小さなボディーにすべてを詰め込んだ。爆音でも絶対失敗しない世界初の32bitフロート対応デジタルミキサー、ZOOM LiveTrak L6を試してみた

すでにご存じの方も多いと思いますが、ZOOMから32bitフロートに対応した世界初のデジタルミキサー、ZOOM LiveTrak L6が9月末に発売されています。これまでZOOMは、ハンディーレコーダーやオーディオインターフェイスなど32bitフロートに対応した製品をいろいろとリリースしてきましたが、ここにきてデジタルミキサーにも、この革命的な技術を搭載したのです。 LiveTrakシリーズは、これまでLiveTrak L-8、LiveTrak L-12、LiveTrak L-20 、LiveTrak L-20Rとあった中、このLiveTrakシリーズ初めてとなる32bitフロート対応の製品が登場したのです。

価格は36,900円(税込)と手ごろで、シリーズ史上もっともコンパクトでありながら、パワフルな機能を多数秘めています。LiveTrakの便利な操作感を継承しつつ、10in/4out、MIDIの入出力、オーディオインターフェイス機能、microSDカードへのパラチャンネル収録+マスターL/R収録……など、極小の筐体にあらゆる機能が詰め込み、制作環境でも、レコーディングでも、パフォーマンスでも、PCはもちろんスマホからの配信でも、万能に使える機材となっています。すべての機材をつなぐ核となれるLiveTrak L6を実際に試してみたので、紹介していきましょう。

音楽制作、ライブ、配信、すべての用途で使える万能なコンパクトミキサーLiveTrak L6

世界初の32bitフロートに対応したデジタルミキサーLiveTrak L6

ZOOMが最初に出した32bitフロート対応機材のF6が登場して約3年経ったので、その凄さを実感している人も多いと思いますが、改めて32bitフロートについて簡単に説明すると、これはダイナミックレンジが事実上無限大で、音割れの心配をすることなく録音できるというもの。詳しいことは「これはオーディオインターフェイス革命!ZOOMが32bit Float対応のUSBオーディオインターフェイスにもなる小型レコーダーF3を発表」という記事で紹介しているので、ぜひこちらをご覧いただきたいのですが、とにかく機材を接続すれば、ちゃんとした音をLiveTrak L6でコントロールすることができるのです。

ゲイン調整は、レコーディングの基礎の基礎ですが、ここの段階でクリップして歪んでしまうことも多く、一番起こりやすいトラブルのひとつ。現代であれば、後の編集である程度復元できることもありますが、こうしたトラブルはできる限り避けたいところ。専用のソフトを使っても、お手上げになることもしばしばですから。そういった心配がなくなるのが、32bitフロートであり、LiveTrak L6にちゃんとケーブルを挿しさえすれば、専門知識がなくても録音やミックスを行うことができるのです。

32bitフロート対応なので、ちゃんと結線さえすれば、歪むことなくきれいな音が録れる

そんな32bitフロートに対応した世界初のデジタルミキサーが、このLiveTrak L6で、非常にコンパクトに作られているのは驚きです。サイズは幅23cm/奥行き11cmと、デスクの上に置いても邪魔にならず、バックに入れて簡単に運べる大きさとなっています。付属のACアダプタまたはUSBモバイルバッテリー駆動、USBバスパワー駆動もでき、単3アルカリ電池4本の場合は約3時間駆動させることが可能です。右サイドにACアダプタ端子とmicroSDカードスロットがあり、それ以外の入出力、操作系は天面に集約されています。電源のオンオフボタンが左上にあるのも、常設機器として使うのであれば、地味に嬉しいポイントですね。

iPhone 16 Proと比べて、ふたまわりぐらい大きいサイズ感

さまざまな入力に対応したLiveTrak L6の10個の入力チャンネル

LiveTrak L6はコンパクトながら、さまざまな入力に対応しています。1,2chはXLR端子でもTRS端子でも接続可能なコンボジャックとなっており、ファンタム電源を送ることもできるので、ダイナミックマイクのみならずコンデンサマイクを使用することができます。

1,2chにはファンタム電源が送れるコンボジャックを搭載している

3ch〜6chは、ボタンを押すことでモノラルにもできるステレオチャンネル、7ch〜10chはPCまたはスマホからの出力を立ち上げることも可能なステレオチャンネルとなっています。またそれぞれのチャンネルには、ミュートボタンが搭載されています。

3ch〜6chはモノラルにもできるステレオチャンネル。7ch〜10chはPCアウトにも対応したステレオチャンネル

さらにこれら10chすべての個別チャンネルとLiveTrak L6でミックスしたステレオLRをmicroSDカードに収録することも可能。一番右の録音ボタン、再生/停止ボタンで、録音開始を行ったり、録音したものを再生することができるようになっています。

10入力+ステレオLRをmicroSDカードに収録することもできる
ロータリーエンコーダーであらゆるパラメータをコントロール

各チャンネルに搭載されているロータリーエンコーダーは、選択しているキーによって、あらゆるパラメータをコントロールできるようになっています。EQ、AUX1、AUX2、EFX、PAN、LEVELと、それぞれキーがあるので、これを押すと、ロータリーエンコーダーでそれぞれのパラメータを調整可能です。

