新幹線の中でも曲作り!? 元Hysteric Blueのドラマー、楠瀬タクヤさんのKDJ-ONE活用術

ゲーム機風小型DAWとして、これまでDTMステーションでも何度か取り上げてきたKDJ-ONE。開発にはずいぶん時間がかかったようですが、今年に入りKickStarterやMakuakeで購入した人たちにも製品が届き、今年10月より、Amazonなどで一般への発売も無事開始されました。プロミュージシャンの中にも、KDJ-ONEを使い始めている人もいるようですが、先日、元Hysteric Blue(ヒステリック・ブルー)のドラマー、楠瀬タクヤ@takuyakusunose)さんが、活用しているという噂を聞き、先日少しお話を伺ってきました。

ちょうど、音楽プロモーションサイトのmuevoが12月28日まで、このKDJ-ONEを25%オフの64,584円(税込み)で販売キャンペーンをしているタイミングであり、muevoとタクヤさんがコラボ企画を展開しているところ。実際タクヤさんがKDJ-ONEをどのように使っているのか、その活用法を聞いてみました。


KDJ-ONEを使っているという楠瀬タクヤさんにお話しを伺ってみた

故佐久間正英さんがプロデュースしたことでも知られる人気バンドだっHysteric Blue。2004年にバンドが解散した後、タクヤさんはインディーズでバンド活動をする傍ら、多くのアーティストに曲を提供するようになりました。さらに2005年ごろからは舞台での劇伴も手掛けるようになり、これまで数多くの舞台用音楽作品を作り上げてきています。そして昨年からは、メンバー全員が作詞・作曲・編曲家であり百戦錬磨のアーティストでもあるバンド、月蝕會議のドラマーとしての活動しているタクヤさん(月蝕會議のリーダー、エンドウ.さんのインタビューは以前「次々とアニソン、アイドル音楽を生み出すヒットメーカー、エンドウ.さんはSONAR使い!」という記事で紹介しています)。そのタクヤさんがDAWを使うようになったのは、Hysteric Blueの解散後だったのだとか。

--最初はどんなDAWからスタートしていたのですか?
タクヤ:中高生のころにPMA-5というRolandの手帳型のシーケンサはかなり使っていました。音源入りの持ち歩き可能なシーケンサという点では、KDJ-ONEと共通する点もあって、ちょっと懐かしい感覚ですね。PCでのDAWという意味では、バンドが解散する前後にG4のMacを購入してPro Toolsを使ったのが最初です。Digi 001とセットで導入したのですが、英語のソフトだったこともあり、ほとんど使えないまま眠っていました。が、確かにPro Tools 6.xになったころに日本語対応したこともあり、ようやく触れるようになってきたんですよ。目的としてはインディーズのアルバムを作るのが目的で使い始めたかんじですね。


1996年に発売されたRolandのPMA-5(当時のカタログより)

--Pro Toolsのシステムをスタジオに持って行って使う…という感じですか?
タクヤ:いや、基本的に自分の部屋でダビングしたり、打ち込んだりという感じですよ。鍵盤が弾けるわけじゃないので、マウスでポチポチとステップ入力ですよ。それは今も同じですね。3~4年前から専門学校で講師もするようになり、そこで教えるのがLogic Pro Xであったこともあり、最近はLogicも使うようになっています。

--Pro ToolsとLogicは使い分けがあるのですか?
タクヤ:もともとメロディーから作ることがほとんどで、歌モノを作るのにはこれまで慣れてきたPro Toolsを使っていますね。一方で、BGMとかダンスモノとか、ループ素材を多用して曲を構成していく場合にはLogicを使っています。ジャンルによって使い分けており、Logicを使う場合は、最後の完パケまでLogicで作っていますね。いまは劇伴もLogicで仕上げることが多いですね。


Pro ToolsとLogicを使い分けているというタクヤさん

--参考までに今、タクヤさんが使っている機材や基本的な制作手順を教えてもらえますか?
タクヤ:PCは現行型のMac Proを使って、オーディオインターフェイスはRMEのFireface UC、Pro Tools 10で使ってます。仮歌、コーラス、場合によっては本番のボーカルまでウチで録ることがありますよ。あとは打ち込みが中心で、場合によってはギターとかをギタリストに頼んで、メールでWAVのやり取りで完成させることも多い感じです。ミックスは外部に依頼するケースが多いですが、舞台音楽の場合は、つたないながらも自分でやるケースが多いですね。

--ドラムはどうしているんですか?スタジオで叩いた音をレコーディング……とかではないんですか?
タクヤ:よく聞かれるんですが、これが打ち込みなんですよ(笑)。自分で録った単発の音はあるけれど、リズムそのものは打ち込んでいくんですよ。ただ、ソフトウェア音源のドラムってパキッとしすぎていて好きじゃないんです。スネアの皮鳴り、胴鳴りでのブニューっていうのが好き、キックもビチューンじゃなくて、ボド、ベドっていうのが好き(笑)。だから、市販のドラム音源を使いながら、スネアやキックを自分の音に差し替えたりしてますね。


