SteinbergからUSB Type-C接続に対応した新たなオーディオインターフェイス、UR-CシリーズがUR22C、UR44C、UR816Cの3機種、さらにコンデンサマイクやヘッドホンをセットにしたUR22C Recording Packが発表され、10月3日より発売されます(UR816Cのみは11月発売予定)。人気モデルのUR22mkIIの後継となるUR22Cは実売価格16,000円前後(税抜き)と価格はほぼ変わらないながら、32bit/192kHzに対応して高音質化するとともに、DSPを内蔵し、ほぼレイテンシーゼロでのエフェクトを実現できるようになっています。
従来のURシリーズと比較して、USB Type-C接続(USB 3.0対応)としたことで電源容量が大きくなり、高音質化も図れたほか、ドライバの刷新によってレイテンシーもさらに縮めているとのこと。一足先に、この新しいUR-Cシリーズを借りることができたので、実際どんなものなのか試してみました。
DTM用のオーディオインターフェイス市場で、圧倒的な人気を誇ってきたSteibergのURシリーズ。Steinbergブランドの元、ヤマハが国内で開発を行ったこのオーディオインターフェイスは低価格ながら、高品質で、Cubase AIもバンドルされるということで幅広いユーザーに支持されてきたのですが、今回のUR-Cシリーズの投入により、その勢いに拍車がかかるかもしれません。
発売されるUSB Type-C接続のオーディオインターフェイスは
UR44C(31,000円前後)
UR816C(57,000円前後)
の3機種で、それぞれ2in/2out、6in/4out、16in/16outという仕様。最大のポイントは32bit/192kHzに対応したことで、従来の24bitから32bitとなったことにより、ダイナミックレンジが192dBとなり、より小さな音まで確実に表現できるようになったのです。
まずは、今回発表された製品、それぞれ何が違うのか、表で見比べるのが分かりやすいと思うので、スペックをまとめてみました。
UR22C | UR44C | UR816C | |
接続方式 | USB 3.0 (USB Type-C) | ||
最大分解能 | 32bit | ||
最大サンプリングレート | 192kHz | ||
入出力 | 2in/2out | 6in/4out | 16in/16out |
アナログ入力 | 2Combo | 4Combo,2TRS | 8Combo |
マイク入力 | 2(D-Pre) | 4(D-Pre) | 8(D-Pre) |
Hi-Z入力 | 1 | 2 | 2 |
アナログ出力 | 2 | 4 | 8 |
ヘッドホン端子 | 1 15mW+15mW (40Ω) |
2 100mW+100mW (40Ω) |
2 100mW+100mW (40Ω) |
ステレオ入力時の モニタリング設定 |
〇 フロントパネルの「MONO」ボタンで設定 |
〇 DSPミキサーで設定 |
|
デジタル入出力 | × | × | ADAT(S/PDIF) |
ワードクロック入出力 | × | × | 〇 |
SSPLL | × | × | 〇 |
HAモード | × | × | 〇 |
ループバック機能 | 〇 | ||
dspMixFxテクノロジー | 〇 | 〇 | |
iOS/iPadOSデバイス | 〇 | ||
dspMixFx Remote Bridge | × | 〇 | 〇 |
バスパワー駆動 | 〇 | 〇 | × |
サイズ(WxHxD) | 159x47x159mm | 252x47x159mm | 446.3×45.6×225.8mm |
重量 | 1.0kg | 1.5kg | 2.7kg |
このうち従来のURシリーズ、つまりUR22mkII、UR44、UR824と比較して明らかに機能向上しているところをピンク色でマークしてみました。ちなみにUR824は24in/24outのオーディオインターフェイスであったのに対し、UR816Cは16in/16outのオーディオインターフェイスであるため、直接比較するものではないとは思いますが、1Uラックマウントタイプのオーディオインターフェイスで、比較的近いスペックということで、対比させました。
この表を見ても、ピンク色で示された強化部分がかなりあるのが感じられると思いますが、それぞれ見ていきましょう。
