シーケンサ内蔵でフィジコンとしてもCV/GATEにも対応する超多機能なMIDIキーボード、Novation SL MkIIIを使ってみた

イギリスのMIDIデバイスメーカーであるNovationが先日発売した超多機能・高機能なUSB-MIDIキーボードSL MkIII。49鍵モデルの49SLMkIII(税抜き価格:65,800円)と61鍵モデルの61SLMkIII(76,800円)の2種類があるのですが、かなりいろいろな使い方ができて、面白いという話を聞き、ちょっと試してみました。

「USB-MIDIキーボードなんて、どのメーカーの製品も大差ないのでは……」なんて思って触ってみたら、これはちょっと特別でした。このキーボード自体に8トラックのポリフォニックシーケンサを搭載していたり、Mackie HUI互換のコントロールサーフェイスとして使えたり、MIDIだけでなくアナログシンセサイザとの接続も可能なCV/GATEにも対応しているなど、とにかく機能テンコ盛り。実際どんなものなのか紹介してみましょう。

今回、Novationから借りて使ってみたのは49鍵モデルの49SL MKIII。フル鍵盤のUSB-MIDIキーボードなので、49鍵とはいえ、そこそこの大きさにはなります。キータッチはちょっと重めなセミウェイテッド鍵盤。かなり多機能であり、アナログシンセサイザもコントロールできるようになっているため、電源はUSBからのバスパワーではなく、付属のACアダプタを使う形になっています。


49鍵の49SL MkIIIと61鍵の61SL MkIIIの2つがある

電源を入れてみて、まず驚くのは全鍵盤にLEDがついていて、青く点灯すること。鍵盤を弾くと、その鍵盤のLEDが白に変化するのですが、この光り方を見て「テンション上がる!」という人も少なくないのではないでしょうか?


電源を入れると全鍵盤に付いているLEDが青く点灯する

もちろん、このLED、単に派手さを演出するためにあるわけではありません。まずはSL MKIIIの最大の特徴でもあるシーケンサと大きく関連しているのです。


鍵盤を弾くとそのキーのLEDが白に変化

普通シーケンサはDAWが持っている機能であり、PCを起動し、DAWを起動し、プロジェクトを立ち上げてから使うものですが、SL MKIIIの場合は本体右のRECボタン+PLAYボタンを押せば、もうすぐシーケンサが動き出しループレコーディングが可能です。


RECボタンに続いてPLAYボタンを押すと、すぐにMIDIレコーディングが可能になる

もっとも音を出すためには音源が必要なわけですが、PCとUSB接続されているのなら、PC側でDAWを起動してシンセサイザなどのプラグイン音源を起動してもいいし、スタンドアロンのソフトウェア音源を起動してもOK。SL MKIIIには、XLN AUDIOのAddictive Keysが付属しているので、これを使って鳴らすことも可能ですね。


バンドルソフトのXLN AUDIO Addictive Keysを鳴らすことも可能

またUSB接続せずに、SL MKIII単体の状態でも動く設計となっており、MIDIケーブルでMIDI音源モジュールを接続すれば、それをキーボードで弾いたりこのシーケンサで演奏することも可能です。試しにRolandのJUNO-106を復刻した小さなシンセサイザ、Roland Boutique JU-06を接続してみたところ、しっかり6音ポリ4音ポリで鳴らすこともできました。これはUSB接続されている状態でも同時に使うことが可能です。つまり、USBとMIDI OUTの両方に信号を送ることができているわけですね。


Roland Boutique JU-06をMIDIで接続すれば、これをキーボードで弾いたり、シーケンサで鳴らすことができた

デフォルトでは16ステップのシーケンサとなっていて、Tempoボタンを押せば細かくテンポ設定をすることもできるし、20~80%の範囲でスウィングの設定も可能。さらにTapキーを押していくことでテンポを決めていくこともできます。必要に応じてステップ数を変更することも可能ですよ。


Tempキーを押せばシーケンサのテンポの変更も可能

ループレコーディングで一発でいい感じのフレーズができればいいのですが、やっぱり少し修正したい、ということもあるでしょう。そんなときはステップごとにエディットしていくことも可能です。Sequencerというボタンを押すと、16個並んだパッドが、各ステップを意味し、音が記録されているステップのパッドがやや明るく光ります。


データが記録されているステップのパッドがやや明るく光る

その明るいパッドを押すと、そこに記録されているノート=音程が各鍵盤に割り振られているLEDの色が赤く光ることで分かります。この鍵盤をさらに押すと削除されるし、別の鍵盤を押せばそれが記録されるんですね。


データが記録されているパッドを押すと、そこに記録されている音程が赤く光る

このエディット機能はただノートを修正するだけでなくベロシティーを修正したり、より細かなステップでのエディットを行うことができるなど、非常に高機能。説明していくとキリがなくなりますが、これだけでかなりの制作ができちゃいますね。

