「昔のカセットテープが実家にいっぱい残ってるけど、そもそも再生できるテープレコーダーすらないし……」なんて人も少なくないと思います。思い出のテープであったり、今では絶対に聴けないラジオのエアチェックであったり、もちろん自分の演奏を録音したものだったり、と希少なカセットテープも少なくないと思います。そんなカセットテープを再生するだけでなく、それをmicroSDにデジタル変換して録音できるポータブルタイプのカセットテーププレイヤーというのが今売っているんですね。
しかもそのデジタルダビング機能搭載のカセットテーププレイヤーに加え、その音を大幅にブラッシュアップするためのノイズリダクション機能、マスタリング機能、波形エディット機能まで搭載したAudio Cleaning Labというソフトがセットとなって、ソースネクストから発売されています。価格は6月9日までの期間限定で5,980円(税別、送料別)。実際どんなものなのか試してみたので紹介してみましょう。
今回紹介するのはハードとソフトのセット製品で
クリーニング&修正ソフト(Audio Cleaning Lab)
という製品構成。発売元のソースネクストとしては、普段5,572円で販売しているAudio Cleaning Labに、カセットプレイヤーを特別バンドルして5,980円で期間限定販売をする、ということのようです。
セットになっているだけに、ハードとソフトの相性はいいわけですが、そもそもはまったく別の製品の組み合わせ。ということで、まずはそれぞれの概要を順に紹介していきましょう。
まず、このカセットテーププレイヤーはいわゆるウォークマンタイプのポータブルカセットプレイヤーで、単3電池2本で動かすことができ、ヘッドホンで聴くことができるという意味では、数十年前からあるものと変わりなく、普通に使うことができます。
もっともDolby BとかDolby C、dbx……といったノイズリダクション機能は搭載されていないので(ライセンスの問題などから、搭載自体が難しいのかも…)、それほど高機能、高性能を自慢するような機材ではないけれど、普通に再生することができるし、オートリバース機能も搭載している優れものです。
単3電池での駆動時間は5~6時間とのことですが、単3電池での駆動だけでなく、付属のUSBケーブルを用いることで、USBのACアダプタから電源供給して使うこともできるので、室内で使うのであれば、ACアダプタを使ったほうがいいかもしれませんね。
しかし、このカセットテーププレイヤーが現代のマシンなんだと実感させられるのは、ここにmicroSDのスロットがあり、ここにmicroSDカードを入れると、カセットテープの再生音をデジタル録音できてしまうという点。フォーマット的にはMP3の128kbps。本気のオーディオファンの方からすれば、「24bit/192kHzで高音質に……」なんて声が上がってきそうではありますが、まあもっと手軽に気楽に使える機材だと割り切ってもらったほうがいいかもしれませんね。
だいぶ以前、USB接続してPCに録音できるようにした製品を取り上げたことがありましたが、今回の製品にUSB端子はありません。そもそもPCに接続することなくデジタル化できてしまうという点で、非常に使い勝手がいいですよね。操作は背面にあるデジタル用の録音・停止・再生・一時停止ボタンなどを使って行うようになっており、ガチャン!って押すカセットテープのメカニカルなスイッチ類とは完全に独立した形で存在しているのです。
またこのデジタル録音機能がよくできているのは、テープ再生の無音部分を検知して自動的にファイルを切り分ける機能を装備していること。アルバムをダビングするような場合は非常に便利ですね。ただ、「中には勝手に切り分けないでほしい」なんて思う方もいるはず。その場合は、自動分割モードから手動分割モードに切り替えれば自分のタイミングで切ったり、とりあえず60分まるごとデジタル化し、ソフトウェアでの編集時に切っていく……なんてこともできますよ。ちなみに、ヘッドホン端子兼用の入力端子から外部のライン信号を取り入れてMP3に録音するといった機能も搭載されています。
そんなハードウェアとともに付属するのがAudio Cleaning Labという製品。以前からMAGIXで出していたソフトの進化版ですが、現在の正式名称はSOUND FORGE Audio Claening Labとなっており、MAGIXが買収したSOUND FORGEのエンジンも活用した形になっているようです。
これはWindowsベースで動作する音をキレイに整えるためのソフト。つまりカセットテープでの「サー」というヒスノイズ、レコードでの「プチプチ」いうクラックルノイズ、電源からまぎれこむ「ブーン」というハムノイズなどを取り除いてキレイな音にすることができるものです。
もともと手元にあるWAVやMP3ファイル、またAIFF、AAC、FLAC、WMA、OGG Vorbis……といったファイルを読み込んでノイズ除去ができるだけ、直接レコードやカセットテープをから再生する音を録音していくという方法も用意されています。したがって、先ほどのカセットプレイヤーで生成されたMP3ファイルを読み込めば、簡単にノイズ除去ができるわけですね。
さらに単にノイズを除去するだけでなく、こもった感じになった音をキラキラしたサウンドに仕上げたり、古い感じのサウンドを今風なサウンドに仕立て直すなどといった、リマスタリング機能も装備しているのです。
ノイズ除去も、マスタリングも数多くの機能、パラメータがあるので、初めての人にとっては、何をどうすればいいのか、なかなか難しい面はあるでしょう。でも、このソフトは初めての人でも簡単に使えるようにするために、「自動クリーニング」、「自動マスタリング」という機能が用意されているので、このボタンを押すだけで、その素材に合わせた処置が施され、結構いい感じに仕上げてくれます。このすべてお任せモードであっても、使用前、使用後では、見違えるようによくなるので、かなり大きな意義があると思います。
もちろん、とりあえず自動設定でだいたいの音に整えた上で、「もう少しヒスノイズが目立たないようにしよう」とか、「多少プチプチした音が残ったとしても、高域が削られないようにしてみよう」……などなど、調整するのもよさそうです。
また自動マスタリングにおいては「70年代ディスコ風」とか「80年代アメリカンポップ風」など、目指すサウンドを選択の上、それに寄せた音にすることも自動で行うことができるのも楽しいところです。
一方で手動でマスタリングする場合には、
Dynamics
Graphic EQ
Multimax
Brilliance
Stereo Enhancer
Sound Cloner
Reverb
Echo
などなどのパラメータがあるほか、VSTプラグインで調整することも可能。また例によってiZotopeのOzne 8 Elementsまで搭載されているので、これでマスタリングしていくことだってできるようになっています。そうした点を総合的に考えると、かなりの機能、性能を備えたソフトだと言えそうですね。
そのうえで、トリミングして、各種のオーディオファイル形式で保存することもできれば、ここからオーディオCDを焼くことも可能。また、SoundcloudやYouTube、FacebookなどにUPしていく共有機能も装備しているので、これ一つでかなりのことができそうです。
このソフト単体で5,572円というのも安すぎるように思いますが、これと前述のデジタル化機能付きのカセットテーププレイヤーがセットで5,980円なんだから、これで誰が儲かるんだろう……と不思議に感じてしまうところ。6月9日までの限定なので、モノがなくならないうちにゲットしておいて損はないと思います。なお、ソフトのほうは購入後すぐにダウンロードできますが、カセットテーププレイヤーのほうは6月5日からの発送になるとのことです。
【価格チェック&購入】
◎ソースネクスト ⇒ SOUND FORGE Audio Cleaning Lab + カセットテープコンバータセット