以前「社会人が作曲やDTMを本気で学べる学校に体験入学(!?)してみた!」や「海の見えるスタジオで、レコーディングの授業を見学してきた」という記事で紹介した、DTMスクールのJBG音楽院。ここで、また無料初心者セミナーがあるので見てほしいというお誘いをいただき、先日、受講生気分で見学しに行ったところ、またかなり面白い授業が行われていました。
「え、そんなことまで話しちゃっていいの?」と思うこともしばしばで、他ではなかなか聞くことができないような話もいっぱい。授業を受けに来た人にとってはかなり有意義な時間だったのではないかと思います。今回は無料初心者セミナーだったということもあり比較的簡単な内容だったのですが、その中でも「なるほど」と思ったテクニックもいろいろあったので、その一部をちょっとだけ紹介してみたいと思います。
以前の記事では、ボーカルに18.9msecでショートディレイをかけると、いい感じに音が厚くなるという、不思議な裏ワザを、ダジャレの暗記のようにイッパク=18.9と覚える、といった話を紹介しました。にわかには信じられないワザだけど、これが結構効くのが面白いところでした。そのワザを教えてくれたのがベース奏者で作曲家でもある米バークリー音楽院出身の荒木健先生。今回は同じくバークリー音楽院を卒業後にプロとして活躍している伊藤和馬先生と、以前Twitterでバズっていたリズム譜早見表が裏表紙にあった本、「できる ゼロからはじめる楽譜&リズムの読み方 超入門」(リットーミュージック)の著者でもある侘美秀俊(たくみひでとし)先生の授業を見学してきました。
22日発売の拙著「できる ゼロからはじめる楽譜&リズムの読み方 超入門 (CD付) 」見本誌到着! 本文はもっともっと濃ゆいコトバでリズム練習をする内容です。よろしくどーぞ‼︎ pic.twitter.com/twY1KeQOOB
— 侘美秀俊_タクミヒデトシ (@hidetakumi) 2016年12月18日
以前、かなり話題になったリズム譜早見表を作った侘美秀俊先生の授業に行ってきた
JBG音楽院で受けることのできる無料初心者セミナーは、東京校は年4回、大阪校は年2回。DTM初心者、作曲初心者を対象の無料セミナーなので、これから「作曲に挑戦してみたい」とか「始めたばかりで何も分からない」という人は、かなり勉強になる話や、刺激もいっぱいなので、一度受けてみる価値はあると思いますよ。
さて、まずは侘美先生の授業。無料初心者セミナーを受けに来ていたのは13人でしたが、普段の授業は生徒数6人以下で行うようにしているとのこと。その人数だと個人レッスンにも近い感覚で、かなり集中して授業を受けることができそうです。
侘美先生の授業テーマはメロディーについて。基本的な音階の話が終わり、さっそく侘美先生から「メロディーってもちろん音階からできているんですけど、7つある音階の中で7つの音すべてを使っていないケースが多いんす。では、7つの音階のうち何個使っていることが多いと思いますか?」との質問。授業を受けに来た方たちは、積極的に答えていた中「3つか4つぐらい……?」とか「5つ!」などいろいろ出ました。
侘美先生から「正解は5つ。メロディーは5つの音でできているんです。もうこれだけで、今日、来ていただいた意味があったかもしれませんね(笑)。ちなみに音楽的な用語になりますけど、ペンタトニックって聞いたことないですか?ペンタは5つという意味ですから、5つの主音という意味になります。階名でいうとドレミソラという音ですね。音階の4番目と7番目を抜いた音で、これがドと相性のいい音ということを覚えておいてください。とりあえずこの5音を使えばキャッチーなメロディーができちゃうんです」と侘美先生が話すと皆から「へぇー」という声が。