まず、USB 3.0(USB Type-C)というところについて。最近、各オーディオインターフェイスメーカーもUSB Type-Cへ切り替えて来ていますが、このUR-Cシリーズが他社製品と比較してもちょっと違うのがUSB 2.0ではなくUSB 3.0のUSB Type-Cであるという点。まあ、USB 3.0になったというだけでレイテンシーなどに影響があるわけではないそうですし、16in/16out程度であれば、転送において、USB 2.0だからといってボトルネックになるわけではありません。
USB Type-C同士の接続すればバス電源供給で動作する6in/4outのオーディオインターフェイス、UR44C
それでもUSB 3.0にすれば、転送においてもより余裕を持つことができますし、何よりより大容量の電源を供給できるというのが大きなポイント。これによって、UR22CでもDSPを動かせるようになり、UR44CではACアダプタ不要でバスパワー駆動することができるようになっているのです。ちなみにUR44Cをバスパワー駆動する場合にはUSB 3.1のType-C-Type-Cのケーブルを別途用意し、これを使ってPCと接続することが必要となります。USB Type AーUSB Type-Cケーブルを使って接続する場合は、付属のACアダプタで電源供給する必要があります。また、このUSB Type-C-Type-CケーブルでiPad Proと接続した場合も、同じくバスパワー駆動が可能になります。
またドライバの設定において、
High-Speed(USB 2.0)
という選択ができるようになっています。つまりUSB 3.1での接続にするかUSB 2.0での接続にするかが選べるようになっているのですが、これはどういうことなのでしょうか?
先日行われたプレス向けの内覧会において、解説していたドライバの開発者、ヤマハの伊藤孝さんによると「PCの環境によってはUSB 3接続だと動作が不安定になるケースがあります。その場合USB 2.0接続すると安定することがあるので、こちらを選んでみてください。基本的な性能が変わるわけではなく、電源供給もUSB Type-C接続なので変化するものではありません」とのこと。このUSB 3.1とUSB 2.0の切り替えについてはWindowsもMacもサポートされています。
一方で、WindowsのASIOドライバにおいては、明らかにレイテンシーに大きな効果をもたらすモードができています。ASIOドライバの設定を見ると
・Standardモード
・Stableモード
の3種類が用意されています。従来のURモードにほぼ相当するのがStandardモードとのことですが、ここでLow Latencyモードを選ぶと、通常のバッファ設定で変更するUR-CとDAW間のレイテンシーではなく、UR-Cとコンピュータ間のレイテンシーを短縮することで、全体のレイテンシーをさらに短くすることができるとのこと。
ASIOの設定において、Low Latencyモードというものができた
試しにバッファサイズ64、サンプリングレート96kHzにおいて、Low Latencyモード、Standardモードで比較したところ、以下のような結果になりました。
Standardモードだと5.33msecがLow Latencyモードに切り替えることで3.33msecに縮まるのですから大きな効果がありますね。一方、Stableモードにすると、レイテンシーはやや大きくなるものの、より安定した動作が見込めるとのこと。必要に応じて切り替えることで、最適な運用ができそうです。
ところで、USB Type-C接続、USB 3.0対応によって電力供給に余裕ができたこともあり、ヘッドホンの出力パワーが大幅に上がっているのも見逃せないポイントです。たとえばUR22mkIIにおいてインピーダンス40Ωのヘッドホンでの出力が「6mW+6mW」であったのに対しUR22Cでは「15mW+15mW」へと大きく上がっています。またバスパワー電源の問題というよりは仕様変更ではありますがUR44では「35mW+35mW」であったのがUR44Cでは「100mW+100mW」に、同様にUR824では「75mW+75mW」だったのがUR816Cでは「100mW+100mW」となっているので、いずれも大出力になっていることが分かると思います。
機能面において目玉といえるのがエントリーモデルであるUR22CでもdspMixFxテクノロジーというDSP機能が利用可能になったという点。UR22mkIIにはまったくなかった機能なので、価格据え置きで、DSPが使えるようになったというのは大きな進化です。
その背景にはヤマハが新たに独自開発した「SSP3」というチップが搭載されたことがあるようです。内覧会において、ハードウェアを担当したヤマハの吉田威大さんは「このSSP3はDSPとUSBコントローラーを一体化させる形で新たに開発したチップです。従来のUR44などに搭載されていたDSPよりも処理能力を大幅に向上させています」とのこと。
