Studio OneがCubaseを猛追、大きく変化した2018年の日本のDAWシェア

明けましておめでとうございます。本年もDTMステーションをどうぞよろしくお願いいたします。今年最初の記事は、国内のDAWのシェアについてです。昨年12月1日~31日の期間で実施したアンケート「普段使っているDAWは何?」に多くの方々にご協力をいただいた結果が出ました。

あくまでもWeb上のDTMステーション調べということなので「実態とは違いある」という声もあることは重々承知しておりますが、今年は合計2,541人もの投票をいただいたこと、国内にこの手のデータがほとんどないことを考えると、一つの参考にはなると思います。また過去6年間の調査結果の推移もまとめてみたので、これまでの流れも振り返りつつ、少し考察してみたいと思います。


2018年のDAWシェア調査結果(DTMステーション調べ)

まずは、昨年投票していただいた読者のみなさんにご協力のお礼を申し上げます。2017年に行った際には1,636票だったのが、2,541票に増えたので、50%以上伸びたことになります。これは昨年9月30日にDTMステーションがリニューアルしたタイミングでアンケートのシステムを変更したため、スマホでも簡単に投票できるようになったことが、投票数増加の大きな要因かな、とも思っています。

普段使ってるDAWは何?

  • Cubase (25%, 635 Votes)
  • Studio One (23%, 581 Votes)
  • Logic (12%, 295 Votes)
  • Ability/SSW (9%, 218 Votes)
  • SONAR/Cakewalk (7%, 168 Votes)
  • FL Studio (5%, 133 Votes)
  • Live (5%, 130 Votes)
  • Pro Tools (4%, 95 Votes)
  • Digital Performer (4%, 90 Votes)
  • その他 (4%, 90 Votes)
  • Reaper (2%, 48 Votes)
  • Reason (1%, 35 Votes)
  • BITWIG (1%, 17 Votes)
  • Music Maker (0%, 6 Votes)

投票人数: 2,541

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ちなみに、この投票システムは従来と同様に同じIPアドレスからの投票を受け付けないようになっているため、同じ人が何度も投票できないのはもちろん、メーカーの社員がみんなで会社から投票する…といった不正なことも、基本的にはできないようになっています。そのため、ある程度は信用できる数字になっているのではいかと思います。


6年連続、トップはCubaseとなりました

改めて今回の結果を見てみると、このようになっており。過去6年間Cubaseがトップシェアを守った形になりました。が、Studio Oneが22.9%と急伸したため、Cubaseに迫る勢いで、実際アンケートのスタートから数日後にはトップ逆転現象も起こったほとでした。その結果、CubaseとStudio Oneで国内市場の約半分を占めるという結果になっています。


過去6年間のDAWシェアの推移

ちなみにこのStudio Oneは2006年にCubaseの開発チームがスピンアウトする形で作られたDAWであり、ここに並ぶDAWの中では比較的新しいソフトですが、思想的にはCubaseと近いDAWともいえるわけですね。そして3位に入ったのがLogicです。LogicはMac専用ではありますが、価格が安く、GarageBandの上位版的な位置づけであることから人気も高く、安定的に10~15%程度のシェアをキープしています。


2位につけたStudio Oneは1位のCubaseに肉迫

大きくシェアを伸ばして4位に入ってきたのが国産DAWであるインターネット社のAbility/Singer Song Writerでした。1か月の投票数を見ている中、途中で急に数字が伸びてきていたので、多少組織票があったのでは……という疑いはあるものの、Studio OneとAbilityで共通して言えるのは、SONARからの移行組をうまく捕まえて伸びた、という点でしょう。

ご存知の通り、SONARを開発してきたCakewalkはGibsonの経営破綻に伴い、2017年末に会社が解散。日本でSONARを扱ってきたTASCAMも販売を中止せざるをえない状況になりました。結果的には「SONARが名称変更して復活!旧ユーザーは無料でアップグレード!?Cakewalkを買収したBandLabのCEOに聞いてみた!」、「シンガポールのBandLab社によりCakewalk=SONARが奇跡の復活、全ユーザーへ完全無料公開!インストール方法と、いくつかの注意点」といった記事でも紹介した通り、フリーソフトとして生き残る形にはなりましたが、多くのユーザーが他のDAWへ移行していったのも事実です。


