色とサブベースでの音色の音量差やエンベロープを揃えるのが難しいんですよね。一方DeeSubBassは、元の音のエンベロープに追従するので、きれいに混じるんです。またサブベースを足す方法はいくつかあり、代表的なのはオクターバーを使った方法があるのですが、原音を1オクターブ下に下げるだけなので、それだときれいな波形になりません。サブベースとして強烈なインパクトを出す方法は、ピュアなサイン波を使うことで、それが一番きれいに聴こえるんです。実際サイン波を出力するタイプのサブベースのプラグインも存在しますが、周波数指定のものがほとんどです。でも、この方法だと、音階と周波数との関係表がないと分かりずらい。もっと使いやすいサブベースジェネレーターが欲しいと思い、DeeSubBassを作りました」と話すのは、DeeSubBassの開発者であり、ミュージシャンのフランク重虎さん。
重虎さんも話しているとおり、一般的にサブベースの生成方法は何種類かあるのですが、DeeSubBassは基本的にサイン波を出力するタイプ。その出力するサイン波もウェーブテーブルを伸長させる方法でなく、リアルタイムで64bit倍精度で波形を演算しているそうなので、ウェーブテーブルの波形よりもきれいなピュアなサイン波になっているとのことです。
音響学的に見ても、シンプルなサイン波を使うのがRMS値が一番大きく、最大の音圧を作り出すことができます。DeeSubBassの一番左のLと書かれたLEVELを上げていけば、サイン波の出力を上げていくことができるのですが、実はそう単純にはいかないのも重低音の難しさ。
「クラブなどの大きなスピーカーで鳴らすのであれば、ピュアなサイン波によるサブベースを足したほうが強力なサウンドを作ることができます。ですが、小型のスピーカーでは再生できない帯域だったりするので、LEVELを上げるだけでは低域を感じられません。そういったときに真ん中のDと書かれたDRIVEを上げて、倍音を出すことにより、聴こえやすくなり、小さなスピーカーでも重低音を感じられるようになります。また音作りにもDRIVEを使うことができます」と重虎さん。
実は、このDRIVEの動きも非常にうまく設計されています。DRIVEがゼロのときは、シンプルなサイン波となりますが、DRIVEを上げていくことで、矩形波に近づいていき、倍音も増えていきます。
でも、角が尖った矩形波にすると、倍音が目立ちすぎて、音の太さという面で弱くなってしまうのです。そこで、DeeSubBassでは、DRIVEを思い切り上げても、角が滑らかな波形とすることで、チューブドライブのような太い響きの歪みとなるのも大きな特徴となっています。
一方で、一番右側にはHと書かれたハイパスフィルタ(HPF)があります。これは原音とサブベースのクロスオーバーを調整するためのものです。
「HPFを使うことにより、原音の低域との干渉を避けることができ、よりタイトで輪郭の際立ったサブベースを作り出せます」と重虎さん。かなり複雑なことを、この3つのパラメータに集約させて、誰でも使えるようにしているわけですね。
ところで、このDeeSubBassの画面下には鍵盤のようなものがありますが、これは何のためのものなのでしょうか?
「DeeSubBassは、周波数を指定するのではなく、この鍵盤で曲のキーを選ぶだけで、曲にマッチした低域を出すことができるようになります。ただしジャンルによって効果的なサブベースの出し方は異なります。たとえばハウスなどリズミカルなフレーズで、シャッフルしているようなジャンルは、サブベースをルートキーに這わして使うとよく、たとえばEmのキーであればDeeSubBassの白鍵のE(ミ)を指定しておけば、いい結果が得られます。しかし、ダブステップなどベースの音価が長い場合、サブベースが一定の周波数を保ったままだと、音が濁ってしまうため、MIDIで追従させたほうがよく、そのための機能をDeeSubBassに持たせています」と重虎さん。
考え方としては、サイドチェーンのような感じで、MIDIトラックからの信号をDeeSubBassに送ってやることで、この画面下側のキーが切り替わっていき、それに合わせたサブベースの周波数を生成するようになるのです。この辺はどちらが気持ちいいか、実際に試して、比較してみるとよさそうですね。
ところで、今回のDeeSubBassの画面を見て、いつものDotec-Audio製品となんとなく雰囲気が違う……という感想を持った方も少なくないのではないでしょうか?実は、このDeeSubBassのデザイナーが、いつもの出雲重機さんではないんですね。
「今回のDeeSubBassでは80年代SFアニメのようなナウいグラフィックを目指してみました。そのデザインをお願いしたのは、以前からお付き合いのあるイラストレーターで、ポケモンカードやソーシャルゲームなどでイラストを書かれている福田興業さんです。80年代SFアニメで象徴的ともいえる人気の通称“ワカメ影”と呼ばれるタッチをオーディオプラグインに取り入れました。プラグインのインサート時のアニメ演出をするおそらく他にないユニークなデザインです。また直接音とは関係ない謎のインジケータ類多数施しているなど遊び心満載のプラグインです」と説明するのは、Dotec-Audioの飯島進仁さん。確かにこんなデザインのプラグインは、他に知らないですね(笑)。
さて、このDeeSubBassは、あのDeeMaxやDeeFat、DeeGraphCompなどと同様、税抜き5,000円と手ごろな価格。しかし、すでにDotec-Audio製品を持っている方であれば、1,500円のシリアルキー割引というものがあるので、3,500円で購入できてしまうのも、従来のDotec-Audio製品と同様です。10月27日には、さらなる特売企画も行われるようです。
「今回も、Dotec-Audioとして音系・メディアミックス同人即売会 [M3]に出店します。ご来場いただいた方のみの限定販売ではありますが、ここでは、シリアルキー割引よりもさらに安いM3特価での販売を予定しています。もちろん、DeeSubBass以外にも各種製品をM3特価で販売しますので、ぜひいらしてください」(飯島さん)
とのこと。私たちDTMステーションCreativeもM3-2019秋(第一展示場Q-01b)に出る予定です。ぜひDotec-Audioブースと併せ、両ブースに足を運んでいただければと思います!
【ダウンロード】
◎Dotec-Audio ⇒ DeeSubBass
◎SONICWIRE ⇒ DeeSubBass
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