昨年11月の展示会、InterBEEで参考出品されていたSoundcraftの小型ミキサー、Notepad Seriesが先日、国内でも発売されました。12ch入力のNotepad-12FX(税抜実売価格17,800円)、8ch入力のNotepad-8FX(14,800円)、そして5ch入力のNotepad-5(11,800円)のそれぞれで、いずれもUSB端子が搭載されているため、オーディオインターフェイスとして使うことも可能になっています。
チャンネル数の割にとてもコンパクトで、デスクトップにおいても邪魔にならないのが嬉しいところ。上位2機種は型番がFXとなっていることからもわかるとおり、DSP内蔵でエフェクトが使えるのですが、なんとLexiconのリバーブなどが内蔵されているという贅沢な設計です。実際に試してみたので、どんなミキサーなのか紹介してみましょう。
DAWとオーディオインターフェイスがあれば、一通り何でもできてしまう時代ではありますが、手元にちょっとしたミキサーがあると、何かと便利なんですよね。ギターを繋いでちょっと音を出すとか、スマホを接続してスピーカーから音を出してみるとか、マイクを繋いで軽くリバーブを掛けた状態でしゃべった声を動画で録ってみるとか……。
「でも、ただでさえ狭いデスクにミキサーなんて置けるスペースがないよ…」なんて思う人も多いかもしれません。確かにミキサーは結構場所をとる機材なので、設置スペースを確保できる人は少ないかもしれませんが、今回発売されたSoundcraftのNotepad Seriesはとにかく小さいんです。
たとえば一番小さい5ch入力のNotepad-5の場合、iPhone XSと並べてみてこのサイズですから、「これくらいなら置けるな」と感じる方は少なくないでしょう。
簡単に紹介すると、一番左の1chはファンタム電源が供給されており、コンデンサーマイクも直接入力できる上、ラインおよびHi-Z=ギター入力も可能な、オールマイティーな端子。100Hzのローカットスイッチや、HFとLFの2バンドEQも備えているので、しっかりした音作りも可能です。
2chおよび3chはフォン端子のステレオ入力となっており(2chのみ接続した場合はモノラルとして利用可能)、キーボードなどの楽器を接続するのにも便利。さらに4ch/5chはRCAピンジャックのステレオ入力ですからスマホなどの接続にも良さそうですね。
しかもUSBでPCと接続した場合、PCからの信号もミキサーに入れることができるので、たとえばPCからカラオケを流し、マイクで歌うとか、オケに合わせてギターを弾くなんて使い方も可能です。この場合、4ch/5chにRCA入力も、PCからの入力もミックスされて立ち上がるので(それぞれのバランスは調整できませんが)、実質的には7ch入力のミキサーといっても差し支えないと思います。
またUSBで接続した場合、WindowsやMacからは44.1kHz/24bitまたは48kHz/24bitのオーディオインターフェイスとして見えるため、ミックスした音をそのままPC側へ取り込むことができるようになっています。これの何がすごいのかというと、PCから出力した音を、そのまま生放送してしまうとか、動画作成での音として録音してしまうことができるのです。いわゆるループバックという機能ですが、たとえば最近流行りのゲーム実況なども、Notepad-5があれば簡単に行うことができるのです。
ちなみに、ゲーム実況などをする場合、Soundcraft USB Audio Control Panelを開き、そのAudio Routingの設定でMix L+Rにしておく必要があります。これによりゲームの音にマイクの入力も乗せた形で放送したり、録画したりすることができるのです。もし、ここで「Mic input 1+ Mono line input2」とか「Stereo input 2+3」、「Stereo input 4+5」を選択した場合、それぞれの入力だけを録音できる形になるので、とても自由度が高いのです。なお、このSoundcraft USB Audio Contol PanelはSoundcraftサイトから無料でダウンロードできるソフトで、これを利用することでNotepad Seriesの機能を存分に引き出すことを可能にしてくれるユーティリティです。