フリーウェアになったCakewalk=SONARはシェアダウン

その際にいち早く移行キャンペーンを実施したのがStudio OneとAbilityだったので、これらのシェアが伸びたのではないでしょうか?2018年のシェアが大きく変わったのは、このSONARが大きな要因であったのは間違いないと思います。

ここで、過去6年間の推移を見てみましょう。投票数が毎年上がってきているので、ここではシェア数で比較していますが、あまり見ることのない面白いデータではないでしょうか?アンケートの選択肢が多少変動していますが、ほとんどをカバーできていると思います。ただ2013年の実施時の項目にAbility/SSWおよびDigital Performerが入っていなかったので、2014年の結果を元に「その他」項目から割り当てるという推定処理をしているので、その点ご了承ください。

各年の投票結果のすべての数値は「アンケート結果」(https://www.dtmstation.com/pollsarchive)のページで公開していますが、上記推定処理をした結果の表を以下に載せておきます。

2013 2014 2015 2016 2017 2018
Cubase 243 239 297 385 395 635
Studio One 83 117 150 307 288 581
Logic 101 136 167 187 220 295
Ability/SSW 36 42 47 52 47 218
SONAR/Cakewalk 151 130 175 200 193 168
FL Studio 34 50 75 99 136 133
Live 43 60 76 101 112 130
Pro Tools 39 46 41 64 55 95
Digital Performer 24 29 33 43 43 90
Reaper 41 39 48
Reason 26 35
BITWIG 16 19 22 17
Music Maker 11 11 20 8 6
その他 56 66 63 63 52 90
合計 810 926 1151 1581 1636 2541

ところで、国内にいる外国人の方々や海外にいる日本人の方々から、TwitterやFacebookで多く指摘されたのは、「日本はAbleton Liveのシェアが信じられないほど低い!」、「なんでFL Studioのシェアがこんなに低いんだ?」といったこと。確かに、海外の調査結果などを見ると、Ableton LiveやFL Studioはかなりシェアが高いようですから、日本のDTM環境はやや特殊なのかもしれませんね。ただ、最近になってAbletonの日本法人が設立されたり、FL StudioもMacに対応するなど、環境に変化が出てきているので、今年あたりは大きく変化してくる可能性もありそうです。


Macでも動作するようになったFL Studio

ほかのDAWについても少し見てみると、プロのレコーディングスタジオではデファクトスタンダードであるPro Toolsも、一般DAWユーザー全体でみると3.7%という数字に。またDAWというかMIDIシーケンサ時代からの老舗であるDigital Performerも3.5%という数字になっています。全体から見ると決して大きいシェアではありませんが、プロ用・業務用ツールとしては安定したユーザーがいるということなんだと思います。

もう一つ、結構多くの方から指摘されたのは「なんでKORG Gadgetが入っていないんだ!」というお叱りの言葉でした。以前は似た指摘をReasonに対して言われていたのですが、私の勝手なDAWの定義で今回Reasonは選択肢に入れつつ、Gadgetは外しています。

そのDAWの定義とは

1.オーディオとMIDIが扱えること
2.マルチトラックであること
3.エフェクト/インストゥルメントのプラグインに対応していること
4.WindowsかMacで動作するソフトであること

の4つ。以前Reasonもプラグイン非対応だったのが、2017年から対応しているので、これは選択肢に入れていますが、Gadgetは対応していないため、ここに入れていません。


KORG Gadgetは今回あえて調査対象に入れなかった

とはいえ、これは単なる定義の話であって、KORG Gadgetを否定しているわけではありません。同様にiOS用の強力なDAWもいろいろあるので、今後ますます音楽制作の仕方も多様化していくとは思います。

2019年のDAW調査については、また年末ごろを予定しております。その際には、またみなさんのご協力をお願いします。

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