具体的には、下記の表のように、従来機種よりも同時使用数が大きく増えているのです(48kHzの環境でChannel StripとGuitar Amp Classicsをモノラルチャンネルで使用した場合)。
UR22mkII | UR22C | |
Channel Strip | 0 | 2 |
Guitar Amp Classics | 0 | 1 |
合計 | 0 | 3 |
UR44 | UR44C | |
Channel Strip | 2 | 6 |
Guitar Amp Classics | 1 | 2 |
合計 | 3 | 8 |
UR824 | UR816C | |
Channel Strip | 8 | 16 |
Guitar Amp Classics | 1 | 2 |
合計 | 9 | 18 |
エフェクトの種類としては、従来と同様、チャンネルストリップであるSweet Spot Morphing Channnel Strip、リバーブのREV-X、そしてギターアンプシミュレーターであるGuitar Amp Classics(CLEAN、CRUNCH、LEAD、DRIVE)のそれぞれで、基本的な機能はこれまでと変わらないものの、精度は向上しているようです。
一方、dspMixFxテクノロジーではミキサー機能も実現可能です。このミキサー機能は従来のUR44などにも搭載されていましたが、デザインが一新されるとともに、使い勝手も改善。4Kディスプレイの画面でも小さくなりすぎないように拡大縮小が自由にできる設計になったほか、従来は使えなかったCubase起動時でもdspMixFxミキサーの操作が可能になっています。
デザインも大きく変わって使いやすくなったdspMixFxミキサー
またCubaseを起動すると、プロジェクトウィンドウのインスペクターからも操作できるようになっているのはCubaseユーザーにとっては画期的改善です。
もう一つ、UR44CおよびUR816Cに搭載されたユニークな機能がdspMix Fx Remoto Bridgeなる機能。これはiPhoneやiPadから、UR44CまたはUR816CのDSP機能をリモートコントロールするというもの。iOSのオーディオインターフェイスとして使うのではなく、あくまでもWindowsやMacで使うのですが、そのDSP機能のコントロールにiOSアプリを使うというものです。PCと同じLANのネットワーク内でWi-Fi接続できている、というのが条件にはなりますが、ライブで運用中での切替などで便利に使えそうです。
なお、1UラックマウントのUR816Cのみはデジタル入出力が搭載されています。オプティカルの入出力があり、これをADAT(最大8ch)としても使えるし、S/PDIFとしても利用可能。さらにワードクロックの入出力も搭載されています。
またUR816CにおいてはHAモードというちょっとユニークなモードを備えています。これはボタンを押しながら電源を入れることでモード変更が可能となっているのですが、HAモードにすることで、UR816Cをマイクプリアンプ専用機にし、このマイクプリを通した8chの信号をADATで伝送することが可能になります。つまり2台のUR816Cを使用するだけでなく、今使っているオーディオインターフェースにADAT入力があれば入力チャンネル拡張用としてUR816Cを使用できるというわけですね。
以上、UR22C、UR44C、UR816Cの3機種について簡単にチェックしてみましたが、このUR22CにコンデンサマイクとモニターヘッドホンをセットにしたUR22C Recording Packという製品も10月3日に同時発売となります。これは、これまであったUR22mKII Recording Packのオーディオインターフェイスが、UR22mKIIからUR22Cに変わったもので、マイクやモニターヘッドホンの構成は従来通りとのこと。
バンドルソフトウェアとしては、UR22CなどUR-Cシリーズにバンドルされている
Basic FX Suite(DSPエフェクトと同機能を持つVST3/AUのネイティブ版)
dspMixFx UR-Cミキサーアプリケーション
Cubasis LE(iPadアプリ)
dspMixFx UR-C(iOSアプリ)
に加え
がバンドルされています。これからDTMをはじめる、という人にとっては、一通りの機材が揃う便利なセットといえるのではなでしょうか。
【関連情報】
UR-Cシリーズ製品情報
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