今年1月に発表になり、大きな話題を呼んだNative Instrumentsのエントリーユーザー向けオーディオインターフェイス、KOMPLETE AUDIO 1とKOMPLETE AUDIO 2。DTMステーションでも「Native InstrumentsがDTM初心者向けの1万円台のキーボード、オーディオIFを続々と発表。KOMPLETE STARTやMASCHINEソフトウェアなど製品価格以上のソフトが付属」という記事でも紹介していましたが、その2機種をようやく入手して試してみました。
実売価格でKOMPLETE AUDIO 1が10,800円(税込)、KOMPLETE AUDIO 2が13,800円程度と手ごろな価格でありながら、ほかのオーディオインターフェイスと比較してバンドルソフトが非常に豊富なのが特徴。DTM初心者向けのオーディオインターフェイスとしてはもちろん、2台目であったり、持ち歩き専用の機材としてもよさそうです。もちろん「聴き専」の人にとっても気軽に購入できる機材だと思います。実際に試してみた結果、どんなオーディオインターフェイスなのか、紹介してみましょう。
改めて言うまでもありませんが、DTMをする上で、オーディオインターフェイスは絶対に必須のハードウェア。ひと昔前は高級機材であった24bit/192kHz対応の機材も、いまでは手ごろな価格で誰でも気軽に購入できるようになっており、なかでもエントリーユーザー向けの2IN/2OUTという仕様のオーディオインターフェイスは、各メーカー間で熾烈な争いが繰り広げられています。
Steinberg(YAMAHA)、Roland、PreSonus、TASCAM、Focusriteなどが、結構よく似たスペックの製品を比較的近い価格で展開しているだけに、まさに激戦区。ざっくりと言ってしまうと、2IN/2OUTのオーディオインターフェイスで、DAWのエントリー版が付属するというもの。マイク入力x1という製品が10,800円前後(税込)、マイク入力x2という製品が17,000円前後という価格で、多くは24bit/192kHzだけど、中には24bit/96kHzのもある……といったのが相場です。
その激戦区に後発で入ってきたのがNative Instrumentsでした。今年3月にKOMPLETE AUDIO 1およびKOMPLETE AUDIO 2をリリースし、大きな話題になりました。ブラックボディーの洗練されたデザインが目を引くと同時に、Native Instruments製のKOMPLETE STARTやMASCHINE Essentialsをバンドルするなど、他社製品とは一線を画す形で差別化したのも大きなポイントでした。
そして、もうひとつ重要なのが価格です。具体的にはマイクプリアンプ1つで24bit/192kH対応のKOMPLETE AUDIO 1(以下KA1)が10,800円と他社競合製品とほぼ同等ですが、マイクプリアンプ2つのKOMPLETE AUDIO 2(以下KA2)は13,800円と、他社製品より安い点が目立つんですよね。この2機種で何が違うのか、他社製品と比較して、どんな特徴があるのかを順に見ていきましょう。
ブラックボディーで、天面に大きなアウトプットボリュームを持つのが特徴のKA1とKA2。サイズ的にはほぼ同じで、IN 1とIN 2に対応するVUメーターを搭載しているのも同じ。先日、個人的にも購入してレビューしたKOMPLETE AUDIO 6 MK2とも共通するデザインとなっていますが、これよりも一回り小さいサイズですね。
KA1とKA2の一番の違いはフロントの入力端子です。KA1ではIN 1がマイク接続用のXLRでIN 2がLINE/INSTスイッチ切替でのTRSフォンジャックとなっているのに対し、KA2はIN 1、IN 2ともオールマイティーに使えるコンボジャックとなっていることです。
「でも、どう選べばいいか分からない…」という人のために、もう少していねいに説明してみますね。まずマイクまたはギターやベースなどを同時に複数パートレコーディングしないのであればKA1でOK。ギターの弾き語りで、マイクとエレアコギターを同時というのであればOKですが、ボーカル用のマイクとギター用のマイクを同時に使いたい……となった場合はKA2が必要になるわけです。
また、外部のオーディオ機器やシンセサイザなどからラインでステレオ録音したいという場合、KA2のIN 1とIN 2それぞれをLINEに設定すれば録ることができます。
一方でリアにも違いがあります。KA1はRCAのピンジャックの出力であるのに対し、KA2はTRSフォンでの出力。RCAとTRSフォンの違いの詳細については割愛しますが、より高音質を求めるなら、バランス接続という方式で外部からのノイズを遮断できるTRSフォンがいいですよ。もっともこの出力の接続先のモニタースピーカーなどがTRSフォンに対応していることが前提となりますが。