タクヤさん、最近はKDJ-ONEを活用しているという

--そんなタクヤさんがKDJ-ONEを使っているという話を聞きました。いつごろ、どんなキッカケで使うようになってんですか?
タクヤ:いろいろとお世話になっているmuevoさんから、2か月ほど前に「面白い機材があるよ」と紹介されたのがキッカケです。以前にネットの記事で見たことはあったのですが、実物を見てみると、トキメキますね。その時見たのはファミコン色のモデルで、ちょっと触ってみるとグッとくる。世代的にドンピシャなんですよ!電子ミュージック、ピコピコサウンドが具現化したものが登場した!という印象でした。


5種類のカラーバリエーションがあるKDJ-ONE

--実際にKDJ-ONEを使ってみていかがでしたか?Pro ToolsやLogicの代替的機材になりえそうですか?
タクヤ:KDJ-ONEはパソコンベースのDAWとはまったくの別モノであり、置き換えるというようなモノではないと思います。キッチリ作り込むPro ToolsやLogicなどに対し、KDJ-ONEはハプニングを楽しむモノ。つまり、ある程度頭の中でゴールを描きつつ、作り上げていく従来のDAWとは異なり、KDJ-ONEは作りながら変えてみて、偶然的に面白いフレーズが次々と生まれてくる感じ。たとえばフィルターなど実際に鳴らしながら変えるパラメータ、機能がいろいろあるので楽しいですよ。見た目からピコピコマシンだと思ったけど、思いのほか、いろいろな音色があり、この内蔵音色を順番に試していくだけでも、ワクワクする。自分でも音色を置いてから曲を作るというのは初めての経験で、この音色からインスピレーションをもらってコード進行やテンポ感を決めていくという感じですね。


KDJ-ONEはハプニングを楽しむものだという……

--KDJ-ONEの使い方として、最終的にはこれをPro ToolsやLogicに流し込んで完成させていく形ですか?
タクヤ:まだ、KDJ-ONEで作品を完成させた、というわけではないんですが、KDJ-ONEにはKDJ-ONEの世界観があるので、これだけで完成形まで、持っていきたいなと考えています。これまで、使ってきた感覚でいうと、KDJ-ONEではAメロ、Bメロ、サビ……といった展開で曲を作るのではなく、長尺でずっと鳴らしながら、いろいろいじりながらハプニングを楽しみながら曲にしていく、というのが良さそうですね。とはいえ、絶対にいいなと思っているのは、SEとかDJのサンプル素材をKDJ-ONEで作成し、ミックスまでした上で、それが10個、20個とたまってきたら、これをサウンドトラックの素材集という形でDAWに持っていき、それを組み合わせて作るという手法。この方法でも、結構簡単にいろいろな曲が作れそうだな……と思っています。


タクヤさんの自宅スタジオでもKDJ-ONEが活躍

--実際、タクヤさんはKDJ-ONEを自宅で使っているのですか?
タクヤ:ウチで使うこともありますが、最近よく外に持ち出しているんですよ。ちょうど先日もツアーに持って行って、新幹線の移動中にヘッドホンで聴きながらフレーズ作りをしてましたよ。遊びながら曲が作れるので、結構サクサクとできる。短時間で1フレーズできちゃうから、「このフレーズは京都駅の辺りで作ったぞ」というような思いとともに、溜まっていく。パッとできて、すぐに次に取り掛かれる。それがこのマシンのいいところだなと思いました。KDJ-ONEの音色がすべての音楽に向くわけじゃないけれど、その制約が結構いいんですよ。


新幹線内でKDJ-ONEを使うことも…(写真はタクヤさん提供)

--制約がいいとは、どういう意味ですか?
タクヤ:中学・高校時代に使っていたRolandの手帳型シーケンサ、PMA-5を思い出すというか……。あれはGS音源に4トラックのシーケンサという限られた機能しかなかったけど、あの音色でありながら「これは生の音なんだ」と無理やり想像しながら工夫しながら作っていくことで、かえって面白い音作り、曲作りができる、そんな面白さがあるんですよ。今のDAWが何でもできるからこそ、制限がある不自由さが想像力を掻き立ててくれるんですね。


制約があるからこそ、面白い曲作りができる

--タクヤさんにとって、KDJ-ONEは今後、仕事にも役立ちそうですか?
タクヤ:それは間違いないと思っています。2019年は、自分の作品のいろいろなところにKDJ-ONEで作った音を忍ばせていきたいな、と考えています。たとえば月蝕會議の1トラックのループに使うとか、舞台の劇伴においても、KDJ-ONEだけで作ったものを使ってみたいな……とか。今後、KDJ-ONEの使用頻度は上がっていきそうです。

--ぜひ、KDJ-ONEの音が入った作品、楽しみにしています。今日はありがとうございました。

【関連情報】
KDJ-ONE製品情報
楠瀬タクヤofficial website

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