iPhone/iPad用の録音アプリはiOS標準のボイスメモを筆頭に数多くのものが存在しています。そうした中、先日、より高音質で録音できることを掲げた無料のアプリが新たに誕生しました。その名も『オーディオ・レコーダー』というシンプルな名前で、見た目にも使い勝手もとってもシンプルなもの。でもサンプリングレートやビット解像度を細かく設定でき、最高で24bit/192kHzにも対応し、オーディオインターフェイスなどと組み合わせたレコーディングもできるなど、DTMユーザーにとっても魅力的なアプリなのです。
開発したのは元Rolandのエンジニアで、現在はループセッションズ合同会社(Loop-Sessions.LLC.)の代表である南野潤一(@MJeeeey)さん。オーディオ・レコーダーがリリースされた4月に連絡はいただいていたのですが、先日ようやく試してみたところ、とっても便利だったので、簡単に紹介してみたいと思います。
南野さんとは、音系のハッカソンでお会いして、知り合ったのですが、音楽関連のアプリやソフトの開発で幅広く活躍しているエンジニアです。Roland時代はSONARの初期バージョンのローカライズを行ったり、OEM関連の開発に携わっていたそうです。退職後もRolandの仕事を請けることもあるそうで、BOSSブランドで無料で出ているチューナーアプリ、BOSS Tunerも南野さんの開発によるものです。
その南野さんが先日、無料アプリとしてリリースしたのが、オーディオ・レコーダー。使い方はちょっと拍子抜けするほど簡単で、録音ボタンを押すと録音がスタートし、停止ボタンを押せば停止する、ただそれだけのアプリなんです。
ところが設定画面を開いてみると、かなり細かな設定ができるというのがこのアプリの最大の特徴となっています。ここではwavとm4a(AACフォーマット)のいずれかを選ぶようになっており、それをモノラルかステレオかを設定します。
またwavおよびm4aでは、それぞれ以下の設定ができるようになっています。
wav | |
サンプリングレート(kHz) | 8、16、22.05、32、44.1、48、96、192 |
ビット数(bit) | 16、24 |
m4a | |
サンプリングレート(kHz) | 44.1、48 |
ビットレート(kbps) | 64、128、192、256 |
そう、このオーディオ・レコーダーを使うことで、最高で24bit/192kHzのレコーディングができるわけです。また録音したデータは、このアプリ内で再生することができるのはもちろんですが、wavおよびm4aのファイルで保存されるので、これをCubasisやAuriaをはじめとするiOSのDAWなど、別のアプリに持っていって利用することもできるし、MacやWindowsに転送して、PCで利用するということも可能。
つまり、いざというときにiPhoneでオーディオ・レコーダーを起動して、録音し、家に持ち帰ってからDAWや波形編集ソフトでじっくり編集……といった使い方ができるわけです。
「でもiPhone単体で24bit/192kHzなんて録音できるんだっけ?」と思った方もいると思います。その通り、iPhoneやiPad本体のマイクから録音する場合は最高で24bit/48kHzとなっており、96kHzや192kHzには対応していません。そこでLightning端子(最新のiPad Proの場合はUSB Type-C)を通じてオーディオインターフェイスや専用マイクに接続することで、より高いサンプリングレートでステレオで録音していくことが可能になるのです。
別の見方をすると、iPhone単体で内蔵マイクを使って録音する場合は、96kHzや192kHzを指定するのはオーバースペック。通常は24bit/48kHzにしておけば十分だと思いますよ。また最新のiPhone XSの場合、内蔵マイクがステレオに対応していますが、これをステレオで利用できるのは標準のカメラアプリでビデオ撮影する場合のみ。残念ながら、オーディオ・レコーダーで試してみてもステレオで録ることはできませんでした。その意味では、本体内蔵マイクで録るならモノラルでOKということですね。
さて録音したら、前述の通り、オーディオ・レコーダーで再生できるほか、別アプリに持って行ったり、PCに転送して利用することができるわけですが、オーディオ・レコーダー本体にも簡単な編集機能とエフェクト機能が装備されています。
録音したファイル一覧の中から編集したものを選び、青いトリミングボタンをタップすると再生/編集画面に移ります。ここでトリミングを行うことができ、「切出」ボタンでトリミング結果を別ファイルとして保存することが可能です。また画面下のほうにはSpeed、Pitchというパラメータがあり、Speedを動かすことで、ピッチを変えることなく、スピードを0.5~2倍の範囲で調整することが可能です。
一方、Pitchを動かすことで上下1オクターブの調整が可能なのですが、このPitchはオプション扱いとなっており、これを使うにはアプリ内課金=120円で「エフェクト機能の有効化」を行う必要があります。
またエフェクト機能を有効にすると、Pitchだけでなく10バンドのグラフィックEQの設定もできるようになっています。これを使うことで、より聴きやすいデータにして再生することができますが、これはあくまでもアプリ内の話であり、切り出してほかのアプリに持って行ったり、PCにもっていった場合はエフェクトがかかっていない状態となります。
なお、このアプリ内課金はもう一つ「全ての広告(バナー、全画面)の非表示」というものが、同じ120円で用意されているので、広告が気になるという方はこれを購入しておくとよさそうですよ。
その南野さんから以下のコメントをもらったので紹介しておきます。無料ですし、iPhone/iPadユーザーはぜひGETしてみてくださいね。
開発者の南野潤一さんからのコメント
iPhoneで気軽に録音をしたいとき、標準アプリの「ボイスメモ」を使えば簡単に音声を録音することができますが、もう少し良い音質で録音したい、と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「ボイスメモ」の音質は「設定」ー「ボイスメモ」の「オーディオの品質」から選択できますが、2種類(非可逆圧縮、ロスレス圧縮)だけで自由度が低いです。他のアプリでもいくつか調べてみましたが、やはり満足する録音設定のできるアプリは見つかりませんでした。
それなら自身で作ってみよう、と思って公開したのが今回のアプリ「オーディオ・レコーダー」です。
今後も要望をいただければ機能の追加などのアップデートは随時行っていく予定です。
【ダウンロード】
◎AppStore ⇒ オーディオ・レコーダー
◎AppStore ⇒ BOSS Tuner