「そもそも音楽において完全5度の音は相性がいい音程なんです。なので、ドであれば5度上のソ、ソの5度上のレ、レの5度上のラ……と続けていくと、このペンタトニックというスケールが出てくるんです。そして、これを使うと覚えやすい曲ができちゃうんですね。あれ?内心嘘ついてるんじゃないかと思っている人がいません?じゃ実際に曲を用意してきたので、聴いてみてください」そして流した曲は、閉店のときによく聞くあの曲。「この『蛍の光』は音名でいうと、E♭、F、G、B♭、Cなんです。最近の例でいくと、自動車のCMでも使われていたPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)の『Happy』もマイナースケールではあるけれど、ラ、ド、レ、ミ、ソしか使ってないです。すごく覚えやすいですよね。これに適当にペンタトニックスケールで合わせてもハマるんですよ」とHappyに合わせて、侘美先生がアドリブで「ラ、ド、レ、ミ、ソ」でキーボードを弾くと、ピッタリとマッチします。
ここでもみんな「あぁーなるほど」との声が上がりました。さらに、昔のアニメのオープニング曲「マッハGoGoGo」や最近のではサカナクションの「陽炎」などいくつか例を挙げていましたが、全部5音でメロディーが構成されているペンタトニックとなっていました。
「もう一ついうと、マイナーペンタトニックの場合は1音足して、6音で作ることも多いですね。そして、ペンタトニックが普通の7つの音のスケールと比べて違うとこは、半音がないことなんです。すべて全音の音程なので、勢いがあって元気なメロディーができるんですよ。この5音のメロディーで音を作る練習としては、黒鍵だけでアドリブで遊ぶといいですよ」と先生が用意したコード進行に合わせて、みんなで順番にアドリブでの演奏が始まりました。これが、始めてアドリブをする人でも不思議とそれっぽくなってるんですよね。
「これはあまり言いたくないんですけど、メロディーはペンタでシンプルにして、コードをちょっと複雑にするとポップス的な感じになっちゃうんです。ペンタトニック以外の音をベースに持ってくるとオシャレな感じがでるし、メロディーもペンタトニックにプラスして半音とか使うと、エモい感じが作れるんです。こういった仕組みをプロはみんな頭で考えて作っているんですよ。なんとなくで作るんじゃなくて、作戦を考えて結構作ったりするんですよね。理論っていうと堅い気がしますが、実際に知ると音楽の幅が広がるので、作戦を立てて音楽を作れるといいと思います。理論は敬遠せずにちょっと学んでみようかな!と軽い気持ちで、ゆっくり1から学んでもらえたらなと思います」と侘美先生。こういう話は、ネットで検索してもでてこないので、かなり有意義ですよね。
ちなみにこの侘美先生の授業は、音楽の基礎力をつけるコアプログラムの一部分。今回はざっと説明していましたが、本来はダイアトニック・スケールやフレーズ、リフの基礎を勉強して、ちょっとづつ自分でもアナライズができるようなカリキュラムが組まれているみたいです。それこそ、プロが考えて作っているメロディーとコードの兼ね合いを1から学べるということなんでしょうね。
そして、もうひとつ別の日に行われた授業は、伊藤和馬先生のリズムついて話。こちらにもちょっと参加してみたので紹介してみましょう。ここでも、今すぐ使えるようなテクニックや、言われてみれば当たり前だけど、意識しないと気付かないことだったりする内容を取り扱っていました。
「さっそくですが、コードを変えずに何をしたら今っぽく、楽曲の雰囲気を変えることができると思いますか?正解は……シンコペーションです。“くう”って言葉聞いたことあると思いますが、これは8分音符前に音をもってきて、リズムに変化をつける技法です。このシンコペーションは、リズムの変化を強調するためにバッキングだけでなく、ドラムのキックなども合わせてあげるといいんです。さらにいうと、ベースやストリングスのリズムも意識できるようになると、どんどん曲が形になっていくと思います」と伊藤先生。みなさん頷きながら、真剣にメモを取っていました。「こういったリズムなどを意識してバンドスコアを改めて見てみると、タイがついていたり、新たな発見があるんでぜひ見てみてくださいね」
みなさん真剣にメモを取り、すごく真面目に授業を受けていました
この授業自体は、メインプログラム2に繋がる内容で、カリキュラムとしては中級者以上対象のも。今回はかなり噛み砕いた内容の授業だったのですが、メインプログラム2はメインプログラム1を終えた後に、各ジャンルの代表曲や最新ヒット曲を分析して、その特徴をつかんでいくという内容。具体的には、Rock、Pop、歌謡曲、Soul、R&B……などのスタイルを勉強したり、アレンジ演習ができるみたい。カリキュラムの全体は、作曲やDTMに関する基本的なことを一通り学ぶコアプログラムを受け、より深い内容のメインプログラムに進んでいく流れになっていて、0から音楽を学べるようになっているんです。
