TASCAMからSERIES 208i(税抜き実売価格:44,800円前後)およびSERIES 102i(34,800円前後)という2種類の新世代のオーディオ&MIDIインターフェイスが発売されました。いずれも24bit/192kHz対応で、208iは20in/8out、102iは10in/2outという仕様。ボディーはシルバーのデザインで、フロントが少し上に向く、US-4×4やUS-2×2などと近い形になっていますが、中身的には全く異なる設計で、かなりハイグレードのオーディオインターフェイスになっているようです。
入出力が多いのと同時に、208iのほうはクロックジェネレーターも装備しているのも特徴。またオーディオバッファサイズを4サンプルまで下げられるというのも他のオーディオインターフェイスにはない特徴となっています。また、ヘッドホンアンプが強力で、モニター音を莫大にできるのもユニークなポイントとなっています。実際どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。
今回発売されたTASCAMのオーディオ&MIDIインターフェイス、SERIES 208iおよびSERIES 102iはWindows、MacそしてiOSにも対応するもので、プロ用機材で長い実績を持つTASCAMがプロユーザーからハイレベルのDTMユーザーを主なターゲットとして開発した製品とのこと。
まず入出力からチェックしていくと、208iのフロントにはコンボジャックの入力が4系統、102iには2系統搭載されており各入力の右下にはINST、MIC/LINE、+48Vという切り替えスイッチが置かれています。ここからもわかる通り、ギターもラインも、ダイナミックマイク、コンデンサマイクも切り替えて使える形になっています。+48Vとした場合、ファンタム電源がオンになって、コンデンサマイクが使えるわけですが、各チャンネルごとに独立して設定できる点も嬉しいところです。
フロントの各入力端子に用意されている切り替えスイッチ
このフロントの入力はそれぞれにTASCAM自慢の高性能で超低ノイズというマイクプリアンプ、Ultra-HDDAを搭載。この点でもUS-4×4やUS-2×2とはグレードの異なるオーディオインターフェイスであるという点が見えてきます。さらに、配線経路や電源、グランド処理などもTASCAMの設計ノウハウを生かしつつブラッシュアップしているとのことで、US-4×4、US-2×2と比較すると、音質・スペックともにかなり向上しています。
一方、208iも102iも、右側に2つのヘッドホン端子が搭載されています。2つとも同じ信号が出る形ではありますが、デュアルヘッドホン体制でモニタリングができるというのも、重要なポイント。しかも、このヘッドホン出力がかなり莫大なんです。用途にもよりますが、レコーディング現場で使う場合、一般のオーディオインターフェイスだと、ヘッドホン出力のレベルが小さくてまともに使えないというケースはよくあると思います。
仕方ないので、オーディオインターフェイスの後段にヘッドホンアンプを接続して……なんて光景をよく見かけますが、この208i、102iは、そうしたヘッドホンアンプ不要で使えるため、大音量のヘッドホン出力を求める人にとっては、かなり有益な製品だと思いますよ。
これだけ大きい音が出せる、そして高品位なマイクプリを動かせる背景には、あえてUSBバスパワーではなく、別途ACアダプタを使った電源にしていることが挙げられます。コンパクトさ、持ち運びのしやすさという面では、USBバスパワーのデバイスと比較すると扱いにくさが出てしまいますが、音質の面、音量の面で妥協しないようにするには、ACアダプタが必要ということのようですね。
続いてリアパネルのほうも見てみましょう。208iから見ていくと、左側にはTRSフォンのラインアウトが8つ並んでいます。詳細は後ほど紹介しますが、ここにどんな信号を出すか自由に割り振ることができるようになっているのです。その8つのラインアウトの上にはワードクロックの入出力があり、ターミネーターも搭載されています。
その右にはMIDIの入出力、さらに、その右にはオプティカルの入力がA、Bの2系統用意されています。これはadatの拡張規格であるS/MUXに対応したもの。これにより44.1kHz/48kHzでは8ch×2=16ch分、96kHzだと4ch×2=8ch、192kHzでも2chx2=4chの入力を装備。これをフロントの4ch入力と合わせて最大20chの入力を持つわけですね。
ちなみに、この2つのオプティカル端子に接続するオプションとしてSERIES 8p Dynaというアナログコンプレッサ搭載の8chマイクプリが別売で出ています。今回、触っていないので、詳細は分からないですが、TASCAMによると、208iに搭載されているUltra-HDDAよりもワングレード上のHDIAマイクプリアンプを8基搭載しているとのことです。
一方の102iのほうは左側にTRSフォンのアナログのラインアウトが2つ、その隣にMIDI入出力があり、その隣がS/MUX対応のオプティカル入力が1系統となっています。これによって10in/2outという仕様なんですね。