こうした点を総合的に考えるとKA2がお勧めですが、「打ち込み専門で、モニタリングもヘッドホンしか使うことはない」というのであればKA1で十分かもしれませんね。
では、他社製品と比較してKA1やKA2の違いについても少し見てみましょう。まずは大きさに関してです。SteinbergのUR22mkIIおよびPreSonusのAudioBox iTwoが手元にあったので、並べてみました。
見ればわかる通り、KA1、KA2って他社のオーディオインターフェイスと比較して、一回り小さいのです。数字で比較してみると以下のような違いがありました。これはノブなどの高さも含めたサイズなので、本体部分だけを見るとさらに小さいですよ。
幅(mm) | 高さ(mm) | 奥行(mm) | 重量(g) | |
NI KOMPLETE AUDIO 1 | 140 | 52 | 117.5 | 360 |
NI KOMPLETE AUDIO 2 | 140 | 52 | 112 | 360 |
Steinberg UR22mkII | 150 | 46 | 159 | 1030 |
PreSonus AudioBox iTwo | 192 | 43.5 | 135 | 630 |
軽くて持ち運びやすいという意味でも、KA1、KA2のメリットは大きいと思います。
一方、ボディーの天面に大きいボリュームがあって、音量の調整がしやすいというのがKA1、KA2の特徴であり、ウリのポイント。実際触ってみても、やや重めなトルクで気持ちいいんですよね。ただ、この位置にあるボリュームについては好みが分かれるところかもしれません。「機材は重ねるのがいい」という人にとっては、天面にボリュームがあると操作できないですからね。ただし、樹脂製ボディーなので、そもそも、上にたくさんの機材を重ねるのには向いていませんが……。
天面に大きなボリュームノブを搭載
また、その大きなボリュームノブの左にLEDを使った入力のレベルメーターが搭載されているのもKA1、KA2共通の大きな特徴です。もちろん、入力レベルはDAWなどで確認するのも手ではありますが、やはり入力するところで、しっかりレベルが出ているか、レベルオーバーしていないかを確認するのは重要ですし、間違いないレコーディングができますからね。
入力ゲインを表示するLED式のVUメーター
そして、KA1、KA2が他社製品と比較して大きく異なる重要なアドバンテージとなるのがバンドルソフトの豊富さです。具体的には以下の通り。
・MASCHINE Essentials : MASCHINEソフトウェア
・REPLIKA : プロ品質のディレイ
・SOLID BUS COMP : パワフルなコンプレッサ
・PHASIS : 新機能を搭載した定番のフェイザー
・MONARK : MiniMoogを再現するモノフォニックシンセサイザ
・KOMPLETE START : 計17種類の音源やエフェクトに加えループやサンプルも収録
他社製品と同様、DAWもバンドルされています。ここで採用されたのはAbleton Live 10 Lite。もちろんWindows/Macに対応し、最高32bit/192kHzまでをサポート。トラックは8つまでという制限はあるものの、打ち込みからレコーディングまでオールマイティーに使えるDAW。もちろんVSTおよびAudio Unitsのプラグインにも対応しているから、Native Instrumentsの各種ソフトとの連携もバッチリです。
そのプラグインがいろいろ付属していて、Ableton Live 10 LiteだけでなくCubaseやStudio One、Ability……と各社DAWとも連携可能です。さらに、、あのMASCHINEが使えるというのも大きな魅力。
このMASCHINE EssentialsはMASCHINEソフトウェアのフルバージョンと厳選された1.6GB分のサンプル、ループ、インストゥルメントのセットで構成されていて、MASCHINEの世界を十分に楽しむことができます。必要あれば、その後、フルバージョンのMASCHINEファクトリーライブラリーにアップグレードすることも可能です。
さらにMASCHINE EssentialsからKOMPLETE 12 SELECTへのアップグレードオプションも用意されています。そこからさらにKOMPLETE 12シリーズ上位版へとアップグレードしていくこともできますよ。
以上、コンパクトで高機能で、かつバンドルソフトウェアも豊富なNative InstrumentsのKA1、KA2を紹介してみました。DTMは初めてという方はもちろんですが、2台目、3台目用に手軽に使えるオーディオインターフェイスが欲しいという人にとっても、いい選択肢が登場したといえるのではないでしょうか?
【関連情報】
KOMPLETE AUDIO 1 & 2製品情報
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