無料になったDAW、Cakewalk(旧SONAR)は正式に日本語化対応し、その後も着々と進化中

昨年「SONARが名称変更して復活!旧ユーザーは無料でアップグレード!?Cakewalkを買収したBandLabのCEOに聞いてみた!」や「シンガポールのBandLab社によりCakewalk=SONARが奇跡の復活、全ユーザーへ完全無料公開!インストール方法と、いくつかの注意点」という記事でも紹介したCakewalk(ケークウォーク)。先日のDAWシェア調査において、2018年の国内シェアは前年の12%から7%へと急降下してしまいましたが、今後については悲観するよりも、楽観視すべきなのかもしれません。

久しぶりに、最新バージョンをインストールして試してみたところ、昨年4月のリリース時に比較してかなり機能、性能ともに向上するとともに、とても安定して動作するようになっていることが分かりました。そして何よりも日本語に正式対応していたのも日本のユーザーにとっては嬉しいポイントです。そこで、Cakewalkの現状について、改めて紹介してみたいと思います。


Cakewalkは、無料になった現在もどんどんと進化中

あまりご存じない方もいると思うので、企業としてのCakewalkについて、これまでの30年の歴史をざっくりと振り返ると

1987 Twelve Tone Systemsという名前で設立
1995 Rolandと業務提携
2008 Rolandが買収し、社名もCakewalkに
2013 RolandからGibsonに売却
2017 Gibsonの経営破綻に伴い、開発・生産を終了
2018 BandLab Technologiesが買収し、フリーソフトとして公開

という感じで、ここ数年は激動の時代を過ごしてきました。

国内においては2013年からRolandに変わってTASCAMSONARを扱ってきたわけですが、Cakewalkの事実上の破綻に伴い、2018年の秋には販売がストップ。日本のユーザーも行き場を失った結果、シェアが急降下したというのが実際のところだと思います。

しかし、以前の記事にも書いた通り、そのSONARは昨年4月4日より、シンガポールのベンチャー企業、BandLab TechnologiesからCakewalkという名前でリリースされ、現在も誰もが無料でダウンロードして使うことが可能となっています。


最新版のCakewalk Version 2018.11

「タダより怖いものはない」という考えから使うのを躊躇している人も多そうですし、海外のソフトだから……と敬遠している人もいるかもしれません。でも一昨日、改めて入手して試してみたところ、よりよいDAWへと進化していたのです。

「無料でいいソフトなんてありえない」、「どこかで急に有料化するんじゃないの?」、「ビジネスプランを示してくれないと安心して使えない」……なんて声も聞こえてきそうですが、きっとそんな風に心配するのは我々、凡人の考え方。現在Cakewalkを開発し、無料配布しているシンガポールの会社、BandLab TechnologiesのCEO兼共同創設者であるメン・ルー・クォック(Meng Ru Kuok)さんは、Forbesの億万長者ランキングに載るKuok家の一族。たかがDAWの開発にかかるお金なんて気にするほどのものでもないのかもしれません。


1年前に日本でお会いしたときのMengさん

Mengさん自身は、世界中の多くのミュージシャンの音楽制作に役立てば、という思いから、Cakewalkを引き取り、開発を続けているようですよ。「金持ちの道楽か」なんて揶揄する人もいそうですが、1年前にMengさんと会ったときの印象は、ものすごく聡明で、技術も詳しい方でした。また自らエレキギターを弾きながら、細かなエフェクト設定などもデモしてくれて、まさかそんな大金持ちだとはわかりませんでしたね。ちなみに、2016年にBandLabはアメリカの老舗音楽雑誌、Rolling Stone誌も買収しています。ある意味、Cakewalkというソフトにとっては、過去30年間で、もっとも安定した時期に入ったといえるかもしれません。

さて、SONARからCakewalkに名称変更した、このDAWは、Roland時代、Gibson時代と同様にWindows専用のソフトです。数年前、Mac版の開発がアナウンスされ、α版などが披露されていましたが、結果的にはうまく開発できなかったのか、消えてしまっています。


まずbandlab-assistantというソフトをインストールして起動し、ログイン

そのWindows版のインストールには、Cakewalkサイトからbandlab-assistantというソフトをダウンロードし、これをインストールします。これはBandLabの各種アプリやコンテンツをダウンロードし、インストールするためのソフトなのですが、これを使うためにはBandLabのアカウントを作成してログインすることが必要。GoogleアカウントやFacebookアカウントから紐づけてのアカウント作成もできますが、それは嫌だ…という人は、BandLabサイトからメールアドレスで簡単にアカウントを作成することもできますよ。


