つなぎ目のない、ぷにょぷにょしたボディーの黒い鍵盤、ROLI Seaborad。しばらく国内での取り扱いがなくなっていたのですが、6月よりメディアインテグレーションが取り扱う形で国内再上陸となりました。今回ROLI製品として発売されたのは、以前にも記事で取り上げたことのあるSeaboard RISE 25、Seaboard RISE 49のほか、磁石で接続することでどんどん鍵盤数を増やしてくことが可能な24鍵のSeaboard Block、そのSeaboard Blockに接続可能なタッチパッドのLightpad Block Mやコントロールボタンが並ぶLive Block……など複数の製品。
またこのタイミングでROLI Seaboardでフルコントロール可能なソフトシンセもサードパーティーから登場してきており、より面白い楽器へと進化してきています。自身でも以前からSeaboard Blockのユーザーであり、今後、ライブでのパフォーマンスに活用したいというDAW女シンガーソングライターの小南千明(@c_1115)さんに協力をいただき、新ソフトウェア群で、どんな進化をしているのか試してみたので紹介してみましょう。
ご存知の方も多いと思いますがROLIは2009年に設立されたイギリスのメーカーで、そこが発明したSeaboardは、まったく新しいスタイルの楽器として世界中から評価され、さまざまなアワードを受賞してきています。といっても、見たことのない方にはピンと来ないと思うので、小南さんにちょっと弾いてもらったこの動画をご覧ください。
いかがですか?つなぎ目のない、フレットレスキーボードともいえるこの構造をキーボードならぬキーウェーブと呼んでいるのですが、指を前後、左右に滑らせたり、押し込んだり、はじくように手を放すことで、普通の鍵盤とはまったく違うプレイを可能にしてくれる楽器なのです。ここには
・Press(Strike後にキーウェーブを押し込む持続的圧力)
・Glide(キーウェーブ上またはリボンに沿った横方向の動き)
・Slide(キーウェーブ上を上下する縦方向の動き)
・Lift(キーウェーブから指を離す速さ)
という5種類のセンサーが入っていて、これによって、5次元での演奏を可能にしてくれているのです。そういうと、プレイが極めて難しいもののように感じられるかもしれませんが、小南さんのビデオからも分かるように、指一本でのプレイでも結構、面白い表現ができるので、初めての人でも、十分に使って楽しむことができそうですよ。
「押し込む」というのは分かりやすいのですが、実際に触ってみて、おお!、と感じるのが「はじく」という奏法。ギターの弦を「つまびく」といった感じですが、これはキーウェーブから、パンッと指を離すことで実現させるんです。そうLiftとういセンサーを用いているわけですが、これによってプラック(Pluck)系サウンドとかが作りやすいんです。
もっともSeaboard RISEもSeaboard Blockも、このハードウェア自体はあくまでもコントローラーであり、そこでの演奏を検知し、音を出すためにはコンピュータとソフトウェアが必要。コンピュータはMacでもWindowsでもOKで、ソフトウェアとしては、ROLIが開発するEquatorを使うというのがこれまでだったし、もちろん今もEquatorは最重要なソフトウェアです。
でも、Equatorだけでなく、ROLIモードというものを持つソフトウェア音源が最近複数登場してきています。その対応を加速させているメーカーの一つがFXpansionです。アナログモデリングシンセサイザであるCypher2やStrobe2という音源をROLI Seaboardに対応させたことで、さまざまな演奏表現が可能になっているのです。実は冒頭の小南さんのビデオで鳴らしていたのも、FXpansionのCypher2でした。
もともとROLI Seaboartとは関係なく開発されていたCypher、Storbeが、ネイティブ対応するようになったのは理由があります。そう、実は現在FXpansionはROLIに買収されたため、系列会社になっていたんですね。その結果、現在ROLI Seaboard RISE やROLI Seaboard BlockにはCypher2の簡易バージョンもバンドルされるようになっています。今回、日本でメディア・インテグレーションが代理店になったのも、もともとFXpansionの代理店であったことが関係しているようですね。
一方で、ROLIと資本関係のない会社においても、ソフトウェア音源をROLI Seaboard対応させる動きは出てきています。その一つがイタリアのAudio Modelingです。同社は、さまざまな楽器を物理モデリングした音源を出しています。
たとえば、サックス音源のSWAM Saxophones、バイオリン音源のSWAM Violin、フルートのSWAM Flutes……。そのそれぞれにROLI Seaboardモードを持っているのです。これについても、小南さんにSWAM Saxophonesをちょっと体験してもらいました。
このビデオにもあったように、もともとはエクスプレッションペダルでサックスを吹き込む力をコントロールする音源だったけど、このROLI Seaboardモードを使うことで、押し込む力でブレスをコントロールできるようになったため、より表現しやすくなっているんですね。また、押し込んだ状態で指を動かせば、それでビブラート表現もできるようになっているため、直感的に操作できるし、指一本であっても、それなりの演奏ができそうで楽しそうですよね。
今後このようにROLI Seaboardに直接対応した音源は増えていきそうですが、実はそうしたものを待たなくても、既存の音源を対応させるワザもあります。それは、付録のROLI Dashboardというソフトを利用して、既存の音源に5次元の操作をアサインするという方法です。押し込む操作をフィルターのカットオフにアサインするとか、指を奥へスライドする操作をビブラートにアサインするなど、していくことで、ROLI Seaboard対応でない音源でも、しっかり対応させることができるのです。
Seaboardの5次元の動きをコントロールチェンジ情報などにして外部音源を可能にするROLI Dashboard
ここでは小南さんが普段ライブでも使っているRolandのJD-XiにMIDIのコントロールチェンジ情報を送る形で対応させてみました。その様子もビデオに撮っているので、ご覧ください。
このように工夫次第で、Seaboard RISE、Seaboard Blockをさまざまな音源と組み合わせて使うことができるのです。もちろんハードウェア音源に限らずソフトウェア音源でも利用可能ですよ。
ところで、ご存知の方も多いと思いますが、このROLIが先日、光る鍵盤、LUMIというものを発表し、アメリカのクラウドファンディング・サイトのKickstarterでの販売を行っていました。これは、Pharrell Williamsが配色したという、カラフルに光る24鍵のキーボード(キーウェーブではない)で、ROLI Brightkey テクノロジーというものを用いたことで、キーボード全面がRGB制御で光るのだとか。
また、Seaboard Blockと同様、磁石で接続していくことが可能なDNAコネクタに対応しているので、Seaboard Block、Lightpad Block Mと接続して使うこともできそうです。これについても、10月ごろに国内でも発売するようなので、詳細が分かったらまたレポートしてみたいと思っています。
ROLI製品国内リリース記念イベント
8月2日、ROLI製品の国内リリース記念イベントが東京・渋谷で開催されます。ゲストにはSASUKEさん、鈴木光人さん(スクウェア・エニックス)、薮井佑介さんが参加の予定です。参加費は無料とのことなので、下記のリンク先からお申込みください。
2019年8月2日(金) 18:00open/18:30start
会場:UNDER DEER LOUNGE (渋谷)
東京都渋谷区神南1丁目3−4 神南ビルB1
募集定員:150名 (定員超過の場合抽選となります)
参加費用:無料
参加方法:下記専用フォームよりお申し込みください
フード/ドリンク:フリー・ケータリング、ワンドリンク無料
イベント関連情報ページ
https://www.minet.jp/contents/event/all-you-need-is-roli-2019/
【関連情報】
ROLI関連情報
ROLI Seaboard製品情報
FXpansion関連情報
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小南千明さんWebサイト
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