ギター、バイオリン、ピアノやドラムも演奏できる万能なMIDIギター!?Artiphon INSTRUMENT 1が面白い

アメリカのベンチャー企業、Artiphon(アーティフォン)が開発した、Artiphon INSTRUMENT 1(以下、Artiphon)という楽器をご存知ですか?これは楽器を弾いたことがない人でも演奏できることを目指した、新しい発想の楽器で、PCやiOSデバイスにも接続できるからDTM用途にもピッタリというもの。またMPE MIDIというMIDIの新しい規格に対応したデバイスでもあるのです。4年前、クラウドファンディングサイトのKickStarterの楽器部門でもっともお金を集めたプロジェクトで、TIME Magazineの年間最優秀発明賞の1つに選ばれるなどしているので、すでにご存知の方も多いかもしれませんね。

見た目はMIDIギター風であり、それに近い使い方も可能ではありますが、もっとさまざまな用途でいろいろ使える面白い電子楽器で、アメリカなど海外ではすでに発売されており、結構多くのユーザーが使っています。そのArtiphonがついに国内でも近日中に発売されることになりました。価格は48,000円で各楽器店でホワイトモデル、ブラックモデルの2種類が販売されます。その発売に先駆け、Artiphonの開発者でありCEOのマイク・ブテラMike Butera)さんと営業部長のドーグ・プロビザーDoug Provisor)さんにお話しも伺うこともできたので、これがどんな機材なのか、紹介してみましょう。

MIDIギター風なユニークなMIDIデバイス、Artiphon INSTRUMENT 1

DTMで打ち込みをする上で欠かせないMIDIデバイス。多くのDTMユーザーはMIDIキーボードを使っていると思います。もちろんピアノなどの鍵盤を演奏できる方なら、MIDIキーボードがあればMIDIリアルタイムレコーディングでスマートに入力していくことができますが、鍵盤演奏が得意でない人にとっては必ずしも使いやすいデバイスではないかもしれません。

そうした中、ギターを演奏するかのような操作感で利用できるMIDIデバイスが発売になります。それが、このArtiphon。従来からあるMIDIギター風ではあるけれど、それとも異なるもので、ギター的にえんそうできるだけでなく、フィンガーパットとしても使えるし、MIDIキーボードのような鍵盤にもなるデバイスなのです。用途が広いのもさることながら、表現力が高く、これまでと違ったアプローチで楽曲制作を行っていくことができるのも大きな魅力。また、新しい楽器という側面もあるので、実際に楽器として演奏することもできます。

Artiphonの開発者で、CEOでもあるマイク・ブテラさん

マイク・ブテラさんはArtiphonの魅力について「Artiphonは、音楽的な表現力があり、未来的なデザインをしています。直観的に使えるかどうかを大切にしており、あらゆるテクノロジーを踏襲しています。新しい楽器、楽器の発明をテーマにいろいろな楽器をコピーするだけでなく、この時代だからこそできる小型化や携帯性や機動性も重要と考えています。初心者でもプロフェッショナルの方でも新しい方法で最高のサウンドを演出することができるでしょう」と話していました。

以下のビデオをご覧ください。ブテラさんに解説をしてもらいながら実演してもらいました。

このビデオからも、Artiphonがどんなデバイスなのか、だいたいお分かりいただけたのではないかと思いますが、もう少し具体的に紹介していきましょう。Artiphonはギター風ではあるけれど、弦があるわけではありません。フィンガーボード側は黒いゴム板というかシリコン樹脂にギターの弦やフレッドに相当する出っ張りがあるという構造。

Artiphonのフィンガーボードは黒い樹脂に凹凸が付けられた形になっている

ギター風に弾く場合は、左手でフィンガーボードを抑え、右手でブリッジにあるトリガースイッチをはじくようにして、コードや単音を演奏しています。その際、単音ではチョーキングやプリング・ハンマリング、ビブラートといった演奏手法も可能となっています。

このビデオを見ると、このArtiphon自体、単体で演奏できる楽器のように見えますが、これ自体が楽器なわけではありません。このビデオの演奏時にはUSBケーブルでMacBookと接続されており、Mac上で動いているソフトウェア音源(ここではMainstage)で鳴らし、その音がUSBケーブルを通じてArtiphonに送られて、Artiphon内蔵のスピーカーから音を鳴らしていたのです。

スピーカー内蔵で、6つのトリガースイッチを使って演奏していく

ギター演奏を見ると、MIDIギターのようにも見えるArtiphonですが、丸いボリュームノブを押すと、これがモード切り替えスイッチとなっていて、さまざまな奏法のデバイスにモード変更できます。

