音楽を仕事にしたい。そう思っている人は数多くいるけれど、実際それを実現できている人はわずかである、といいますよね。もちろん音楽だけで生計を立てるのは簡単なことではありませんが、自分がDTMで制作した曲をお金にしていくという方法はいくつかあります。普通思いつくのは、これをCDにして販売したり、iTunesなどの配信サービスで販売する方法です。ただ、ここで販売し、実際に売れるようになるには、ライブ活動をしたり、プロモーションを行うなど、そう簡単なことではありません。
でも自分の作った曲をネットを通じて登録することで、さまざまな企業のビデオや店舗でのBGMとして使ってもらったり、ゲームなどの採用されるとともに、それに伴う収入が入ってくるというサービスがあるのをご存じですか?クレオフーガが運営するAudiostock(オーディオストック)というサービスがそれです。現在4,000人強のクリエイターがここに登録するとともに、BGMや効果音などを中心に55,000点以上の作品が並ぶ一方、約2000の企業が利用者として登録して、日々、作品の売買がされているのです。多い人だと月に10~20万円の収入になっているというから、なかなか魅力的なサービスですよね。このAudiostockとはいったいどんなことができるサービスなのか紹介してみましょう。
クレオフーガが展開する著作権フリーの音素材サービス、Audiostock
「DTMをやっているクリエイターのみなさんに、自分の作品をゲームや映像に使ってもらえるための場を用意しました。それがAudiostockなんです。実際に採用されれば、収入が得られる仕組みになっているので、ぜひ活用してみませんか?」と話すのは株式会社クレオフーガの代表取締役社長、西尾周一郎さん。
クレオフーガについてはご存じの方も多いと思いますが、音楽投稿サービスを展開している会社で、ネット上でさまざまな音楽コンテストを実施していることでも知られています。私個人的には、昨年、楽天FMが展開していたTokyo Tech Streetというネットラジオ番組の水曜日のコーナー、クレオフーガRadioに約1年間ゲスト出演させていただいたので、西尾さんとも頻繁にお会いしていました。
その西尾さんが、「いま力を入れている」と言っていたのがAudiostock。当初、私もどんなサービスなのかよく分かっていなかったのですが、聞いてみると、なかなかユニークなサービスであり、多くのDTMユーザーにとっても魅力あるサービスになっているんですよね。
「企業や店舗などで、音楽を利用したいというニーズは昔からありました。しかし、ネットを介して動画などをどんどん発信できるようになった現在、そのニーズはますます高まっています。そんなニーズに対応できるようにするとともに、多くのDTMユーザーの人たちが活躍できる場を作ろうと3年前に立ち上げたのが、Audiostockというサービスなんです」と西尾さん。
Audiostockに登録することで自分の作品が広く使われ、結果として収入につながる
昔から、業務用としても利用可能なフリー素材音楽が入ったCDというのは存在していましたが、かなり高価でしたし、求める雰囲気の楽曲を見つけ出すというのもなかなか大変でした。最近は、ネット検索して、そのままダウンロード購入できるサイトも登場してきていますが、特定の人たちが作っているライブラリだけに、選択の幅が少ないし、結構な価格だった中、クレオフーガがプロ・アマチュアを問わず、多くのDTMユーザーの力を結集する仕組みを作ったのがAudiostockだ、というわけですね。
すでにその登録作品数はBGMが32,000点程度、効果音が17,000点以上、ボイス・ナレーションが4,400点以上、歌モノが500点以上と、国内で最大規模となっています。前述のとおり、4,000人以上のクリエイターがいるだけに、本当に多くのバリエーションがあって、プレビュー機能で聴くだけでも結構楽しいんですよ。
Audiostockは誰でも簡単に無料で登録することができる
そうなってくると、やはり気になるのは、Audiostockでは、いくらぐらいで、どのような条件で楽曲が売買されているのか、という点です。これについても西尾さんに話を聞いてみました。
「Audiostockでは曲の売買料金というよりも、『CMに使ってもいいですよ』、『ゲームなどのアプリケーションに組み込んで再配布してもいいですよ』、というライセンスを売るビジネスになっているんです。金額としてはBGMなら1,080円~、歌モノの楽曲なら3,240円~という設定になっていますが、その値段はクリエイター側で選択できるようになっています。たとえばBGMを見てみると、そのほとんどが2,160円か3,240円という設定になっていますね」(西尾さん)。
確かにAudiostockのサイトを覗いてみると、用途やジャンル、楽器などから検索可能になっているほか、フリーワードでの絞り込みも可能になっており、出てきた曲を全曲丸ごと試聴できるようになっているんですね。ただし、この試聴したものがそのまま利用されないように約10秒ごとに「Audiostock」という声が入るプロテクトがかかっています。
では、その曲が3,240円で売れたらどうなるのでしょうか?