AppsタグからCakewalkのInstallボタンをクリックしてインストール

AppsタブからCakewalkのInstallボタンをクリックすれば、すぐにインストールが可能となります。アドオンソフトをインストールするかどうかのチェックボックスも登場しますが、通常は全部チェックしておけばいいと思います。ここから先は日本語表示で、インストール作業を進めていくことができますよ。


アドオンソフトの選択画面が出てくるので、とりあえず全部チェックを入れてインストール

ダウンロードなどに多少時間はかかります。ネット環境にもよると思いますが、30分もあればインストールできるはずです。さっそく起動してみると、何ら問題なく、日本語のメニュー、日本語のメッセージが表示される形で起動します。昨年のリリース時には英語のソフトになってしまっていて、日本語で使うにはやや特殊な操作が必要という状況でしたが、どうやら日本語が使えないのはバグだった模様で、2018年9月のアップデートで正式に日本語が使えるようになっています。


ここから先は日本語表示で作業ができる

そう、この新しいCakewalkは4月にリリース後、数週間でバグフィックスを中心とするアップデートがあり、その後5月、6月、7月、8月、9月、11月と7回ものアップデートが行われてきており、単にバグフィックスというだけでなく、機能的にも、性能的にも向上しているんです。最新版はVersion 2018.11と年月で記載されているから、分かりやすいですよ。


Cakewalkを起動すると、最初から日本語環境で使うことができる

実際に起動してみればわかる通り、これはGibson時代のSONAR Platinum、Roland時代のSONAR Producerに相当する最上位バージョン(下位バージョンは現在存在しません)。そのため、目玉機能であったPro Channelなどもすべて使えます。


NeveやSSLのコンソールをエミュレーションできるProChannelも搭載

たとえば複数トラックでボーカル、コーラスをレコーディングした際のタイミングのズレを補正するVocal Syncなんかの機能もしっかり使えますよ。


複数のボーカルのタイミングを合わせることができるVocal Sync機能

Vocal Sync同様、SONARがメンバーシップ制に移行した後に搭載された目玉機能、Drum Replacerもバッチリと動いてくれました。これはドラムのオーディオトラックを解析してキックス、スネア、ハイハット……などに分解するとともに、それぞれを別の音に差し替えたりフィルタを掛けて音を調整することができるというもの。ある意味、Drum ReplacerだけのためにCakewalkを導入しても損はないと思いますよ。


ドラムの差し替えを可能にするDrum Replacer

標準搭載の音源は相変わらず、

SI-Bass Guitar
SI-Electric Piano
SI-Drum Kit
SI-String Section
Cakewalk TTS-1

の5つのみ。とはいえ、普通にVST2、VST3のプラグインを追加可能ですので、各社の音源をインストールして使えばいいわけです。


OVERLOUDのTH3も付属している

一方、エフェクトのほうにはギターアンプシミュレータのTH3や高性能リバーブのBreverb 2というOVERLOUDのプラグインを含め、いろいろと入っています。いずれも普通に買えば数万円で現状発売されているソフト。Cakewalk以外では使えないようにはなっていますが、これがタダで使えちゃうわけですよ。4月の最初のCakewalkリリース時には、TH3に若干の不具合があったようですが、これもしっかり解消されているようです。


同じくOVERLOUDのBreverb 2もCakewalkに最適化されている

一方、10月にニューヨークで行われた展示会、AESにおいても話題になっていましたが、Cakewalkの10月のアップデート時には、オーディオエディット機能であるAudioSnapのエンジンにzplaneのélastique Pro V3が搭載されています。超高音質のタイムストレッチ、ピッチチェンジが可能といわれているエンジンであり、Pro ToolsやCubaseなどにも採用されているものですが、これが無料のDAWで使えてしまうなんて、ちょっと驚異的ともいえますね。


ニューヨークでのAESでもCakewalkが話題になっていた

ちなみに、インストール時のアドオンソフトとして選べるMelodyne 4には、さすがにライセンスは搭載されていません。そのままだとMelodyne Playerにしかならないのですが、Studio One Professionalのユーザーなどには付属しているので、ライセンスを持っている人も少なくないと思います。インストール時には、手持ちのライセンスを入れてオーソライズしてみてくださいね。

というわけで、Cakewalkは無料のままですが、いまも着々と進化中。Windowsユーザーなら、インストールしてみる価値は高いと思いますよ。

【関連情報】
Cakewalk by BandLab
BandLabサイト

【ダウンロード】
◎BandLab ⇒ Cakewalk

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