ストリングスモードにすると、ヴァイオリンやチェロといった楽器のように構えて演奏することができます。また、先ほどのビデオでは使用していませんでしたが、Artiphonアプリを起動させたiPhoneを使って、弓の代わりにiPhoneを動かして演奏することも可能となっています。ヴァイオリンのように構えて演奏することも可能

さらにピアノモードに変更すると、MIDIキーボード的に弾くことができる鍵盤に変身。机の上にArtiphonを置いて演奏ができるので、ある意味MIDIキーボードがなくても、その代用として使うことが可能になります。

そしてドラムモードにすればフィンガーパッドのように扱っていくこともできるわけですね。

机に置いてMIDIキーボードに演奏することもできる

基本的なプリセットはギター、ストリングス、ピアノ、ドラムの4つのモードですが、その他にユーザ-プリセットを4つ保存しておくことができます。そして、あらかじめユーザープリセットに結構使えるものが用意されているので、簡単に紹介してみましょう。まず1つ目はフィンガーボードを押さえてトリガーを演奏するとコードが鳴るように設定してあります。フレットを上がるごとに設定した音階で音程が上がります。

2つ目のプリセットでは、フィンガーボードを押すだけで音が出るように設定してあり、3つ目では4、5、6弦の音と1、2、3弦の音を違う音色を設定して演奏しています。

ボリュームノブをプッシュしてモードを切り替える

最後のプリセットでは、アルペジエーターをオンにしてあるので、押さえたフレットの音をアルペジオさせたり、トリガーとフィンガーボードを使ってアルペジオを演奏することが可能です。プリセットの設定などは、ARTIPHON INSTRUMENT 1 EDITOR(Windows版もMac版もある)という無料でダウンロードできるソフトを使って設定でき、ここではチューニングの変更やアルペジエーターのオン・オフなどArtiphonが持っている機能を細かく制御することができます。

Windows、Mac用に用意されているユーティリティソフト、Artiphon INSTRUMENT 1 EDITOR

ところで、Artiphonの面白いのは、ここに傾きセンサーが搭載されていること。そのため、Artiphonは傾けることで、MIDIキーボードのモジュレーションホイールのようなパラメータ変化を行うこともできるのです。

そして、その傾きセンサー情報などを送るのに利用されているのがMPE MIDIという規格です。MPEとはMIDI Polyphonic Expressionのことであり、最近追加されたMIDIの拡張規格。従来からあるMIDIメッセージの仕組みを利用しつつ、これまでノートごとに設定できなかったピッチベンド、チャンネル・プレッシャー、カットオフ(CC74)の値をノートごとに設定できるようにするためのものです。

ArtiphonはMPE MIDI対応のデバイスになっている

先日「5次元タッチのぷにょぷにょキーボード、ROLI Seaboardが再上陸。DAW女シンガーソングライターの小南千明さんと使ってみた」の記事で紹介したROLI SeaboardもMPE MIDIを使っているものなので、最近徐々にMPE MIDI対応機材が増えてきているようですね。

なお、Artiphonの電源は付属の12V電源で、バッテリー内蔵なので、フル充電することで6時間連続で使用することができます。またバッテリーの残量はサイドのLEDの色で判断できるのは嬉しいところ。さらに、本体は軽量なので持ち運びもしやすく、右利きでも左利きでも使えるデザインとなっています。

これだけいろいろな機能を搭載しているArtiphonを開発した経緯についてCEOのブテラさんは、「音楽の聴きかたは変わってきているのに、楽器は昔のまま変わっていないので、そこに疑問をもっていました。なので、たとえばスマホだとそこだけで曲を作れたり、いろいろな音が出たりするので、楽器でもなんでも音が出るものを作ろうと思ったのがキッカケです。またスキルがなくても、誰でも演奏できるものを目指して開発しました」と話していました。

Artiphonの営業部長、ドーグ・プロビザーさん

Artiphonの開発には4年を要したそうですが、それ以前についてブテラさんは「学生のころ音楽の社会学を勉強していました。その後博士号を取得し、マルチインストゥルメンタリストとして、米国中を回ったり、社会学の教授や家電デザイナーとして活動し、その後しばらくLINE6で働いていました」といいます。その時の同僚だったのが、ドーグ・プロビザーさん。「この会社に入る前は少し音楽から離れていたのですが、その前にDigidesignやLINE6で最先端のことをしていたので、また音楽の世界で最先端のテクノロジーのイノベーションに興味が湧き戻ってきました」(プロビザーさん)とのことで、アメリカでは楽器・レコーディング業界内での転職が頻繁に行われ、そこから新しいものが生まれてくるのかな、と感じた次第です。

ようやく日本でも発売されるArtiphon。新しいMIDIデバイスとして、いろいろと活用できそうです。

【製品情報】
Artiphon INSTRUMENT 1製品情報

【価格チェック】
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