「でもせっかくゲーム実況などをやるなら、声にリバーブなどをかけてみたい」という人もいるでしょう。そんな場合は、上位機種のNotepad-8FXがよさそうです。Notepad-5と比較すると、ちょっぴり大きくはなりますが、前述の通り、ここにはエフェクトが搭載されており、リバーブ、コーラス、ディレイそしてカラオケという4種類を駆使して声の音作りが可能になっているのです。たとえばリバーブをオンにして、ツマミを上げてあげれば、簡単に気持ちいい残響音をつけることが可能になるので、便利に活用できると思います。
さらにNotepad-8FXであれば、マイク入力が2chあるので、二人でしゃべりながら放送するといった使い方にもよさそうだし、この1chと2chはEQがHF、MF、LFと3バンドあるので、結構積極的な音作りができるし、PANを使ってLとRに割り振ることもできます。
もうひとつゲーム実況用などと考えたとき、ほかのミキサーにない、強力な機能がNotepad Seriesにあります。それがDuckerというもの。いわゆるダッキングと呼ばれる機能で、DTMの世界でいうところのサイドチェーンを利用したコンプが、ここに搭載されているのです。つまり、マイクの音が入ってきた場合、そのときだけゲームサウンドを少し小さく抑え、声を聴き取りやすくするというもの。これもControl Panelで設定するのですが、強力な機能だと思います。
と、ここまでネット放送用機材としての側面からNotepad Seriesについて見てみましたが、十分お気づきだと思いますが、これをDTMにも十分活用することが可能です。冒頭でも触れた通り、このNotepad-8FXおよび12FXに搭載されているリバーブは、多くのレコーディングスタジオにあるプロ御用達のLexiconリバーブですからね。
たとえばボーカルをレコーディングする場合、ヘッドホンモニターにはDAWからオケトラックを流すと同時に、ボーカルにはLexiconリバーブを掛けた状態で返す。もちろん、ミキサーですから、オケとボーカルモニターの音量調整は自由にできます。一方、DAW側はエフェクトのかかっていない生のボーカルだけをレコーディングしていき、あとはDAW側で自由に音作りをしていくことも可能です。
この際、どのチャンネルをレコーディングするかを自由に選択することができるのですから、とても自由度があって汎用性の高いミキサーでありオーディオインターフェイスだと思います。ただし、Notepad-8FXの場合、オーディオインターフェイスとしては2in/2outという仕様であるため、同時にレコーディングできるのは2chまで。それに対し、Notepad-12FXになると、ミキサーとしては12ch入力であると同時に、オーディオインターフェイスとしては4in/4outという仕様となるため、さらに自由度が上がります。
しかも入力部分を見ると分かる通り、Notepad-12FXでは4つのコンボジャックがあり、それぞれすべてにファンタム電源が供給されており、マイクプリが搭載されているのですから、用途も広がります。このうち1chと3chはHi-Zボタンを装備しており、これをONにすればギターにも直接接続できる仕様になっています。
なお、Notepad-8FXおよびNotepad-12FXではAUX/FXのセンドレベルを上げていくことで、Lexiconリバーブもしくはコーラス、ディレイ、カラオケのエフェクトへ送ることができるのと同時にAUX出力へも送ることができるためアウトボードのエフェクトを使うことも可能であり、さらに積極的な音作りができるわけなのです。
ところで、ここまでUSB接続においてはWindowsまたはMacとの接続を前提としていましたが、iPhoneやiPadでも利用できるのか、試してみました。結論からいうと使えました。ただし、Lightning-USBアダプタでは、電力不足となってしまって使えません。そこで電源供給可能なLightning-USB3アダプタで試してみたところ、うまく使うことができました。またUSB Type-C接続のiPad ProではOTGケーブルだけでも電力不足にならずに接続することができたので、もっと簡単に活用できそうですよ。
以上、SoundcraftのNotepad Seriesについて見てきましたが、いかがだったでしょうか?これだけの入力チャンネル数を持ち、さまざまな機能を持ちながら、1万円台の価格で3製品とも購入できるのですから、嬉しい時代になったものですよね。どれを選ぶかは目的次第。もちろんNotepad-12FXをDTM用途に使いつつ、ある時はネット配信にも利用する……なんてことも可能ですから、どれにするかじっくり考えてみてください。
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