写真を見ても分かる通り、208iも102iも、USB接続端子はUSB Type B。そのため、MacBook ProなどUSB Type-Cのマシンと直接接続できない……と思う方も少なくないと思います。確かに普通であればType-CをType Aに変換できるUSBハブなどを使って接続するのが一般的ではありますが、探してみると[USB Type BーUSB Type-C]というケーブルがあり、試してみたところ、問題なく使うことができました。ちなみに、使ってみたのは先日Amazonで購入したUSB Type C ケーブル,CableCreation USB 2.0 Type C to USB 2.0 Bオス プリンターケーブル ブラック2mというものです。
さて、この208iおよび102iを使う上で、WindowsではドライバとSettings Panelというユーティリティをインストールして使い、Macではドライバは不要だけれど、各種機能をフル活用するためにはユーティリティをダウンロードしてインストールする必要があります。
その中でも特筆すべきはWindowsのドライバのバッファサイズの設定についてです。このバッファサイズの設定によってレイテシーが変わるのはご存知の通りですが、そのバッファサイズを4サンプルまで下げることができるのです。私が記憶する限り、そんなに小さくできるオーディオインターフェイスは他になかったと思いますが、ここまで詰められれば、ほぼレイテンシーゼロといってもいい状況になりますね。
もっとも4サンプルまで小さくすると、それなりにCPUパワーが必要となるので、PCによってはうまく動作しないというケースはあると思います。そこで私が使っている第8世代のIntel Core i7-8700/メモリ32GB環境で試してみたところ、4サンプルの設定で、ノイズが入ることなく、まったく問題なく使うことができました。TASCAMの担当者に確認したところ、第8世代 Core i5-8500(3.00GHz)/メモリ8GBの環境でも問題なく使えたそうです。
さらに208iも102iも内部にDSPを搭載しており、各チャンネルごとに4バンドのパラメトリックEQ、コンプレッサを設定できるようになっており、その設定を行うためのミキシングコンソール画面も用意されています。
この画面を見ると分かる通り、各チャンネルごとに4つのAUXセンドが設けられています。それぞれフェーダーの前で送るか、フェーダーの後で送るかを設定するPREとPOSTのボタンが用意されているのですが、AUX 1のみは、内蔵DSPが処理するリバーブへも送る仕様になっているのです。HALL、ROOM、LIVE、STUDIO、PLATEの5種類のアルゴリズムを持つこのリバーブは音もなかなかキレイで、PCのプラグインで処理するエフェクトと比較し、レイテンシーほぼゼロで使えるのも重要なところ。
オーディオインターフェイス内のDSPが処理するからCPUの負荷なく扱うことができ、たとえばボーカルのレコーディングにおいてモニターにだけリバーブを掛ける、といったこともできるわけです。
では、それ以外のAUXセンドは何のためにあるのか?実は208iに用意されている8つのアナログ出力は非常に自由度の高いルーティングが可能になっており、このSettings PanelのROUTINGという画面で1つ1つ設定することができるのです。
したがって、たとえば1chと2chはメイン出力にしつつ、3/4ch、5/6chにはアウトボードのエフェクトを接続して利用するといったこともできるわけです。102iでも同様の画面は用意されていて、ルーティング変更は可能ではあるのですが、そもそも出力が2つしかないので用途は限られてしまいそうですが…。
そのほか、208iにおいては各アナログ出力に別々のモニタースピーカーを接続することを想定し、それぞれの出力レベルを調整する機能も搭載されています。そうした点からも、かなり自由度の高い設計であることが分かりますよね。
なおこのルーティングに限らず、EQやコンプレッサの設定、リバーブの設定なども含めて、設定したパラメータをシーンとして保存しておくことも可能になっています。最大10種類までのシーンを保存できるので、あらかじめ設定しておいて、状況によってその設定を呼び戻すという使い方も可能ですね。
ちなみに208iも102iもUSB接続を切り離し、スタンドアロンで使うということも可能になっています。この場合でもコンプ、EQ、リバーブが使え、各入力のレベル調整、ルーティングも可能なので、ミキサーとして使うこともできるわけです。
以上、TASCAMの208iと102iについて、一通りの機能を見てきましたが、もう一つ忘れてはいけないのが、ここにバンドルされているソフト群です。どちらの製品にも
iZotope Neutron 3 Elements
IK Multimedia AmpliTube TASCAM Edition
IK Multimedia T-RACS TASCAM Editon
が入っているほか、iPadアプリであるCubasis LEも利用可能となっているので、これらだけでも大きな価値がありそうですね。
【関連情報】
TASCAM SERIES 208i製品情報
TASCAM SERIES 102i製品情報
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