また、16個のパッドの上に並ぶ8つのボタンを使うことで、MIDIチャンネルを切り替えることができます。デフォルトでは1chが出力され、その際のキーボードのLEDの色が青だったのですが、その隣のボタンを押すと2chに切り替わり黄色くなります。さらにその隣が3chで緑、4chがオレンジ……となっているのですが、シーケンサ的にはそれぞれ別トラックとして記録される形になっています。かなりインテリジェントな設計ですよね。

各鍵盤のLEDの色は2つ目のボタンを押すと黄色に、3つ目のボタンを押すと緑に変化

さらに面白いのが、冒頭でも述べたCV/GATEに対応しているということ。SL MKIIIのリアパネルとみると、CV、GATE、MODと書かれた端子が2組ありますが、これらがアナログの0~5Vを出力する端子であり、アナログシンセサイザを接続すればそれらをコントロールすることができるわけですね。


MIDIの入出力や各種ペダル端子に加え、CV/GATE/MODの端子が2系統用意されている

試しに手元にあるArturiaのMICRO BRUTEを接続してみたところ、バッチリ動作してくれます。CV/GATE 1のほうがMIDIの1chに相当するところ、CV/GATE 2のほうがMIDI 2chに相当するところであり、USBもMIDIもCV/GATEも同時に同じ信号が行くようになっていました。


ArturiaのMicroBruteをCV/GATEで接続したら、シーケンサで鳴らすことができた

なお、チャンネルを切り替えるとボタンの上に並んでいるディスプレイの表示も切り替わります。1ch、2chのときはCC21、CC22、CC23……とMIDIのコントロールチェンジの表記になっており、その上のノブを動かすことでコントロールチェンジ信号を送ることが可能になっています。


上部に8つならぶツマミでMIDI CCをコントロールすることができる

一方、3chはAIRAのTR-8Sの名称が、4chはElektronのOctatrack……と名称が表示されるとともに、上のパラメータの表記も変わります。これらの機材と接続すれば、すぐに使えるように設定されているんですね。もちろん、これはデフォルトで用意されているものであり、自分で自由に変更することも可能ですよ。

このシーケンサ機能を中心としたSL MkIIIの基本的な機能を軽く紹介しているだけでも、かなりの機能があることが分かると思います。でもここで取り上げたのは、本当に触りの部分のみで本当にいろいろなことができるキーボードなんですよ。

IN CONTROLボタンを押すと、DAWのコントローラモードになる

そしてもう一つ重要なのがWindowsやMacと接続した場合、SL MkIIIがフィジカルコントローラとして使えるという点。つまりCubaseやStudio One、Ableton Live、Logic、SONAR、Reason……などと接続した際に、フェーダーをコントロールしたり、PANを動かしたり、録音や再生などのトランスポート操作をSL MkIII側から行うことができるんです。

たとえばSL MkIIIにはLive 10 Liteが付属していますが、これを起動した上で、SL MkIIIのIN CONTROLというボタンを押せば、もうすぐにリモートコントロール操作が可能になり、ディスプレイには各ノブの機能などが文字で表示されます。

SL MkIII搭載のスライダーでDAWのフェーダー操作が可能

 

一方、CubaseやSutdio Oneを使っている場合は、Mackie HUIのデバイスとして設定した上で、IN CONTROLボタンを押せば、使えるようになります。まったく難しい設定なく、すぐに使えるというのは、やっぱり便利ですよ。

ただしこのフィジカルコントローラとして使う場合、1つ注意点があります。それはPC側から見て、キーボード部分とは異なるMIDIポートを使う必要があるという点。Macの場合、Novation SL MkIII InControlというポートが入出力ともに表示されるのでこれを設定します。それに対し、Windowsの場合は、InContorlとは表示されず、MIDIIN2(Novation SL MkIII)、MIDIOUT2(Novation SL MkIII)となっているので、これを選ぶようにしてください。異なるポートを選択すると動作させることができないので、間違えないようにしてくださいね。

Cubaseの設定画面。入出力をMIDIIN2(Novation SL MkIII)、MIDIOUT2(Novation SL MkIII)にするのがポイント

 

なお、SL MkIIIはUSBクラスコンプライアントなデバイスであるため、WindowsでもMacでもドライバを入れずに利用することが可能です(Windows用のドライバも用意はされているけれど、使わなくてもOK)。ということはiPhoneやiPadでも動くのかな…と思い、USB-Lightningアダプタ経由で接続してみたところ、こちらもバッチリ動いてくれました。鍵盤やピッチホイール、モジュレーションホイールなどだけでなく、コントロールチェンジなども含め、すべての機能が使えましたから、いろいろな活用ができそうですね。

iPhoneと接続してもバッチリ動作させることができた

以上、NovationのSL MkIIIについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?DAWと連携させるUSB-MIDIキーボードとして充実しているのはもちろんのこと、これ自身がシーケンサ機能を持っており、各種MIDI音源モジュールやCV/GATE経由でアナログシンセサイザとの接続も可能となっているので、手持ちのハードウェアシンセサイザをもっと活用してみたいという人には、かなり強力なデバイスだと思います。もちろん鍵盤としての基本性能は非常にしっかりしているので、マスターキーボードとしてもかなり活用できると思いますよ。

【関連情報】
SL MkIII製品情報(英語)

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