コースは大きくコアプログラム、メインプログラムと分かれていて、ゼロから音楽を学べる
そして、後半は伊藤先生が実際にギターを弾きながら、ギターを弾けない人のためのギターの打ち込みを教えてくれました。「ギターを弾かれる方は大丈夫だと思うんですけど、弾かれない方にとってギターは結構謎な楽器だと思います。ですが劇伴からポップスまでギターは欠かせない楽器なんですよね。標準で搭載してあるプラグインでもなんとかすることはできますが、やはり生に近いものを作るなら、音源を買った方がいいですね」と伊藤先生
「それでもギターのことを知らないと、なかなか使いこなせないのが実情です。そこで、とりあえず安いギターでいいので、ぜひ1つ買ってみて、まず仕組みを知るといいと思いますよ。いきなりですが、ピアノとギターの違いってなんだと思いますか?いろいろと違いはありますが、大きな違いはボイシングです。つまり音の重ね方ですね。この辺のことを意識してあげないと、ギターっぽい打ち込みにならないんですよ」。実際にCコードを鳴らして、それと同じようにDAWにもさくっと打ち込んでいきます。
「それから、ギターにはいろいろな奏法がありますが、ここも意識してあげることが大切なんです。たとえばアルペジオを打ち込む場合は、最初の1音目を最後の音が終わるまで伸ばしてあげないと、変になっちゃうんですよね。だから、ちゃんと伸ばしてあげて、音が持続した状態を作る必要があります。ここでちょっとしたコツですが、サステインペダルを踏んであげると楽に打ち込めるんですよ。これはDAWの設定からもサステインをオンにできるので、楽に打ち込むことができますよ」
「それから、ギターってモノラル楽器なんですが、CDとか聴くと左右から厚みのあるサウンドが聴こえてきますよね。あれってどうやっているか分かりますか?」という伊藤先生の質問に対し、セミナー参加者から「パンを振っているから!」という声が。
「そう思いますよね。でも実はただパンを振っているからじゃないんです。ダブリングってワザを使ってあげるんです。これはいろいろなものに応用できるのでぜひ覚えてほしいテクニックなのですが、同じフレーズを何度か弾いて左右にパンを振ることで、左右から聴こえるようになるのです」と伊藤先生
「たとえば、1回だけ弾いたフレーズを2つのトラックにコピーして、左右に振っても真ん中から聴こえてしまいます。ここでちょっと、打ち込みでも使えるダブリングの方法について紹介しますね。打ち込みのダブリングで1番簡単な方法は、まず1トラック打ち込んで、それを複製した後に、その複製したトラックにディレイをインサートしてあげる方法です。30msecぐらい遅れた音を作ることで、左右から流れる厚みのあるギターサウンドを作れるんです」。こういったワザは知らないとうまくできないものだし、そもそもダブリングって言葉知らないと調べることもできないんですよね。
そして、最後に「今回紹介したダブリングとかアルペジオの打ち込みの仕方を知っただけでも、かなりギターの打ち込みにとっつきやすくなったと思います。ぜひうちに帰って、実際に試してみてください!」と伊藤先生からセミナーを受けに来た方に向けてのコメント。
無料初心者セミナーに自分の楽曲を持っていくと先生がその場でアドバイスをしてくれる
今回、参加してみたJBG音楽院の無料初心者セミナー、触りだけの簡単な授業と聞いていましたが、かなりのボリュームがある充実したものでした。ここに紹介したのも、その授業の中でのほんの一部をピックアップした形でしたが、その雰囲気はなんとなく伝わったのではないでしょうか?
DTMですぐに使えるようなテクニックがあったり、ネットの情報にはない先生独自のマル秘テクニックだったりと参考になる話がいっぱい。ここではJBG音楽院の入学説明会なども行われていますが、このセミナーに自分の楽曲を持っていけば、先生がその場でアドバイスをしてくれるのだとか……。興味のある方は、ぜひこの無料初心者セミナーに参加してみてはいかがですか?