「細かな決まりについては規約に記載していますが、購入した企業、人はその曲を自由に使うことができます。つまりCMに使ってもいいし、店頭で流してもいいし、ゲームなどに組み込んで再販してもOKです。一方、その曲は1回売れて終わりというわけでもありません。実際、同じ曲が100社以上に使われているケースもありますが、ここに制限を設けないというのもAudiostockの特徴になっているんです」と西尾さんは話しています。
映像作品やゲームなど、Audiostockに登録された楽曲がさまざまなところで活用されている
いわゆるロイヤリティーフリーという手法を用いていて、「このお客さんが1年間独占的に利用する」とか「この業界での利用は1社だけ」といった管理は行ってはいないわけです。でも、その分管理することがないので、価格を安く設定することができるという大きなメリットも出てくるわけですね。すでに利用者としての法人登録は2000社以上、個人ユーザーも含めると5000以上のアカウントがあり日々さまざまな利用がされているそうです。
さて、ここで気になるのは、曲の制作者にいくら入るのか、ということです。CDや本の流通の世界では、印税という形式でほん数%だけが制作者に入る仕組みなのに対して、Audiostockだと、どうなのか……。
「Audiostockでも印税という形になります。ただし印税は最低40%~となっており、売り上げが多いユーザーは印税率が上がる仕組みになっています。つまり、3,240円の曲が10社に売れたとしたら、40%でも12,000円の収入になるというわけです」と西尾さんは説明してくれました。
その上で、クリエイター登録が必要になる
もちろん、Audiostockに登録すれば、即10社に売れるなんてことはないでしょうけれど、これならかなり夢がありそうです。そして、もう一つ気になるのは、どんな曲が売れているのか、という点です。
「ビデオとかゲームのBGMとして使いやすい曲が売れています。具体的にいうと、適度な盛り上がりがあり、曲の進行に展開があるものです。やはり単調だと面白味がなくなってしまうからです。もっとも展開がありすぎると、尺にハマらずに難しくなってしまうので、そのバランスの取れたところの曲ですね。一方、流行りでいうと、やはり世の中のトレンドはテレビCMに表れているように思います。つまり、いまCMで流れているような雰囲気の曲がよく売れるというのはAudiostockの売れ行きを見ても顕著に出ています。2015年は透明感のあるポップで、デジタルっぽいけれど上モノにピアノが使われているようなものが売れていました。一方、2016年はギンギンのEDMやダンスミュージックが売れて、その傾向はまだ続いていますが、2017年がどうなっていくのかが楽しみですね」と西尾さん。
さまざまなカテゴリー用意されているほかフリーワードのタグ設定も可能
ちなみにAudiostockでは曲を登録する際に、ポップ、ハードロック、テクノ……など曲のジャンル、楽しい、激しい、暗いなど曲のイメージ、ピアノ、エレキギター、トランペットなど曲で使われている楽器、といった情報を登録できるほか、フリーワードでのキーワード設定もできるようになっています。こうしたキーワードをどう設定するかも、売れるか売れないかを大きく左右するので、じっくりと考えたほうがいいかもしれませんね。
Audiostockは音楽クリエイターと企業などの購入者を結び付ける場となっている
なお、Audiostockには、クリエイターにとってもさらに魅力的な機能も用意されています。詳細についてはAudiostockサイトをご覧いただきたいのですが、企業ユーザーなどが、登録されている音素材を聴いて気に入った場合、その作者に直接仕事を依頼するということが可能になっているんですね。その意味では、作曲家の人が、ここでお客さんを見つけるためにいくつかの作品を登録しておくというのも、ありですね!
以上、クレオフーガが展開する日本最大級の投稿型の音素材マーケットプレイス、Audiostockについて紹介してみましたが、なかなかユニークなサービスですよね。これまでに作った楽曲が結構いっぱい溜まってるよという方や、これから作る曲をもっと世の中で活用してもらいたいと思っている方など、多くのDTMユーザーにとってメリットの大きいサービスだと思います。まずはこのAudiostockにクリエイターとしてユーザー登録してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Audiostockサイト
クレオフーガサイト