使いたいキーを選んでから、ロータリーエンコーダーで調整していく

MIDI IN/OUT、オーディオインターフェイス機能、サウンドパッド、空間系エフェクトも搭載

32bitフロートを搭載しているとはいえ、ここまで見てきたのはミキサーとしてオーソドックスな部分でした。しかしLiveTrak L6には、普通のミキサーには搭載していないけれど、便利な機能が搭載されています。まずは、MIDI IN/OUT端子。コンパクトボディーなこともありDIN端子ではなく、3.5mmTRSタイプのMIDI端子ですが(DINで使う場合は別途変換ケーブルが必要)、これにより外部MIDI機器と連携を行うことができます。もちろんUSB MIDIにも対応しているので、オーディオインターフェイスとして使うときと同様にLiveTrak L6のUSB端子とPCを接続すれば簡単にMIDI接続することが可能。

MIDIの入出力、USB端子を装備している

詳しくは、「LiveTrak L6 |MIDI機能について」にも書かれていますが、たとえばPCと接続している場合、DAWの再生に合わせて、LiveTrak L6の5chのレベルを変更したり、サウンドパッドを再生したり、シーン切り替えたりすることが可能。また、MIDIクロックシンクにも対応しているので、ディレイタイムを外部MIDI機器と自動的に同期させることもできます。別売オプションの専用ラックマウントアダプタでユーロラックに組み込むことが可能なことからも分かるように、使い方は無限大となっています。

LiveTrak L6は、デジタルミキサーとしてだけでなく、オーディオインターフェイスとしても使用することができます。その際は12in/4outとして機能し、32bitフロート対応の強力なオーディオインターフェイスとなります。ループバックの設定も簡単で、LiveTrak L6のミキサー自体にPCからのアウトを立ち上げて、それをロータリーエンコーダーを使って、ほかのチャンネルとミックスすることが可能です。Windows/Mac/iOS/Androidで動作するので、音楽制作用途としても、配信用途としても万能に使うことができますよ。

12in/4outのオーディオインターフェイスとして使用することができる

サウンドパッドは4つ用意されており、ここに好きなオーディオファイルを設置することができます。オーディオファイルはPCから直接LiveTrak L6に読み込むことはできず、指定されたSDカードのフォルダに格納する必要がありますが、LiveTrak L6から直接サウンドパッドに音を録音することが可能だったり、後述するZOOM L6 Editorというソフトを使えば、サウンドパッドをループさせるか、ワンショットにするか、押しているときだけ再生させるか設定できます。また、レベルやMIDIノートもZOOM L6 Editorから調整可能。なおサウンドパッドのマスターボリュームは、LiveTrak L6本体のロータリーエンコーダーから調整することができます。

4つまでLiveTrak L6に音源を仕込むことができる

そしてLiveTrak L6には、空間系エフェクトも搭載しています。これだけコンパクトサイズなので簡易的なリバーブが1種類かな…と思ったら、LiveTrak L6には、Hall、Room、Spring、Delay、Echoの5種類が搭載されていました。SELボタンでそれぞれのエフェクトを切り替え、TAPボタンを搭載しているので、これでディレイタイムをコントロールすることも可能です。リバーブの長さや音質などは、ZOOM L6 Editorから詳細に設定することもできますよ。

Hall、Room、Spring、Delay、Echoの5種類から好きな空間系エフェクトを使うことができる

コンプを搭載したマスター、2系統のAUX SEND、ヘッドホンアウト、シーンメモリを搭載

LiveTrak L6のマスターアウトにはコンプレッサが搭載されており、音圧を上げつつ、マスターでの音割れを防ぐことが可能。マスターアウト以外にもモノラル2系統分のAUX SENDが用意されており、ここからマスターとは違うバランスのアウトを出力ができます。そして、マスターのボリュームツマミとは別にボリュームを調整できるヘッドホンアウトを搭載しています。

マスターにはコンプが搭載しているため音圧を上げつつ、音割れを防ぐことができる

内蔵ミキサー設定は、A、B、Cの最大3つまでシーンメモリまで保存可能です。長押しでシーンを保存、短く押すとシーンを呼び出すことが可能です。音楽制作用、ライブ用、配信用など、シーンを保存しておくことで、すばやくセッティングを完了させることができますね。

音楽制作用、ライブ用、配信用と、すぐに設定を呼び出すことができる

LiveTrak L6の詳細設定をコントロールするZOOM L6 Editor

ZOOMサイトから無料でダウンロードできるZOOM L6 Editorを使うと、LiveTrak L6をよりカスタマイズすることができます。

LiveTrak L6のカスタマイズを行うことのできるZOOM L6 Editor

バッテリーのタイプやオートパワーオフの設定、レコーダーモードなどの基本設定から、MIDI周りの設定もここから変えることが可能です。

MIDI CC# Mapping画面

前述の通り、サウンドパッドの割当て、空間系エフェクトのパラメータ調整も行うことができるようになっています。

空間系エフェクトのパラメータ調整も行える

さらにAUXへの送りのポイントをポストフェーダーにするのか、プリフェーダーにするのかなどなど、よりカスタマイズするための設定が揃っています。

AUXへの送りポイントを選択することも可能

以上、LiveTrak L6について紹介しました。コンパクトな筐体にライブでも、音楽制作でも、配信でも使いやすい機能が詰まっていましたよね。LiveTrakシリーズに32bitフロートが搭載されたのも初ですが、実はMIDIの入出力の搭載も初。そもそもMIDIの入出力を持ったデジタルミキサーなんて、なかなかないですから、探していた方もいるのではないでしょうか?これ1つあれば、なんでもこなすことができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

【関連情報】
LiveTrak L6製品情報

【価格チェック&購入】
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